ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった 作:七夕茸
これを書いてる時間は深夜です。
カンツォーネを出せればたとえゾロアスタートを除去されてもとどめまで行ける分割リーサルプランなんです!信じてください!
「私のターンドロ~!」
使えるエナジーを一応確認する。その数字は6、覚えてるので確認する意味はないが集中するときは一旦別のことを考えて頭を真っ白にしてからの方が見えないものも見える感じがするので行う。私なりのルーティーンだ。
相手のライフは7使えるエナジーは0、なら前のターン同様定石通りライフを詰めた方がいいはずだ。それと相手の効果の発動していたのはライフ3以下の時だったなら私が詰められるのはライフ4まで……大体整理はついた。
「私は2コストで《ミグラトリー・スワロー》、4コストで《ミグラトリー・パルマタム》を召喚~さらにパルタマムの召喚時効果~使用可能なエナジーを一つ増やすよ~そしてバトル~!スワローとパルマタムでカルテちゃんを攻撃~」
「ライフで受けるわ」
「ターンエンドだよ~」
これでカルテちゃんのライフは残り5点できればもう一点削りたかったけど残りの手札うち2枚は除去札だし、もう1枚は出せるエナジーがなかったからしょうがない。
「じゃあこっちのターンね」
あ、そうだ相手のターンにこの手札ではやれることがないので心理戦を仕掛けてみよう。カルテちゃんを知る機会にもなるし。
「……ね~カルテちゃん」
「なにかしら」
「このマキア楽しくなかったりする~?」
デッキからカードを引こうとするカルテちゃんの手がピタリと止まる。
適当な言葉で揺さぶりをかけるつもりでした軽い質問だったんだけど……もしかして地雷踏んじゃった?
「なぜ、その結論になったのか聞かせてもらってもいいかしら」
「なんでもなにも~カルテちゃんこの部室来てから笑顔らしい笑顔が一つもないからかな~」
それに加えて例の店での春陽との勝負もある。どんな経緯であれ、正々堂々の勝負で勝ったなら嬉しくなってそれは表情にでるはずだ。
あの基本人形のように仏頂面である春陽だってマキアをしている最中には感情が昂っているのか笑顔を見せたりして、ギャップがあってとてもかわいい。
違う、思考が逸れた。
あの時は一応クレアのためにかたき討ちをするという意思あったっぽいけど、それに対してもなんていうか義務感……そうしないといけないという強迫観念そんなものすら感じた。
えーと、つまり何が言いたいかというとそう!
「カルテちゃんは楽しみ方を忘れちゃったの~?」
「……別に楽しくなくてもいい、勝利さえあれば私には十分」
「そっか~」
勝ちだけに執着するのは別におかしくはないと思うけどそれはとても寂しい。
私たちもオリンピアで勝ち進むことを目標にしているけど……例えその道が苦しいものだったとしても楽しめるものにしたと思ってる。
できれば彼女にも勝利というゴールだけでなく道中は楽しいものであることを知ってもらいたいなー……。
「楽しいっていう感情は持って欲しいな~」
「そう、でもそれは私には関係ないわドロー」
カルテちゃんは何事もなかったように改めてドローする。……ただデッキからカードを引くという行為なのに洗練さすら感じるのは何度もマキアを行っているからかな。
私にはまだまだ道のりが遠そうな領域にカルテちゃんは既に立っていると考えると私たちの実力差がなんとなくわかってくる。
まあ、それが遺憾なく発揮されて私みたいなのが惨敗するかというと別にそんなこともないのがマキアのおもしろいところらしい、春陽の受け売りだ。
「ん……」
カルテちゃんは熟考しているようだ。私の場合は相手のことなんかわからないから直感で即決してるし春陽の場合はなんか瞬時に判断できているらしい、熟考しているプレイヤーを見るのはなんだかとても珍しく感じる。ちなみに部長や、冬雪もあまり熟考せずに最適解っぽいカードを切っていってる。そういえば二人が悩んでいるのは見たことがないな。
「私はスペル《光の壺》を発動、このカードはライフを2支払うことで使用コストを軽減できる。そして効果はデッキから2枚ドロー」
彼女のライフが3以下になった、なってしまった。つまりここから彼女のデッキの本領が発揮してしまう……!
