ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった   作:七夕茸

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四話です。2話で《観測されるモノ・アサド》をヤギと書いてましたがライオンでした。修正しました、早めに設定ミスに気づけてよかった……。


第四話 なぜ学校に行かなければならないんだろう

 クレアと名乗るマキアスとコンビを組むと口頭で約束した次の日私は……普通に高校に通っていた。

 

「せっかくマキアスとコンビに成れたのになぜ学校に行かなければならないんだろう……」

 

 高校1年生までの範疇ならギリギリ前世の知識貯金でどうにかなるのだ。高校2年生からの内容だと実際に学んだ内容でも若干……いや大分怪しくなるけれど。転生特典で高校までの授業内容完璧になったりしないだろうか。

 

春陽(はるひ)おっはよ~」

 

 悩みなんてなさそうな陽気な声とともに後頭部に豊満で柔らかな感触が襲う。紙山(かみやま)春陽(はるひ)、これが今の私の名前だ。しかしこの世のものとは思えぬ感触に一瞬何をされたのか分からなかったがすぐに現状を把握し声の主に恨み節を告げる。

 

 

夏雲(なぐも)、重い!」

「そう!重いんだよ~!だからさ~春陽の肩がちょうどいい位置にあって助かるよ~」

「そのデカい袋引っぱたこうか!?」

「セクハラだ~!春陽のえっち~!」

 

 ぽよぽよとデカい袋を揺らして私を煽るのは私と同じ《マキア部》に所属している同級生の鹿渡(かど)夏雲(なぐも)だ。私としては誰にでも敬語で接したいけど夏雲の前でだけはタメ口になってしまう。というかこいつ相手に敬語で話したら5時間はそのことでいじられる。

 

「おや、春陽と夏雲じゃないか。朝から仲がいいね」

「お~冬雪(ふゆき)~!秋雨(あきさめ)ちゃんもおはよ~」

「おはよう、ほら秋も」

「ん、おはよ」

 

 上森(かみもり)冬雪(ふゆき)は私の幼馴染だ。小学生の頃に事故で車椅子生活を余儀なくされたが、切り揃えられた銀髪から片目だけ出すという髪型と持って生まれたビジュアルで学園の王子様の座についている。

 秋雨(あきさめ)の方は《秋めく心(フォールハート)秋雨(あきさめ)》というカードのマキアスで、ぴょこんと外に跳ねた紅葉のようなオレンジ色の髪の毛がトレードマークの少女だ。冬雪の事故に関係しており、日常生活では冬雪の世話を焼いている。ちなみに身長は私とそう変わらないが、地球人より寿命が長い種族らしく私たちより年上らしい。

 

「秋雨ちゃんは今日も小っちゃくてかわいいね~撫でていい~?」

「子供扱いやめろデカパイ」

「なんで~!?じゃあ春陽を~」

「殺す」

「じゃ、じゃ~冬雪を~」

「冬雪のファンクラブに殺されるじゃん、おめでとう」

「確かに~」

「その前にウチが殺す」

「秋も春陽も物騒だからやめようね」

 

 こうしていつも通りに会話してるともしかして昨日私がマキアスと拾ったのは夢だったのではと思ってしまう。(はざま)さんに連絡取ろうかな。でも朝8時頃は寝てるって言ってたし意味ないか。スマホに映った連絡先を眺めていると夏雲が上から覗きこんできた。

 

「春陽~何見てるの~?」

「バ先の店長の連絡先」

「春陽の想い人だね」

「……違いますからね」

「春陽、遂に添い遂げたの?おめでと」

「違いますから!」

 

 冬雪も秋雨も何を勘違いしているのだろうか?私は別に(はざま)さんを好きというわけではない。ただちょっとバイト中暇な時間があったらサボってないか監視してるくらいで、私なんかが付き合おうなんておこがましい。

 

「ふ~ん?なんでそんなもの見てるのかな~今は私と喋ってるじゃ~ん」

 

 面白くなさそうなのかやたら胸を私の肩に乗っけてこようとする。自分だけ私のバイト先を知らなかったから拗ねているのだろう、幼稚だ。

 

