ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった   作:七夕茸

34 / 35
カドショで偶然にも逆転神vs切札竜のパックが売っていたので9パック購入
ボルメテウスリバースとメビウスを自引きできたのがとても嬉しい
赤白5軸アーマードに採用しました。


第三十三話

 高鳴る鼓動に身を任せて私は走った。待ち合わせの時間までまだ余裕はあるし、あっちはリニアで移動してくるわけだから早めに到着しても待ち時間が伸びるだけだ。

 だがその合理的でもなんでもない衝動に私は身を任せて走る。

 

 そうして走ってたどり着いた待ち合わせ場所の駅にはやはりと言うべきか想定していた時間より5分ほど早く着いてしまった。

 息を整えながら私はスマホを取り出して待ち合わせ場所の写真を撮る。なんの証明にもならないとは思うけど指でピースを作って写りこませておく。

 

「着きましたよ、送信っと」

 

 送信ボタンを押した後私は時間を確認する。当たり前だが到着してから1分も経っていないためデジタル時計の数字は変化を見せていない。

 長いなぁ……ここまで待つ時間が長いと感じるのは前世の人生を含めても最も長いと感じてしまう。えっと私の前世は享年21歳だから今世の年齢を合計すると37……いや今年で38か。

 具体的に計算してみると中々におばさんだ……。

 

 現実逃避しよう。私は前世でも女子大生だったし、今世は女子高生だ。つまり前世でも若者だし、今世でも若者だから大丈夫だ。大丈夫だけどデートプランをもう一回見直しておこう……

 

 

 

「紙山ちゃーん!」

「ひゃいっ!?」

 

 唐突に声をかけられてスマホを頭上高くにぶん投げてしまった。不格好に回転するスマホを私は眺めることしかできず私に声をかけてきた人物がスーパージャンプをしてキャッチすることでなんとか損傷を免れた。

 

「紙山ちゃん、おはよ」

「……おはようございます、(はざま)さん」

「もしかして怒った?」

「別に、画面が割れなかったので怒ってませんよ」

 

 いつも通りに接してくる(はざま)さんを見てるとなんだか緊張しているのが馬鹿馬鹿しく感じてきた。私にとっては一世一代のデートだったとしても間さんにとってはただバイトで雇っている女子高校生に誘われて遠出しているだけなのだ。

 それを認識してしまうと頭の中がすっとしてきて冷静になる。

 

「時間も惜しいですしさっさと行きますか」

「紙山ちゃんがどこに行きたいのかとても気になるなぁ……」

「黙ってついてきてください」

「冷たくないかい?」

「割とこんなもんでは?」

 

 私は追いかけて来る間さんをチラリと見た後再び歩みを進める。

 彼女の服装は普段見慣れているロングパンツにシャツとエプロンという装いではなく白いロングスカートに肩出しの緑の服……オフショルだっけ?とても可愛らしい服装でこれを見れただけでも今日を迎えられてよかったと思える。

 

「そんなことより勝手に目的地を決めて申し訳ないんですけど観光は私主導でいいですか?」

「いいよ、紙山ちゃんが勝負で勝ったからね」

「よかったです。じゃあバスに乗って行きましょうか」

 

 さりげなく窓際の席を譲ってくれた間さんとともにバスに乗って10分ほど経った。

 

「ここで降ります」

「紙山ちゃん結構渋い趣味だねぇ……」

「そうですか?普通だと思いますけど」

 

 私たちがやってきたのは亜希間(あきま)神社と呼ばれる神社だった。階段を上りながら時折吹く風で揺れ動く木々の音がとても心地よい。

 

「ここがどういった場所か説明しますね!約千年ほど前に……」

「大丈夫だよ紙山ちゃん。ここについては昔何度か来たことがあるから歴史は知ってるよ」

「そうなんですか?」

「うん、亜希間(あきま)神社はマキアと縁深い神社だからね。商売繁盛とか祈るために何度か足を運んだことがあるんだ」

「じゃあつまらないですかね?」

「いや?観光としてくるのは紙山ちゃんとが初めてだから歴史はともかく見どころとかは知らないからね。見どころを教えてくれると嬉しいかも」

「わかりました!」

 

 こうして私たちは一般的な神社の作法の後亜希間神社について散策することになった。

 

