「ねぇ彼方……輝からはだいたい聞いたけど……ちゃんと自分の口で話してくれる?」
隠し通せると思ったが、アイの策略で輝が陥落。大体のことは、輝がゲロってしまった。これは無理だな……白状するしかない。
「姫川愛梨が輝と関係を持っていた。俺は、輝を救う為にいろいろと裏で暗躍し……つい最近、それが終わった。ざっくりと話すならこんな感じだ」
いろいろと説明すると複雑で、まだ15歳の彼女に全貌を話すのは良くないと判断し、彼はざっくりと話した。
「……ざっくりしすぎでしょ。彼方、それで済ませるつもり?」
どうやら彼女は納得していないみたいだ。ざっくりと話したのもそうだが、彼女は見抜いていた。まだ何かを隠しているのを。嘘はついていない。しかし、5年という月日を一緒に過ごしている。彼女も彼のことを何となくわかっている。
「はぁ………わかった。俺がやったことを話す」
それから、彼は自分がしたことを話した。変装し、興信所に依頼をしたこと。変装して裏で暗躍したこと。そして、輝と2人で姫川愛梨に対して立ち向かったこと。その全てを……。興信所で使った金額や大輝君のことは伏せた。その代わり、神木輝と姫川愛梨の関係性もしっかりと伝えた。
「つまり……俺は、いろいろ危ない橋を渡って輝を救った。結果論だけで見れば上手くいった。………アイが知りたかったことは、話したぞ」
「……ねぇ彼方。それ、本気で“それでいい”って思ってるの?」
話を聞き終わったアイはしばらく黙っていたが、俺の方を見てそう聞いてくる。
「思ってないよ……俺は、自分がしたことを正しいとは思ってない。結果として俺は、多くの人を巻き込んだ。でも、これでよかった。俺は、後悔はしていない」
これが正しいとは言えない。むしろ、一歩間違えていたら全てが崩壊していた可能性すらある。
「……そっか。でもね彼方……それでも私は、心配するよ」
アイは、責めや非難の言葉を俺に投げかけてこなかった。ただ、俺のことを心配してくれていた。
「俺を嫌いにならないのか?」
「ならないよ。そんなことで嫌いになったりしない」
ハッキリと迷いなく彼女は答えた。
「でも、俺は法を破り、様々な人の人生を壊したんだぞ?」
「それでもだよ。彼方が何をしたかじゃなくて、どうしてそれをしたか、私はちゃんと見てるから」
あぁ………この子は眩しいな。こんなにも真っ直ぐで、俺とは正反対だ。そして俺は今、アイから嫌いにならないと言われて安心している。
前は、救うためなら嫌われてもいいと思ってたのに。そうか……俺は、アイの隣にずっといたいんだ。それにようやく気づいた。
「そうか……優しいなアイは」
「……それ、優しいって言葉で片付けないで」
「私ね、ちゃんと聞いた上で、それでもここにいるって決めてるの」
真っ直ぐな目をしていた。アイが俺の手を握りながら言葉を続ける。
「彼方が何をしたかも、どれだけ危ないことしたかも……ちゃんと分かった」
「でもね……それでも“誰かを救おうとした彼方”を、私は否定したくない」
「だから……優しいのは私じゃなくて、そういう選択をした彼方のほうだよ」
優しいか………。そんな純粋な気持ちじゃないのにな。打算と君の幸せの為だけに動いた。それが結果として煇を救う形になった。手段はとても褒められることではない。でも、彼女の言葉で、頑張った甲斐があったなと思ってしまった。本当なら話す気はなかったのにな。
「ありがとう………アイも優しいな」
「……だから、それ言わないでってば」
「私はただ……彼方の隣にいたいだけ」
隣に座り、頭を俺の肩に預けてくる。安心する………ただ隣にいるだけなのに。いや……それがどれだけ大きいことなのか、俺は知っている。
「アイ……待たせて悪かった。俺もアイが好きだよ」
俺は、自分のことが嫌いだ。この先も自分のことを好きになる日は来ないだろう。でも、そんな俺を肯定してくれる子が隣にいる。そして俺も、そんな彼女と共に一緒に歩きたい。
「やっと言ってくれた。うん。私も、大好き」
2人は、互いに手を握っていた。アイの思いはようやく実った。しかし……まだ終わってはいない。彼は気づかなかった……アイの目の星が黒くなっていることを。
「あれ?……いつの間にか寝てたな」
時計を見る。今のはちょうど12時を回ったところ。確かあの後、アイがまた泊まりたいと言って泊まらせて、ご飯を作る気力がなかったから出前で済ませて……そして、お風呂に入って俺が先に寝たんだっけ?
