ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった   作:七夕茸

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十二話です。誤字報告されたものを修正しました。
バトスピのスタンダードで白妙デッキを組みました。ショップ大会にも出てみたんですけど激突が強すぎる……


十二話 

 私とクレア、それと夏雲(なぐも)はマキアをするためにカナリアへと向かった。今日は

マキアス用のプレイマットを使うためだから客としてだ。

 カナリアの扉は内開きであり、誰かが入店すると扉に取り付けられたベルがカランカランと鳴る仕組みだ。

 

「店長、こんにちはー」

「あれ、紙山ちゃんまだ部活の時間じゃないのかい?」

「今日はちょっと早引きしてきました」

「青春はちゃんとした方がいいと思うよほんとに」

「私が充実してると思えればそれで充分な気もしますけどね」

「後悔がないならいいんだけど……で、今日はバイトじゃなかったはずだけど?」

「マキアス用のプレイマットってありましたよね、あれ使ってクレアとマキアしたいんです」

「あるけど、どこに置いてたっけ……」

 

 (はざま)さんが、がさごそとレジの後ろの戸棚を漁る。確かその辺りにはマキアのパックと表には出してないシングル販売用のカードが収納しているだけだから意味がないはずだ。

 

「店長、私も探しますよ」

「紙山ちゃんは今お客さんなんだからゆっくりしてればいいのに……」

「じゃあ、口は出させてください。今探してるところにはないと断言できるので」

「……紙山ちゃん、従業員なんだし色んな備品の場所覚える必要があるよね。今後のスムーズな対応のためにも一緒に場所を覚えようか」

 

 この人、私がバイトに入るまでどうやって経営していたのだろうか?一応その時も何度かやってきてはいたけど、もっとこうシゴデキの美人という印象だったはずだ。なぜ今はこうも情けなく見えてしまうのだろう……やっぱり私がついてなきゃダメだ。

 

「ナグモー何で2人はプレイマットを探してるの?テンチョーが使ってるのとかナグモが使ってるの貸してもらえばいいんじゃないの?」

「え、なんでだろ~?春陽~教えて~」

「端的に言うと私たちが普段使ってるプレイマットでマキアスがマキアをするとマキアス側がすっごい疲れるらしい、で合ってますよね店長」

「ザックリだとそれでいいんだけど、えっと……夏雲ちゃん?だよね、マキアをするときに出るフィールドってどうやって展開されているかわかるよね?」

「あ~あの、魔法陣がぶわ~って出たり、0と1がシュルシュル~ってプレイマットに収まるやつです~?」

 

 マキアをする人間なら誰でも見慣れているそれはどんなに高価なプレイマットでもどんなに安価なプレイマットでも変わらないものだ。向こうの世界と繋がるマキアのカードを制御するためのものらしいので価格帯によって仕様が異なるのはあり得ないものではあるけど。

 

「あれは何を動力として起動しているかはわかるかい?」

「マキアエナジーですか~?」

「正解、そのマキアエナジーはマキアスがこちらの世界で活動する上でも重要なエネルギーでもあるよね」

「マキアスが私たちのプレイマットを使うとマキアエナジーを使い過ぎるってことですか~?」

「そう、だからマキアス用のプレイマットは対戦相手にマキアエナジーを使わせてもらうんだけど……」

「店長、ありましたよ」

 

 私は普段使われていない戸棚の奥の方からマキアス用のプレイマットを引っ張り出すことに成功した。ほこりは被っていないし劣化も見られない、だけど中古みたいな新品のプレイマットだ。

 

「あ、これ一応売り物だけどどうします?」

「レンタルでも問題ないけど、クレアちゃんが買ってくれたりは……」

「お金ないよ!一文無し!」

「私が買いましょうか?値段は……無駄に高いですね」

 

 小さく貼られた値札シールを探して確認すると5000円と書かれていた。高校生が自分で使わないものに払うには若干躊躇われる値段だ。まあいいや、これでクレアがマキアを楽しんでくれる方が重要だ。

 

「店長、私のバイト代から差っ引いといてください」

「わーい!ありがとーカミヤマー!」

 

 喜びの感情が爆発したのかクレアがものすごい勢いで抱き着いてくる。彼女なりの親愛表現の一種なんだろうけど少し恥ずかしい。

 

「紙山ちゃん、クレアちゃんを甘やかしすぎちゃダメだよ。コンビは対等な関係なんだからね」

「それはそうですけど、初心者を手厚く迎えるのも私たち店員として役割じゃないかなーって……マキアを継続的にしてくれたら嬉しいなーって」

「私としては学生に金銭のやり取りを簡単に決断してほしくないんだけどなぁ……あ、そうだクレアちゃんとマキアするんでしょ?なら紙山ちゃんが勝ったら紙山ちゃんが購入するってしたらどうだい?負けたらクレアちゃんがうちで働いて稼ぐってことで」

「店長さ~ん、それ結局お金の問題を賭け事で決めてるので意味なくないですか~?」

 

 夏雲の言葉も最もだが私としてはレンタル品として店に常設すればいいのに……この値段設定絶対生産量が少ないからだと思うし。

 

「その辺のことは一旦置いておきましょう。クレア、これでマキアできますよ」

「……は!そういえばそんな話だった」

「忘れないでくださいよ……」

 

 私はカバンからクレアのカードが入っているデッキである《観測されるモノ》のデッキをデッキケースごとクレアに手渡す。

 

「この中にクレアのデッキが入ってるので使ってください」

「カミヤマはボクを使わないんだったね」

「まあそうですね。でも真剣勝負をしたいならクレアが自分のデッキを使うのが一番いいはずですから」

 

 前世で見てたアニメではカードの精霊的な存在が自身のカードを使うデッキはもれなく強いという設定だった。この世界では実際にそうなのかは知らないけれど、私個人の感情としてはモチーフカードの入ったテーマデッキを握ってもらいたいものだ。

 

「確認するけどカミヤマが負けたらボクのカードだけのデッキを組むことでいいよね!」

「意見がないといえば大いにありますけどプレイマットの賭け(アンティ)機能のやつじゃなくて、口約束でいいですよね?」

「春陽~それは負ける可能性があるからかな~?」

 

 視界の端で調子に乗ったギャルの声が聞こえてくる。別に負けるつもりなんてさらさらないが万が一負けたときのペナルティにしては重すぎると思っただけだ。それにカードゲームで手札事故なんてよくあるもので、ここ一番で発揮される場合があるのも怖い。

 だけど、夏雲の声にイラっときたのは図星をつかれたのは事実で何か反論すべきだと思って口走ってしまった。

 

賭け(アンティ)でやる」

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