「さらに《境界守ロザリー》を召喚、ロザリーはライフ3以下の時打点は2になる」
「だけど一体じゃ~私のライフには届かないよ~」
「わかってるけどバトル、ロザリーで攻撃!」
「ライフで受けるよ~……いった~!」
痛いけど残りライフは8だ。まだまだ危険域ではない。でも痛いのは嫌だなと思いつつ彼女の「ターンエンド」の言葉を聞き届ける。
「じゃ~私のターンドロ~!!!」
デッキには何が入っているかはある程度理解しているけど、でもさっきまで春陽と一緒にデッキを調整していたため入れ替えていたカードが何かまで詳細に記憶していない。
だから
「でもこれなら~!私は8コストでスペル発動~!《暴走族・地獄の大集会!》効果を説明するね~このスペルを唱えた時、墓地にいるパワー500以下のシルエットを好きな数蘇生させるよ~!」
このスペルにより、私の墓地に送られていたダンデライオン3体とレッドサルモン1体が蘇生される。これで私のシルエットは6体!
「バトル!まずはスワローでアタック~」
攻撃する際は除去されたくないシルエットから、春陽のアドバイス通りにスワローから突撃させる。一応除去されてもリカバリーのききやすいレッドサルモンを最後に攻撃させることだけは頭の隅に置いておく。
「ライフで受けるわ」
スワローが一直線にカルテちゃんの胸に飛び込み残りライフは2……そしてこちらにはまだアタッカーは5体、なら決めきれる!
「1体目のダンデライオンで攻撃~!」
「ライフで受けるわ」
綿毛がカルテちゃんを襲っても表情を崩さず、インタラプトスペルを使う素振りが見えない。あれだけ手札があるんだから防御札や除去札がないわけがない。けど、こっちにはまだ4体のシルエットがいる。
「続いて2体目のダンデライオンでカルテちゃんにトドメ~」
これで決着がつくとは思わないけど風前の灯火であるライフを前に勝負を焦らずにはいられない。綿毛の群れが再度カルテちゃんを襲うのを私は見守っていると、もう夏に差し迫る季節だというのになぜか冷気を感じる。
そう気づいた瞬間カルテちゃんの持つカードから猛吹雪が発生していた。
「スペル発動《絶界・氷の世界》ライフが1の時に発動できてこのターンの間相手の元々の打点1以下のシルエットによる攻撃で私のライフは0にならない」
使用条件がとても限定的な防御スペル!?なんてピンポイントな……私の場にいるシルエットの打点は全員1、これ以上攻撃しても無駄にステイ状態にしちゃう。エナジーも使い果たしちゃったしやれることないなー。
「ターンエンド~」
「……夏雲、先輩。逆に聞くけどあなたにとってマキアは楽しいものなの?」
「そりゃ~ね~マキアは楽しいものだよ~」
私がマキアに興味を持ったのはマキアを楽しそうだと思っていたからではない、ただ春陽がやっていたからその一点につきてしまうのだけど……一応今は楽しいと思っているから嘘ではない。
「ライフを失うたびに痛みをともなうなんて正気じゃないものが楽しいの?」
「そこはそうなんだけどね~」
もう割り切ってはいるが初めてライフを失ったときは驚いた。一応痛みにそなえた方がいいと事前に部長からアドバイスは受けていたのにそれでも驚いて尻もちをついてしまった。
「でも私は痛みはあった方がいいと思うな~あ、もちろん痛いの自体は嫌なんだけどね~」
「それはどうして……」
「だって~痛ければみんな真剣になるでしょ~?」
私がマキア部に入部しようとした時のことだ。部長は冬雪と春陽以外の全員に面接と入部試験としてマキアを行った。
私も含めた大半が初心者だったわけで部長が多すぎる入部希望者相手に足きりするために用意したものだった。
