一番星は消えない   作:ディバル

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095 再会の芸能科

 

 

 

ここは『陽東高校』中高一貫で日本でも数少ない『芸能科』のある高校。この芸能科は誰でも受けれるわけではなく。芸能事務所に所属している証明書が必要となる。

 

芸能科面接会場………

 

「苺プロ所属!星野ルビーです!!」

 

 

 

 

一般科面接会場………

 

「星野愛久愛です」

 

 

 

 

2人は、筆記と面接を無事に終わらせていた。

 

「どうだった?」

 

「多分平気………筆記もパパとお兄ちゃんが見てくれたから大丈夫!!」

 

パパとお兄ちゃんに見てもらえてよかった!でも途中から2人とも頭を抱えてたんだよね……そんなに変だったのかな?ちょっと気になるけど……ま、いっか!もう終わったことだし!!

 

「そっちは?」

 

「問題ない………と言うか名前にあまり驚かれなかったな」

 

「今はアクアって名前も普通にあるけどさ、ママ最初『アクアマリン』にしようとしてたんだって!パパが全力で止めたらしいよ?」

 

「父さんには感謝だな」

 

アクアが本気でそう言うから、思わず笑いそうになる。でも実際、パパが止めてなかったら今頃お兄ちゃんは『アクアマリン』だったのかもしれない。

 

……うん、それはさすがに大変そう。

 

パパって普段は優しいし、ママにも甘いけど、変なところだけ妙にしっかりしてるんだよね。そういう時のパパは、なんだかんだで頼りになる。

 

「ふふっ。お兄ちゃんがアクアマリンだった世界、ちょっと見てみたいかも」

 

そんなことを考えながら、ルビーは小さく笑った。そんな時だった。二人の横を通り過ぎた一人が振り返る。

 

「アクア………」

 

鮮やかな赤髪のストレートボブ。全体的に少し幼さが残る、すっきりとした愛らしい顔立ちの少女。

 

「星野アクア!?」

 

(え……誰?)

 

ルビーは一瞬だけ首をかしげる。

 

お兄ちゃんの名前を、いきなり呼び捨て?しかも、あんなふうに驚いた声で……。胸の奥が、ちょっとだけもやっとする。

 

(……知り合い、なのかな?)

 

でも、お兄ちゃんは何も言っていない。その事実だけで、少しだけ安心する。

 

「お兄ちゃん、知り合い?」

 

思わず口から出そうになって、慌てて飲み込む。変に踏み込むのは違う気がしたから。ただ、なんとなく……あの子の視線が気になって、私は、そっとお兄ちゃん横顔を見上げた。

 

「誰だっけ………」

 

いきなりお兄ちゃんの名前を呼んできたその子を、ルビーはじっと見つめる。

 

(えっと……この人……)

 

どこかで見たことがあるような気がする。うっすらと、ほんのうっすらだけど……思い出しかける。確か……どこかで……。

 

胸の奥に引っかかる感覚だけが残って、ルビーは首をかしげた。

 

「あっ……あれじゃあない?」

 

モヤがかかった記憶の中で答えに辿り着く。

 

「重曹を舐める天才子役」

 

「10秒で泣ける天才子役!」

 

あ……それだ。確か、あの時………ママのことを「コネ」って言ってバカにしてた、生意気な子!

 

思い出した瞬間、ルビーはちょっとだけ眉をひそめる。

 

(あの子かぁ……)

 

胸の奥に、じわっと小さな引っかかりが残った。

 

「映画で競演した有馬かな!」

 

「あー………久しぶり……ここの芸能科だったのか」

 

お兄ちゃんも、今、思い出したみたいだった。最近テレビで見てなかったから、ちょっと忘れてたけど…………

 

「良かった………ずっとやめちゃったのかと」

 

お兄ちゃんの肩に手を置いて、嬉しそうに少しだけ笑っていた。お兄ちゃん、最近は監督の手伝いばっかりしてたから、もう表に出るのやめちゃったのかなって思っても仕方ないよね。

 

でも…………私のお兄ちゃんなんだけど?少し近くない?

 

「やっと会えた………」

 

その表情は嬉しさと安堵感が浮かんでいた。

 

(そんなに?)

