ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった   作:七夕茸

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前書きに色々書いていますけど無い方がいいですかね?


第三十四話

 プレイマットから魔法陣が展開されいつも通りにフィールドが展開される……はずだがいつもより魔法陣の文字の密度が少ない気がする。

 間(はざま)さんも同じ印象を抱いたのか用意してくれたJK巫女に耳打ちで質問していた。

 あの二人距離が近いな……。

 

「水和(みわ)ちゃん、これってもしかして……」

「勿論!訓練用のプレイマットっす!」

「そっか……そっかー、紙山ちゃーん」

「な、なんですか?」

 

 急にこちらの方に振り向いて話しかけられてしまい思わず声がこわばってしまった。悟られないように咳払いを一つ置いてもう一度聞き返す。

 

「どうかなさいましたか、間(はざま)さん」

「紙山ちゃん機嫌なおしてよ……」

「私はまったくもってご機嫌ですが」

「うーんだめそう……水和(みわ)ちゃんのミスでね、ちょっとライフ減少時のやつが痛いかもだけど、頑張って!」

「ミスってなんなんすか!?」

 

 間(はざま)さんの言葉に疑問を浮かべながらもとりあえずダイスを呼びだす。間さんとマキアをするときはいつもこれで決めている。

 二人でせーのでサイコロを転がすと私の出目の方が大きかった。

 

「先攻は私がもらいます!」

 

 お互いに知らないデッキの場合有利なのはきっと先攻だ。

 手札を確認するが、なにこの手札……能力なし(バニラ)のカードが5枚中2枚もある。能力なし(バニラ)サポートのデッキかと思ったが他のカードの効果も別にそうでもない。私の知らないデッキタイプだ。

 

「とりあえず、2コストで《無名の訓練兵》を召喚!そしてバトル、訓練兵で攻撃!」

「ライフで受けるっ……」

「ターンエンドです」

 

 剣道で使うような防具を着たシルエットが間さんに殴りかかる。打点は1だからこれで間さんのライフは9、間さんが使うシルエットなら同じコストでダメージを与えたら一枚ドローができるのに、このカードはパワーが高いくらいで何もない。

 

「じゃあ私のターンドロー、4コストで《無名の訓練兵・香(きょう)》を召喚」

 

 召喚されたのは私の場にいるのと同様のシルエット(無名の訓練兵)……もしかして間さん私のデッキは同じ?

 

「バトルに入るよ、香の訓練兵で攻撃」

「ライフで受けます!」

 

 槍兵が槍を振りまわしながら私に接近してくる。しかしその槍の先端はてるてる坊主の頭のように丸く綿が詰められてるようだ。ならライフ減少時の痛みも最小限に……。

 

「げほっ!ごほっごほ……ご……っふう。はぁはっ?」

 

 なにこれ……自傷ダメージと同じくらい痛い!

 

「あーうんそうなるよね……ごめんね、紙山ちゃん」

「なんかっ!普通のダメージが自傷ダメージくらいかそれ以上に痛いんですけど……」

「なるほど、あれってコレと同じ感じなんだぁ……紙山ちゃんよく何度も使ってるね?」

「誤魔化さないでくださいよ」

「だからさっき言ったじゃないかちょっと痛いかもって。あれと同じくらい痛いのは流石にこっちも想定外だよ」

 

 正直に話しているように見えるけどいつも通りのようにも見える。

 私には相手の嘘を判断する能力はない。黒いものを白いものと偽るみたいな感じの明らかな嘘は流石にわかるがそれ以外はさっぱりだ。

 

「あとターンエンド」

「……あれ、さっき私の攻撃なんか普通に受けてませんでした?」

 

 あの痛み来るとわかっていてもかなり痛い。なのに間さんは顔色一つ変えずになんならちょっとしたうめき声もあげずに受けた。それは流石におかしい。

 

「私はこのプレイマットを使うのに慣れていたからね」

「気にしますけど」

「紙山ちゃんは知らなくてもいいんだよ……」

 

 間さんはいつもそうだ私に何か大事なことを隠す。今の発言だってそうだ、このイカレたプレイマットをいつも使っていたとか絶対になにかある。

 

