一番星は消えない   作:ディバル

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023 デート?

 

 

 

 

とある日の休日。アイは、私服姿で駅にいた。

 

(……んー、もうそろそろ来てもいい頃なんだけどなぁ。)

 

時刻は、9時40分。まだ、人によっては寝ている人もいるだろう。駅前で立ち人を待っている。彼女が何故、こんな所にいるかと言うと、それは数日前に遡る。

 

 

 

 

 

数日前。

 

一人称が変わっていた彼を追いかけてその理由を聞いた後の事だった。

 

「そう言えば、アイ………週末暇?」

 

話し終えた後に、事務所に戻ろうとする貴女を引き止める。どうやら、まだ話す事があるみたいだ。

 

「……うん、まぁ一応空いてるけど……どうしたの?」

 

「まさか彼方からそういうこと聞いてくるなんて思わなかったな」

 

それに対して彼は、「俺をなんだと思っているんだ?」と言いながら貴女の方を見る。

 

「前に、遊びに誘ってくれたでしょ?でも、その時は断っちゃったし。その後、いろいろあったし。改めて遊びに行きたいと思って」

 

それは、彼がまだ演技で悩んでいた時の話。演技に悩み彼女と喧嘩した時にアイは、遊びの誘いをしていた。しかし、演技の練習に必死だった彼が、その連絡に気づかない事があった。結局、あの後喧嘩になり、話が有耶無耶になっていた。

 

「……え、ほんとに?」

 

「彼方の方からそういうの言うんだ」

 

目を丸くしている。確かに、彼から誘ってくるのは中々ない。いつぞやの学校帰りのゲームセンター以来だ。大抵、アイが誘って、それに付き合っている感じだ。

 

「なんかちょっと意外かも……でもうん、いいよ」

 

「せっかくだし、行こっか」

 

満面の笑みを浮かべて、微笑む。

 

「………誘っておいてなんだけど、どっか行きたい所ある?」

 

誘ったのはいいが、何処に行くかは考えてなかった様子。少しだけ困った顔をしながら聞いてきた。

 

「え、そこノープランなの?」

 

まさかのノープランである事にアイは驚いていた。

 

「普通さ、誘った方が決めとくもんじゃない?」

 

自分から誘っておいてノープラン。そのシンプルな言葉が、彼の心に突き刺さった。軽く傷つく。そんな事は、彼女は知らないだろう。

 

「俺の好みで決めたら楽しめるかわからないだろ?それに、俺はアイが楽しんでくれる方が嬉しいから」

 

彼らの間には、かなりの年齢差がある。精神的な意味で。だから、迷った。最初は自分から提案して遊ぼうと思っていたのだろうが、後々になって不安が湧いてきた。それと、彼が生きた現代とは違い、この時代は過去であり娯楽の程度も違ってくる。それも相まって結局決めきれなかった。

 

「……もう。彼方らしいけど……じゃあさ。とりあえず適当に歩いてみよっか」

 

「面白そうなとこ見つけたら入る感じで」

 

その返しは、彼女らしい答え。結局、ノープランのままだった。でも、2人はそれでも楽しもうとしている。

 

「せっかくだしさ……待ち合わせとか、してみる?」

 

「ほら、ちゃんと“遊びに行く”って感じでさ」

 

 

 

 

 

回想終了。そんな感じで今に至るという訳だ。待ち合わせは10時にしていたので、時間的にそろそろ来る頃合いだ。アイは少し早く来ていた。

 

(……んー、ちょっと早く来すぎちゃったかも。)

 

約束の時間は10時。彼女が来た時間は9時半。少し余裕を持って来ていた。周りをキョロキョロと見ながら彼の姿を探す。

 

(……ミヤコさんに服選んでもらっといて正解だったかも。)

 

実は、遊びに行く事は事前に社長やミヤコには伝えていた。それについては2人は何も言わなかったのだが、ミヤコさんが「どの服で行くの?」と話題に出した時に、アイが出した服は安物で、あまり彼女に似合っていない物だった。

 

そんな服を出されてこれで行こうと言って来た時、2人は頭を抱えていた。壱護に関しては、前々から「もうちょいマシなもん着てほしい。」と思っていた。なので、社長とミヤコの2人で彼女に似合う服をいくつか見繕ってもらっていた。

 

今の彼女は、安物の服ではなくそこそこいい値段がする服を着て、髪型は三つ編みと、いつもとは違う感じの姿をしていた。行く先々で他の視線を集めている。元がいいので、身なりを整えたらさらに良くなった。

アイが彼を待っていると、2人の男が近づいてくる。

 

「ねぇ……君、今1人?」

 

「よかったら俺らと遊びに行かない?」 

 

声をかけられた方に視線を向ける。貴女よりも歳が上の男2人組。しかも、テンプレみたいな声の掛け方をして来た。いわゆるナンパだ。

 

「ごめん、今待ち合わせ中なんだよね」

 

「ちゃんと約束してる人いるからさ……他あたってもらっていい?」

 

ナンパかぁ………まぁ、私可愛いし。こういう事もあるよねぇ。この人達、いつもこんな事してるのかな?

