ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった 作:七夕茸
「と、いうわけで交流試合に行くために土日のバイト休ませてください」
「それはいいけど……そっか、紙山ちゃん来ないのか」
「はい、急ですみません」
「いいよいいよ、クレアちゃんだっているし」
「えっと、クレアも連れて行きたいんですけど……」
せっかくこっちの世界にいるのだから色々な場所に行って楽しんで欲しい。今回の日程を再度確認したところ日曜日は自由時間が結構とれそうなのだ。向こうの学校から電車で数十分のところに遊園地もあるらしいし是非とも行きたい。
「クレアちゃんのことだから誘われたらついていきそうだね……あれ、土日を私一人で切り盛りしろっていうのかい!?」
「私がバイトに入るまではそれで回ってましたよね?」
「紙山ちゃんが入ってから客足も増えてるんだよ、ちゃんとうちの看板娘としての自覚をもって欲しいなー」
「私そこまで愛想よくない自覚はあるんですけど……」
接客時にはなるべく愛想よく接客しようとはしているが、それだって
「紙山ちゃんはかわいいからね、立ってるだけで絵になるからいいのいいの」
「なにもよくない気がしますけど……」
間さんにかわいいって言われるのはとても嬉しいが、改善すべきところは改善しないとだ。とりあえず笑顔の練習とかしてみるべきか?
試しに口元に指を当てて口角を無理やり上げてみる。普段使わない頬の筋肉が固く反発してくる。……きっと不格好に違いないな。
「例えばですけど……店長、これで笑顔になってますかね?」
「……かわいい笑顔だと思うよ」
なんだ今の
「店長、ごめんなさい。今すぐ記憶を消すか、私に記憶が飛ぶくらい殴られるか選んでください」
「物騒だね、というか後者だと私死ぬよ!?」
「大丈夫です。もし死んでしまったら、私もすぐにあとを追いますから」
「何も大丈夫じゃないよ紙山ちゃん!落ち着いて!」
「知ってますか?失血死って脳に血液が回らないから案外考える余裕とかないらしいですから」
「会話が成立してないねぇ!」
立てかけてあった掃除用のほうきを手に取り一歩間さんに歩み寄る。マンガのように上手くいくとは限らないがやってみるしかない……!
しかし、カランカランと入店を告げるベルが鳴ったことで私の狂行は実行されることはなかった。
「テンチョー!ただいまー!」
「お帰りークレアちゃん、いつも言ってるけど帰る時は自宅スペースの方に行ってね。そこはお客さんが来るところだから」
「でもテンチョーもカミヤマもこっちにいるしこっちの方が近いよー。というか2人は何してたの?」
「えっと……気にしないでください」
私はほうきをクレアに見えない位置に置いて何事もなかったかのように振舞う。これでは
「そ、それよりも!再来週の土日を使って交流試合として遠出するんですがクレアも一緒に行きませんか?」
「おー楽しそうだねー!行く!」
「やっぱりこうなるかー本当に二人とも行っちゃうのかい?」
寂しそうに私たちを見る間さんの目がなんだか子犬みたいでちょっとかわいい……いやよく考えたら成人女性のかわいいムーブは世間一般的にちょっとキツいものだ。
冷静になれ私、相手が間さんだからって、ただちょっととんでもない美人だからって、相手は成人女性だ。こっちの肉体が未成年である以上精神年齢とか自認で数えて何歳とかはなんの言い訳にもならない。落ち着け、心の中で息を吸って吐け。
……心の中で深呼吸をするというあまり意味のない行為をしたことで冷静になれた。ヨシ!
わたし は しょうきに もどった。
「なら
「はい?」
「土日を休むのはお店的には痛いというのは理解してますけど……」
我ながら無理な提案をした自覚はある。あっちは自営業の人間だ、休んでいる間はお金を稼ぐことはできない。数日分の営業補填を私が払うって言えればいいけどそんなのは不可能だ。
「別に数日休んだところで大きい問題は発生しないんだけどね……」
「そ、それじゃあ日曜日だけ私たちに合流するのはどうでしょうか!こっちの試合が終わった後合流して一緒に遊ぶんですよ!」
「それでも店を開けることには違いないとは思うけど……」
「じゃ、じゃあ!前にしていた賭けのなんでも言うこと聞くってありましたよね!それ使います!私と一緒に遊んでください!」
……うん、今私はなにを言った?そう、クレアと出会った日に決着がついた50勝先取の賭けの権利、大事にとっておいて適切なタイミングで行使しようと思っていたそれを行使すると言った。言ってしまった。
はあ!?
