君の楽園0   作:丸み

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二話です。わー


第二話.入隊試験に向けて

 光莉に連れられ、私は森の中を歩いていた。木々の隙間から差し込む光が、地面にまだらな影を落としている。足元では乾いた落ち葉がかさりと音を立てた。

 

「で、私はどうすればいいんだ?」

 

 私は前を歩く光莉に声をかける。光莉は振り返らずに答えた。

 

「一年後にWPOの入隊試験がある。それに合格できるくらい強くなってもらう」

 

 WPOの入隊試験は、毎年担当する試験官によって内容が変わるらしい。

 ただし共通しているのは対人戦闘。戦闘能力を測るため、必ず実戦形式の試験があるという。つまり私は、そのための特訓に連れてこられたわけだ。

 しばらく歩くと、視界が急に開けた。森を抜けた先に、小さな空き地があった。

 

「着いたぞ」

 

 光莉はそう言うと、近くの切り株に腰を下ろした。

 

「まずは能力とオーラの説明からしようか」

「オーラ?」

 

 聞き慣れない言葉に、私は眉をひそめる。

 

「オーラは身体に宿るエネルギーだ」

 

 光莉はそう言いながら立ち上がった。

 

「オーラを使うことで、能力を行使できる」

 

 次の瞬間、光莉の身体を白い炎のようなものが包んだ。揺らめく光が、彼女の体の周りを静かに漂っている。これが、オーラ。

 光莉はそのオーラを、人差し指へと集中させた。

 

「私の能力は光を操る能力だ」

 

 指先が小さく輝く。

 

「こんな風にね」

 

 次の瞬間、光が一直線に飛んだ。向かいにあった木の幹に命中し、乾いた音が響く。

 

「なるほど」

 

 私は腕を組む。

 

「つまり私は、まずオーラの操作を覚えろってことか」

 

 光莉は少し笑った。

 

「話が早くて助かるよ」

 

 そして真面目な顔になる。

 

「そうだ。オーラを扱えないと、戦いの土俵にすら立てない」

「分かった。で、具体的にどうすればいい?」

「まずは感じるところからだな」

 

 光莉はゆっくりとこちらに歩いてきた。そして私の頭に、そっと手を置く。再び、彼女の身体からオーラが溢れ出した。

 

「オーラを感じる一番手っ取り早い方法は──」

 

 光莉が静かに言う。

 

「他者から流されることだ」

 

 その瞬間。私の体の中に、何かが流れ込んできた。暖かいような、熱いような、不思議な感覚。これがオーラ?その感覚に意識を向けた瞬間。

 

 ドッ──

 

 体の奥から、何かが爆発した。

 

「くっ……!」

 

 体中から、凄まじい勢いでオーラが溢れ出す。止まらない。抑えようとしても、全く言うことを聞かない。

 

「うぅ……!」

 

 必死に抑え込もうとした、その時。光莉の声が聞こえた。

 

「それは君の力だ」

 

 落ち着いた声だった。

 

「無理矢理抑えるんじゃない」

 

 私は息を整える。そして、自分の中のオーラに意識を向けた。暴れるな。落ち着け。

 そう思った瞬間、荒れ狂っていたオーラが少しずつ静まり始める。やがて、完全に消えた。

 

「……ふぅ」

 

 私は大きく息を吐いた。光莉が満足そうに頷く。

 

「制御はできたみたいだな」

 

 そしてにやりと笑った。

 

「よし。じゃあ修行を始めるぞ」

 

 それから私の修行が始まった。基礎体力をつけるための走り込み。オーラ操作の精度を高めるための瞑想。

 そして──光莉との組み手。ルールは簡単。光莉に一発当てれば勝ち。だが、それがまるで当たらない。殴る。避けられる。蹴る。躱される。まるで私の動きが全部わかっているみたいに、光莉は軽やかに避け続けた。

 

「なんで全部読めるんだよ!」

 

 私が叫ぶと、光莉は肩をすくめる。

 

「経験から来る勘だな」

 

 理不尽すぎる。

 だが、修行はそれだけじゃなかった。

 ある日、ドサッと私の目の前に、本の山が置かれた。

 

「……なんだこれ」

 

 光莉は当然のように言う。

 

「試験は力だけじゃない。筆記もある」

「まさか……」

 

 光莉はにっこり笑った。

 

「そのまさかだ」

 

 私は一冊手に取る。ページをめくる。植物図鑑。 毒の知識。一般常識。

 

「こんなの一年で覚えられるか!!」

 

 私が叫ぶと、光莉は楽しそうに笑った。こうして地獄の一年間の修行が始まった。

 

 

「何見てんだよ」

「いや、別に」

「何もないなら見んなよ」

 

 最初の頃、レネは全く心を開こうとしなかった。修行以外ではほとんど話さない。食事すらまともに取ろうとしない。

 私は、初めてレネにオーラを流した日のことを思い出す。

頭に手を置いたとき、レネの体はわずかに震えていた。きっと、相当酷い目に遭ってきたんだろう。人をここまで信用できなくなるほどに。

 

「……今はどうなんだろうな。レネ」

 

 私は隣を見る。レネは、ぐっすり眠っていた。修行を始めてから、十ヶ月。私は毎晩こうして、レネの隣に来ている。最初は逃げ出さないか見張るためだった。

 だが、それは杞憂だった。私は小さく笑う。

 

「楽しみだな、レネ」




光莉さんは22歳。レネさんは17歳ぐらいです。
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