 

自分よりも年上の人間に話しかけられているが、彼女の心情はこんな感じだった。2人は全く興味がない。そのまま視線を逸らそうとするが……。

 

「いいじゃん……そいつより楽しませてあげるからさ」 

 

「そうだろ……俺らと行こ」

 

引き下がってはくれないみたいだ。確かに、アイはそこら辺の女性よりレベルが高い。こんなレベルはそうそうお目にかかれない。逃したくないのだろう。

 

「……ごめん、ほんとに無理。約束してるって言ってるじゃん」

 

あまりのしつこさに彼女も苛立ち始めた。確かに彼らのルックスは整っていたが、それ以上に強引でアイにとっては不快の対象になっている。

 

「それにさ、私………自分が楽しいかどうかより、“誰といるか”の方が大事なんだよね………だから、もう行くね」

 

この人達、しつこいなぁ。彼方には悪いけど少し離れようかな?

 

そう考えながらその場を離れようとした。しかし……。

 

「そう言わずにさぁ」

 

1人の男の手がアイの方に伸びてくる。拒絶されたのにも関わらず、まだ諦めていないみたいだ。彼の手がアイに触れようとした時だった。

 

「何をしてるんですか?」

 

その男の手を掴む。その手を掴んだのは、アイが待っていた彼だった。

 

「ごめんね………怖かった?」

 

安心させる為に笑みを浮かべながら、アイにそう言う。

 

「……ううん、平気。ちょっとしつこいなぁって思ってただけ」

 

「……来てくれてありがと、彼方。ちょうど、そろそろかなって思ってたとこ」

 

時刻は9時50分。待ち合わせ時間の10分前に、天城彼方、現着。視線が男達2人に向く。視線は冷たく、睨んでいた。

 

「なんだよお前」 

 

その視線に苛ついたのか手を振り払ってくる。そして、敵意剥き出しで彼を睨み返す。アイを守るように後ろに立たせ、もう片方の手でアイを庇う。

 

「随分と大人気ないですね。………中学生に対して2人で囲い込んで」

 

淡々と言葉を紡ぐ。視線は凍っており、こちらも敵意を剥き出しだ。

 

「お前は、彼女のなんなんだよ?」

 

もう1人の男が彼にそう聞く。その質問に対して彼は、今度は笑みを浮かべて……

 

「アイは、私の彼女です」

 

「「「!?」」」

 

その一言で、彼以外のこの場にいる全員が驚きの反応を見せた。唐突な事だったので、アイも反応ができておらずポカーンとしていた。その隙を見逃さず、そのままアイの手を掴み………

 

「では、私達はこれで。そんなだからモテないんですよ?」

 

アイの手を引く。そして最後に捨て台詞を吐く。そのまま、その場を去っていく。「やってやったぜ。」そんな感じの清々しい顔をしていた。

 

アイを連れて歩くこと数分後、立ち止まった。後ろを振り返るが、どうやら2人は追って来ていなかった。完全に撒くことができた。

 

「よし……ここまで来ればいいかな?」

 

追って来ていない事を確認して手を離す。

 

「……ねぇ、彼方。さっきの、聞き間違いじゃないよね?」

 

手を離して直ぐにアイからさっきの言葉について質問された。

 

「“彼女”って……普通に言ってたけど」

 

助ける為とは言えど、彼女と言った彼。何も聞かされていないアイも驚いた。

 

「……あれ、助けるためのやつ?それともさ.......ちょっとくらい、本気入ってたりするの?」

 

アイの瞳が彼を捉える。その質問に笑みを浮かべながら……。

 

「ナイショ」

 

そういたずらに笑った。感情が読み取れない。彼女の観察眼でも、その真意はわからなかった。でも、その答えにアイは嫌な感情を抱かなかった。むしろ、さっきの唐突な彼女発言と彼の笑みを見て、鼓動が高まっていた。

 

「……ずるいなぁ、それ……ありがと、彼方……次は、ちゃんと覚悟して言ってよね?」

 

ナイショと言った彼だったが、内心は………。

 

(………あの時は勢いで言ったけど……俺は、アイを恋愛対象として見るのか?)

 

……と、内心は穏やかではなかった。表面上は隠している。嘘はついてはいない。はぐらかしただけである。

 

(……まただ、この感じ……なんなんだろ、これ。)

 

互いに考えていた。考えた所で今この場で結論が出るわけが無いのに。

 

「じゃあ行こうか」

 

彼方がそう言い再び歩き始めた。こうして、彼らの休日が始まった。

 

 

 







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