一番星は消えない   作:ディバル

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085 一番星の君に

 

 

 

 

ご飯が炊けた後にそのまま夜ご飯を済ませた。ミヤコさんも一緒に食べて、食べ終わった後に帰って行った。その後、アイとお風呂に入った。足が動かないので洗ってもらったりした。そして今は………

 

「……アイ、そろそろ離れない?」

 

ソファーに座ってから、気づけばもう一時間くらい経過していた。彼は本を読んで、アイはずっと彼方の横にぴったりくっついたまま、腕を回して抱きしめている。

 

「やだ」

 

最近ずっとこんな感じだ。いろいろ終わった後にずっと抱きついている。しかも毎回、1時間以上はずっと抱きしめられて抱き枕状態になっている。

 

彼方の肩に顔を埋めたまま、ぎゅっと抱きつく力が少し強くなる。

 

「だって、こうしてると安心するもん」

 

「……ずっと抱きついてるね」

 

「うん。まだ足りない」

 

家に戻ってきてからずっとこの調子だ。甘えてくるのは嬉しいけど……ここまで甘えん坊になるとは思わなかった。そりゃあ……死にかけて心配な思いをさせたけど……と言うか妙に力が強かったりする。一度、離れようとした時にめちゃくちゃ駄々をこねられた時があった。

 

「……またやってる」

 

「今日も抱き枕にされてるね、パパ」

 

「1時間は経ってるよな、これ」

 

もはや、見慣れた光景と化している。今更、こんな事で2人は驚かない。何故なら、赤ん坊の頃からこれ以上にイチャついている所を見せつけられていたのだから。

 

「うん。しかもママ、全然離す気ないもん……前より甘え方すごくなってない?」

 

アイは彼方が死にかけた事により、彼がもう無茶をしないように家にいる時はずっと隣にいる。そして、彼方自身もそれを嫌がっておらず、むしろ甘えてくる彼女を甘やかしている。今も抱きついているアイの頭を撫でていた。

 

「彼方が死にかけたからでしょ」

 

見慣れた光景を横目にアクアはテレビを見ている。もう、大抵のことでは驚かなくなっている。慣れとは怖いものだ。

 

「……じゃあ、私も」

 

そう言って、ルビーはそのままアクアの横に移動すると、ぴとっと抱きついた。

 

「………なんでこっち来るんだよ」

 

「だって、なんか寂しくなった」

 

「2人を見た後に来るな」

 

「いいじゃん、ちょっとくらい」

 

そうは言っているがアクアはルビーを引き離そうとはしない。彼女の好きなようにさせている。

 

「……昔からこういうとこ変わんないよな」

 

「お兄ちゃんこそ。なんだかんだ優しいし」

 

「はいはい」

 

呆れたように返しながらも、その声はどこか柔らかかった。ルビーはアクアに抱きついたまま、ちらっと彼方とアイの方を見る。2人とも完全に自分たちの世界に入っていた。

 

「……ねぇ、お兄ちゃん」

 

「なに」

 

ルビーは少しだけ顔を寄せると、誰にも聞こえないくらい小さな声で囁いた。

 

「……せんせ」

 

その瞬間、アクアの肩がぴくりと揺れる。

 

「っ……急にそれやめろ」

 

「えへへ」

 

悪戯っぽく笑うルビーに、アクアは深くため息を吐いた。

 

「……ほんと、変なとこだけ昔のままだな」

 

「お兄ちゃんもでしょ?……せんせ♡」

 

こっちはこっちでルビーがアピールしている。星野家の女性陣は、甘えるのが上手い。

 

(………血のつながりを感じるなぁ)

 

アイの頭を撫でながら2人の様子を見ていた彼方は、アイとルビーを交互に見てそんな事を思っていた。このままの状態でもいいんだけど……そろそろあの言葉を言わないといけない。俺もリハビリから少し回復したし、アイの仕事も落ち着いてきた。

 

「アイ……少しだけ離れてくれない?すぐ戻ってくるから」

 

「……やだ」

 

うん……予想してたけど……と言うか甘えん坊になったと同時に駄々っ子にもなってないこれ?

 

「また無茶する気じゃないよね?」

 

アイは彼方の服を掴んだまま、じっと顔を見上げてくる。彼がちょっとでも離れるのを嫌がっていた。

 

「ちゃんと戻ってくる?」

 

その声は冗談っぽいのに、少しだけ不安が混ざっていた。

 

「大丈夫……本当に少しだけだから」

 

「……ほんとに?」

 

アイは疑うようにじっと彼方の顔を見つめる。

 

「5分以内?」

 

「時間制限ついたんだけど」

 

「だって、彼方すぐ無茶するし……」

 

そう言いながらも、ようやく少しだけ腕の力を緩めてくれた。家の中にいるのにこの調子だ……無茶した俺が悪いとは言え、少し過剰に反応し過ぎな気がする。

 

「……帰ってこなかったら、今度は離してあげないから」

 

アイがようやく離れてくれた。近くにあった車椅子に手を伸ばして座り直す。そして、グッズの部屋に入る。ここは基本的に俺しか入らない。グッズのケースを開けて、その中に置いていた小さな箱を手に取り、ケースを閉じる。

 

「………緊張するな」

 

その箱をしっかりと握り締めて、ソファーに座るアイの隣に戻る。

 

「……なにそれ」

 

アイはすぐに箱に気づいて、さっきまでの甘えた目が一瞬だけ真剣になる。

 

「……それ、本当に変なやつじゃないよね?」

 

そう言いながらも、視線は箱から離れなかった。彼は、その質問に答えず言葉を紡ぎ始めた。

 

