一番星は消えない   作:ディバル

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057 2つの宝物

 

 

 

 

アイの出産から約2ヶ月が経過し、6月を迎えた。あの後、病院の人から育児の仕方を教わり、いろいろと手続きをして、しばらくは育児に励んでいた。家も新しく引っ越して、オートロックマンションに越した。

 

それと、雨宮先生は結局電話に出なかった。2、3週間程病院にいたが、彼が戻ってくる事はなかった。

 

しかし、その魂は今……俺の目の前にいる双子の兄のアクアに宿っている可能性が高い。そして、もう1人。妹であるルビーは恐らくさりなちゃんの魂が。本来の世界線では俺の父親というポジションが煇だった。でも、今はその席に俺が座っている。

 

父親が変わっただけで他に大きな変化はない。だが、確証が持てない。かと言って、わざわざ調べる気もない。

 

「………今日も可愛いな」

 

アクアを抱っこしながらそんな事を呟いていた。この子がたとえ雨宮先生でも、俺たちの子供である事には変わりない。こちらを見上げてくるアクアに対して笑みを浮かべる。

 

命名 星野 愛久愛

 

原作では愛久愛海だが、この名前で呼ぶシーンはそこまで無かった。それに、愛久愛海は今後の人生影響がすごいので愛久愛と言う名前にした。アイが駄々こねたけど何とかなった。

 

「うわぁぁん、うわぁぁん!」

 

泣き声が響き渡った。それは、アクアのものではなく、もう1人の双子の妹の方だ。彼がルビーも抱っこしようと動いた。しかし、それより早く彼女が抱っこした。

 

「はぁい……なんでちゅかー」

 

命名 星野 瑠美衣

 

こちらは変わらずだ。アイが抱っこすると少しだけ泣き止む。こっちは多分、さりなちゃんだ。こちらに関しては少し複雑だ。別に嫌とかそんなわけではない。あの時の事を謝りたい気持ちがまだある。だが、それは天童寺さりなに対してであり、星野瑠美衣には関係ない。

 

「んぎゃああああ!!」

 

「どうしたのアクア〜?」

 

ルビーに対してアクアの名前を呼ぶアイ。母親としての自覚はあるが、元々アイは人の顔と名前を覚えるのが苦手だ。

 

「そっちはルビーだろ……それでも母親か」

 

そんな様子を見て呆れた声を上げながら、壱護さんとミヤコさんが入ってくる。

 

「しょうがないじゃん……似てるんだもん。ちょっと間違えただけだってば〜」 

 

自覚を持っているとは言えど、あまりに軽い。もう少しだけその自覚を固めないとな。そんな事を思っていると………。

 

「とにかくアイドル『アイ』は本日復帰となる」

 

「今後の活動について話し合うぞ」

 

ホワイトボードにデカデカと「アイ復帰」と「子供のあつかい」と書いてある。

 

「復帰第一弾は今夜の歌番組だ。いけるよな?」

 

「もちろん」

 

当たり前と言わんばかりにアイが頷く。

 

「彼方の仕事もこれから増やしていく。次はドラマの主演だ」

 

「はい……後でいろいろと解釈を広げないとな」

 

久々の主演だ。張り切らないとな……それに稼がないと。この子達に不自由をさせない為に。

 

「お前ら2人が仕事の間……子供の面倒は妻が見る」

 

「まぁ……そうなるわよね」

 

ミヤコさんが遠い目をしながら答えていた。

 

「子供達、仕事場連れてっちゃ駄目?」

 

「駄目に決まってんだろ!!」

 

予想通りの反応が返ってくる。

 

「肝に銘じろ。アイドルのお前が16歳二児の母親……世に知られたらアイドル生命終了だ」

 

「監督責任問われて俺の事務所も終わり……全員まとめて地獄行きだ」

 

大袈裟じゃなくてマジなやつだ。アイドルが二児の母親なんて……ファンからしたら卒倒もんだろう。字面だけで頭が痛くなる。にしても、本当に壱護さんもこんな爆弾抱える気になったな。俺が言うのもなんだけど。

 

「役所の手続きも買い物も全部子連れはNGだ」

 

注意事項が出される。言わないとアイがいろいろやらかしそうだ。

 

「どうにもならない火急の用事がある際は、俺達の子供を預かっているという設定で出る事!」

 

壱護さんから注意事項が説明された。言っとかないとアイが連れ回していただろうな、これ。 

 

「えーめんどくさー。困っちゃうね、ルビー」

 

「そっちはアクアだ」

 

にしても、自分の子供まで顔と名前を覚えられてないのか……これは、帰ってきたら一度話し合わないといけないな、これ。笑っているアイを見ながらそんな事を考えていた。

 

「もうあまりリハまで時間がない。移動するぞ」

 

「はーい」

 

ルビーを抱っこした状態で立ち上がろうとした時だった。アイの服がズレ落ち、胸が見えそうになる。俺はアクアを抱っこしたままアイに近づき、服を元の位置に戻す。

 

「……あ、ごめんごめん。助かった、ありがと」

 

そう言いながら、ケラケラと笑っている。

 

「全く………気をつけてくれ……本当に」

 

「はーいはーい、わかってるってば〜。そんな真面目な顔しなくても大丈夫だよ」

 

本当にわかっているのかな、この子?

