ライフ減少がリアルダメージになる世界で自傷デッキを拾ってしまった 作:七夕茸
新弾でG城が来るんだからもっと注目されるべきカードだと思うんですけどね……。
《楯教の求道者ザゼ・ゼーン》はいいぞ。
クレアとコンビの契約を結んで満足した私はそのまま帰ろうとしていた。
「いやいやいや紙山ちゃん!?何で帰るんだい!?」
「え、用事は済みましたし……あ」
「うちの片づけ手伝ってくれるって言ったよね?」
「そう……ですね……」
私は意識の外に追いやっていた部屋の現状を見渡す。廊下にも物が散乱しているから少し警戒していたが、何とか足の踏み場がないわけでもないのはありがたかったかった。
「
「いや~流石に手伝うよ~」
「カミヤマーマキアしないの?」
「人間には生活があるんですよ。健全な生活があるからこそ、健全なマキアが出来るってもんです。汚部屋には健全な精神は宿りませんから」
「カミヤマはここに住んでないけど?」
「……ここは私の職場の上の階ですし、こんな惨状を見たら就業中ずっとこの部屋のことが気になって気になってしょうがなくなるんですよ。だから今からしっかりと片づけと掃除をするんです」
思ってないことをよくもまあスラスラと理由をあげつらうことが出来たなと我ながら驚いた。正直今日はスーサイドデッキを使う気はないし、マキアするにしても普段使いしてる方のデッキだ。あれは同じ日に何度も使いたいものではない。一応コンビ契約をしているのでクレアのカードが入っていないデッキを使ってもマキアエナジーは彼女のもとにも入ってくるから彼女の要望には応えられなくもないけど今は掃除優先だ。
「そういえば、紙山ちゃんの服装見てて思い出したんだけどさ、紙山ちゃんって女子高校生だったね」
「店長……その発言だけだと通報されますよ」
私はしないがそういう発言で通報されて捕まるのは勘弁してほしい。うちの店にも普通に小学生のお客さんだってくるのだ。変質者として捕まりましたとなったらとんでもないことになってしまう。
「え?……いや違うからね!?べ、別に紙山ちゃんのことを今、そんな風に見ていたわけじゃないからね!?」
「えっと……店長のそういったのは私が受け止めるので夏雲には手を出さないでくださいね?」
一応念には念を入れておく。私は精神年齢的にはそういった目で見られても大丈夫だが、夏雲はその辺りが敏感な思春期だ。どんなことが原因で傷つくか分からない。
一応店長の目線を追ってみるが夏雲の方には向けられておらず、私にだけ注がれていて安堵する。
「違うから……紙山ちゃんたち高校生なんだし
オリンピア……前世の世界にあった4年に一度8月ごろにあったスポーツの祭典と違ってこの世界では野球の夏の大会みたいなものだ。
去年高校一年生だった私たちは県大会まではコマを進めることが出来たものの大黒柱だった先輩が体調不良で倒れて敗退してしまった。
「出ますよ。ね、夏雲」
「そうだね~
「うん」
「それでさ~春陽はどっちのデッキを使うの~?」
夏雲は私が一昨日まで使っていたデッキとスーサイドデッキのどちらを使うかと聞いてくるが、彼女の言いたいこともわかる。まあでも、夏雲の疑問に対しての答えは私の中で既に出ている。
「私はスーサイドデッキを使ってオリンピアに出るよ」
「すーさいどってさっき使ってた痛そうなやつ~?」
「あれがクレアのデッキだからね」
別に以前までの私のデッキに不満があったから乗り換えるのではない。あれはあれで強みはあったし、私は楽しんで使っていた。
だがクレアと共にオリンピアで勝利を積み重ねたい。偶然街で会ったマキアスと勝利する。それはきっとロマンのあることだ。私はそんなことを夢に見ていたのだから。
「カミヤマはボクを使ってくれるんだね?」
「それがコンビですから」
「ボクを使ってるとカミヤマは苦しそうなのに?」
「その辺はプレイマットの仕様のせいなので」
プレイマットの製作陣は何を考えているのだろうか……確かにシルエットは実体化してるし、それ相応の質量も持っているからまともに食らえば大けがするに違いない。というか時速40キロ前後の車両に轢かれるだけで人は死ぬのを私は実際に経験している。このマキアにもカードゲームの花形であるドラゴンが存在しており、明らかに車より重そうで速い。
だからそれを痛いですましているのはすごいことなのだろう。なんで自傷ダメージはそれよりずっと痛いのか分からないけど……。
「あとオリンピアで活躍すればクレアちゃんにもメリットはあるよね」
「メリットー?」
間さんの言葉にクレアは首を傾げるが正直私もよくわかっていない。大会勝ち数が多ければその分マキアができて、クレアのもとに入るマキアエナジーが沢山という単純な話ではない気がした。
「オリンピアの全国大会は色んな媒体で中継されるからね。
「ん-?」
「えっと~?」
「……あ、なるほど」
「紙山ちゃんはわかったみたいだね」
前世の全国大会後のショップのカードの相場の動きを思い出した。大会での成績がいいデッキに入るカードは値段が上がる。それは需要があるということであり、それだけ使用者が増えるということだ。
「観測されるモノのデッキを使う人が増えるかもしれないってことですね?」
今現在、使用者が私以外にいるのか分からないデッキが多くの人の手に渡ればそれだけクレアのもとにマキアエナジーが入ってくる。
コンビを組んだ私がマキアをした時に発生するマキアエナジーよりは少ないかもしれないが、塵も積もれば山となるだ。私のように継続して使用してくれる人だっているかもしれないのだ。
「なるほどー!カミヤマ!一緒にオリンピア頑張ろうね!」
「はい、よろしくお願いします」
「春陽~なんか固くな~い?」
「私は誰に対してもこんなものだよ。タメ口になるのは夏雲ぐらい」
「そっか~私だけか~」
自分だけタメ口で呼ばれることになぜそんなに嬉しがるのか分からない。なぜか間さんがこちらをじっと見つめてくる気がしたけど気のせいだ。
当面の目標も再確認したし、頑張ろう。