ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった 作:七夕茸
山中の森を歩くこと数分、完全に出遅れた私とクレアはとりあえず頂上を目指して歩いていた。
獣道だけじゃなく整備された山道があるのはとてもありがたい。でも、フィールドで形成された場所なのにふかふかした地面が長年の落ち葉が堆積したみたいで若干困惑する。
「カミヤマー歩くだけで気持ちいいね」
「ですね、こうして歩いてるとハイキングに来たみたいでリラックスできます」
でも少しはマキアもしたい。カードの入れ替えはしてないが身内以外とも戦えるなら戦っておきたい。
ぼんやりとそんなことを考えながら登っていると
「一旦ここで休みましょうか。さっきリニアの中で食べてたお菓子も余ってますし」
「やったー!」
最近ひしひしと感じていたがクレアはまるで妹のようだ。だけど前世も今世も姉がいるくらいで下の子なんていないから新鮮だ。
私が彼女に楽しんでほしいと思っているのはマキアスだからだけじゃなくてその辺りの要因もありそうだ。
「甘い系としょっぱい系のがありますけどどっち食べます?」
「甘いのー!」
「辛いのはないのか?」
背中越しに知らない声が聞こえた。
振り返るとそこには炎のように赤く短い髪の少女が私のカバンを覗き込んでいた。
「だ、誰ですか?」
「あん?うちのやつじゃないのか?じゃ、誰だよ。侵入者か?ガキ二人で?」
「ボクたちは交流試合にきたんだよ!」
「あー?あー……オジョーサマがなんか言ってたな。んで交流試合って何すんだ?」
「この森の中にいる部員とマキアするんだってー」
「ほーん、頑張ってなー」
……他人事のようだがこのフィールドにいるなら部員じゃないのか?
でもコンセプトカフェの店員が着てそうなミニスカメイド服着てるし、もしかしたら京さんの個人的なメイドさんだったりするのかな?
一応確認しておくか。
「マキア部の部員なんですよね?私たちとマキアしないんですか?」
「しねーよ。雑魚狩りは趣味じゃねー」
「ボクたちは雑魚じゃないよ!」
「口先だけなら何とでも言えるぜ?なら試してやるよ!サモン《デスク》!」
「サモン《デスク》」
「「
「「
いつも通りにプレイマットから魔法陣が広がっていきフィールドが展開される。
フィールドの中にフィールドを展開するマトリョーシカ構造が若干不安だったが問題なさそうだ。
「先行はくれてやるよ。雑魚でも手も足も出さずに負けるのは相当ヘコむもんな」
「カミヤマぼこぼこにしちゃえー!」
「ですね。流石にここまでナメられては私も怒ります」
ぶっちゃけ顔を見た瞬間から距離を置きたいタイプだとは思っていた。今どき珍しいTHE・ヤンキーみたいな喋り方で相手への礼儀の欠片もない。
私自身は敬語だが別に、イコール礼儀であるとは思っていない。
タメで話すことが礼儀という人間もいるが、別にそれでもいい。
挨拶しただけでもう友達という考え人間もいる。理解はできないけど向けられう感情が好意からくるものなので苦手ではあるけど付き合うことはできる。
だけど始終こちらを見下して、厚顔無恥である態度は悪意がなくても不愉快だ。
だから叩きのめす。
「ドロー!」
「はっ、ドローの気迫だけは一丁前だな」
「2コストで《
「あ?雑魚のくせに自分からライフ減らすたぁ気合あんじゃねーか」
「バトル!ゲットで攻撃」
「ライフだ!」
これで互いのライフは9、先制パンチは決めてやった。エナジーもまだ余っている1ターン目としてはまずまずだ。
「これでターンエン……」
「いや、まだ続けてもらうぜ。インタラプトスペル発動!3コストで《分け合う報酬》!相手のエナジーが俺より多い場合俺のエナジーを2つ増やす!」
「……ターンエンドです」
後攻ぐらいでしかまともに機能しない相手依存のカードを使うなんて……卑怯な、始めからこれが狙いで後攻を取ったに違いない。
「俺のターン、ドロー!4コストで《赤の勇者・フラム》を召喚!そのままバトル!フラムで攻撃時に効果発動!相手のパワー800以下のシルエットを一体破壊する!」
ゲットが赤を基調としたRPGの勇者みたいなシルエットに一刀両断される。まるでRPG序盤の経験値稼ぎみたいだ。
「ライフで受ける!」
「これでターンエンドだ」
……地味にめんどくさいな。オブザーブドはライフの削り合いには向いていないデッキだ。だから、そういった相手には序盤からガンガン削りに行って相手の思考を『相手は勝手にライフを削ってくれるから守りを固めて迎え撃てばいい』といった具合に誘導したい。
だがそれも臨機応変に対応できるデッキを使ってる場合だ。今回の相手のデッキは絶対に攻撃を止めない。だからめんどくさい。
「私のターンドロー!」
「私は5コストで《観測されるモノ・ブッロ》を召喚、ライフ1を支払ってっふう、はぁ……効果発動!二枚ドローしてエナジーを二つ増やす!……いいカードを引けた、《
「いいじゃんかよ!バチバチしてきたな!」
「ターンエンドです」
「あー?守りを固めるってか?」
相手のペースに吞まれてはいけない。私の残りライフは6、ちゃんと盤面を見ながらプレイしないと……負ける。
「ならこっちからこじ開けてやる!俺のターンドロー!6コストで《赤熱の勇者・フラム》を召喚!召喚時効果によりカードを一枚ドロー!その後墓地か手札に《赤の勇者・フラム》がいる時に相手のシルエット一体破壊する!そこの馬を破壊だ!」
「ブッロは馬じゃなくてロバだよ!というかカミヤマ、あいつさっき出したやつとおんなじ姿なのに別のシルエットなの?」
「ええ、結構いますよ成長後に別のシルエットとして登録されたマキアス」
マキアスはこっちの世界と繋がったからといってずっとこっちの世界にいるわけではない。なんなら元の世界に戻って生活を送っている方が普通で、あくまでこの世界は旅行先の一つと言ったところだ。
だから向こうの世界で出世したり姿や境遇が大きく変わった場合、こちらの世界に再登録されて別のカード扱いになるらしい。
「バトルだ!フラムで攻撃!」
「チンウーでブロックします」
「はっ!これでお前のシルエットはゼロだ。守りを固めた意味なんてなかったな!ターンエンドだ」
確かに盤面0で絶望的だ。だが、エナジーも手札も十分にある。なら、