一番星は消えない   作:ディバル

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090 桜咲く未来

 

 

 

仕事が舞い込み続けて、必死になって働いて気づけば数年が経過した。桜が舞い温かい季節がやってきた。春風が心地よく、春の訪れを感じさせる今日この頃。今日は、いつもとは違う日。

 

「ねぇお兄ちゃん!早く行こうよ!パパとママもう準備できてるって!」

 

「分かってる。まだ時間あるって言ってるだろ」

 

「でもさ、入学式だよ!!」

 

そう……今日は、アクアとルビーの入学式。幼稚園生だった2人が今ではもう小学生だ。赤いランドセルを背負い、早く行こうと急かすルビー。黒のランドセルを背負い、落ち着き靴を履くアクア。

 

「気持ちは分かるけど、焦りすぎ」

 

「お兄ちゃんは落ち着きすぎなんだって!」

 

「ルビーが騒ぎすぎなんだよ」

 

朝から元気いっぱいの声が響く。玄関前でとても騒がしいが、元気な我が子の姿を見れて素直に嬉しかった。久しぶりのスーツを見に纏う。会見、以来だ。前世では毎日着てた物が今ではこう言う大事な時にしか着なくなってしまった。だから、これを着ていると特別感がある。

 

「もう!ねぇママ見てよアクア!」

 

「ふふっ、ルビーは今日ずっとそわそわしてるね」

 

「だって!パパとママと一緒に行く入学式だよ!?特別じゃん!」

 

特別……確かにそうだ。今日は特別な日だ。アクアやルビーにとってほして親である俺たちにとっても。前世の初めての入学式の時も俺はこんな感じだったのだろうか?もう……遠い思い出すぎて覚えてないけど。今のルビーのようにワクワクしていた気がする。

 

「じゃあ行こうか皆んなで」

 

「うん!早く行こ!」

 

「ルビー、落ち着け」

 

「無理!」

 

準備を済ませて皆が玄関に集合していた。ルビーのテンションは上がりきっている。元気がいいのはいいが、この後に転ばないか少し不安だ。

 

「ふふっ、元気だね」

 

「ママも行くよね!?」

 

「もちろん」

 

「……父さんも一緒だよな」

 

「当たり前だろ」

 

変装をバッチリと施した俺とアイ。そして、今の俺は結婚してアイの苗字を貰い『星野彼方』になっている。これならバレる可能性はほぼない。本当はありのまま姿で行きたいけど……そうしたらこれから行く小学校が大騒ぎになってしまう。

 

数年経ったがまだ、天城彼方と言う名前は世に響き渡っている。アイも個人での活動が増えて、知名度が増している。そんな2人が変装せずに小学校に向かったら……入学式だからじゃあない。

 

「………2人ともちゃんとこれから1人で通える?」

 

手を繋いで歩きながら聞く。2人の仲間が実年齢よりも精神年齢が上だとはわかっているが、心配になる。親バカもいい所だ。自分でも驚いている。

 

「通えるよ!もう小学生だもん!」

 

「……父さん、心配しすぎ」

 

「いやでも、迷子とか」

 

「ならないって!」

 

自信満々に言っているが………ルビーだもんなぁ……。失礼だが、心配が勝つ。さすがに不審者とかには着いて行かないと………思う。これ、しばらく朝送っていくか?

 

「ルビーの方が危ないだろ」

 

「むっ、お兄ちゃん失礼!」

 

………アクアの言葉で少しだけ想像してしまった。ルビーが気になる所を歩き回って迷子になる光景が頭に浮かんでしまった。

 

「………アクア、ルビーを頼んだぞ」

 

アクアの両肩に手を置き頼む。四六時中見れるわけじゃあない。そうなったら最後に頼るのは兄であるアクアだ。

 

「なんでそうなるの!?」

 

「……まぁ、目離したらどっか行きそうではある」

 

「お兄ちゃんまで!?」

 

「ふふっ、否定できないのがルビーらしいね」

 

「ママまでぇ!?」

 

ルビーを擁護する者は誰もいなかった。気づけば、彼女以外の3人が同じ意見で一致している。

 

「なんで皆そっちなの!?」

 

ルビーが頬を膨らませながら抗議する。しかし、アクアは静かに視線を逸らし、アイは苦笑い。俺も否定できなかった。

 

……いや、だって本当にありそうなんだよな。ふらっと気になる場所に行って、そのまま迷子。容易に想像できてしまう。

 

「もう!私そんな子じゃないもん!」

 

「説得力がない」

 

