一番星は消えない   作:ディバル

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投稿頻度が減って申し訳ありません。いろいろモチベと作者自身も忙しく中々時間が取れませんでした。失踪しない様にはしますが投稿頻度は減ります。楽しみにしている皆様、申し訳ありません。それでは本編どうぞ。


096 再会の続き

 

 

 

「ねぇって! どこ行くの? 監督って誰のこと!?」

 

ルビーと別れ、俺は監督のいる方へ足を向ける。だが、その後ろから有馬が何か言いながらついてきていた。

 

「今、どのへん住んでいるの!?」

 

そんな声が背後から飛んでくるが、俺は特に振り返らない。とりあえず今は無視でいいだろう。放っておけば、そのうち諦めるはずだ……多分。

 

無視を決め込んで歩いていたのだが、有馬は諦める気がないらしい。いつの間にか俺の進行方向へ回り込み、そのままずいっと顔を近づけてくる。

 

「あんた、ドコ中!?」

 

真顔でそう聞かれて、思わず足が止まった。

 

「ヤンキー女子か」

 

反射的にツッコんでしまう。

 

というか、さっきから質問の方向性がおかしい。久々の再会で聞くことがそれなのか。有馬は有馬で真剣そうな顔をしているから、余計に質が悪い。

 

「いつまで付いてくるんだよ」

 

「私の疑問に全部答えるまで!!」

 

普通にめんどくさいな、コイツ。

 

「まだ、役者やってるんだよね!」

 

「いや……今はやってない」

 

「えっ……」

 

有馬の表情が目に見えて固まる。さっきまでの勢いが嘘みたいに消えていた。俺はその反応を見ながら、小さく息を吐く。別に隠していたわけじゃない。

 

ただ、辞めたと言うほど大袈裟なものでもなかった。最近は監督の手伝いや裏方の仕事が多くなっていただけだ。とはいえ、有馬からすればそうは見えていなかったらしい。

 

「……そんな顔するなよ」

 

思わずそう口にする。まるで、何か大事なものを失ったみたいな顔だったからだ。その反応の方が、少し意外だった。

 

「そう……なんだ」

 

「じゃあ……そういうわけだから」

 

「え! ちょっと話しようよ!」

 

さっきまでの勢いが少し萎んだので、このまま諦めるかと思った。だが、どうやらそうでもないらしい。有馬は何か言いたげな顔のまま、相変わらず俺の横をついてくる。

 

……話題が尽きたわけじゃなく、次に何を聞こうか考えているだけだったようだ。本当にしつこい。というか、久々に会った相手にここまで食い下がる理由が分からない。

 

「ねぇ! これからカラオケ行かない!?」

 

「行かねぇよ」

 

「えっ……じゃあ私の家とか?」

 

「距離の詰め方やばくない?」

 

……話の方向がおかしくなってきたな。監督の話をしていたはずなのに、いつの間にかカラオケの話になり、気付けば家に誘われている。会話の流れが雑すぎる。久々に再会した相手との会話とは思えなかった。

 

「仕方ないでしょ? 私、これでも芸能人なんだから! ちょっと喫茶店で話でも、ってわけにはいかないの!」

 

確かに言いたいことは分からなくもない。有馬かなという名前は、全盛期ほどではないにせよ一般人にも知られている。人目のある場所で長話をするのは避けたいのだろう。

 

「個室のある店、この時間まだ開いてないし!」

 

「あー、そういう……だったら」

 

「おー、有馬かな! 見ないうちにデカくなったな、おい!」

 

アクアが選んだ場所は、監督の家だった。ちょうど行く予定だったし、人目を避けて話す場所としては悪くないだろう。

 

「いや……仕事はしてますよ……そりゃ子役時代に比べたらアレですけど」

 

監督の『見ないうち』という言葉が突き刺さっていた。全盛期は、子役と言ったら有馬かなであり、しょっちゅうテレビに出ていた。それが今では見る影もない。

 

「アクア! 役者やってないなら、なんで監督のところに出入りしているの!? 本当は演技教わっているんじゃないの!?」

 

「まぁ……一通りは教えられたよ。監督じゃなくて、天城さんにだけど。今は監督の助手をやってる感じ」

 

「は?」

 

有馬は一瞬、本気で何を言われたのか分からないという顔をした。

 

「ちょっと待って」

 

眉をひそめながら、俺を指差す。

 

「監督の助手?」

 

「そうだけど」

 

「いや、そっちじゃなくて!」

 

即座に否定される。

 

「今、さらっと流したけど、天城さんに教わったって何!?」

 

どうやらそちらの方が引っ掛かったらしい。

 

「あの天城彼方に?」

 

「他に誰がいるんだよ」

 

「いるわけないでしょ!」

 

有馬は頭を抱える。

 

