一番星は消えない   作:ディバル

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048 行動の結果

 

 

 

 

「兄さん……アイのさっきの演技だけど」

 

「そうだな……もう少し感情を表に出してもいいな」

 

また、俺の家でアイの演技の指導をすることになり、集まっていた。最近、家に誰かがいることが多い気がする。それ自体は悪くはない。むしろ、落ち着いた感じがして好きだ。

 

「ちょ、ちょっと待って……それって……輝は、彼方のこと“お兄ちゃん”って思ってるってこと……?」

 

さすがのアイもこれに関しては流せなかったみたいだ。こいつマジかぁ……みたいな視線を煇に向けていた。わかるぞアイ。俺も最初はそんな反応だった。

 

「思っているのではなく、元から兄弟でしたよ?」

 

輝よ……真顔で返すな。きっと今、アイの頭に?マークが浮かんでいるぞ。

 

「え……?それ、どういう意味……?“最初から兄弟だった”って……本気で言ってるの?」

 

ここまで困惑するのは初だな。無理もないか……俺もわかってないから。

 

「アイ……諦めろ。こいつにその手の話は通じないぞ」

 

「ねぇ彼方……なんでそんなにあっさり受け入れてるの?普通、もっと困るところじゃない?」

 

困ったさ……でも、何度もこいつが兄さんって呼ぶからもう慣れたよ。というか困る状況なら前世にも山ほどあった。初対面で仮面ライダーのベルトをして変身しながら登場した奴もいたからな。

 

「………慣れたからな」

 

「……なにそれ。慣れたって……そんな簡単に言うことじゃないでしょ」

 

そう言われてもなぁ………さりなちゃんにもお兄さんって呼ばれてたし、施設の子達にもお兄ちゃんって呼ばれていたから……なんかもう慣れたよね……うん。

 

それと、輝さんや……なんか近いんですけど?前は一歩離れていたのに、今は俺の隣にいる。右にはアイ。左には輝。何この状況? 

 

「ねぇ輝……ちょっと距離近くない?」

 

「アイこそ……近くないですか?」

 

2人とも?なんで俺の腕を掴んでるんですか?アイはともかく、輝に関しては何故腕を掴んでいる?

 

「だって私、彼方と5年の付き合いの友達だもん」

 

彼女は、5年と強調しながらそう彼を見て笑った。

 

「僕は、兄さんに救われました。あの時の兄さんはかっこよかったなぁ」

 

彼女に対抗して、「かっこよかったなぁ」と強調して言葉を返す。両者ともに火花が散った。アイは異性として彼が好き。輝は友達や兄弟としての好き。互いの好きが爆発して対立構造が出来てしまっていた。

 

「……あの時?……救われた?」

 

「そう……あれは僕が……」

 

「よし……輝、こっちにこい」

 

何さりげなく話そうとしているのかな?俺は輝の口を押さえて少しアイから離れる。いろいろとバレたら面倒なんだよ……というか絶対にアイが怒る。危ないことをしまくったからな。

 

「……その話はするな」

 

「兄さんがどれだけかっこよかったのか話したいのに?」

 

「お前……そんなキャラだったか?」

 

なんでブラコンキャラ化してるんだよ。原作では異常者だったのに……何この変わりよう?おかしいだろ………なんでこうなった?………いや……これ、俺のせいか。でも、もう少しどうにかならなかったのか?別方面でヤバい奴になったぞこれ。

 

「とにかく……絶対に話すな」

 

「……兄さんがそこまで言うなら」

 

渋々納得する煇。よし、口封じはした。アイに伝わったら面倒なことになるのは確実だ。

 

「……ねえ、今の絶対おかしいよね?なんで隠すの?」

 

ほら……この状況になるから。でも、まだ挽回できる。

 

「隠してない。こいつがまた存在しない記憶の話をしようとしたから止めただけだ」

 

今の煇は、アイの目から見てもヤバい奴に映っている。なら、それを利用する。これなら多分大丈夫だろう。

 

「ふーん……ねぇ、輝。彼方の“演技”、見てみたくない?」

 

おっと……?

 

「見たいです!!」

 

……流れ変わったぞこれ。

 

「実はね……今日、持ってきちゃったんだよね」

 

そう言いながらバッグからある物を取り出す。それはDVD。一瞬、それがなんなのかわからなかったが、そのタイトルを見た時、それがなんなのか理解した。

 

「………それは?」

 

「これね……彼方が出てたドラマなんだよ」

 

やっぱり……まずい……テレビとDVDプレイヤーもある。他の役者さんの演技を見るために買っておいたのが、こんな風にピンチを呼ぶだなんて。

 

「輝……演技なら生で見せるから………」

 

「……輝はまだ知らないんだ、彼方の“本当の演技”。ふふ……ちょっと残念だなぁ」

 

アイがドヤ顔をしながら煇にマウントを取っている。あれ……これもしかして。

 

「僕の知らない兄さん……見せてください。話しますから」

 

ちょっと……輝さん?何言っちゃってるの?あれ……これもう詰んだのでは?

