一番星は消えない   作:ディバル

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002 友達

 

 

 

小学生は何も考えずに過ごせる。それは事実だ。しかし、それは「普通の小学生」の話である。俺は転生し人生二周目だ。ハッキリと言う。クソつまんねぇ………。中身は三十路を超えた大人だ。そんなのが小学生の中に混じっている。字面だけ見たら完全にアウトだ。

 

そんな俺の学校生活は、読書だ。図書室で本を借りて読む。昼休みの過ごし方は基本的にはこれだ。そんなのを数年間続けた事により、俺には全く友達がいない。外に遊びに行くのに誘われた事はあるが、さっきも言った通り中身が三十路を超えた大人が混じるのに俺自身が抵抗があった。肉体的な面で言えば確かに小学生だが、中身が大人だ。本気で遊んだら……多分泣かせる。かと言って手を抜くのはそれはそれで面倒だ。故に俺は、ぼっちである。

 

 

 

 

「天野くんってさぁ……友達いないの?」

 

放課後、アイと施設に帰っている途中。唐突に推しからドストレイトな豪速球が飛んできた。それは、俺の心に傷を付けた。

 

「いきなりだな……と言うか星野さん。俺は天城です」

 

「あ、そっか。天城くんだっけ。……で、友達いないの?」

 

話を戻された。

 

「友達は……いないけど友達候補は一人いる」

 

「友達候補?その人だれ?」

 

「星野さん」

 

俺がそう言うと彼女が歩を止めて振り返る。彼女は驚いた様な顔をしていた。中々レアである。原作でもこの様な表情をする事は余りなかっただろう。どちらかと言うと彼女が周りを驚かせる方だ。そんな彼女が今驚いている珍しく。

 

「私?」

 

彼女は自分に指差した。まだ信じられないのか、ぱちぱちと瞬きをしている。いきなりそんな事を言われたらこうもなるか……そもそも友達ではなく候補と言っている時点で俺もおかしいのだが。

 

「そう。星野さん」

 

「え……でも私、友達候補なの?」

 

「うん」

 

俺が頷くと、アイは少しだけ考える様に視線を上げた。

 

「それってさ……友達とは違うの?」

 

「まだなってないから」

 

「なんで?」

 

「俺の考えは、互いに友達と認識してから初めて友達になると思っている」

 

我ながら捻くれている。俺がこの考えなのは前世からだ。あれは小学生の頃………。今も小学生なのだが前世の小学生の頃だ。よく遊んでいる子がいた。その子に俺は聞いた事がある。「俺達、友達だよな?」と……。しかし、相手の反応は「どうだろ?」これだった。冗談だったのか、本気でそう思っていたのかはわからない。ただ、その時の俺は心に傷を負った。それからだ。今な様な考えになったのは、自分だけがそう思い込み相手の気持ちはそうじゃあないかもしれない。結局、そいつとは高校が別になり話す機会もなく、当時スマホを持ってなかったので連絡先も交換してなかったので、そのまま自然消滅していった。

 

その後、高校で友達が出来て社会人になってもよく遊んだり飲みに行ったりする仲だった。あの頃は、本当に楽しかった。

 

「ふーん……」

 

アイは少しだけ首を傾げた。

 

「難しいね、天城くん」

 

「そうかな?」

 

「うん。だって私、そんな事考えたことないし」

 

彼女はそう言いながら、また歩き出した。俺も少し遅れてその隣を歩く。難しいと言うより捻くれているの方が正しいだろう。自分でもそれはわかっている。

 

「じゃあさ」

 

「ん?」

 

「天城くんは、私のこと友達だと思ってるの?」

 

「……候補だね」

 

「まだなんだ」

 

少し不満そうに頬を膨らませる。不満そうにしている彼女に対して俺は「可愛い」と思ってしまう。

 

「じゃあさ、どうしたら友達になるの?」

 

「星野さんが俺のことを友達だと思ったら」

 

「なにそれ」

 

アイはくすっと笑った。

 

「じゃあ簡単じゃん」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

そう言って、彼女は俺の方を振り向いた。夕焼けの光が横から差し込んで、あの特徴的な瞳が少しだけ輝いて見えた。

 

「じゃあ私、天城くんのこと友達だと思う」

 

あまりにもあっさりした言葉だった。

 

「……早い」

 

「だって一緒に帰ってるし」

 

「それだけで?」

 

「うん」 

 

彼女は当たり前のように頷く。

 

「それにさ」

 

少しだけ楽しそうに笑った。

 

「宿題も教えてくれるし」

 

「それが理由か」

 

「あと名前も覚えたし」

 

「昨日も間違えてたけど?」

 

「今日は覚えてるからセーフ」

 

そう言ってアイは、少し得意そうに言った。

 

「ね、天城くん」

 

「……覚えてるね」

 

「でしょ?」

 

それから少しだけ間が空いた。俺は少しだけ空を見上げる。夕焼けが、施設まで続く帰り道を赤く染めていた。夕焼けと相まって彼女が美しく見えた。

 

「星野さん」

 

「ん?」

 

「俺と友達になってくれませんか?」

 

その言葉を聞くと、アイは少し嬉しそうに笑った。

 

改めて自分からこう言うのは少し恥ずかしい。と言うか簡単な事だったな。俺はいろいろと考え過ぎて大事な事を見失っていたと気付かされた。それは……自分の気持ちに素直になる事、失敗を恐れない事。あの経験からまた言われたらどうしようや何かに挑戦する時、いつも悪い方向に考え失敗を恐れていた。考え過ぎて結局は行動に移さなかった。でも、もっと世界は単純なのかもしれない。

 

「うん……じゃあこれから友達だね」

 

本当に、それだけだった。彼女は太陽の様に笑った。ダメだな……俺が救う立場なのに彼女に気付かされた。数十年間、心の奥に溜まった何かが少し落ちた様な気がする。

 

「あぁ……これからよろしく星奈(・・)さん」

 

「わざとでしょ?」

 

ジッ目で此方を見てくるアイさん。

 

「ごめん……噛んでしまった」

 

俺はそう言い笑う。もちろんわざとである。いつも名前を間違えているからその意趣返しだ。

 

「えぇ……絶対にわざとだ」

 

「かみまみた」

 

「わざとじゃあない!?」

 

このやり取りをしてみたかった。このやり取りは、俺の好きなアニメのキャラの定番ネタだ。アイが名前を間違えて俺がそれを訂正する。前から似ているなと思っていた。そして、いつかはやってみたいと思っていたのでちょうどよかった。それにこれくらいの仕返しは許されるだろう?

 

「ふふっ……変なの」

 

アイは肩を揺らしながら笑っていた。俺もつられて笑ってしまう。さっきまでの少し重たい空気は、いつの間にかどこかへ消えていた。今響いているのは俺たちの笑い声だった。

 

「天城くんってさ。意外と面白いね」 

 

「そうかな?」

 

「うん。最初はもっと暗い人かと思ってた」 

 

「失礼だね」

 

「だっていつも難しい顔してるし」

 

図星だった。まさか見抜かれているとは、この時から嘘に敏感だったのだろうか。また歩き始める。俺はその隣を歩き、帰り道を辿ってゆく。

 

「ねぇ……天城くん。また一緒に帰ろ」

 

「うん。星野さんがよければ」

 

夕焼けの帰り道。二人の足音が響いていた。先ずは友達になれた。これは小さな一歩かもしれない。でも、地道に進んで行く。望む未来の為に。

 

 

 

 

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