「間さん、もしかして……虐待を受けてたんですか?」

「はい?」

「こんな頭のおかしいプレイマットを日常的に使っていたとか虐待以外ありえません!」

「待って待って、どうしてそんな結論になるんだい!?」

「やっぱこのプレイマットって頭おかしいんっすね……」

 

 JK巫女の目からハイライトが消えている。もしかしてあの子はこのプレイマットしか知らないのだろうか……かわいそうに。

 

「紙山ちゃん、私これでもいいとこの娘なんだけど知ってるよね!?」

「あ、そういえば……いやでもだからこそ!虐待まがいの厳しい躾で痛みに慣れて……おいたわしや間さん」

「急に間違った同情されても困るんだけど……」

「間さん、いいんですよ無理しなくて。何もしなくていいですからこのままゆっくり身を任せて倒れてください。5コストで《無名の訓練兵・銀(ぎん)》を召喚!召喚時効果によってデッキから2枚引いてから1枚捨てます」

 

 それはそうと私は盤面に集中する。私が出したのは5コストで2枚引いて1枚捨てるだけ(ただのルーター)のシルエット……ほんとにどこを目指して作られたデッキなのかわからないなこれ。

 

「バトル!2体の無名の訓練兵で攻撃!」

「ライフで受けるよ……っつつ。急に殴ってくるね!?」

「勝負の最中に急にも何もないと思いますよ。ターンエンドです」

「それはそうだけど……」

 

 これでこのまま削り合いが続けば私が勝つことができる、と思うけど間さんがこの状況を静観するとは思えない。普段の間さんのデッキならどういった動きをしてくるかわかるけど今の間さんのデッキはどういった動きしてくるのか分からないから対策の仕様がない。

 

「ドローこっちも5コストで《無名の訓練兵・銀(ぎん)》を召喚して2枚ドローしたのち1枚捨てるよ。バトルに入り香で攻撃」

「ライフで受けます!」

 

 再び振るわれる殺傷性のなさそうな一撃、覚悟してなきゃ耐えられないなら覚悟してれば耐えられるということだ。

 防御のために腕を心臓の前にクロスさせて歯を食いしばる。

 

「っづぅ……!」

「ターンエンド」

 

 痛い……できれば速攻で倒したいけど、このデッキ火力低すぎだしじっくり戦わないといけないのは少し面倒だ。

 

「私のターン、ドローします」

 

 引いたカードは《無名の訓練兵・飛(ひ)》コストは、8!普段なら重くてあまり採用したく重さ(コスト)だけど多分こんだけ重いならこのデッキの切り札!

 私のエナジーは6だから後2ターン耐えれば出せる。プランは決まった。

 

「4コストでスペル発動!《地鳴り》相手は自身のダウン状態のシルエットを一体を破壊してもらいます!」

「《無名の訓練兵・香》を破壊するしかないね」

「バトルには入らずターンエンドです」

 

 ライフもボードアドバンテージも私が有利だしこのまま耐久していけば……。

 

「紙山ちゃん、このままいけば勝てると思ってないかい?」

「え?」

「紙山ちゃんはこのデッキを知らなけど、私はこのデッキを何度か使ったことがあるんだ。だからその情報差についてあることはちょっと悪いなと思うよ」

「それがどうしたって言うんですか?」

「だから何をすべきなのかを知らない、6コストでスペル《名成(めいせい)》を発動させてもらうよ」

 

 間さんの盤面に残った《無名の訓練兵・銀》が防具が溶ける、すると白を基調とした甲冑と大太刀を携えたシルエットが現れた。

 

「《名成(めいせい)》の効果は、自分の場の無名の訓練兵と名のつくシルエット一枚を対象にして発動でき、デッキからそのカード名が書かれているカードをデッキから場に出し、対象にしたシルエットは墓地に送られる。私は《無名の訓練兵・銀》墓地に送り《いぶし銀の成銀》場に出す」

「なるほど……」

 

 デッキコンセプトはあのスペルか……手札を見てみるがまだ来ていない。となるとこっちの飛はあまり強くないのか?