 

 

 

 

輝が話した………。うん……アイが此方を見ているな。

 

「へぇ……そんなことしてたんだ。」

 

ニコニコと笑ってはいるが、その目には黒星が宿っていた。目が笑っていない。俺は自然と正座をしていた。これ……ダメなやつだ。前に喧嘩した時よりもヤバい。

 

「本当にかっこよかったんだよ」

 

こちらは満面の笑みで俺のことを語っていた。そして、DVDを手に取りワクワクとしていた。

 

「彼方……後でお話しよっか」

 

「………はい。」

 

すいません。今から入れる保険ってありますか?え……ない?そっか………。

 

 

 

 

 

あれから、アイの演技指導から俺の演技の鑑賞会になった。コンビニに行き、飲み物とお菓子を買ってきてからの鑑賞会。2人は楽しそうにいろいろ買っていたが、俺にとっては恥ずかしい時間だ………なぜなら……。

 

「兄さんの演技すごい」

 

「そうでしょ?この気持ち悪さがいいんだよ」

 

思った通りこうなった。というか見覚えがあり過ぎる光景だ。さりなちゃんの時もこんな感じの会話をしていたな。でも、アイさん、なんで貴女がドヤっているんですか?

 

「確かに……これは、真似をしようと思っても無理ですね。役自体は自我を持たせたいっていうか、取り憑かれているっていうか」

 

マジマジと見ないでくれるかな?恥ずかしいんだけど。

 

「ねぇ、彼方の演技……すごいでしょ?」

 

胸を張りそう言う彼女。自分のことのように彼を褒めていた。その言葉で彼の頬が少し赤くなってしまう。

 

「すごいです……殺人鬼のやつが一番好きですね、僕は」

 

「あ……それ、わかる。いつもの彼方と全然違ってて……いいよね」

 

2人は、俺そっちのけで話し始めた。君達、さっきまでバチバチに火花を飛ばしていたのに意気投合している。あ……握手までしている。類は友を呼ぶという言葉があるが、こういうことなのか?

 

「どんどん見よ?演技の参考にしたくて、彼方が出てたドラマのDVD、いっぱい買っちゃったんだ」

 

何本ものDVDが出てくる。多くない?昔出ていた物や、俺が主演になったやつもある。アイさん、貴女、前に俺のグッズのケース見てた時にヤバって言ってたけど、人のこと言えますかねこれ?

 

「あ……彼方、赤くなってる。………ふふ、かわいい」

 

近づいてくるアイ。耳元で可愛いと言われて、さらに顔が赤くなっていた。 

 

「…………初めて見ました、兄さんのその顔」

 

初めて見る彼の表情に驚きながら、輝も近づいてくる。2人がじっと彼方の顔を見つめる。それでさらに顔が赤くなった。

 

「………勘弁してくれ」

 

両手で覆って顔を隠している。しかし、2人はそれを許してくれなかった。アイは右手を、煇は左手を掴んで無理やり顔から手を引き離した。

 

「だめだよ……隠しちゃったら。もっと見せて、彼方の顔」

 

「そうですよ……アイの演技の研究にもなりますし、見せてください」

 

こうして、俺は照れ顔を晒すことになった。なんでそんなに息ぴったりで動いてくるの?ちょっとアイさん、どさくさに紛れて抱きつかないでくれませんか?輝もなんで腕に手を回しているの?

 

結局、途中でドラマを見るのをやめて、俺が弄られ続けた。

 

 

 

 

「酷い目にあった」

 

あれから数時間が経過して、輝も帰り、アイと2人きりになった。もう疲れた……ご飯を作る気力がなくなるほどに。 

 

「ねぇ彼方……すごく可愛かったよ?」

 

「………そうか」 

 

もしかして、3人で集まった時、これが恒例にならないよな?なってほしくないぞ……さすがに。

 

「さて……彼方。お話、しよっか?」

 

アイの視線がこちらに向く。背中に氷を入れられたかのような感覚が走った。笑顔なのに……それ以外の感情も乗っていた。サラッと流して忘れていたと思っていたのに。

 

「…………はい」

 

もう誤魔化すのは無理だ。さっきとの落差が酷い。まぁ……仕方ないか。この時の俺は、楽観的に考えていた。自分にはもう逃げ場などない事を。

 

 

 

 

 







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