一番星は消えない   作:ディバル

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こんばんは、作者のディバルです。3章「愛と歪み」は50話まで続きます。現在は、4章を書き始めてます。これからも順次更新していくのでお楽しみに。





040 信頼という名の無防備

 

 

 

 

「今日はありがとうございました」

 

昼ご飯を食べた後に演技の練習をしたり話したりしていると、あっという間に時間が過ぎ去っていた。時刻は18時。輝が帰る時間帯になっていた。

 

「本当に送っていかなくていいか?」

 

彼は自転車で来ていた。まだ明るいとはいえ、少し心配だ。近くまで送っていくと言ったが遠慮された。しつこいかもしれないが念のために聞いておく。

 

「……はい、大丈夫です」

 

「ここまでしてもらってるのに、これ以上は……さすがに甘えすぎなので」

 

元々、アイが原因でここに来てるんだよなぁ………。 

 

「それに、まだ明るいですし……ちゃんと帰れます」

 

「……今日は、本当にありがとうございました」

 

自転車で帰っていく彼を見送った。楽しかったな……人を招いて一緒に食事をして共に話したことが。あいつら元気かな?前世の友達のことを考えていた。あの頃に戻ったような、そんな感じがしたから。

 

「さて……アイ。送っていくよ」 

 

「え?……なに言ってんの。私、今日ここ泊まるけど?」

 

「最初からそのつもりだったし」 

 

「…………え?」

 

(何それ、聞いてないんだけど?泊まる……ここに?は……?)

 

脳の処理が追いついていなかった。事前に知らされていたわけではなく、今まさに初めて言われた。彼女はリュックを持ってきていた。最初、彼は「なぜリュック?」と思っていたが、今思えば泊まりの伏線だったのだろう。 

 

「……アイさんや、もう少し危機感を持ちましょう。普通、男の家に泊まるのは危ないぞ」

 

「え、彼方だよ?今さら危ないとかないでしょ」

 

……俺への信頼デカくない?それにしても……この子唐突すぎない?俺の家で演技の練習をするから始まり、互いの呼び方の見直し。そして家に泊まる。今日、アイに振り回されすぎなのでは?……今、寝室見られるのまずいんだよな。さすがにあれは見せられないし。ベッドも一つしかないんだぞ?……うん。アイには悪いが今回は断ろう。

 

「……ねぇ、彼方。お願い、いいでしょ?」

 

「……わかった。その代わり寝室には入らないで。少し散らかっているから」

 

はい……ダメでした。今回も断れませんでした。なぜ断れない。寝室のあれは後で片付けよう。そうすれば大丈夫だろう。ベッドに関しては、俺はソファーに寝よう。一緒に寝るわけにもいかないし。アイをソファーに寝かせるのは論外だ。 

 

「やった、ありがと彼方」 

 

「ちゃんと約束守るから、安心して」

 

……アイさん……なんでそんな企むような顔をしてるんですか?フリじゃないからね?多分……大丈夫と思いたい。

 

 

 

 

「とりあえず晩飯の準備するから。お昼食べてからそんなに動いてないし、軽くでいい?」

 

「うん、軽めでいいよ」 

 

「彼方のならなんでも食べたいし」

 

とりあえず、夜ご飯の準備をしよう。何もないといいけど。本当に心臓に悪いな。

 

……なんかさ、彼方ってずるくない?一人暮らしで、部屋もちゃんとしててさ。料理もできるとか、ちょっと反則でしょ。施設の時から思ってたけど……ほんと、大抵のことできちゃうよね。……私の好きな人、なんでもできすぎなんだけど?

 

ん、なに作ってるのかなって思って見たら。あ、魚だ。へぇ……魚料理なんだ。しかも味噌汁にサラダって……昼と違って、めっちゃヘルシーじゃん。 

 

「もう少し待っていてね」

 

振り返った彼。エプロンをつけており、真ん中には可愛らしいクマのイラストが。

 

「……ちょっと待って、なにそれ」

 

「そのエプロン、可愛すぎない?」

 

「これ?安かったから買った。こいつにはお世話になっているよ」

 

軽く動いて見せてくる。買った理由が安かったからと。そのくせに似合っている。その後、彼は「座って待っていて」と軽く頭を撫でて料理に戻った。彼女は座って、彼が作るご飯を待つ。

 

(……ほんとさ、彼方って、ああいうのサラッとやるよね。)

 

撫でられた部分に触れながら、さっきの彼の手の感触を思い出していた。

 