「あの時……俺が死にかけて意識を失う前に言ったよね……伝えたいことがあるって」

 

アイは一瞬だけ固まって、それから小さく息を飲んだ。

 

「……うん」

 

さっきまでの甘えた空気が少しだけ消えて、声が静かになる。

 

「覚えてるよ……」

 

箱から視線を離し、今度は彼の方に向いていた。

 

「……それって、今言うやつ?」

 

これから俺がするのは前世でもした事がない………プロポーズ。

 

「本当はもっとムードがある方がいいと思うけど……俺は今言いたい」

 

箱を開ける。そこに入っていたのは指輪だった。中心にはダイヤモンドが付いており輝いていた。誰にも真似できない、圧倒的な「一番星」としての輝きを放つ……まさに彼女に相応しい宝石だ。

 

「………俺と結婚して下さい」

 

その箱を彼女の前に差し出し、目を見ながらシンプルな言葉を送った。アイは一瞬、言葉を失ったみたいに固まって、それからゆっくり箱と彼方を見比べた。

 

「……え」

 

声が、いつもより小さい。

 

「……ちょっと待って、今の」

 

一回瞬きをして、それでも状況が追いつかなくて、もう一度指輪を見る。

 

「……それ、本気?」

 

いつもの冗談っぽさは消えてるのに、どこか信じきれていない顔で。

 

「……私で、いいの?」

 

アイにとって完全に予想外の言葉であった。さっきまでイチャついていたアクアやルビーもその動きを止めて2人の事をじっと見ていた。

 

「アイがいい……俺はずっと君だけを見ていた。そして、それはこれからも変わらない……アイじゃなきゃ嫌なんだ」

 

アイは数秒だけ黙ったまま彼方を見つめて、それからふっと小さく息を吐いた。

 

「……なにそれ」

 

声は少し震えてるのに、どこか笑いが混ざっていた。

 

「ずるいじゃん、そういうの」

 

そう言いながら、指輪の箱にそっと視線を落とす。

 

「……ずっと私だけ見てた、とか」

もう一度彼方を見ると、今度はちゃんと目が潤んでいた。

 

「……そんなの言われたら、断れるわけないでしょ」

 

彼は、アイの左手を取り薬指に指輪を嵌めた。ピッタリのサイズでダイヤが光り輝く。

 

本当は、ドーム公演が終わった後のお祝いのパーティーの時に言いたかった。でも、人生はそう上手くいかない。いろいろあり過ぎたが、今ようやくずっと伝えたかった気持ちを伝える事ができた。

 

「……ねぇ」

 

アイは指輪を見つめたまま、小さく笑って、彼方の手をぎゅっと握った。

 

「絶対、離さないからね」

 

「あぁ……俺も離す気はないよ」

 

まだ、終わりじゃない……もう1つ彼女に頼みたい事がある。ここから先は完全に俺のお願いなんだけど………。

 

「………1つお願いしてもいいかな?」

 

アイは指輪を見つめたまま、少しだけ笑って彼方を見上げた。

 

「……まだあるの?」

 

小さく首をかしげて、でも手はしっかり握ったまま。

 

「いいよ。聞く」

 

アイからもとりあえず聞くと言われたので俺は………

 

「君の苗字を俺にくれないか……」

 

自分の願いを口に出して彼女に伝える。アイは一瞬ぽかんとして、それから少しだけ吹き出すように笑った。

 

「……なにそれ……変なの」

 

そう言いながらも、彼の手をぎゅっと握り直す。表情は明るく、とても嬉しそうにしていた。

 

「じゃあさ……逆に聞くけど」

 

少しだけ真面目な顔になって、まっすぐ彼方を見る。

 

「天城彼方じゃなくなってもいいの?」

 

一拍置いて、ふっと優しく笑う。

 

「……私はいいよ。全然」

 

「彼方がそうしたいなら、私の苗字あげる」

 

指輪を見つめて、小さく付け加える。

 

「その代わりさ」

 

もう一度彼を見上げて、少しだけ意地悪っぽく。

 

「逃げたら許さないからね、星野彼方くん」

 

その言葉で2人に笑みが浮かんだ。彼のこれまでの人生は星野アイという1人の人間を救うために動いてきた。様々な事をして時には泥臭く戦い命をかけた。その目標は終わりを迎えた。道のりは長く果てしなかったが……彼は望む未来を手にした。

 

「愛している………これからもずっと」

 

「……私も、ずっと愛してるよ」

 

2人の物語はこれからも続いてゆく………未来へと。

 

 

 






オマケ 告白を見せつけられたアクアとルビー

「……マジかよ、今それ言うのか」

「わぁ……パパ、すごい……」

「いや“すごい”で済ませる場面じゃないだろ」

「だって……なんか、泣きそう……」

「泣くなよ……ったく」

「でも、いいね……ちゃんと“好き”って言ってる」

「……まぁ、あの人らしいっちゃらしいけどな」

「お兄ちゃんも嬉しいでしょ?」

「……別に」

「ふふ、絶対嬉しいくせに」

「……あの人、ほんとにやり切った顔してるな」



作者的にはここで完結にしたいんですよねぇ………書き溜めている物はあるのですが、今一番の問題はアクアのヒロインをどうするか………作者は有馬かなとくっつけたいと思っていますけどそれだと「今ガチ」の落とし所をどうするかなんですよねぇ………そこさえ何とかすれば「東京ブレード」までの構造はふんわりと頭に浮かんでおります。黒川あかねに関しては今連載中のもう一つの作品でオリ主と絡ませるので。後は、キャラが増えるのそろそろ作者のキャパを越えそうです。


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