一番星は消えない   作:ディバル

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036 暗躍

 

 

 

 

少し遠くからだが二人の様子を観察しカメラで撮った。会話内容まではわからなかったが、概ね原作通りだろう。もともと「15年の嘘」の映画作成の時に出てきたエピソードだが、それは、脚本を書いた側の視点しかなく原作の神木本人から聞いたわけではない。だけど、姫川愛梨から性的搾取は、されていた。まだ、断定できないが、姫川愛梨は、「小児性愛者」だ。

 

思春期前の子供に対して持続的かつ強烈な性的関心や欲望を抱く者。もしかしたら、違う可能性もあったが、あの顔。とても普通とは言えなかった。一様、証拠写真を撮ったのでアイの所へ戻る。

 

 

 

 

 

「お待たせ」

 

「ねぇ、遅かったね……どこ行ってたの?……ちょっとだけ、気になっちゃった」

 

彼女の元へ戻ると、アイがそう聞いてくる。待たせて15分くらい経ったかな?

 

「野暮用……気にしなくていいよ」

 

「……ふーん、そっか。じゃあいいけど……ちゃんと戻ってきてくれたなら、それでいいや」

 

神木煇と姫川愛莉の件は、アイには絶対に秘密にする。俺、1人で動いた方が楽だし。この後、どうするかは大体決まっている。こっからは、物理の問題。金と執念で解決する。

 

「今日は、どうだった?」

 

帰る最中、今日の感想を聞く。アイにとって初めての演技という初めての経験だ。少しだけ気になっていた。この業界には、才能が集まる。そんな才ある者たちを見て諦める人も一定数いる。

 

「……うーん、難しかったけど……なんかね、ちょっと楽しかったかも」

 

「……もっとちゃんとできるようになりたいなって思った」

 

どうやら……杞憂だったな。この程度で、折れるわけないか。彼女は、強くなってきている。そんな彼女を信じてやらないでどうする。

 

「アイならできるさ。頑張れ……俺にできる事があるならサポートする」

 

「……ほんと?じゃあさ……ちゃんと最後まで、隣で見ててよ。私がちゃんとできるようになるまで、ずっと」

 

「あぁ……もちろん。アイの隣にいるよ」

 

本当なら……ずっと隣にいたい。けど、俺の役目は彼女の「生存」と「幸せ」……いつか終わりが来る。その時まで、俺は君を守るよ。だからこそ、失敗は許されない。

 

「……約束だからね?途中でいなくなったら、許さないよ……なんてね。……でも、ちょっとだけ本気だから」

 

そうして、帰り道を歩く。今は、ただ何も考えずに彼女との会話を楽しんだ。

 

 

 

 

アイを送った後に俺は、自分の部屋に帰る。実の所、俺は引っ越しをした。と言っても最低限の1人暮らしのアパートに。事務所から20分くらい離れた場所だ。

 

「着替えるか……」

 

クローゼットとからスーツを取り出す。少し前に買ったそれなりにいいやつだ。それと、革靴とウィッグも取り出し着替えてゆく。これから行く場所は、とても中学生が行く場所ではない。それと、一様、顔が売れて来たので変装の意味も兼ねている。何度か使ってウィッグの付け方も慣れて来た。

 

「これなら問題ないな」

 

最後にダテ眼鏡をかけて完成。鏡に映っていたのは、黒髪の社会人風の男。有名になって来ているので変装の意味もある。変装をした後に外に出る。時刻は21時を回っていた。これから向かう場所は、興信所だ。姫川愛梨の不貞行為を入手する為だ。

 

何故、その証拠が必要なのか、それは神木輝が闇堕ちした原因にある。心に限界が来た彼は、夫の上原清十郎の所へ向かい、これまでの姫川愛梨とのことを暴露。これがきっかけとなり、姫川夫妻は心中。神木は、被害者である。それは、間違いない。しかし、自分の行動がトリガーとなり2人の命が潰えてしまったことが彼の精神を追い詰めた。そして、最後は、アイの「君を愛せない」。これが決定打となり人格が歪んで……「価値ある命を奪う」と言う思想になった。

 

アイの言葉は、決定打になっただけで、他の要因を取り除けばいいと考えた。結局の所、上原清十郎と姫川愛梨の2人を死なせなければいい。かと言って神木輝と姫川愛梨の事を上原清十郎に伝えず問題解決は無理だ。だから、社会的な制裁を姫川愛梨に与える。そうすれば、2人は死ぬ事は低くなる。だから、神木の心が壊れる前に証拠を手に入れて、俺から話す。そして、その後に社会的制裁を与える。

 

