ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった   作:七夕茸

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サブタイトルに関してですが、タイトルセンスがないのでシレっと話数表記だけになると思います。


第一話 カードゲーマーなら一度は言ってみたいあの言葉

 テレビを付けるといつものお昼の番組が流れていた。前世と同じように人気タレントが右側に座ってMCの人が左側に座ってるよくある形式だ。

 しかし、画面の中に映っているタレントもMCもコスプレ会場かと疑いたくなるほど個性的な衣装をしているが多分()()()()()()ではマトモな恰好なのだろう。それにしてもだ。

 

「羨ましい……うらやまーうらやま、ウラヤマ!ウ・ラ・ヤマ!はぁ……」

 

 溜め息が出てしまう。彼らは当たり前にいるし、私たちの日常に溶け込んでいる。なのに私の隣には彼らはいない。

 

紙山(かみやま)ちゃんかわいいんだから奇行はやめてほしいんだけど……」

「奇行じゃないですって、こうすることで来ないかなーって祈ってるだけですよ。あと私はかわいくないって何度言ったらわかってくれるんですか店長」

「かわいいのにねえ……それと()()()()側が選ぶ形式なんだから祈ったところであんまり意味がないっていうのは無粋かい?というかそもそもそんな祈りで来るマキアスと紙山ちゃんはコンビ組みたいのかい?」

「うぐっ……じゃあどういう風にしてればいいんですか?私はマキアスと出会いたいんですよ」

「私としてはいつも通りで過ごすのが一番だと思うよー?だからさ、パック開封してストレージとシングルに仕分けする作業に戻ろうか」

「ええ……」

 

 まあ私はバイトだしお給料もちゃんと貰ってるから店長の(はざま)さんの指示には従うしかないけど。ただただカードを仕分けする作業は根気がいるなぁ……。

 こうして前世でも趣味でやってた同じような作業をしているとついつい今生きてる世界と前世の日本を比べてしまう。

 

 この世界では《マキア》と呼ばれるカードゲームが浸透している。一応トランプとかはあるけれどカードゲーマーがカードゲームと呼ぶタイプのものはマキアくらいしかない。

 そしてこの世界では所謂カードの精霊的なものが存在し《マキアス》と呼ばれている。彼らはカードを介して私たちの世界にやってきて、マキアをした時に発生する《マキアエナジー》を求めるらしい。

 いや名前がなんか全部安直すぎるかもしれないけどあらゆる世界の言語での折り合いをつけて訳すとこれが一番らしい。テレビでやってた。

 

 前世に居なかったマキアスの存在は私の心を躍らせた。だからこうしてバイトをしてカードパックを買えるお金を稼いで日々剝いているのだが……一向に来ない。

 

 というかたまにお客さんがマキアスと出会うのを店員として眺めることの方が多いのが余計に辛い。バイト選択を間違えたかも?

 いや、後悔先に立たずだし、店長は美人だし、お給料も高校生のバイトにしては割のいい方なので辞めたくないな。

 

「店長ー私ってクビになる可能性あります?」

「いやないけど……まさか辞める気!?行かないで!紙山ちゃんはうちの客寄せパンダとしての仕事には期待してるんだから!」

 

 美人でモデル体型の店長に抱き着かれると同性であってもドキドキしてしまう。私の意識をそらすために壁掛けの時計を見てるとあることに気づいた。

 

「客寄せパンダってなんですか。私の事務能力はないと言いたいんですか」

「紙山ちゃん高校生だしね……お賃金はちゃんと出すけど大人と同じスペックは要求してないから安心してね」

「……店長今日は帰らせてもらいます。あ、仕分けは終わったので確認お願いしますね」

「ん?あーはいはい定時だね、お疲れ様ー」

 

 そうして私はカードショップ・カナリアを退店する……いや確かに定時だからあがっただけだけどさ、もっとこうシリアス展開になってもいいのではないだろうか。もうちょっとこう密接になるための曇らせ展開とか。

 よし、こうなったらマキアで店長に喧嘩を売ろう。私が気分良くなるためだし店長のデッキにガンメタ張って……。

 

 ずっとマキアについて考えながら歩いていたからか私は視界の端に映ったカードを見逃さなかった。ビルとビルの間の路地裏、青いポリバケツ蓋の上にデッキくらいの厚みはある枚数のカードがビニール袋に入れられて放置されていた。

 

 ふと前世で一度は言いたいセリフが脳裏をよぎったがそれとはまた別のTCGでは『やっぱ拾ったカードは弱い』なんてカード名のカードもあるくらいだ。どうしようかと逡巡する。

 まあでも一度は言いたいセリフのために人生で初めてカードを拾った。

 

「カードは……拾った!」

 

 パックで最高レアリティが当たるくらい嬉しい。脳から変な快楽物質が出てこれから1ヶ月はカードを拾うために街を徘徊しそうになってしまう。

 

「喜んでるところ悪いんだけどさ、マキアやってる?」

 

 中性的な声が聞こえてきた。どこからと形容するなら私が手に持ってるビニール袋の中から。

 

「え?えっと……一応やってますけど」

「やった!ねえ今からボクでマキアをしてくれない?ちょっとマキアエナジーが不足して死にそうで……」

 

 声の感じからそこまでのひっ迫感があるようには思えないけれどこれで見捨てて死んだら後味も悪い。スマホで時間を確認するとまだ補導される時間でもない。親に寄り道してから帰ると連絡すれば問題ないだろう。

 

「じゃあカードショップ行きます?」

「そこ行けばマキアできる?」

「まあショップなので……」

「連れてって!」

 

 ずっと片手にデッキを持っているのもかさばるし、私はリュックサックからストレージボックスを取り出してビニール袋ごと突っ込む。マキアのカードはやたら頑丈なので扱いが多少雑でも問題はない。

 リュックサックのファスナーを閉じようとすると中から悲痛な声が聞こえてきた。

 

「あのー暗いんだけどこれって拷問?」

「少しの辛抱なので……」

「やだ!暗いのだけは嫌!出せー!ここから出せー!」

「わかった!わかりましたから!デッキケースの方でもいいですか?」

「ケース?嫌!暗いのだけは絶対嫌!」

 

 お前はボールに入りたがらないサトシのピ〇チュウか!……まあ暗闇恐怖症とかあるしそういったマキアスなんだろう。諦めて元々入れてあったビニール袋に腕を通してカナリアにとんぼ返りすることにした。

 

 内開きのドアを開けるとカランカランとドアに設置してあるベルが揺れ来店を告げる。

 

「いらっしゃいませーって紙山ちゃんじゃんどうしたの?忘れ物?」

「マキアしてください」

「お客さんもいないし別にいいけど……唐突だね何かあった?」

「カードを拾いました、至急マキアをしなければなりません」

「なるほど……わかった!」

 

 (はざま)さんはカウンターから魔法陣が書かれたプレイマットをとりだしテーブルに敷き、腰に携帯しているデッキケースからデッキを取り出し山札の位置に置いてから一言呟く。

 

起動(セット)

 

 私も同様にリュックサックから店長のプレイマットと同様の魔法陣が書かれたプレイマットを敷き、ビニール袋から取り出した推定マキアスがいるっぽいデッキを山札の位置に置いて間さんと同じ文言を。マキアを行うための呪文を唱える。

 

起動(セット)

 

 両者の起動を聞き届けたプレイマットが刻印された魔法陣が浮かび上がらせ、セットされた山札を自動でシャッフルする。

 準備は整った。私たちはマキアを行うための最後の言葉を口にする

 

「「実行(プレイスタート)!!」」

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