 

「じゃあ彼方、行ってくるね〜?」

 

抱っこしていたルビーを預かり、両手が2人で埋まった。

 

「あぁ……気をつけて」

 

「……んっっ」

 

「!?」

 

見送りの挨拶をした後にアイが突然、唇にキスをしてくる。

 

「……いってきますのやつ。忘れてたでしょ?」

 

「忘れたも何も初めてしただろ?」

 

悪戯気に笑うアイ。そして、アクア、ルビー……マジマジと見ないでくれるかなぁ?というかルビー……なんで頬を少し赤くしてるんだい?

 

そして、アイと壱護さんは仕事に向かった。

 

「本当はママがいいと思うけど、パパで我慢してくれ」

 

「……うにゃあ」

 

「……きゃっ、きゃあ」

 

元気よく返事をするアクアとルビー。元気でよろしい。

 

「ミヤコさんは、休んでいていいですよ。俺がいる時は俺が見ますよ」

 

「……ほんと、無理しないでよ?あんたもちゃんと休んでくださいよ。いざって時は頼ってください」

 

そう言いながらミヤコさんはパソコンを開きながら、近くで仕事をしていた。この人も大変だな。

 

「さて、育児に励みますか」 

 

腕の中にいる小さな2人を見ながら、笑みを見せながら俺は育児に励むのであった。

 

 

 

 

育児って大変だな。そう思いながらテレビを付ける。オムツを変えたり、ミルクを飲ませたり。それと、しっかりと見ていないといけない。前世の俺の親、よくこんな大変な事していたな。今になって親のありがたみを感じている。

 

『B小町のみなさんで〜す!』

 

前世の親に感謝していると、アイが出ている歌番組が始まった。アクアが座り、画面をジッと見ている。

 

『本日、活動再開となったアイさん!』

 

『大丈夫?ちゃんとご飯食べている?』

 

『ハイ、いっぱい食べてます!』

 

ここまでは順調だ。久しぶりの復帰が生放送の歌番組。見た感じ緊張とかしていないな。前から思っていたが、面の皮厚いなこの子。まぁ……芸能界を生きていく為にはこれくらいの図太さが必要なのかもしれない。

 

『そうそう!ご飯と言えば、こないだウチの子が……』 

 

『ウチノコ?』

 

「「ブーッ……」」

 

テレビを見ていたアクアと一緒に吹き出してしまった。あれだけ壱護さんが釘を刺したのに。

 

『じゃあなくて、ウチの子猫がね!休養中に飼い始めたんだけど………』

 

……なんでテレビを見ている俺達の方が緊張しているんだ?原作でこの流れは知っていた。でも、やっぱりドキドキする。本当に大丈夫か……今度の生活?

 

『では!B小町さんパフォーマンスの準備お願いします!』

 

なんとかトークタイムが終わった。  

 

「アクア……俺たちのママは、危なかしいな」

 

「……うー……あー……」

 

俺の言葉に頷くアクア。息子にもこんな反応されていますよ、アイさん。そんな事を話していると、どうやら準備が出来たみたいだ。流れるイントロ、そこから始まるB小町の歌とダンスが。

 

久しぶりなのにパフォーマンスは全く衰えていない。俺の推しは画面越しでも輝いている。壱護さんが爆弾を抱えた理由がこれだ。本当に君は、アイドルとしての才能があり過ぎる。

 

「……あーっ、あーっ!」

 

アクアもご満悦だ。俺たち2人が楽しんでいると……

 

「……ふにゃ……うぅ……」

 

ルビーがもぞもぞと起きて、きょろきょろと周りを見回す。

 

「……あー……!」 

 

音に引かれるように、のそのそと近づいてきた。テレビに映るアイの姿を見て、ルビーは目を輝かせながら。

 

「……きゃ……あぅ」

 

両手をパチパチと鳴らして喜んでいる。そして、少し怒った様にこちらを見てきた。

 

「もしかして、最初から見たかった?ごめんね……気持ちよく寝ているルビーを起こすのに躊躇いが出て」

 

ルビーを抱っこして膝の上に乗せて優しく頭を撫でる。そして、アクアも膝の上に乗せて、家族3人でテレビに映るママの姿をしっかりと焼き付けてゆく。

 

「……きゃあっ、きゃあっ!」

 

「……あぅ……あぅ……」

 

2人の喜ぶ声に満足しながら、その時間を楽しんだ。育児は大変だ。でも、この子達の喜ぶ顔を見たらそんな事がどうでもよくなる。子供の力は偉大だ。

 

 





オマケ アクアの名付け

「ねぇ彼方ぁ〜、“愛久愛海”の方がよくない? なんかキラキラしてて主人公感あるじゃん!」

「却下」

「えぇ〜!? なんでぇ!?」

「将来、名前書く度に苦労するでしょ?……あと圧が強い」

「いいじゃん別に〜! 絶対カッコいいって!」

「アイさん勢いで名前付けるのは良くないよ?」

「だってぇ〜! “愛久愛”だけだとちょっと物足りない〜!」

「物足りなさで子供の名前を決めたらダメ」

「むぅ〜……」

「大体、“愛久愛海”って字面重すぎる。」

「でも愛がいっぱい入ってるよ?」

「十分入ってる」

「む〜〜〜〜……けち」



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