そうすれば、結果的には2人は生存。たとえ死んだしても、俺が動く事になるので、神木の行動じゃあないので心が壊れる事はないだろう。神木の行動がトリガーにならず2人が死ぬ事はないこれが1番いいルートだ。

 

他にも要因があるがこれが1番の要因になったと感じている。でも、さっき撮った写真があるがそれだけじゃあ弱い。やるなら徹底的にだ。

 

「着いたな」

 

予約していた時間通りに到着。中に入る。現代なら中学生が依頼なんてできない。しかも赤の他人の家庭の調査を依頼なんて。でも、この時代は、身分の確認も甘い。しかもこの場所は、金さえ払ってくれれば「何でも調査する」と言うスタンスだ。現代なら一発でアウトな場所だ。だが、この時代ならグレーゾーン。違法と判断されてもおかしくないが、実態としては見逃されがちな領域だ。

 

「一カ月間、この少年と2人っきりになった時に尾行、及びホテルに行った証拠の撮影をお願いします」

 

事前に隠し撮りしていた2人の顔写真を提出。調査員に依頼の内容を伝える。調査員は、渋い顔をしながら答える。

 

「本来なら断られる依頼だが………」

 

そう言って来た瞬間に机に万札を叩きつける。その額は500万。金を見た瞬間に目の色を変えた。顔には笑みが浮かびそっとその500万を自身の方に寄せた。金さえ払えば何でも調査すると言う事は、相当な拝金主義者だ。なら、この手の相手は金を積めばいい。

 

それに、一カ月まるまると言うのは金がかかる。向こうからしたら太客である。本来ならある程度、絞った方がいいのだろうが、行動を予測して絞り込むのに時間がかかる。それは、面倒だ。それに今回は短期決戦。なら、これが最適解だ。

 

「喜んでお受けします」

 

そう言い依頼を承諾してくれた。金をそのまま持ち去る可能性は、ない。数年前からいろんな興信所を調べていたが、ここが1番、確実な仕事をしてくれる。拝金主義だが、自分の仕事に対してプライドを持っている。この相手なら信用に値する。

 

この時の為に、金を貯めていた。神木君には、悪いが少しの間、辛抱してもらう事になる。これも全ては、アイの「生存」と「幸せ」の為だ。きっと……その内、罰が下るだろう。人のプライベートに踏み込み、救う為とは言え彼にしばらくの間、苦しい思いをさせるのだから。

 

500万とは別に追加で100万。合計600万を一括で支払った。俺が依頼した事を伏せる事を確約。表に出す為の材料にする。だから、俺ではなく上原清十郎、自身が依頼したという事にする。

 

正直な話……俺と言う痕跡を完全に消すのは無理だ。変装と演技力で誤魔化しているとは言え、痕跡はうっすらと残っている。興信所が口を割ればたどり着く可能性は十分にあり得る。でも……そんなのはどうでもいい。こっちは元々、覚悟の上でやっている。

 

一気に、600万と言う大金を使ったが何も思わなかった。前世なら躊躇っていたな……。そんなどうでもいい事を思っていた。

 

俺がやっていることは、とても褒められた事じゃあない。でも……ここまで来たら進み続ける。例え、その結末が自分に大きな罰が下っても。俺は、後悔しない。だって、それだけを今世の目標にして生きて来たのだから。

 

依頼が完了し事務所から出る。夜風がとても冷たく感じた。依頼は終えた。後は時間の問題。彼女が尻尾を出すのを俺は、待てばいい。俺が、動けたらよかったが毎日見れる訳ではない。すれ違う事も十分にある。だったらそこを金で解決する。

 

「はぁ……心臓に悪い」

 

出た後にしばらく歩き離れた場所でようやく安堵した。演じるのは、慣れているが今回は、台本やカメラがないリアルの場面だった。汗がすごい……。でも、まだ始まったばかりだ。これから俺が相手をするのは、リアルの人間達だ。確実な正解はわからない。そもそも、そんなのは存在しないかもしれないでも、やり切って見せる。

 

「ここからだ………俺は、君を必ず」

 

救ってみせる。全ては君の「幸せ」の為に。

 

 

 

 






解説

時代背景としては、2007年辺りの想定で話を作っています。当時は探偵業に関する法整備がちょうど過渡期であり、現在と比べて規制や運用が緩い部分もありました。そのため、「金さえ積めば調査を請け負う」ような興信所も、グレーな形で存在していたと考えられます。ただし、依頼内容や調査方法によっては当時でも違法と判断される可能性があり、「調べさせただけ」であっても必ずしも安全とは限りません。主人公がやっている事は、かなり黒よりでリスクヘッチをしているとは言え危ない橋を渡っていおります。あくまで作者の調査に基づく描写であり、実際とは異なる可能性がありますご注意ください。


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