「店長の家にマキアスがいるからどんな感じか聞こうと思って」

「あ~マキアス……春陽マキアス好きだよね~いつか来るといいね~マキアス」

「いや、店長の家にいるのが私のコンビのマキアスなんだけど」

「おーおめでとう。小学生の頃から欲しがってたよね」

「春陽、おめでと」

「二人ともありがとうございます」

 

 二人はこれからコンビの先輩になるわけだし、二人のことだからあるのかわからないけど色々気をつけていることを聞いてもよいかもしれない。

 

「ねえ~春陽~何か私にだけ隠し事多くな~い?」

「別に隠してるつもりはないんだけど」

「い~やしてるね~すっごいしてる。私たちは無二の親友じゃないの~!?」

「……?夏雲のことは友達とは思ってるけど別にそこまでは……なんなら冬雪の方が親友だと思ってるし」

「嬉しい言葉だけど……多分今の状況で言うべき言葉ではなかった気がするね」

「ん、春陽はその辺鈍感」

「春陽……放課後部室来て」

「え?まあいいけど」

 

 夏雲の声のトーンが若干下がったような気もするけど気のせいだろう。夏雲が誰かに怒ったところを見たことがない。こいつは誰にでもこんな調子なのだ。怒ってる風で気を引きたいだけだろう。でもスーサイドデッキを色んなデッキに当てたいし、彼女の提案を受けることにした。

 

 放課後、部室のドアを夏雲が仁王立ちしていた。長袖のジャージを肩にかけハチマキを巻いている。大昔の熱血漢みたいな恰好なのだろうけどまったく似合ってない。

 

「よく来たね~春陽~」

「いや、呼んだの夏雲じゃん。というか何その恰好」

「問答無用~!起動(セット)~」

「何も話す気がないのだけは伝わった。起動(セット)

 

 夏雲は床に敷いていたプレイマットにデッキを置いて起動する。しょうがないので私も普段から持ち歩いてるプレイマットを机に置いてその上にデッキを置き起動した。

 

「「実行(プレイスタート)!」~!」

「先行は私~」

「別に問題ないけど私以外にはやめなよ」

 

 マキアの先攻後攻を決めるのはじゃんけんでもコイントスでも何でもいい。今回みたいに互いの了承でもいいわけだけど大会などでは公平な手段で決めるべきなのだ。それでトラブルになっても困るので一応注意しておく。

 

「ふ~ん今更独占欲?」

「ごめん、何を言ってるのかわからない」

「春陽はそうだよね~だからマキアをするんだけどね~《ミグラトリー・レッドサルモン》を召喚~このままターンエンド~」

「私のターンドロー!」

 

 昨日家に帰ってから拾ったデッキのカードのテキストは全て読んで理解した。きっとこのデッキの力の本領を出せるはずだ。

 

「《観測されるモノ(オブザーブド)・チンウー》を召喚!ライフを支払って……ったあああ!効果発動!」

「え~!?なんでなんで自分でライフを減らしたの~!?痛くないの~!?」

「っふう……痛い、けど!その効果により相手のパワー1000以下のシルエットを二体破壊!」

「お~強力~!レッドサルモンの効果発動~相手によって破壊される時手札に戻る~」

「だけど盤面がら空き!バトル!チンウーで攻撃!」

「いたた~」

「ターンエンド」

 

 相手の盤面には何もない。しかし、手札は潤沢。《ミグラトリー》デッキの本番はここからだ。

 

「じゃあさっきと同じようにレッドサルモンさらに《ミグラトリー・スワロー》を召喚~」

「来たかスワロー!」

「知ってると思うけど一応効果を説明するね~スワローの効果で私の《ミグラトリー》シルエットは全員直接攻撃ができるようにな~る」

 

 《ミグラトリー》は全体的にパワーも相手に与えるダメージも小さい。しかしアンブロッカブル(防御不可)で確実にダメージを与えつつレッドサルモンなんかは倒れてもまた盤面に戻ってくる……。

 仮に《ミグラトリー》と間さんの《ファイアラット》が純粋なダメージレースをするならおそらく間さん有利だ。そのくらいには火力は低い。

 だが常に自分からダメージを食らいにいく《観測されるモノ》にとっては天敵だ。

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