(……彼方の手やさしかったな。あったかいし……なんか、落ち着く。)

 

振り返っていると彼が木製のトレーを持って貴女の前に。そして、そのトレーが貴女の前に置かれる。鮭、ミニサラダ、味噌汁。そして白米。

 

……白米かぁ。味は嫌いじゃないんだけどさ……あのガリってなる感じ、ちょっと苦手なんだよね。……まぁ、出されたら普通に食べるけど。

 

普通の人ならそんな心配をしない。しかし、アイがこう思っているのは彼女の家庭環境にあった。母親が投げたグラスの破片が白米の中に入った。その時の記憶がよぎり、白米に対して苦手意識を持っていた。 

 

「大丈夫……何も入ってない。普通のご飯だよ」

 

自分のトレーを持ってきて貴女の正面に座る彼。貴女の考えていたことを言い当ててくる。彼女は、少しだけ驚いた顔をしてから、ふっと笑ってごまかした。

 

「……ほんと、なんで分かるの?」

 

箸を手に取りながら、少しだけ視線を逸らす。

 

「別にさ、怖いとかじゃないんだよ?ただちょっと……昔のこと、思い出すだけ」

 

軽く肩をすくめてから、また彼の方を見る。少しだけ意地悪っぽく、でもどこか甘えるような笑みで。

 

「でもさ、彼方が言うなら信じる。だって……」

 

一口だけ白米を口に運んで、もぐもぐと噛む。問題ないことを確認していたら、安心したように小さく息を吐く。

 

「……うん、大丈夫。ちゃんと美味しい」

 

……前はさ、ちょっと覚悟して食べてたのに。彼方のご飯なら……そういうの、いらないかも。だって、私のために作ってくれたんでしょ。……それだけで、なんか嬉しいんだよね。

 

「よかった……アイは白米が苦手だってわかってはいたけど。日本の主食は米だから。」

 

「苦手意識を少しでも克服できたらいいなって思って」 

 

そんなことを言いながら、彼も自身が作った物を食べていた。

 

「……ふーん、そこまで考えてくれてたんだ」

 

「……ほんと、そういうとこずるい」

 

「……ちゃんと食べるよ。彼方が作った物なら」

 

2人は、そのまま食べ進めていく。最初は少し警戒していたアイだったが、そのままモグモグと食べておかわりまでしていた。

 

白米って、こんな美味しかったっけ?今までちょっと苦手だったのに……彼方のなら普通に食べられる。これなら、いくらでもいけそう。……なんかさ、私より女子力高くない?……ちょっと悔しい。

 

「ねぇ彼方、ほんとなんでもできるよね。」

 

彼女の言葉で彼の動きが止まった。そして、悲しそうな目をしながら答えを返す。

 

「何でもはできないよ……できることだけ。」

 

「俺にもできないことはあるよ……何でもできていたら……さりなちゃんを救えていたかもしれないけどね。」

 

そう言いながら自虐気味に笑っていた。決して彼は万能ではない。彼の手にも限りがある。たとえそれが未来を知っている者だとしても。 

 

「……なにそれ。」

 

「急に、そんな顔しないでよ。」

 

……さりなちゃんがいなくなってから、彼方ちょっと変わったよね。たまにさ、すごい暗い顔するし。私もまだ全然立ち直れてないけど。彼方はたぶん……ずっと引きずるんだろうな。

 

「……できないことがあるの、当たり前じゃん。」

 

「……でもさ、私はそれでもいいよ」

 

「彼方が彼方でいてくれれば、それでいい」 

 

そう言うと、暗かった顔が少しだけ和らいだ。

 

「ありがとう……」

 

彼方、静かに言うんだよね、そういうの。好きになった人に、あんな顔してほしくないんだけどな。ま、いいや。あとでちゃんと戻すし。ご飯を食べ終わって、2人でお皿洗い。最初は彼方が「いい」って言ってたけど、そこは押し切った。

 

「彼方、私今日どこで寝るの?」

 

「そこの寝室だよ」

 

あれ、ここ見てなかったな。……ま、いっか。私はドアに手をかける。……なんか忘れてる気もするけど。

 

「ちょっと……待ってアイ。その部屋は!!」

 

声をかけたのが遅かった。ドアが開き、彼女が部屋に入る。

 

「え?」

 

部屋を見た彼女は驚きの声を上げた。なぜなら部屋の一角に、アイのグッズが大量に飾ってあったのだから。

 

 

 






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