一番星は消えない   作:ディバル

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007 会えない友人へ

 

 

 

あの後、2人で帰った。帰ってきたら普通に怒られた。アイは勝手に飛び出した事について。俺に関しては、一人で勝手に探しに行った事で。2人一緒に仲良く怒られました。そんな時でもアイは笑っていた。いつもの調子が戻っていた。よかったのだが……その翌日。

 

「ごほっ……ごほっ……頭いてぇ」

 

彼は、風邪を引いた。雨の中で走り長時間、その状態でいたのだから当然ちゃ当然だ。今は、ベッドで横になっている。因みにアイは今学校に行っている。

 

風邪を引いたのはいつぶりだろうか?今世では初めてだ。こんなにキツいものだったか?ダメだ……寝よう。目を閉じる。そうしていると俺の意識は、深く沈んでいった。

 

 

 

 

 

「おい……起きろ」

 

誰かが呼んでいる?誰だ……俺は目を開ける。

 

「やっと起きたか……ほら、続きやるぞ」

 

そこにいたのは、見知った顔だ。俺がいつも遊んでいる友達が3人そこにいた。そして、この場所はその友達の1人の家だ。あれ?なんで、一瞬わからなかったんだ?毎週遊んでいたのに。何か大切な事を忘れているような?………まぁ……いいか。

 

「俺、スマブラ弱いんだよなぁ。まともに使えるの一体だけだし」

 

起き上がりコントローラを握る。画面には様々なキャラが映っている。俺が選ぶのは、いつも使っているキャラだ。

 

「お前はそればっかだよなぁ」

 

「他のキャラも練習したら?」

 

2人がそう言いながら茶化してくる。あぁ……懐かしい。………懐かしい?また違和感。何でだ?先週も遊んでいただろう?

 

「うるさいなぁ……これで勝つんだよ」

 

キャラの選択が終わり、ゲームが始まった。やっぱり難しいな。何だよコマンドって。俺なんて適当にコントローラをポチポチしているだけだぞ?ガードは最近覚えたけど。

 

「やっぱり見えづらい。俺のキャラどこだよ?」

 

4人でやっているのでその分、視点が遠くなる。キャラが小さくて見えづらい。あ……俺のキャラ死んだ。それから、何回か対戦したが結局、勝てなかった。

 

「佐藤、お前上手すぎだろ……変顔しかできないと思っていたが」

 

「お前そんな事思ってたのか蒼空」

 

蒼空。俺の名前だ。こう呼ばれたのはいつぶりだろう?………だから、何故懐かしむ?いつも呼ばれているだろ?頭にノイズが入る。さっきから何だ?これ?

 

「ドベがなんか言ってる」

 

「はぁぁぁ……何だよ島田」

 

「事実だろ」 

 

「和倉まで……」

 

あぁ……やっとわかった。これは夢だ。そして俺の記憶だ。前世での思い出。確か、これは高校生の時だっけ?あの時が一番楽しかったなぁ……。

 

「もうスマブラはいいだろ………パーティーゲームしようぜ」

 

「蒼空が逃げたぞ」

 

「雑魚乙」

 

本当に懐かしい。こうやって弄られる感覚。この空気感。もう絶対に戻れないあの青春。友達は、多い方ではなかった。でも、俺は大勢と仲良くなるよりも、数人の友達とこうして遊んだりバカやったりするのが良かった。

 

社会人になってからは、互いに時間が合わなくなり遊ぶ機会は減ったけど、それでも時間を作って遊び、食事に行ったりもしていた。あぁ……こうして改めて見ると思ってしまう。戻りたいなぁ……と。未練は、親よりも先に逝った事だけだと思っていた。でも、それだけじゃなかったんだと実感してしまう。

 

「はいはい……雑魚ですよぉ」

 

清々しく俺は開き直った。だって事実だし。

 

「……確かにスマブラばかりだと飽きるしな。人生ゲームするか?」

 

和倉がそう言いながら持ってきたのは人生ゲーム。ボードゲームの方だ。最近だとSwitchで出ている。ここにきてのまさかのボードゲーム。

 

「偶にはいいな」

 

「やろやろ」

 

島田と佐藤はノリノリだ。こうして全会一致で人生ゲームが始まった。

 

「家が全焼……500万失う」

 

「……ドンマイ」

 

人生ゲーム開始して10分後に佐藤が借金を背負った。俺は、佐藤の肩に手を置きそう慰めの言葉をかける。

 

「よし……次は俺の番だ」

 

ルーレットを回して出た目は4。

 

「お……子供が産まれて全員から5万貰う。よし……お前ら金よこせ」

 

「……俺借金してるけど?」

 

「ここに来て運が回っている」

 

涙目の佐藤から5万を貰う。俺の今の財産は300万まで上昇している。そうして、ゲームは続いた。

 

「勝った……スマブラではボコボコだったがこっちで捲った!!」

 

