君の楽園0   作:EX丸み

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超お待たせしました五話です。二年以上更新がなかったら終わったと思ってください。わー。


第五話.WPO入隊式、特別組

  WPOの入隊試験から、早くも二ヶ月が経過していた。

 今日はWPOの正式な入隊式。支給された正装に身を包んでいるものの、光莉に「似合ってるぞ」と言われたが、どうにも服に着られている感覚が拭えない。

 

「えーと、こっちか……?」

 

 手元の地図と睨めっこしながら、式典会場へと足を進める。また迷子になっては目も当てられないので必死に地図を見る。

 慣れない地図に悪戦苦闘していると、見覚えのある金髪の少女が目の前に立っていた。

 

「二ヶ月ぶりだね、レネ!」

 

「げっ……天海……」

 

「いやぁ、お互い無事に合格出来てよかったね!」

 

 そう言って、天海璃瑠はニコニコと私の隣に並んでくる。距離が近い。試験の時も思ったが、こいつにはパーソナルスペースという概念がないのだろうか。それに、あの実戦試験でボコボコにされた苦い記憶が蘇ってきて、どうにも素直になれない。

 私はそっと一歩分、距離を取る。

 

「……なんで隣歩いてんだよ」

 

「え? だって行く場所、一緒でしょ?」

 

「……」

 

 上目遣いで首を傾げてくる璃瑠。……ダメだ。こいつに何を言っても無駄な気がする。それに、迷うよりはこいつについて行った方が確実だ。私は半ば諦め、彼女と並んで歩くことにした。

 

 

 会場までの数十分間、天海は終始喋りっぱなしだった。話を聞いていて分かったが、彼女は相当な「オタク」らしい。テリオスでいうおとぎ話を俗っぽくした『アニメ』や『マンガ』と呼ばれる文化に心酔しているようだ。

 

「でねでね! 主人公が超かっこいいの! 諦めかけたヒロインの前に颯爽と登場してさ! 明確には言われてないけど、あれはもう絶対……!」

 

「はいはい、もう分かったから! ほら、着いたぞ!」

 

「あ、本当だ! 入ろー!」

 

 さっさと会場内へ入っていく天海。騒がしいやつだと思いながら、私もその背中を追って足を踏み入れた。

 大ホールの中には、すでに五十人ほどの合格者たちが集まっていた。話によると、入隊式ではWPOのトップである総長と、試験を首席で合格した新入隊員がスピーチを行うらしい。

 

「天海、お前首席合格だからスピーチやるんだろ?」

 

「そうだよ! 任せて、バッチリ原稿考えてきたから!」

 

 結局、入隊試験をトップの成績で通過したのは天海だったらしい。

 そんなことを考えていると、重厚な静寂とともに舞台の上に一人の人物が現れた。WPOの紋章が刻まれたコートを羽織り、その場にいる全員の視線を一瞬で奪い去るような、圧倒的な存在感。

 

「皆さん、こんにちは。WPO第一部隊副隊長、花落栗光莉です。まずは皆さん、合格おめでとうございます」

 

 普段、一緒に過ごしている時とはまるで別人のような雰囲気。出会った時を思い出させる。これが『隊長格』としての彼女の顔か。

 

「私からの挨拶は手短に。続いて、総長からの祝辞です」

 

 光莉が一歩下がり、奥から『総長』と呼ばれた人物が静かに歩み出てきた。

 青い紫陽花を思わせる美しい髪色に、すべてを見透かすかのように澄み切ったエメラルドグリーンの瞳。言葉を交わさずとも、一目で『ただ者ではない』と理解させられる覇気。

 

「WPO総長、白夜冷季。……私からは一つだけ。君たちが、いつかこの世界を支える柱となることを祈っている」

 

 それだけを告げると、総長は舞台袖へと消えていった。

 

「次は、新入隊員代表の挨拶です。天海璃瑠、前へ」

 

 名指しされ、天海が舞台に上がる。さっきまで「バッチリ」と自信満々だったくせに、いざマイクの前に立つと所々で盛大に噛んでいた。そんな微笑ましくも引き締まった空気の中、入隊式は無事に終了した。

 

 

 式が終わり、私と天海、そして三位で合格したリアンという男の三人は、花落栗光莉の元へと案内された。合格者の上位三名は特別組として、明日から一般隊員とは異なる仕事をするらしい。移動中も、天海の口は止まらなかった。

 

「ねぇねぇ、リアンくんだっけ! 好きなアニメとかあるの?」

 

「……いや、別に」

 

「私はね! 最近話題の『日常変異部』って作品が推しかな~! ギャグとシリアスのバランスが最高でさ!」

 

「……あぁ」

 

 完全に天海のハイテンションに圧されているリアンを見て、私は小さく肩をすくめる。終始仏頂面で感情の読めない奴だが、図々しく距離を詰めてくる天海に困惑していることだけは、その雰囲気から痛いほど伝わってきた。

 そうしていると、光莉が待っている部屋に到着する。私はノックをし、ドアを開けた。

 

「失礼します。特別組のレネ・アレントです」

 

「お疲れ様。待っていたぞ」

 

部屋の中で待っていたのは、光莉と三人の男女だった。纏う雰囲気からして、間違いなく隊長・副隊長クラスの猛者たちだ。

 

「君たち三人には特別組として、一般隊員とは違う任務に就いてもらう。……っと、その前に。まずは私の横にいる三人に自己紹介をしてもらおう。神楽」

 

 光莉に促され、緑髪の男が一歩前に出る。

 

「俺は神楽心翔(かぐらまなと)、第一部隊の副隊長だ。まあ、年の近い先輩と思って気楽に接してくれや」

 

 神楽はリアンの方へ歩み寄ると、その肩をポンと叩いた。

 