「そういえばそんなことしてたねぇ……」
「いや、これは、もうちょっと然るべきタイミングで使うので聞き流してもらえれば……」
「紙山ちゃんの然るべきタイミングってちょっと怖いから聞き逃しませーん。往生際が悪いよ、ね?クレアちゃん」
「オウジョウギワがワルーい!」
「クレアは意味を分かってない言葉を連呼しないでください!」
変なテンションの二人の気をそらすために私は別の話題を上げることにした。というかもう約束は取り付けたってことにしないと羞恥心で死ぬ!
「そういえば!!この前カルテさん……うちの新入部員と
「雑な話題転換だねぇ、まあ紙山ちゃんらしいとは思うけど」
「私そんなにおかしな人間だと思われてるんですか?話を続けますけどその時夏雲が知らないカードを使ってたんですよ」
「知らないカードって、別に紙山ちゃんが夏雲ちゃんのデッキの採用カード全てを把握してるわけじゃないんだし、知らないカードの1枚や2枚入っててもおかしくないんじゃないかい?」
「夏雲がデッキを改造するときはいつも私が立ち会って採用を検討してるので、デッキに採用しているカード全部把握してますよ?」
マキアをしている期間は私の方が長いし、その分マキアにどんなカードが存在しているのか私の方が知識がある。そのため構築相談に乗っているのだ。
「そ、そうなんだ。話を戻すけど知らないカードだっけ」
「はい、確かカード名は《暴走族・地獄の大集会!》ってカード名だったと思います」
「
「そらちゃん?……ああ、四季神部長ですか」
四季神部長の名前が
「確かに、暴走族とか地獄って単語なら四季神部長の《
「ならあれだ、向こうの世界から直接やってきたんじゃないかな?」
「……それ、オカルトですよね」
話には聞いたことがある。危機的状況に陥った時ドローしたカードは見たこともないカードであった、そのカードを使うと形勢逆転して勝利を収められるのだとか。幻覚とかでは一切なく、ちゃんとその後もカード実物が残り続ける代物らしい物だとか。
四季神部長も例のマキアの時にオカルトの話してたけど最近流行ってるのだろうか?夏も近いからとか?私も何か怪談話仕入れといた方がいいのかな。
「オカルトじゃないよ。シルエットは稀だけどそれ以外の種類のカードだと割とある」
「ほんとですか?」
「紙山ちゃんはマキアス達がどうやってこっちの世界に来るか知ってるよね?」
「カードを通ってですよね?」
この世界の常識だ。クレアだってこちらの世界に来た時にはカードからやってきた。
クレアの方を見てみると真面目に話を聞いてるのか分からないのかよくわからない顔でボーっと話を聞いていた。
「そうだねぇ、じゃあそのカードはどこからやってくるかわかるかい?」
「印刷所とかですか?」
「ハズレとは言わないけど、あそこで作ってるのは既存のカードのコピーだ。聞き方を変えようか。全く未知の世界から来るマキアスのシルエットやスペル、その他オリジナルのカードはどうやって私たちの元に来ると思う?」
「……わかりません」
「正解はこの世界と向こうの世界がマキアエナジーを介して繋がった時だ。基本はあっちの事象やマキアスがこっちの世界に流れつくんだけどね、その時にカードも一緒に流れ着いた場所に発生するんだ」
「発生……」
「そうして一度繋がった世界からも稀にカードがやってくるようになる。今回のケースだとこっちに当てはまるかな」
「なるほど……」
間さんがわざわざ私に嘘をつくはずがないから多分本当のことなんだろうけど、マキアエナジー不気味過ぎないか?質量保存の法則どこいった。
冷静に考えたらマキアをしてるだけで発生してる謎エネルギーだし、それでマキアスが食事をしなくても問題ない状態になるんだから今更か。
諸々考えるのを諦めた私は、話しを聞くのに飽きたのかストレージのカードを漁り始めたクレアを呼び戻しに向かった。
前回載せたかったマキア部身長比較
夏雲(180㎝越え)>>冬雪(立てた場合)(167㎝)>カルテ(160㎝)>>秋雨(152㎝)>春陽=クレア(150㎝)>四季神部長(147㎝)>冬雪(車椅子に乗ってる場合)
番外 間さん(165㎝)