ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった   作:七夕茸

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三話です。更新頻度は不定期を予定しております。
作者の言ってみたいカードゲームのセリフは「それはどうかな」と「不足コストはブレイドラから確保」


第三話 そろそろ姿見せてもらえますか?

 《終了(プレイオーバー)》の宣言を持ってプレイマットがフィールドを解除される。起動の時は魔術的な魔法陣が展開されていくのに終了の時は0と1がプレイマットに収納されていくのはちょっと面白い。

 

「いたた……」

「大丈夫ですか?店長」

「私も若くないんだから加減してほしかったんだけど」

「店長まだ20代ですよね、まだ若い範疇ですよ。なんなら学生服で遊園地に行っても違和感持たれませんって」

「……紙山ちゃんは学生服を着た私と遊園地いけるかい?」

「ノーコメントでお願いします」

 

 この肉体の年齢は16歳だが、私の前世の年齢も加味した場合私の方が年上だ。その場合年下の成人女性にコスプレさせて公衆の面前を歩かせるちょっとしたヤバい人になってしまう。

 私の意図を知ってか知らずか(はざま)さんは気まずそうに目を逸らした。

 

「……とりあえずこの話はまた後日しよう」

「そうですね……互いの心のためにも。あ、別に店長と二人きりで遊園地が嫌というわけではないですからね」

「慰めの言葉、ありがとね」

 

 本心なんだけどな。だって間さんは美人だし、そんな人と二人きりで遊びに行けるなんてまるでデートだ。まあ間さんのことだからシンプルに遊びに誘うために誘っただけだろう。確か前世でも似たような流行りがあったはずだ。

 

「真面目な話をしようか。紙山(かみやま)ちゃんそのデッキもう一度使いたいかい?」

「強かったですけど普段使いとかがちょっと……」

「だよね、よかった」

「何がよかったんです?」

「流石に大事な店員が傷つくのを知ってて止めないのは大人としてね」

「本音は?」

「…………そのデッキが《ファイア・ラット》相手だと滅法強い気がするから使わないでくれたらなーって」

 

 

 そんなところだろうと思った。店長が私のことを考えてくれてるなら私が何度店員を増やそうと進言しても言葉巧みに躱すはずがない。《ファイア・ラット》は速攻デッキでライフを削ることだけを目的にするデッキだから私の方が相性が悪い気もするけど、今の勝負は終始私の方が有利に進んでいたし、そう見えたのだろう。

 

「ボクってやっぱり要らないの?」

 

 プレイマットに置かれたデッキから男性にも女性にも聞こえるような声が聞こえる。そうだそもそも私が間さんにマキアを挑んだのは声の主であるマキアスがマキアしてほしいと助けを求めてきたからだった。

 

「ボクを使ってた前の人間もそうだった。ボクのカードを見つけた時は嬉しそうな顔をしていたのに、マキアをした後すぐに捨てた。ねえ……ボクをここに連れてきたのは君たち人間なんだよね?なんでこんなことをするの?」

 

 ……いきなり重い告白をされても私はどんな顔をすればいいのか分からない。前世でも今世でも私は一般人だ。前世の記憶を持ってるというだけで私はゲームやアニメ、マンガやラノべの主人公ではない。

 だから一般人らしく現状維持、これ以上このマキアスを傷つけないように私は私にできることをする。

 

「唐突過ぎて何も分からないけど、私がカードを捨てることはありませんよ」

 

 これまでの人生前世も含めてだけどカードを売ることはあっても捨てることはない。少なくともこのマキアスのカードたちはスーサイドデッキという独自性がある。さっき最後に使ったルナティックのように相性のいいカードは探せば色々あるはずだから改造が楽しみなのだ。

 

「じゃあこれからもボクでマキアしてくれる?」

「はい」

「絶対捨てたりしない?」

「はい」

「病める時も健やかなる時も……」

「ちょいちょいちょい!待ちなさい!声しか聞こえないマキアスさん。マキアスと人間の結婚の事例はいくつかあるけど紙山ちゃんは未成年だよ!?手を出すのはアウト!」

 

 間さんが私の肩を抱いて私を背中に隠す。そんな店長の言葉にマキアスはきょとんとした様子で答えた。

 

「結婚って何?ボクは前に見た人間同士の契約で宣言してた文言を真似ているだけなんだけど……」

「……なるほど。キミの世界には番とか夫婦とかの関係性がないのかい?」

「ないよ」

 

 マキアスの世界は十人十色だ。人型の生命体だけの世界もあるけれど、爬虫類型とか魚型のみの世界とかも全然ある。文化だってそれ以上に沢山あるのだ。結婚とか恋人の文化がない世界もあるのだろう。

 

「とりあえず自己紹介しませんか?ずっとマキアスって呼び続けるのもなんですし」

「そうだね。ボクの名前は、クレー……クレアで」

「明らかに嘘ついてないかい!?」

「別に嘘でもいいですよ」

 

 せっかく私とコンビを組んでくれそうなマキアスだ。偽名を名乗ったところでカード名は変わらない。中性的な声だとは思うけど名乗る名前は女性名……性別くらいは教えてくれるってことなのかな。

 

「じゃあそろそろ姿見せてくれますか?」

「いいよーマキアエナジーもさっきので多少は貯まったし、ボクも顔を見せた方が礼儀だよね!」

 

 クレアのカードが入ったデッキが光り、私は思わず目をつむる。数瞬の後に光が収まり、目の前に私がなんとなく想像していた通りの金髪の女性がいた。

 

「やっほーちゃんとボクの顔を認識できてる?ちなみにどんな感じか口頭で教えてくれると嬉しい!あと総合的な感想も!」

「えっと、長い金髪を下ろしてますね」

「そうそうそんな感じで白いワンピースを着てますね。総合的な感想だと美しいと思います」

「そっか」

 

 クレアは満足気にうんうんと頷く。ナルシストなのだろうか?他人にも自分の美を強要するタイプの、若干傍迷惑だな。でもまあそのくらいは許容しよう。

 間さんの方はどうかと思って、見るとなんとも苦々し気な顔をしていた。そんなに露骨に態度を表さなくてもとも思うけど……。

 

「それで?クレアちゃんとやらはこれからどうするんだい?」

「えっと?」

 

 間さんの言葉に口にしたのはクレアだが私も同じことを考えた。

 

「マキアスは別にコンビを組んだ相手と年がら年中いる必要はないんだ。それは紙山ちゃんも知ってるよね?だからこれからどうするかなって」

「ボクとしてはカミヤマ?についていくので別に問題ないんだけど」

「私も別にそれでかまいませんけど……」

「紙山ちゃん、ペットを飼うわけじゃないんだ。マキアスには人権が認められているしね。だからそう簡単にOKを出すのは大人として止めさせてもらうよ」

 

 確かに間さんの言い分もわかる。ペットの里親になるのだって厳しい条件があるのだ、それが人間が一人増えるのならさらに厳しい条件にもなるのかもしれない。そして、話した感じクレアに社会適合能力があるようには思えないしどこか雇ってくれる場所でもあれば……あ。

 

「じゃあ店長がクレアを雇えばいいんじゃ?」

「え?」

「私前から言ってましたよね、もっと店員増やした方がいいって」

「ボクとしてはそれでも構わないけどテンチョーは?」

「……まあそれなら妥協点として……うん、わかった。それでいこう、それと私の家に住めばいい」

 

 渋々といった感じで間さんが頷いた。間さんの家に住めるとかクレアがちょっと羨ましいと思わなくもないけど若干キモいので私は心にしまった。

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