ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった 作:七夕茸
フィールドがなくなり
夏雲の6体ものシルエットの一斉攻撃をスペルで防ぎ、返しに出した1体のシルエットで蹂躙しつつ1ターンの間に8点ものライフを削りきるのはとても派手だった。
だから私は二人に対し拍手を送ることにした。
「カルテさん素晴らしいマキアお疲れ様でした」
「春陽~私も褒めてよ~」
「夏雲もすごかったよ」
「淡泊~」
本心からの言葉なのに夏雲は不服そうだ。彼女の使うミグラトリーと私が使った
だからこそカルテさん相手にどれだけ戦えていたのかはイコールで私と夏雲の差になる。そしてそれは火を見るよりも明らかだ。
「夏雲先輩」
「どうしたの~?カルテちゃん」
「また付き合ってもらってもいいかしら?」
「どんとこいだよ~後輩なんだから存分に甘えていいんだよ~」
夏雲は大きい胸をさらに腰を反らせることでより大きさを強調するような仕草をみせる。
……まずい、さっきまでプレイヤーとして負けたことに対する悔しさで握っていた拳がさらに固くなってヤツの胸に叩き込みたくなる。
「それでヴェッター一年、これからも部室に来る気はあるか?」
「ええ、これからもよろしくお願いするわ」
「どういうことですか?四季神部長」
「ヴェッター一年は元々籍だけを置いて所謂幽霊部員になろうとしていたのだが……鹿渡部員のおかげでそうでもなくなったらしい」
「どういたしまして~」
そういうことは事前に説明してもらいたい。……いや継続的に部活に来てもらうには普段の姿を見せないといけないか。
さっき夏雲に話した新入生勧誘を諦める理由を思い出して私は四季神部長への抗議の言葉を飲み込んだ。
「……夏雲先輩には本当に感謝してるわ」
「え~?ありがと~ぎゅ~!!」
夏雲がカルテさんの背中から抱き着く。カルテさんは私や四季神部長、秋雨ちゃんにクレアと違って女子の平均身長程度にはあるため胸が後頭部に来ることはない。
というか今更だがうちの部は小柄な人が多いな……それに冬雪は車椅子に座っている都合上目線の高さは私たちよりも低いわけだし、横並びになったとき夏雲だけが突出する感じになる。確かこの前身長180㎝を超えたとか言ってたし平均身長約150㎝の私たちにはわからない世界だ。
それにしても、胸を押しあてられるというのはとても不快なのだ。なぜその塊が私にないのかと劣等感を覚え、世界が平等でないことを
きっとカルテさんも不快に思っているだろうと思って彼女の顔を確認すると真っ赤に染まっていた。
「夏雲、カルテさんの顔赤くなってるし解放しないの?」
「え~……うわ~!?ごめん大丈夫!?」
「……大丈夫」
「カルテさんうちの部活はあまり年功序列とか気にしなくていいですからね?嫌なら嫌って言わないと」
「わかったわ」
そういうと夏雲の腕の中にすっぽり収まる。あの位置が不快ではないの!?
「後輩にこうも懐かれると嬉しいもんだね~」
さっきまで幽霊部員になる気満々だったのにこの変わりようはなんなんだ?夏雲を気に入ったにしたって何が引き金で?
「言いづらいことだとは思うんですけど、カルテさんはなんでそこまで急激に夏雲に懐いたんですか?」
「別に言いづらいことではないわ。ただ夏雲先輩が私の大事なものを好きって言ってくれたから」
「えっと?」
「私の先祖がプレイマット制作したうちの一人だったの、その中でもマキアで発生する物理現象を制御していたわ。例えばだけどマキアで発生した大きすぎる衝撃を1ダメージ分の衝撃として処理したり」
「お~すご~い!!」
「逆にあまりに小さい衝撃でも1ダメージ分の衝撃として処理したり」
「んん~?」
「あの【何故、このカードゲームには無痛設定が存在しないのだろうか?】とか【痛いの嫌だから遊べてない才能ある人とか居そう】とか言われる原因になるダメージ機能の開発者ですか!?」
カルテさんの先祖がそんなすごい人だとは思わなかった。様々な世界の技術者、魔術師が制作に協力していたとは知っていたが、この世界でそれを担当していたのが目の前の少女の縁者だったとは驚きを隠せない。
「あの機能はなくせないものなの。本来発生したはずの
「へ~」
「嫌われてる機能であることは理解しているつもりだし、元々私が住んでいたところでそれが原因でイジメにあったこともあったけど、夏雲先輩は肯定してくれた。だから夏雲先輩は好き」
夏雲は本当にファインプレーをしていたのか。私だったら先ほどのマキアの途中にされていた問答に彼女が満足いく回答をすることはできなかっただろう。
私の場合イラストが好き、挙動が好きでそのカードを使いたいからマキアをする。相手が驚いてくれたなら御の字、相手にヒリついた勝負ができたと対戦後の感想をもらえたらもっと嬉しい。
そんな自分本位でやっているから夏雲のダメージが発生するから真剣勝負ができるという考え方は私にはないものだ。
「さて、ヴェッター一年がヴェッター部員になったわけだが……本日本来の連絡事項に移りたい」
四季神部長が空気を切り替えるために柏手を打った。
「去年同様交流試合をすることになった。場所は向こうの学校だ、あとちゃんと手続きを踏んで連絡を取り付けてきたので心しておくように」
「おお~!」
「交流試合が決定した喜びより、ちゃんと手続きを踏んできた驚きの方が増すんですけど……」
交流試合という名前で練習試合を申し込んできた学校は私が知る限りで1校しかない。一応マキアは強いし去年のオリンピア全国大会にも出場している強豪校であるのは確かなんだけど……アポを取らず道場破りのように殴りこんできたのであまりいい印象はない。
「開催場所は理解しましたけど日程は?」
「再来週の土日を使っての泊りがけだ」
「じゃ~それまでに準備しないとだ~春陽一緒に買い物に行こ~!あ、カルテちゃんもくる~?」
「行く」
夏雲が有無を言わせず了承をとるが複数人で買い物をした方が見落としもなくなるだろうと思って了承する。あと