ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった 作:七夕茸
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《複合魔術機械スクロール・プレイマット》、数多の世界の魔術様式を、これまた数多の世界の機械技術でオートメーション化して量産されたマキアを遊ぶための道具だ。耳にするだけならなんかすごそうに聞こえるが、この世界では安いものなら子供のお小遣いでも買えるくらいの普通のものだ。
まあ高いのだと自動浮遊機能とか縮小化とか空中に盤面を投影してカードもそこに固定されるみたいなこととかできる。それに形だってデュエルディスクみたいなプレイマットもあればアニメのバデ〇ファ〇トのデッキケースみたいな感じになったりもして多種多様だ。値段がバカ高いことを除けばできれば私も一つオーダーメイドで欲しい。ちなみに私や店長の
「あ、店長ー先行お願いしていいですか?」
「いいけど……
「拾ったカードのテキスト読まなきゃなので、あと店長のデッキの展開は何回もやり合ってるし別に見なくてもいいかなって」
「別にってまあいいか……じゃあ私のターンね、1コストで《ファイアラット・スクイール》、2コストで《ファイアラット・ヘッジホッグ》を召喚」
チラッと盤面に視線を戻す尻尾が燃えてるリスと背中が燃えてるハリネズミが盤面に出ている。どちらも間さんがよく召喚する
この世界では前世のモンスターとかクリーチャーとかスピリットと分類されるものは《シルエット》と呼ばれているけれど今でもたまにモンスターと脳内変換してしまう。
閑話休題、私は視線を拾ったカードたちに戻す。何度かテキストを読み返したけど……これってスーサイドデッキだ。
「バトルに入るよ、ヘッジホッグで攻撃!」
「あ、ぐうっ!いたた……」
「ヘッジホッグの効果によってこのシルエットがダメージを与えたターンの終了時に1枚ドローしてターンエンド」
マキアはライフ減少をそのままプレイヤーに反映してくる。死にはしないけどまあそこそこ痛い。タンスに小指をぶつける感じの痛みではなく、鼻の頭に軽いジャブが飛んでくるくらい、もしくは背負い投げされて受け身が取れなかった時の背中にくる衝撃とかそういったダメージらしいダメージが体にくる。なんでも神経系に直接痛みの電気信号を送っているとか。
よし現実逃避して痛みが引いてきた、現実を直視しよう。
《
だがこの世界においてスーサイドデッキとはあまり人気のないデッキだ。
それはそうだろう。マキアはあくまでゲームだ。プレイヤーは楽しむため、遊ぶためにマキアをするのだ。わざわざ自分から痛い思いをするドMは少ない。
「紙山ちゃーん、そっちのターンだけど大丈夫そー?」
「あ、はい、大丈夫です。ドロー!」
気を取り直そう、私のターンだ。初めて使うデッキだけどしっかり初動を引けたことに安心する。
「私は2コストで《
召喚されたのは真っ白なウサギのシルエットだ。カードの絵柄的にはかわいいウサギだとわかっていたけど、召喚されてみると縮尺を間違えているのか体長1.5メートルくらいある。
「うわ、何そのウサギおっきいね」
「若干キモくないですか?」
「モフモフ体積増しててかわいくない?」
「分からなくもないですけど、私はキモさが上回りますね」
店長のファイアラットみたいに地球の生物の発展形みたいなシルエットは多い、だけどサイズ比だけを弄っただけにしか見えないこのゲットは不気味に感じてしまう。
「勝負に戻りますよ!ゲットの召喚時にライフを支払いぐわあああ!効果発動!」
「紙山ちゃん!?」
深呼吸して息を整える……あれ、この世界でスーサイドデッキ初めて触ったけどなんか違くない?設定ミスってない?今私が支払ったライフコストはヘッジホッグで受けたダメージと同じだ。なのにさっきより明らかに痛い、耐えられないほどではないけどでも痛いものは痛い。
「デッキトップ3枚を見てその中から
「紙山ちゃん……それスーサイドデッキだよね?なんでそんなもの拾って使ってるの?」
「流石店長詳しいですね」
