君の楽園0   作:丸み

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一話です。ぬおー


第一話.始まりの光

 世界は理不尽だと思う。

 今日を生きるのも必死な人間がいる一方で、溢れるほどの富をゴミのように捨てる人間もいる。

 そして──まるで不幸を嘲笑うかのような、雲一つない酷い晴天。

 吐き気がする。神様ってやつは、どうも悪趣味らしい。

 

「……っち」

 

 こんなクソみたいな世界で、私──レネ・アレントは生きている。

 

──これは、私による私のための物語だ。

 

 

 街はお祭り騒ぎだった。どこへ行っても人、人、人。通りには屋台がびっしりと並び、焼けた肉の匂いや甘い菓子の香りが入り混じって漂っている。

 この国の名前は【ベルロード】この世界で一番活気のある国だ。……少なくとも、表向きは。

 私は賑やかな通りを素通りし、目的の場所へ向かう。表通りの途中にある細い路地裏。そこへ足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。

 腐った食べ物の臭い。散乱したゴミ袋。その間を、鼠が平然と歩き回っている。私は立ち止まった。

──この先だ。私が感じ取った、強い能力の反応は。

 さらに奥へ進むと、ゴミ袋の山が見えた。その上に、一人の少女が座っていた。

 燻んだ黄金色の髪。この世のすべてを憎んでいるかのような、鋭い赤い瞳。彼女は両手で包み込むようにして、青い光を見つめていた。

 

「どうも。こんなところで何をしているんだい?」

 

少女はちらりとこちらを見て、短く言った。

 

「集中してるから黙って」

 

「おっと、すまない」

 

 どうやら邪魔をしてしまったらしい。私は軽く肩をすくめ、黙って待つことにした。前髪の隙間から覗くその視線には、明確な拒絶があった。他人を一切信用していない目だ。

 しばらくすると、青い光がふっと消えた。彼女の手の中には、小さな水のボトルがあった。少女はそれを少しだけ飲むと、すぐに立ち上がり、この場を去ろうとする。

 その前に、私は一歩踏み出した。

 

「どけよ」

 

 少女は鋭く言い放つ。

 

「その服装……どうせ偉い人だろ。お偉いさんは、私みたいなカスに用なんてないだろ?」

 

 そう言って、彼女は片手をこちらへ突き出した。その手に力がこもる。私はすぐに気づき、その手首を掴んだ。

 

「私が偉い人なのは間違っていない」

 

 私は静かに言う。

 

「だが、今日は君に用があって来た」

 

 少女は鼻で笑った。

 

「あぁ、もしかして?弱いやつを痛ぶるのが趣味のカスか?」

 

「そういうわけじゃないんだが」

 

 私は少し困ったように頭をかいた。

 

「どうすれば話を聞いてくれる?」

 

 少女はふん、と鼻を鳴らす。

 

「話を聞いてほしいなら、力ずくで私を黙らせてみな」

 

「……そうか」

 

 私は一歩近づいた。

 

「わかった」

 

 次の瞬間、私は手刀を少女の首元へ落とした。少女の体がぐらりと揺れ、そのまま意識を失う。倒れかけた体を受け止め、肩に担ぐ。そして私は、何事もなかったかのように路地裏を後にした。

 

 

「さて。まずは自己紹介からしようか」

 

 気がつくと、私はベッドの上にいた。どうやら、あの女が泊まっている宿らしい。ゴミ溜めで育った私でも分かる。普通の宿とは、明らかに格が違う。柔らかいベッド。綺麗な部屋。窓から差し込む光。

 ……こんな場所、初めてだ。おそらく私は、奴隷として使われるんだろう。そんなことを考えていると、女が口を開いた。

 

「私の名前は花落栗光莉(からくりひかり)。現代世界のWPOという組織で、第一部隊副隊長を務めている」

 

 彼女は内ポケットから証明書を取り出した。

 現代世界。ここ【テリオス】とは文明も文化も違う、もう一つの世界。世界の行き来自体は珍しくなく、旅行感覚で渡る人間もいる。そしてWPO。現代世界の治安維持を担う組織らしい。

 

「私はレネ・アレント」

 

 私は短く言った。

 

「ただのガキだ」

 

 何の用で連れてきたのか知らないが、勝てる相手ではない。

だから私は、おとなしく名乗った。

 光莉は私をまっすぐ見つめた。

 

「レネ。君を連れてきたのは、君から強い能力反応を感じたからだ」

 

「能力反応?」

 

 私は手を開く。

 

「あぁ、これのことか」

 

 掌の上に、小石を生み出す。私の能力。

──物を造る力。

 光莉の目がわずかに細くなった。

 

「それだ。君は気づいていないかもしれないが、その力はかなり強力だ。もし悪い人間に見つかれば悪用される」

 

 そう言って彼女は立ち上がり、私の隣まで歩いてくる。そして、私の目線に合わせてしゃがんだ。その目には、嫌悪も軽蔑もない。ただ、純粋な期待があった。

 

「私にその力を使わせてほしい」

 

 彼女は言う。

 

「私についてこないか?」

 

 私は少しだけ考えた。……断っても、意味はない。

 

「……わかった」

 

 短く答える。ここからだ。

 

 ここから、私の物語は大きく動き始めた。




次も頑張ります。( ´ー`)
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