 

「バトルに入り成銀で攻撃するよ。攻撃時の効果でデッキからカードを1枚ドロー」

「……ライフで受けます!」

「打点は2だよ」

 

 成銀と呼ばれたシルエットに大太刀の峰で左から横薙ぎにされる。

 

「きゃあああっ!」

 

 普段なら一歩のけぞるくらいなはずなのに吹き飛ばされた。浮遊感を感じる身体がとっさに足を折り畳んで着地に備える。そうして怪我無く着地できた。

 

「紙山ちゃん身軽だねぇ……ターンエンドだよ」

「ありがとうございます。ドロー!」

 

 もう色々驚きすぎて一旦、自身の左腕の痛みにだけ集中しよう。

 ……痛い。なら生きてるからよし。

 それより振り返れ、さっき除去札を使ったのは軽率だっただろうか?いや、あれは相手依存だったから結果論だ。

 

「私は5コストで《無名の訓練兵・桂》を召喚さらに2コストでスペル発動!《ハルカスの壺》デッキからカードを1枚ドロー。バトル!桂と銀で攻撃!」

「どっちもライフで……くっ!」

 

 二体の無名の訓練兵の挟み撃ちで殴りかかるが間さんは難なく片腕ずつで受け止める。素人目にはかなりの勢いで殴りかかれていたはずだけど、なんともなさげでやってのけて驚く。

 

「ターンエンドです」

「いい攻撃だね、紙山ちゃん。じゃあこっちのターンだ!ドローして7コストでスペル発動《トーレンシャルフレイム》互いのパワー1600以下のシルエット全て破壊する。これでそっちのシルエットは全滅だよ」

「私のシルエットたちが!」

「そしてバトルにバトルに入り成銀で攻撃、攻撃時に1枚ドロー」

「ライフで!くっ……あああ!」

「ターンエンド」

 

 まずい一気に三面取られた……手札にあるのはドロソ1枚シルエット3枚パンプアップ(パワー増加魔法)1枚。こっちにはあの《名成(めいせい)》というスペルは来ていないからシルエットの強化は不可能。ここで引けたらいいんだけど……。

 

「ドロー!」

 

 祈りは空しく引けたのは《無名の訓練兵・桂》、先ほども出したこのシルエット効果はブロックされないだけだ。これでは間さんのシルエットを除去できない。

 

「だけど割り切る!8コストを支払い《無名の訓練兵・飛》を召喚!そしてバトル!飛で攻撃します。そして効果発動!飛がそのターン始めて攻撃した時アクティブ状態に!」

 

 攻撃の手は緩めない。例え相手のシルエットの方がスペックが高くても1枚のカードでは勝負を決めきることなんて不可能だ。そして殴り続ければ相手は死ぬ!

 

「ライフで受けるよ」

「打点は1なので1ダメージ受けてください!」

 

 戦車(チャリオット)に乗った剣道防具のシルエットが間さんを轢く。しかし、これを間さんは立ち位置を少し変えるだけでかすらせてとどめた。

 

「さらにもう一回!」

「そっちもライフだよ」

 

 遠く右回りで旋回してきた戦車が再び間さんに襲い掛かるが間さんもまた少しの足運びでかすらせるだけに留める。

 

「ターンエンドです」

 

 これで間さんのライフは3、次のターンに手札にあるシルエットも投入して攻めれば勝てる!

 

「ドロー、紙山ちゃん私の勝ちだね」

「はい?」

 

 間さんのライフは風前の灯火、エナジーが8だったとしても私のシルエットを除去しつつ次のターンの攻撃に備えるなんて不可能だ。

 

「2コストで《無名の訓練兵》を2体、4コストで《無名の訓練兵・香》を1体召喚」

「……あ」

「バトルに入り成銀と無名の訓練兵3体で攻撃」

 

 4体のシルエットの総打点は私(・)の(・)ラ(・)イ(・)フ(・)と(・)同(・)じ(・)5、除去系のインタラプトスペルを撃とうにも手札にないし、そのエナジーもない。

 

「全てライフで……受けます」

 

 大太刀の峰で横に吹き飛ばされた後槍と殴打によってボコボコにされた。

 

「終了(プレイオーバー)だよ」

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