ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった 作:七夕茸
「バトル~《ミグラトリー・スワロー》で
「元々ブロックできないけどね!ぐっ……」
「ターンエンド~」
「私のターンドロー!」
さてどうするか……まあ基本に忠実にいこう。
「《
「春陽~見てるだけで痛そうだよ~」
「うっさい!効果によりデッキの上から三枚を表向きにして《観測されるモノ》
公開された山札の上3枚の中に私のお目当てのカード《観測されるモノ・アサド》はなかった。あれを使えば一気にゲームを決めきれたのに……ないものねだりをしても仕方ないので私は対処療法になるカードを手札に加えた。
「《観測されるモノ・チンウー》を手札に」
「二枚目か~結構キツい~」
「だからだよ!そのまま召喚して効果っつうあ”あ”あ”発動!《ミグラトリー・レッドサルモン》と《ミグラトリー・スワロー》を破壊して、バトル!チンウー2体とゲットで攻撃!」
「サルモンは効果で手札に戻るね~何もできないし、ダメージは通すよ~お~ウサギは案外モフモフだ~」
「余裕そうだね……ターンエンド!」
「そりゃ~私は一回しか攻撃してないのに春陽の方がボロボロだしね~精神的にはすっごい余裕だよ~」
「……それもそうだ」
盤面はチンウーの効果で盤面のシルエットの数はこちらは有利だが、別にこっちのシルエットだって除去耐性だったり、ステータスが優れているわけではない。たった一手でひっくり返る可能性があるのはとても心臓に悪い。
「私のターンドロ~!私はスペル《
「やっぱり全滅したか……」
「あ、そうだ。三春~何か
「一応要求だけは聞くけど何?」
「今日この後、春陽のバイト先に連れてって~」
「それくらいならまぁ……その賭け、受けた。私が勝利したら、明日から三日間お昼奢って」
「そっち金銭的要求するのズルじゃな~い!?」
「ズルじゃない。そもそも私には夏雲に何かしてほしいとか思ったことないし」
……もう少しだけ高校生らしく落ち着きのある振る舞いをしてほしいとは思うけど、大人しい夏雲なんて夏雲ではない気がして言葉を飲み込んだ。
「まあ~いいや私が勝てばいいんだから!賭け成立~!」
プレイマットが形成するフィールドから煙みたいなのが噴出して手首に賭けの印であるブレスレットが出現する。
「賭けは成立したわけだけど、そっちの盤面は空だよ」
「まあでもこんなに手札があるわけだし~色々できるってもんよ~」
彼女の言葉はもっともだ。あの手札ならインタラプトスペル……相手のターンでも使えるスペルを1枚や2枚抱えててもおかしくない。だけどそれなら相手の払えるコストを考えれば問題ない。
「私のターンドロー!」
お目当てのカードが引けた、ならこれがこのマキアのラストターンだ。
「私は《
「えっと……大丈夫~?」
一応呼び出してマキアを持ちかけてきたのはあっちであるはずなのにドン引きしないで欲しい。いやスーサイドデッキを使うことにしたのは自分の意思ではあるんだけどさ。ライフが残ってるしこれで十分だ。
「さらにスペル!《
「それが春陽のそのデッキの切り札か~」
狂気に満ちた瞳で
「バトル!アサドで夏雲を直接攻撃!」
「インタラプトスペル発動~《向かい風》~これで相手のシルエット一体を手札に戻すよ~」
切り返しの一手なのであろうスペルが発動され、強風がアサドを襲う。しかしアサドはその鬣をたなびかせるだけでなんの影響もない。
「な、なんで~!?」
「アサドは召喚時に支払ったライフ未満のコストの相手のカードの効果は受けない!」
百獣の王は何者にも害されないからこそ百獣の王なのだ。風でその歩みは止まらない。アサドがライフを削りきったことでマキアは決着した。
「
「何そのデッキ~!効果が効かないとか反則じゃ~ん!」
「じゃあ私帰るから。店長のところ行ってクレアの様子見に行かないとだし」
「……クレア~?」
さっきまで悔しがっていたのに私のコンビの名前を聞いてなぜかこちらを見る目が鋭くなったような気が。
「言ってなかったっけ?私のコンビのマキアスの名前だよ。金髪碧眼の女の子」
「……その子かわいい~?」
「え?うん、かわいいと思うけど……?」
マキアスなんてみんながみんな顔がいい。だからかわいいかどうかと聞かれればかわいいと答えるしかないんだけど、何が言いたいんだろうか。
「私もその子に会いたいな~なんて……」
そんなにマキアスに会いたいなんて、夏雲も私と一緒でマキアスとコンビになりたいのだろう。私もよく秋雨に会って羨ましがってたからわかる。
「いいよ。一緒に行こっか」
「え……春陽って私をバイト先に連れて行きたくなかったんじゃ~?」
「夏雲ってバイト先教えたらずっとからかってきそうだから教えて来なかったけど、マキアスに会いたいって気持ちは私も分かるつもりだから教えてもいいかなって」
「じゃ、じゃ~この賭けの意味は?」
「勝手に賭けてきたのはそっちだし。ほらさっさと行くよ」
私は打ちひしがれている夏雲の手を取って間さんの家に向かった。