「まずはご神木ですね。マキアス……当時は妖怪とか幽霊とか呼ばれてた存在を撃退するための重要な役割だったそうですよ。具体的にどうやっていたのかは伝わってませんけど」

「なるほど……」

 

 間さんも興味があるのか興味深げにうんうんと頷いてくれている。

 時代が進み今でこそマキアスへの理解が進んだことで恐れられることはなくなったらしいが大昔は姿形が異なる生物であったマキアスは迫害だったり討伐の対象だったらしい。

 

「次はこの祠ですかね。千年前に活躍していたこの世界の人間とマキアスとの間の子と呼ばれる人を祀っているらしいです」

「顔がよくてそんな噂が立ったらしいねぇ」

「そうなんですか?」

「知らないのかい?結構有名な話だと思うけど……」

「私が知っているのは説明文に載ってることだけなので」

 

 顔がいいから変な噂をされるとは怖い時代もあったものだ。間さんとか噂の筆頭になりそうだ。

 

「紙山ちゃんとか気をつけてね」

「あ、すいません話聞いてませんでした。何の話です?」

「紙山ちゃんはかわいいねって話だよ」

「なるほど」

 

 この手の言葉を話す時は大概私のことを誤魔化そうとしている時だ。これ以上の深堀りは無駄なので次のスポットに向かった。

 

「続いてはおみくじです」

「なんか急に普通になったね……」

「……ここも歴史がある神社ってだけで後は他と変わらないので見所らしい見所も少ないんですよ。間さんが何度か来てるって言ってたのもあったのに」

「紙山ちゃんが神社仏閣が好きだから来たんじゃないのかい?」

「私、神社という場所が好きなので」

「と、いうと?」

「神社ってお祭りの時以外は人がいないじゃないですか。静かでとても好きなんですよ……こうして二人きりだけの世界って感じもしますしね」

 

 あと植物の匂いが濃いから好きだ。ご神木とか大きな木が生えているし、自然豊かだと前世で生まれ育った街を思い出してSAN値が回復する。

 

「ちょっと!うちがさびれてるとかそんな理由でカップルが来るなっす!イチャつくなっす!」

 

 この神社の巫女さんだろうか?せっかくいい雰囲気だったのに台無しだ。

 それはそうと女子高校生くらいの女の子が巫女服を着てるのはちょっと見栄えが良すぎるな。朝はJKメイド、お昼はJK巫女に会えるとは……。

 

「って……朝理(ともり)さんじゃないっすか。会う予定とかってあったす?」

「ないない、ちょっと観光に来ただけだから気にしないで」

 

 朝理(ともり)というのは間さんの名前で、(はざま)朝理(ともり)がフルネームなわけだけど間さんから名前は似合ってないからと普段は呼ぶのを控えている名前だ。

 なのにこのJK巫女はいつも呼んでますよとでも言わんばかりにその名を呼んだ……私でさえ呼ばせてもらってないのに。

 

「はざまさん?」

「待って、紙山ちゃんが想像しているような関係じゃないから。ね?ちょっと顔が怖いよ……」

「え、朝理(ともり)さん、デートスポットとしてここに連れて来たっすか?肝座ってるというかキモいというか……」

水和(みわ)ちゃんはちょっと黙っててね」

 

 事態は呑み込めないが何をすべきかはわかる。デッキを取り出し、プレイマットを……ない。どっちもない。当然だけどデートには不要のものだから持ってきてない。

 

「じゃあ証明してください。その子とは私の考える関係じゃないんですよね?マキアの賭け(アンティ)の機能でも使ってくれたら信用しますよ」

「デッキもプレイマットもないんだけど……」

「お二人さんデッキもプレイマットもってないんすか?ちょっと待っててくださいっす!」

 

 ありがたい申し出をしてくれたのは()()と呼ばれた巫女の少女だ。彼女は事務所と思しきところに走っていき2セットのデッキとプレイマットを持ってきてくれた。

 

「さて、じゃあしますよマキア。賭け(アンティ)付きのを」

「旅行先でまでマキアしたくないんだけど……」

「間さんが悪いんですよ。こんな遠い場所でも知り合いの年下の女の子がいるんですから。せっかく二人きりで楽しい旅行だと思っていたのに……」

「いや、だから話を聞いて」

「問答無用!起動(セット)

起動(せっと)

 

実行(プレイスタート)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。