「そりゃあ電子情報化されてないマキアのカードを売ってるからね、色んなカードを目にするものさ。というかマキアのカード情報全部公開されないかな……ネットで検索できないの不便すぎる……」
「ネットで見ましたけど、一応電子生命体系のマキアスが色々頑張ってるらしいですよね」
「そうなんだけどねー……いつかできるじゃなくて今欲しいんだよ」
ぐでーっと机に突っ伏す間さん、だらしないけど顔がいいから何だか物憂げな表情にも見えて絵になっている。
「で、店長。なんで雑談で時間を稼いでいるんです?」
「あはは……紙山ちゃんサレンダーしなよ」
「……それはどうしてですか?」
「紙山ちゃんはカードを拾ったって言ったよね。多分そのカードは前の持ち主に捨てられたものだ。さっきテキストの確認もしたいって言ってたしそのカードのことを知らなかった、だからこんなマキアはさっさと中止すべきだと思ってね」
とても真面目な声色で間さんは諭してくる。間さんの言っていることは正論できっと正しい、私だって彼女の立場だったら似たような内容でスーサイドデッキを使うことを止めている。
「でも店長、それは私にとって止める理由にはなりませんよ」
もとよりマキアでのライフ減少で発生する痛みもそこそこ痛い。それがちょっと痛くなったくらいだし最悪意識を飛ばすかもしれないけど死にはしないだろう。
なら大丈夫。私は一度死んだわけであの時の痛みに比べれば耐えられる。
「私を止めたいならマキアで、です」
「ん-そっかそっかー、ほんとにサレンダーしない?」
「しないです。というか店長絶対この勝負も自分の勝ち星に入れますよね?」
「そりゃあね」
「今49勝49敗なのはわかってますよね」
「50勝目を先に私にくれたりは……」
「あげません!」
50勝先にした方が相手の言うことなんでも聞くという賭けをこの前したことを忘れたとは言わせない。ほんとはちょっといい人だなって思った矢先にこれだよ!油断も隙もない。
「私のターン続けますよ!」
「はいはい」
「2コストで《
先ほどのゲットと同じくらいの大きさのデカいヒキガエルが召喚される……我ながらカエルが苦手じゃなくてよかった。苦手だったら絶対召喚しない。
店長の表情を見てみると顔面蒼白といった感じで少し溜飲が下がる。まあ苦手な人は苦手だよねカエル、なんか表面がてらてらしてて触感とかぱっと見わかんないし。
「チンウーの召喚時効果発動!ライフを支払って……っつ、効果!相手のパワー1000以下のシルエットを二体破壊する!」
「私のシルエットたちが!」
「バトル!チンウーで店長に攻撃!」
「ごめんカエルだけは絶対無理!うわあああなんかヌメって感触があああ!」
少しだけ同情はするけど勝負の世界は非情ということで甘んじて欲しい。舌での攻撃じゃなくて体当たりなだけまだマシと言えるだろう。
「ターンエンドです」
「流石だね紙山ちゃん、まさか精神攻撃をしてくるとは……」
「いや完全に事故ですけど」
「だろうね、ドロー!私は5コストで《ファイアラット・ハウスマウス》を召喚してそのままバトルだ、ハウスマウスの攻撃時効果!山札の上から一枚を確認し、それがコスト2以下のシルエットの時、場に出せ……出せないので山札の下に送る」
「ゲットでブロック!」
「じゃあそのままゲットをバトルで破壊してターンエンド、紙山ちゃんサレンダーするなら今のうちだよ?」
ニヤニヤしながらこちらを見てる。あれは勝ちを確信してる顔だ、ドヤ顔しててもほんと顔がいいな……。
「何度言われてもしませんよ、ドロー!」
お?なんかよさそうなカードを引いたぞ?というかライフコストを支払ったりする関係上あと数回しか効果発動できないし、もうやるしかない!
「私は《
「ライフで召喚する!?」
「さらにスペル発動!5コスト《
「なんだって!?」
「バトル!アサドとチンウーで攻撃!」
「ぐわあああ!」
カエルとライオン、どんな繋がりか知らない二体が間さんに突撃して彼女のライフを削りきった。こっちのライフを見ると風前の灯火だしアサド引けてなかったら多分負けてたな……。
まあでも勝ちは勝ちだ。だから私は勝者の証、マキアを終了させるキーワードを唱える。
「