 

ルビーは思わず瞬きをする。まるで、ずっと探していた人に再会したみたいな顔だった。

 

(……なんか複雑)

 

お兄ちゃんの知り合いなのは分かる。でも、あんな顔をされると少しだけ落ち着かない。ルビーは無意識に一歩だけアクアの方へ寄った。

 

「入るの!?うちの芸能科!?入るの!?」

 

「いや………一般科受けた」

 

「なんでよ!!」

 

リアクション芸人さながらの有馬のツッコミがあたりに響いた。有馬かなの大声に、思わずルビーは肩をびくっと震わせた。

 

(うわっ、声大きっ)

 

さっきまでちょっとしんみりした空気だったのに、一瞬で吹き飛んでしまう。でも、それ以上に気になったのは………

 

(なんかこの人、お兄ちゃんのこと好きじゃない?)

 

肩を置いたり、安心したり、今だってこんなに必死になってるし。ルビーはじーっと有馬かなを見つめる。

 

(いや、気のせい?)

 

でも気のせいじゃない気もする。

 

「ウチの妹が芸能科受けて、心配だからここ受けただけ」

 

「はぁー!?」

 

先輩が大声を上げる横で、私は思わず笑ってしまった。

 

(えへへ……)

 

心配だから。お兄ちゃんは本当に何でもないことみたいに言うけど、そういうところは昔から全然変わらない。

 

私が困ってる時も、不安な時も、気付いたら隣にいてくれる。それが当たり前みたいな顔をしてるから、たまにずるい。

 

(ほんと、お兄ちゃんらしいなぁ)

 

胸の奥がぽかぽかして、少しだけ嬉しくなる。有先輩が盛大にツッコミを入れているのを見ながら、私はこっそり口元を緩めた。

 

「ウチの兄シスコンなので♪」

 

「きっも!と言うかなんであんた喜んでいるのよ?」

 

……口の悪さは昔から全然変わってないなぁ。思わず苦笑いが漏れる。テレビで見なくなっても、天才子役って呼ばれてても、その辺はそのままらしい。

 

「私、この人昔から好きじゃあないのよね」

 

「でも、受かったら後輩になるんだぞ」

 

「聞こえてんぞ」

 

先輩がじとっとした目でこっちを見る。

 

「あっ、聞こえてた?」

 

「聞こえるように言ったでしょアンタ!」

 

「えへへ♪」

 

思わず笑うと、有馬先輩はますます不機嫌そうな顔になった。

 

(やっぱり苦手かも)

 

でも、なんだろう。昔みたいにテレビの向こうで見ていた時より、ずっと分かりやすい。口は悪いし、すぐ怒るし、お兄ちゃんにはやたら反応するけど………

 

(案外、面白い人なのかも?)

 

「まぁ……とりあえず仲良くしましょロリ先輩」

 

「イビるぞマジで!」

 

彼女の反応が予想以上に大きくて、ルビーは思わず吹き出しそうになる。

 

(あはは……)

 

なんだかんだ言いながら、表情がころころ変わるから見ていて飽きないさっきまでの引っかかりも、少しだけ薄れていた。でも、その様子を見ていると、本気で嫌な人という感じはしない。

 

「じゃあ俺、監督の所寄るから」

 

「あ……じゃあまた家で」

 

「ちょっと」

 

お兄ちゃんの後を追うように、先輩も慌てて走っていく。

 

(あー……やっぱり追いかけるんだ)

 

その後ろ姿を見ながら、ルビーはぱちぱちと瞬きをした。さっきから見ていて思っていたけど、有馬先輩は本当に分かりやすい。お兄ちゃんがいると、反応が全部大きくなる。

 

(ふーん……)

 

なんとなく面白くて、なんとなく気になって。ルビーは離れていく二人の背中をしばらく眺めていた。それからふと、小さく肩をすくめる。

 

(ま、いっか)

 

どうせお兄ちゃんのことだから、変な勘違いなんてしないだろうし。そんなことを思いながら、ルビーは小さく笑った。

 

お兄ちゃんとの繋がりなら、たぶん私が一番だ。だって兄妹だし。

 

一緒に暮らしてるし、家族だし。それに………前世から知ってる。そんな関係、そうそう誰にも負ける気がしない。

 

(えへへ♪)

 

なんだか少しだけ得意な気分になって、ルビーはこっそり口元を緩めたお兄ちゃんがどれだけ優しくても、どれだけ誰かに慕われても。

 

私のお兄ちゃんであることは変わらないのだから。そう思うと、胸の奥がほんのり温かくなった。

 

「あの言葉、忘れていないからね」

 

ルビーはにやっと笑う。

 

「あと少しで16歳だよ?せんせ♪」

 





ようやく有馬かなを出せましたね。それと、ストックが無くなってきました。楽しみにしている読者の皆様、申し訳ありません。これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします。

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