「いや、待って。意味分かんない。なんであんた、そんな環境にいるの?」

 

信じられないものを見るような目だった。

 

「私だって、そんな話聞いたことないんだけど?」

 

子役時代から業界にいる有馬だからこそ、その名前の重さは分かっている。

 

だからなのか、さっきまでの勢いとは別の意味で落ち着かなくなっていた。

 

「……あんた、本当に何してたのよ」

 

「同じ事務所の縁で、一時期面倒を見てもらってただけだ。その流れで、ついでに演技も少し教わった」

 

馬鹿正直に言って、父親だからだなんて説明すれば面倒になる。そこは適当にぼかしておくのが一番だ。

 

同じ事務所の縁で一時期世話になっていた……それだけなら、別に不自然でもない。実際、業界ではそういう繋がりは珍しくもない。余計なことを言う必要はないし、言わない方がいい。

 

「はぁ!?」

 

有馬は思わず声を上げて、アクアを指差す。

 

「同じ事務所の縁で”面倒見てもらってた”って、軽く言いすぎでしょ!」

 

眉を吊り上げたまま、じりじりと距離を詰めてくる。

 

「それ、普通に”業界の重要人物に目をかけられてました”ってやつじゃない!?」

 

業界の人間関係なんて、少し踏み込めばそれなりに繋がりは出てくるものだろうに。有馬はそこを”特別な話”として受け取っているらしい。

 

「しかも演技まで教わってるとか、普通にズルいんだけど!?」

 

一拍置いて、ぐっと言葉を詰まらせるように口を閉じる。それから、納得いかない顔のまま視線を逸らした。

 

「……そういうの、ちゃんと先に言いなさいよ」

 

小さくぼそっと呟いて、悔しそうに唇を尖らせる。

 

「こっちは、ただの元天才子役扱いなんですけど」

 

大きなため息を吐きながら、彼女は苦虫を噛み潰したような表情をする。

 

「にしても、あの天城彼方ねぇ……」

 

「……お前、そこに食いつくのか。別に大した話じゃないだろ。業界の中じゃ、どこかで繋がるのは普通だ」

 

「アンタ、分かってないわね。天城彼方って、あの演技力で何年もこの業界に居座ってる”化け物”よ」

 

有馬の勢いに、内心で軽く息を吐く。天城彼方の評価については、俺も知識としては理解している。だが、それをここまで感情を込めて語るのは、少し意外だった。

 

「私だって直接は会ったことないけど……人当たりもいいし、普通に実力も別格」

 

昔から業界にいた人間特有の熱量なのか、それとも単純に”憧れ”に近いものなのかは分からない。

 

「しかも”あの事件”のあとに普通に復帰してるのよ? その時点でエピソードとして強すぎるでしょ。もはや伝説級の役者って言われてるの、知らないの?」

 

ただ一つ分かるのは、こいつが適当に語っているわけじゃないということだ。……面倒なやつだと思っていたが、こういうところは妙に真っ直ぐだな、と思ってしまう自分がいる。

 

「……天城さんに、憧れてでもいるのか?」

 

一瞬、素で固まったあと、すぐに眉をひそめる。

 

「憧れとか、そういう綺麗な話じゃないわよ」

 

軽く鼻で笑って、肩をすくめた。

 

「天城彼方ってね、確かに”上手い”のよ。異常なくらい。でもそれってさ、“綺麗な演技”って意味じゃないから」

 

一拍置いて、言葉を選ぶみたいに続ける。

 

「全部が自然すぎて、逆に気持ち悪いの。感情が本物か作り物か分からなくなる瞬間がある。あれ、普通の役者はやっちゃダメな領域よ」

 

視線を少し逸らして、舌打ち混じりに吐き捨てる。

 

「正直、現場でも好き嫌い分かれるタイプよ。上手いって言ってる人もいるけど、“怖い”って言う人の方が多いと思う」

 

少し間を空けて、俺を見る。

 

「憧れっていうより……どっちかっていうと、ああいうのを”目指しちゃいけない完成形”って感じ」

 

「綺麗とかすごいとかじゃなくて、“あそこに行ったら戻ってこれない”ってタイプの役者よ」

 

ふっと小さく息を吐いて、最後にぼそっと付け足す。

 

「……だから好きじゃないのよ、ああいうの」

 

吐き捨てるようにそう言って、有馬は少しだけ視線を逸らした。

 

 





オマケ

3章〜5章までのアイと彼方


【挿絵表示】


5章時点の星野家


【挿絵表示】


6章大人になったらアイと彼方


【挿絵表示】


こちらの画像達はAIで生成いたしました。所々おかしな点もありますが、天城彼方の姿やこの『一番星は消えない』をイメージしやすくなる様に急遽作りました。



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