私は春陽と共通の話題を作って近づきたいな~思って軽~い気持ちで入部するつもりだったのに初めてのマキアで部長のシルエットに攻撃によってライフを減少させられた。
当時初めて感じる痛みに私は悶えてなにがなんだかわからなかった。それは他の人たちも例外ではなく阿鼻叫喚の地獄絵図のようだった。
そしてどこが熱くなっているのかはわからないズキズキとした痛みが私にある気づきをくれた。
殺される
その後は必至すぎて覚えていない。多分マキア開始数十分前に叩きこんだマキアのルールを必死に思い出しながら必死にもがいてみっともなく負けたんだろうな~とは思ってる。
でも入部自体はできたし私にとってはいい記憶だ。あれから私はマキアにも真剣に取り組むようになったし、多分ライフ減少がちゃんとした痛みを反映してくれたから今の私がある。
去年のオリンピアでも私の対戦相手もみんな真剣にこちらを殺しに来ていた。痛みをやり取りできるマキアはそれでこそ楽しいと思える。
「私はそういうところからマキアを好きになっていったな~」
「そう……」
「なにを楽しみとするかは人それぞれということで~だからカルテちゃん自分自身の楽しみを見つけてほしいな~そのためなら私も手伝うよ~」
かわいい部活の後輩だしね。この子しか新入部員がいないんだから存分に甘えさせてあげたい。あと、あわよくば部活動という名目で春陽を連れまわせるかもだし!
「ドロー……とりあえずこの勝負勝たせてもらうわ」
「勝利宣言~?まだ私のライフは8もあってブロックできるシルエットは3体もいるよ~それにそっちのライフはもう風前の灯だし次のターンになればまた6体のシルエットが攻撃できるのにどうするつもりなのかな~?」
「それは今から見せる、私は《龍へと至る門》を発動!このスペルはライフが1以下の時に発動できる。私は場のアミを墓地に送ることでデッキから《蒼海の境界守・セイ》をコストを支払わずに召喚する!」
アミは効果で打点が3になってるから打点要員になれたはずなのに墓地に送る行為に意味が分からない。
だけどそれをするメリットが今から出てくるシルエットが持っていると思う。アミが渦巻く水流が覆ったと思ったら一気に膨れ上がって別のシルエットへと姿を変容させた。
それは青い竜人の少女だった。シルエットは決してそのカードの絵に描かれているマキアスとは別の存在なはずなのに圧倒的存在感を放っていて思わず呼吸を忘れてしまいそうになる。
だけどカルテちゃんの声で私はマキアへと意識を戻すことができた。
「このままバトルに入るわ。セイは相手のシルエットに指定攻撃できるためパルマタムに攻撃」
「……?ブロックはする必要もないからそのままバトルで破壊されるよ~」
モミジの木が竜人によって一撃で蹴り折られる。カルテちゃんの意図がわからない。これでカルテちゃんの場の攻撃できるシルエットは0だ。
「セイの効果発動、相手シルエットを戦闘で破壊したとき私のライフが1以下なら相手のライフを1つ削ってアクティブ状態になるわ」
「はい~!?」
カルテちゃんの効果説明が終わった瞬間、竜人の少女が何もないところから生成した水球を私の顔にぶつけてくる。
「いた~!」
「このまま続けて残りの5体にも攻撃を仕掛けるわ……何か対応はあるかしら」
「……ないよ~」
私の宣言が終わると竜人の少女は私のシルエット全員を一瞬で蹂躙した。そうしてその魂であるとでも示すかのように5つの水球を携える。
「ラストアタック、セイお願い」
「ライフで受けるよ~!」
これまでより数倍の大きさはある水球を生成し、他の5つと一緒に私にぶつけてくる。私のライフは0を示した。
「