俺の圧倒的勝利で終わった。子供は3人。持ち家もありそして累計資産1000万。ふ……本当の人生もこうだったらいいのに。少しだけ悲しい気分になった。

 

「結局俺、借金返せなかったぞ?」

 

「これ勝つの無理」

 

「クソ……スマブラはクソ雑魚なのに」

 

あぁ……楽しい。このまま、夢が覚めなければいいのに。でも、楽しい時間は過ぎ去る物。その時だった。空間がひび割れ、そして歪む。楽しい夢もどうやらここまでのようだ。空間が完全に破壊され、俺の意識がまた薄れてゆく。

 

 

 

 

 

「んっっ………夢か」

 

意識が覚醒する。体を起こしベッドに座る。近くにある時計に視線を向けた。時刻は17時。どうやらかなりの時間眠っていたみたいだ。……神崎蒼空。それは、前世の俺の名前だ。もう、この名前を呼ばれる事はないと思っていた。しかし、思わぬ形で呼ばれた。 

 

未練はそこまでないと思っていた。でも、それは違った。どうやら、俺は未練たらたらだったみたいだ。あいつらの幸せを近くで見届け、死ぬまでバカやって過ごしたかった。もう、その願いは永遠に叶わない。俺が死んだからだ。あいつら、元気にしてるかな?

 

「あれ?………俺泣いてるのか?」

 

目尻から熱い物が垂れる。それは、俺の涙だった。その時だった。扉が開く。そこにはランドセルを背負っているアイの姿。どうやら学校が終わって帰ってきたみたいだ。

 

「彼方?」

 

俺が未練たらたらで泣いていると声が響いた。そこに視線を向けるとアイがいた。一番見られたくない人に見られてしまった。

 

「どこか痛い?」

 

アイが近くにやってきて、俺の隣に座ってくる。これ、何て言うべきかなと悩みながら次の発言を考える。

 

「それとも……怖い夢見た?」

 

「怖くはなかったね……むしろいい夢だったよ」

 

言葉を返す。怖くはない。いい夢だった。懐かしくて、夢の中とは言えあいつらに会えた。何故、今更あんな夢を見たかはわからない。風邪を引いた時に見る夢は悪夢だと聞いた事はあるが、あれは悪夢なんかじゃない。あれは、俺の大切な思い出だ。 

 

「なら……何で泣いていたの?」

 

アイから至極真っ当な疑問が飛んでくる。

 

「………昔の友達の夢を見たんだ」

 

「え?……彼方って私以外に友達いたの?」

 

アイが困惑している。その言葉は俺の心にダメージを与えた。確かに、今世では友達はアイしかいない。それは紛れもない事実だが、こうして直接言われるのは心にくる。子供の純粋さと彼女の性格も相まって結構くるな。

 

「いたよ。昔にね……でも、あいつらにはもう会えない」 

 

「ふーん……でもさ」

 

「彼方、その友達のこと……すごく好きだったんだね」

 

「顔見ればわかるよ」

 

そうだ。俺は、あいつらの事が好きだ。前世では親友と呼べる友達はいたが、そいつらは引っ越した。中学時代の友達とは疎遠に。だから、高校で知り合ったあいつらが一番の友達だった。こうして見ると俺達は、似ているのかもしれない。母親に捨てられたアイ。自分が死んで会えなくなった俺。互いに大事な人達を失った。

 

「情けない姿を見せたねアイ」

 

「情けなくないよ。泣くくらい大事だったってことでしょ」

 

「ありがとう……アイ」 

 

「本当に変だね彼方は」

 

2人は、笑い合っていた。思いは消えない。2人とも大事な人を失っている。そんな2人だが、今だけそれがどうでもよく感じ、笑い共に同じ時間を過ごしている。失った物は戻らない。だけど、その痛みを乗り越えないといけない。彼等の人生は続いていくのだから。

 

「あ、そう言えば。彼方、風邪大丈夫?」

 

思い出したかのようにアイが聞いてくる。あぁ……そうだった。俺、風邪を引いていたんだ。話している内に忘れていた。頭は痛くない。さらに咳も出ていない。体温計を取り出し体温を測る事に。少しすると……ピピッという音が響く。体温を測り終えた。見てみると36.3°。

 

「うん……熱は下がったしもう大丈夫。わざわざ見舞いに来てくれたの?ありがとう」

 

「どういたしまして。彼方、無理しそうだから」

 

「一応見に来ただけ」

 

この子は、よく見ているなと感心する。

 

「さて、お腹空いたし夜ご飯食べに行こうか」

 

立ち上がり、彼女にそう言う彼。

 

「うん……私もお腹ぺこぺこ」

 

そうして前を歩く。俺は、これからもずっと引きずって生きていく。世界が違っても俺は、友達だと思い続ける。そして、願う。また再会できる事を。再会したらまた話そう。そして、また全員揃ってバカやったりするんだ。ちゃんと幸せになれよ。………あいつらの人生に祝福を。

 

 

 

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