「お兄ちゃんひどい!」

 

ルビー……悪いがこれに関してはフォローできない。そうして話しながら歩いていると小学校に到着。少し早めに着いたので入学式の前の看板で写真を撮る事に。

 

「わぁ……!見てパパ!入学式って書いてる!」

 

ルビーは目を輝かせながら看板の前へ駆けていく。

 

「こら、走るなって」

 

「今日はセーフ!」

 

「何がだよ……」

 

呆れながらも、その声はどこか優しい。ルビーはランドセルを背負ったまま満面の笑みでポーズを取り、アクアは少し照れくさそうに隣へ立つ。

 

「アクアもっと笑って!」

 

「無茶言うな」

 

「むー!」

 

その様子を見て、アイがくすっと笑った。

 

「ふふっ、2人ともちゃんとこっち向いてー」

 

スマホを構えた俺の前で、2人が並ぶ。ランドセル姿のアクアとルビー。その後ろには、満開の桜。……気づけば、こんなに大きくなっていた。

 

「はい、撮るぞー」

 

「はーい!」

 

「……ん」

 

シャッター音が響く。その一枚には、確かに“家族の春”が映っていた。そして、俺が望んだ未来。原作のアイは2人のこの姿を見れなかった。でも、この世界では、2人の成長を見守れている。

 

「………よかった」

 

「……え?」

 

ルビーがきょとんとした顔をする。

 

「パパ、なんで泣いてるの?」

 

その言葉で、初めて気づいた。頬に、温かいものが流れていた事に。

 

「あ……」

 

無意識だった。悲しいわけじゃない。ただ、目の前の光景が眩しすぎた。ランドセルを背負った2人。隣で笑うアイ。桜の下で、当たり前みたいに並ぶ家族。ずっと欲しかったものが、今ちゃんとここにある。

 

「……父さん」

 

アクアが少しだけ目を細める。アイは何も言わず、そっと彼方の隣へ寄った。

 

「ふふっ」

 

優しく笑って、ハンカチを頬に当てる。

 

「彼方、ほんと涙脆くなったね」

 

「……そうだね」

 

そう返しながらも、声は少し震えていた。ルビーはそんな彼を見上げて、嬉しそうに笑う。

 

「でも、パパ嬉しそう!」

 

……あぁ。きっと今、人生で一番幸せだった。これまで頑張ってきた努力が報われた。皆がこうして桜咲く未来へと辿り着いたのだから。

 

「ほらほら、泣いてないで次は家族写真!」

 

ルビーが元気よく彼方の腕を引っ張る。

 

「まだ撮るのか?」

 

「当たり前じゃん!今日は特別な日なんだから!」

 

「……ルビー、写真好きすぎ」

 

「思い出は多い方がいいの!」

 

その言葉に、彼方は少しだけ目を丸くしたあと、小さく笑った。

 

「……そうだな」

 

アイも隣で優しく微笑む。

 

「じゃあ今度は皆で撮ろっか」

 

近くにいた先生へ声をかけ、スマホを渡す。桜が舞う校門の前で、4人並んだ。ルビーは満面の笑み。アクアは少し照れながらも、ちゃんと隣に立っている。アイは穏やかに笑い、彼方はそんな3人を見ながら目を細めた。

 

「いきますよー」

 

シャッター音が響く。

 

その瞬間だけは、未来への不安も、過去の痛みも全部忘れられた。そこにいたのは、ただ幸せそうに笑う“家族”だった。

 

 

 

〜?年後〜

 

 

「わっ、懐かしー! これ小学校の入学式の写真じゃん!」

 

彼の部屋に飾られていた写真。それは、何年も前の物。ちゃんとした額縁に飾ってあり今も大事にしていた。部屋には他にも沢山の思い出達。

 

そして、アイのグッズそして………空のケースが一つある。そこには……ルビーと書かれてあり。

 

「……あ、これまだ置いてくれてるんだ」

 

空のケースを見つめながら、ルビーは少しだけ目を丸くする。

 

「ふふっ……“いつか絶対ここ埋めるんだ”って、昔パパに言ったっけ」

 

指先でそっとケースに触れる。そこだけぽっかり空いているのに、不思議と寂しさはなかった。

 

きっと彼は、最初から信じていたのだろう。アイの隣に、いつか“星野ルビー”の名前が並ぶ未来を。

 

「……もうすぐだからね、パパ、せんせ」

 

ルビーは小さく笑う。

 

窓の外では、桜が静かに舞っていた。まるで、あの日の春を思い出すみたいに。

 

 







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