一番星は消えない   作:ディバル

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026 出会い

 

 

 

 

6月の終わり頃。俺やB小町の面々は宮崎県の地を訪れていた。飛行機で大体1時間40分で到着。B小町のライブは明日。その次の日は俺の撮影。彼女達は、この後にリハーサルがある。

 

「九州か……」

 

九州、彼が生まれ育った場所はその中の福岡県。自分の地域に足を踏み込んではいないが、思う事があったのか、しばらくの間立ち尽くしていた。

 

「……彼方、どうしたの?」

 

「宮崎ってさ……彼方にとって、ちょっと特別な場所だったりする?」

 

立ち尽くす彼を見て気になったのか、アイが聞いてくる。アイの言葉でよ

うやく動き出した。

 

「宮崎も少し気になる場所だけど、どちらかと言えば九州自体が特別かな……私にとって」

 

今は、他の人達もいるので一人称は私となっている。宮崎も気になってはいる。原作のルートならこの地で彼らが生まれるのだから。

 

「……そっか、九州なんだ」

 

「……なんか、大事な場所なんだね……ね、あとでちょっとだけ、一緒に回ろ?」

 

……大事な場所。そうだな……大事な場所だ。俺にとっては、ずっといた。色んな所を巡った。全てではないけど。就職する時も、結局、九州に残った。この世界ではどうなっているかわからないけど、日本である事には変わりない。

 

「回る時間なんてないぞ……お前らは仕事があるんだ。それに、彼方の撮影が終わったらすぐに帰るぞ」

 

壱護さんが割って入ってきた。どうやら、今回は回る時間が無いようだ。そもそも仕事で来ているのだから当たり前ではあるか。

 

「……えー、ちょっとくらいいいじゃん」

 

回りたい気持ちは、わかるけどな。

 

「……せっかく来たのに」

 

「仕方ねぇだろ……売れてきているとは言え、うちにそんな余裕はまだ無いんだよ」

 

苺プロは元々そこまで大きな会社では無い。まだ、借金だって残っているだろう。まだ赤字の域を出ていない。

 

「また今度来ればいいよ。その時、一緒に回ろう」

 

「……ほんと...…約束ね?……ふふっ、じゃあ楽しみにしてる」

 

約束が増えた。そうして、俺達は歩き始めた。見知らぬ土地。気になって周りを見てしまう。初めて訪れた場所だから気になって仕方がない。それは、彼女達も同じみたいだ。

 

「ねぇねぇ、宮崎ってさ、有名なもの何があるんだっけ?」

 

「チキン南蛮とかじゃない?あとマンゴー!」

 

「え、いいなぁ〜絶対おいしいやつじゃん!」

 

「……いいな、食べたい」

 

メンバー達はすっかり観光気分で、きょろきょろと辺りを見回している。仕事で来ているはずなのに、浮ついた空気は隠しきれていなかった。

 

「ほら、アイも言ってるし、終わったらご褒美で食べよ?」

 

「ふふっ、いいねそれ。頑張ったら、ね?」

 

「じゃあライブ気合い入れるしかないじゃん!」

 

「うん……みんなで、いいステージにしよ?」

 

と……こんな感じに盛り上がっている。こうして見ると、本当に仲良くなった。対等な立場で話をして盛り上がる。少し、羨ましく感じた。昔の自分を見ているような感覚。やっぱり、友達って大事だなと思う。

 

「そう言えば、天城さんの演技って生で見られますか?」

 

メンバーの1人がふと、思い出したみたいに壱護さんに聞いてくる。

 

「……余計なことしなきゃ、まぁ大丈夫だろ」

 

………これ、ここにいる全員に演技を見られるのか?

 

「え、ほんとに!?見られるの!?」

 

「やばっ、ちょっと楽しみなんだけど!」

 

「ねぇねぇ、どんな役なの?気になる〜!」

 

「……ちゃんと見るからね?彼方のこと」

 

さっきまで観光気分で話していた彼女たちだったが、今は彼の演技の仕事についての話になっていた。

 

「私は、今回、愛されなかった子供の役だよ。そこまで期待して見るものじゃないよ。」

 

自分からハードルを下げておく。というか、アイさん。少し視線がキツめなのですが?