「お前がリアンか。噂通り、いいオーラ持ってるじゃねえか。今年の特別組は豊作だって聞いてるぜ。せいぜい頑張りな」

 

「……っ、はい」

 

「次は僕かな」

 

 続いて、水色の髪を揺らした爽やかな男が話し始める。

 

「僕はフェルター・ワイズ。第二部隊の隊長を務めています。実は入隊試験の監督は第二部隊が担当していてね。君たちの活躍はモニターで見させてもらっていたよ。特に天海隊員、期待しているよ」

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

 隣で天海が元気よく敬礼する。このフェルターという男、常に紳士的な笑みを絶やさないが……こういう奴ほど、裏に何かを隠しているんだ。

 そんなことを思っていると、不意に私の手が握られた。

 

「ごめんね~、いきなり手握っちゃって! 私は第二部隊副隊長の仙空桃花(せんくうとうか)! いや~、試験での立ち回り、見事だったよレネちゃん!」

 

「あ……どうも」

 

 握手を交わしながら、私は冷や汗をかいた。手を握られるその瞬間まで、近づいてくる気配をまったく察知できなかった。これがWPO副隊長の実力。私との差を突きつけられた気がした。

 一通りの顔合わせを終えると、光莉が静かに一歩前に出た。仙空と神楽が素早くフェルターの脇へと戻る。

 

「では、明日から君たちに受けてもらう任務について説明する」

 

 光莉の手から、一つの資料が手渡された。そこには、私たちが行う任務についての事が書かれていた。

 

「これは、現在我々が追っている『連続誘拐事件』の捜査資料だ。被害者の共通点がなく捜査は難航していたが……先日、ついに連中のアジトが割り出された」

 

 ページをめくると、黒いフードを目深にかぶった二人の男の写真が添付されていた。一人は金髪、もう一人は長髪の紫髪。

 

「この二人が事件の主犯格。金髪がファーマス・ベルリルド。紫髪がエビル・ダンドール。君たちの任務は、この二人の確保だ」

 

 『連続誘拐事件』その言葉を聞いた瞬間、私の胸の奥で、冷たく暗い憎悪が蠢いた。

 あの日、私の友達を奪っていった黒いコートの男たち。あの理不尽な光景が、一瞬で脳裏をよぎる。まさかあの時の奴らと繋がっているのか……

 資料を握る手が震える。私は歯を食いしばり、必死に殺気を押し殺した。

 

「もちろん、君たちだけに任せるわけではない。今回の作戦にはフェルター隊長と仙空副隊長もバックアップとして動く。安心して臨んでくれ」

 

 フェルターが無言で頷き、仙空が「任せて!」と親指を立てる。

 

「では、具体的な作戦内容の伝達に入る──」

 

 

 作戦会議が終わり、私は割り当てられたWPOの隊員寮へと移動していた。正式にWPOの一員となったことで、今日からこの場所が私の家になる。

 部屋の中にはベッド、机、クローゼットが綺麗に配置されてあり、日当たりもいい。個別の風呂とトイレまで完備されていて、路地裏育ちの私からすれば文句のつけどころがない環境だ。

 そう、環境だけなら完璧だったのだが。

 

「うわぁ!ベッドふっかふかだよ、レネ!」

 

 よりによって、天海と同室になってしまったのだ。終わりだ。

 明日から任務があるというのに、入隊式までの道中で聞き飽きたオタク話を聞かされる羽目になるのか。頭を抱えていると、天海が目をキラキラと輝かせながら迫ってきた。

 

「よし!じゃあ今夜は記念すべき第一回、朝までアニメ語り明かし会を開催しまーす!」

 

「冗談じゃない! 明日は大事な任務があるんだぞ!」

 

「えぇー!じゃあ、せめてお風呂の中だけでも語ろうよー!」

 

「絶対嫌だ! そもそもなんで一緒に風呂に入る前提なんだよ!」

 

 私の叫び声が、支給されたばかりの綺麗な部屋の中にむなしく響き渡った。

 混浴は回避したものの、天海の強烈な推しに負け一緒にアニメを見ることになった。テレビの光だけを反射した仄暗い部屋で、横並びに座る。

 内容は勇者と呼ばれる青年が旅の末囚われの姫を助けるというものだ。おとぎ話でもありふれたものだ。

 私は横目で天海の顔を見る。

 

「うぉぉ……!」

 

「……」

 

 その目はまるで小さい子供のように、純粋で綺麗だった。私には無いものだ。私は再び視線をアニメに落とす。

 

 

 白いコンクリートで造られた四角い建物。その中で二人の男が会話をしていた。

 

「なぁ、エビル。ほんとにいいのかよ、これで」

 

「あぁ、邪魔な奴らは消しておく必要があるからな。ファーマス、俺とお前なら隊長クラスを殺すなんて簡単だろ。それに協力者もいるしな」

 

 奥から一人の男が歩いてくる。グレーの髪色で青いマフラーを巻いている。

 男は爽やかに笑う。しかし、その目だけは笑っていない。

 

「そうそう、俺に任せとけよ」

 

「頼みますよ、影遠(えいえん)さん」

 

「おう。しっかりやってやるよ!」




どうなっていくんでしょうか。
スペック。言い忘れてたけど各項目の数値の合計が30以上だと副隊長クラス、45以上だと隊長クラスです。
名前:天海璃琉       名前:リアン・ハールン
年齢:17歳          年齢:18歳
身長:165cm         身長:176cm
能力:制限          能力:貫通
各項目(10段階評価)      各項目(10段階評価)
攻撃:6  防御:5       攻撃:5 防御:5
体力:5 オーラ:5       体力:6 オーラ:7
能力:4  技術:2       能力:6 技術:1
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