というか……なんか体が重い。体調でも崩したか?眠い目を擦りながら起き上がろうとすると、上から何かに押さえつけられた。
「あ……起きちゃった?」
目覚めてから数十秒後にようやく俺の意識がハッキリとしてくる。声のした方向に目を向けると、そこには……下着姿のアイが俺の上に跨っていた。
「………………」
人は、驚きすぎると声も出なくなると聞く。目の前の現実を俺は疑った。試しに頬を引っ張る。……痛い。かなり強く引っ張った。この痛みが夢ではなく現実だというのを実感させてくれた。
「………何してるの?」
「……前から思ってたんだけどさ。ほんと、人たらしだよね彼方ってさ」
質問に対する返答はせずに、彼女は言葉を紡ぐ。
「B小町のみんなとか、さりなちゃんとか……それに、輝まで」
……話が見えてこない。というか目のやり場に困る。目を逸らそうとすると、両手で頬に触れられ頭を固定されてしまう。
「それにさ……今回も、私に何も言わないでいろいろやっちゃうし」
「守ってくれてるのはわかるよ……でもね……」
「このままだと……彼方、どこか遠くに行っちゃいそうで……ちょっと怖い」
その時、彼女の瞳の星が今までにないくらい真っ黒に染まった。それに、少しだけゾッとしてしまう。
「だからね……考えたの」
「彼方が……私だけしか見られないようにしちゃえばいいって」
アイがどこからか小さな箱を取り出す。それは見たことあるもの……ゴムだ。いつの間にそんなの用意したんだこの子!?
「さっきコンビニ行ったでしょ?あの時に、ちょっと買ってきちゃったんだよね」
あの時か!!待って、本当にこれはダメだ。今回ばかりは絶対に……!!
「んっっ………」
「!!……」
アイは、彼に思考させる時間を与えない。彼の唇にそっとキスをする。最初は唇だけだったが、徐々に舌を……。それで彼の思考が止まってしまう。数十秒間にわたる長いキスが続く。
彼方が……私のこと好きって言ってくれた時、すっごく嬉しかった。でも……同じくらい、不安にもなっちゃって……。彼方って優しいでしょ……優しすぎるから……無茶しちゃいそうで怖いの。輝の話も聞いて……余計に思った。私に何も言わないで、危ないことして……そのままいなくなっちゃうんじゃないかって。やだよ……彼方には、ずっと生きててほしいもん。おばちゃんになるまで……一緒にいたい。
その時に……思っちゃったの。彼方が、私だけしか見られないようになればいいなって。そしたら……無茶なことも、少しはしなくなるかもしれないし。でね……コンビニでなんとなく手に取ったアレ、ちょっと使えそうだなって思っちゃって。ほんとは、もっと後で使うつもりだったんだけど……まあ、いいよね?だって彼方、このままだとさ……いろんな子に優しくしちゃいそうだし。それなら……今でも、別にいいかなって思ったの。
(やっぱり可愛い。)
キスしながら……そんなこと、考えちゃってた。前と違って……今度はちゃんと、唇に。彼方の顔、すっごく赤くなってて……それ見たら、余計にドキドキしちゃって。なんか……嬉しくて、ちょっと可愛くて……ずるいなって思った。
「…………いきなりだな」
息の許す限りキスが続いた。彼女が唇を離し、互いの口に糸が引いていた。そのままどさくさに紛れて彼の服に触れてそっと脱がそうとする。
「アイ……その先はダメだ」
手を掴み、それを阻止する。しかし、アイは黒星を宿した目でニコッと笑う。彼女も引く気はなさそうだ。
「……もう止まらないよ。だって、離したくないもん」
「今日だけじゃなくて……ずっと、私を見てて」
それの言葉には嘘や偽りはなかった。
「ねえ……逃げないで。ちゃんと……全部、受け止めてよ」
真正面からの思いを受けて、彼の手の力が緩まる。その隙をアイは見逃さない。
「それでも、この先は.......」
なんとか彼は、再び彼女の腕を掴む。
あちゃあ……やっぱり、ちょっと抵抗するよね。でもね……そんなの、わかってた。だから、もう一回……キス。さっきより、長くて……ちゃんと、逃げられないように。最初はね、少しだけ抗ってたけど……何度もキスを続けている内に途中で止まっちゃった。
……ふふ、思ってたより……彼方はチョロかった。
何度もキスをされて彼は蕩けてしまっていた。理性もだいぶ削られてしまっておりもう彼女を隔てる壁は無くなった。
…………言うなら今だよね?
「彼方、愛してる」
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各章解説と他作品の元ネタ解説いるかどうか。
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いる
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いらない