 

「え〜絶対うそ、天城さんの演技ってすごいじゃん!」

 

「ね、前のやつもめっちゃ評判よかったし!」

 

「愛されなかった子供かぁ……なんか難しそうだね」

 

確かに、他の役者さんから「良かったよ」とは言われて。それと同時に「怖い」や「いい意味で気持ち悪い」とかも言われた。俺の演技、そんなに気持ち悪いのか?と考えたりもしたっけ。

 

「……ふーん。そっか」

 

「アイ?なんか反応うすくない?」

 

「……別に。ちゃんと見るって言っただけ」

 

うん……多分気のせいだ。自意識過剰になるのは良く無いね。考え過ぎは良く無い。

 

彼はそう結論付けたが、実際の所、アイの視線は少しキツめになっていた。他の女子と話しているのに対して少しモヤモヤしている。それから、彼も混ざりながら途中まで話をした。

 

その後、彼女達はリハーサルへ向かい、俺は一足先に旅館に行き、演技の練習に打ち込んだ。気づけば時間は過ぎていて……夜になっていた。

 

 

 

 

「ふぅ……風呂上がりはやっぱりコーヒー牛乳だよな」

 

1日が終わり、温泉で疲れを取った後に自販機でコーヒー牛乳を買い込んでいた。何で、風呂上がりってこういうのが飲みたくなるんだろうか?

 

「……あ、彼方」

 

コーヒー牛乳を飲んでいた彼の前に、旅館浴衣を着たアイが現れる。髪がまだ湿っており、彼女も先程お風呂から上がったみたいだ。

 

「お……アイか。今日もお疲れ様。明日のライブは大丈夫そう?」

 

「ん……大丈夫。ちゃんと仕上げてきたし」

 

「……それよりさ。彼方、コーヒー牛乳好きなんだ?」

 

持っているコーヒー牛乳を見ながらそんな事を言ってくる。

 

「温泉に入った後は、飲みたくなるんだよね。ただ、それだけ。俺は、基本水しか飲まないから。」

 

前世から、基本的に水しか飲んでない。それに、今はモデルだ。体型の維持や食事の前に水を飲むことで満腹感を得て、食事量を自然に減らしている。

 

「へぇ……そうなんだ」

 

「……ね、それ、ひとくちちょうだい?」

 

アイは、俺の手にしているコーヒー牛乳を指差し、そう言ってくる。

 

「飲みたいなら買ってあげるから」

 

彼女から視線を外し、新しい物を買おうとする。しかし、アイがその隙を見逃さなかった。一瞬にして彼の手からコーヒー牛乳を奪い取る。

 

「新しいの買わなくていいよ」

 

「これで。……彼方の、飲みたかったし」

 

そのまま、有無を言わさず残りのコーヒー牛乳を飲み干していた。

 

「ふぅ……ごちそうさま」

 

飲み切った瓶を渡してくる。一口ではなく全部飲まれてしまった。別にいいのだが……。

 

「……あ、もうこんな時間だ。明日も早いし……そろそろ寝なきゃ」

 

「……じゃあね、彼方。おやすみ」

 

そのまま手を振りながら去って行った。まるで嵐のような一瞬の出来事だったみたいに。彼女が見えなくなるまで見届けた後、空になった瓶を捨てる。

 

「俺も、そろそろ寝るか」

 

アイとは逆の方向を歩き、自分の部屋に向かう。明日のライブの事を考えながら。

 

 

 

 

翌日。

 

ただいまの時刻は、昼の12時30分。一足早く会場に現着していた。B小町のライブは13時に開始だ。まだ会場には入れないが、外で物販販売をしている。

 

「さて………運ゲーの時間だ」

 

早めに来た理由は、もちろんグッズを買う事だ。と言っても今後があるのでそんなにお金は使わない。………こいつ次第だけど。

 

目の前にあるのは、物販のガチャ。一回500円。彼の狙いは「アイ無限恒久永遠推し!!!」のキーホルダー。そのまま、500円玉を入れてガチャを回した。

 

「………毎回、一点狙いするとこれだ」

 

合計10回。5000円がお亡くなりになりました。………はい。もう今日はお金使いません。今回は、まだマシだった。前世の一番くじで30回以上引いて出なかったあの時よりかは。

 

「あ………」

 

気分が落ち込んでいる状態の時に、そんな声が聞こえた。地面には「アイ無限恒久永遠推し!!!」のキーホルダーがこちらに転がってくる。ちょうど俺の足元に。

 

「………落としました。」

 

彼はそれを拾い上げ、持ち主に返そうと視線を上げた時に……思考が埋め尽くされた。

 

(……なんで。)

 

(彼女は、もう既に。)

 

(時系列の変化?)

 

(それとも……。)

 

脳が思考を加速させる。しかし、相手はそれを待ってはくれない。

 

「ありがとうございます。……あれ?お兄さんもアイ推しですか?」

 

彼のバッグに付いているアイのグッズを見てそう聞いてくる。目の前にいる車椅子に座る少女の正体。それは、「天童寺さりな」。ルビーの転生前の姿であり、この後に確実な死が待っている少女である。

 

 








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