君の楽園0   作:EX丸み

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UAが100超えててうれしいです!見てくれている方々には感謝です!本当に遅くなってごめんなさい!!


第六話.コラプスファイト

 柔らかな風が、カーテンを揺らしながら部屋へと吹き込んでくる。 窓の外から聞こえる小鳥たちのさえずりに耳を傾けながら、私は机に向かい、黙々と勉強を続けていた。

 そんな私の姿を見て、お母さんが優しく頭を撫でる。その手の温もりが、心地よかった。

 

「あなたはいい子ね、璃琉」

「……うん」

 

 撫でられる心地よさに身を委ねながら、ふと窓の外へ目を向ける。そこには、剣を手にして鍛錬に励む姉の姿があった。 

 汗を流し、何度も何度も剣を振る。その姿は真剣そのもので、まるで自分を追い込むことさえ楽しんでいるように見えた。

 そんな姉を見つめていると、胸の奥に小さな違和感が生まれる。お母さんに頭を撫でられている今は、こんなにも心地よいはずなのに。

 どうしてだろう。胸の奥だけが、もやもやしていた。けれど、その感情が何なのか。

 当時の私には、まだ分からなかった。

 

◇

 

「……おい、天海?」

「あ、えっ!? どうかした、レネ?」

 

 私は、ぼんやりと前を見つめていた天海に声をかけた。これから任務だというのに、さっきからどこか上の空だ。

 今、私たちはフェルターと仙空、そして特別組の三人で、敵のアジトへ向かっている。

 第一部隊は別件を追っており、それが片付き次第、こちらへ合流する予定だ。

 

「どうかしたっていうか、これから任務なんだぞ。ぼーっとするな」

「うん……ごめんね! やっぱり昨日アニメ見すぎたせいかな!」

「……あぁ」

 

 口ではいつもの調子に戻っている。けれど、その笑顔の奥には、どこか陰りがあった。アニメを見すぎたから、なんていうのは明らかに嘘だ。

 別に、他人の事情を根掘り葉掘り聞く趣味はない。ただ、任務を前にして様子がおかしいのは困る。

 そう思っていた時だった。

 

「みなさん、着きましたよ」

 

 先頭を歩いていたフェルターが足を止める。そして、前方を指差した。その先にあったのは、白い壁に覆われた四角い建物だった。私たちは近くの茂みに身を隠す。

 

「あれが奴らのアジトです。ここからは慎重に、作戦通りにいきましょう」

「「「「了解」」」」

 

 私たちは四手に分かれ、それぞれの配置についた。

 作戦はこうだ。私とフェルターは正面の入口から突入。天海とリアンは建物の左右に分かれ、敵の逃走を阻止する。そして仙空は、逃走阻止のため屋根にある窓から建物内部を確認し、能力によって敵の位置を把握する。

 私とフェルターは、入口のすぐ近くまで移動した。この中に、誘拐事件の主犯たちがいる。黒いフードを被った男たち。

 脳裏に過去の光景が蘇る。あの時、私の友達を奪った奴ら。私の平穏を脅かした奴ら。こいつらが、あの時の連中と無関係だとは思えない。胸の奥から、どす黒い感情が込み上げてくる。

 

「レネ君」

 

 不意にフェルターの声が聞こえた。

 

「いいですか。僕たちの目的は生け捕りです。必要以上の戦闘はしないように」

 

 その言葉で、私は我に返った。いつの間にか、殺気を放っていたらしい。

 

「……はい。分かっています」

「それなら大丈夫です。行きましょう」

 

 フェルターが一歩踏み出す。私も続こうとしたその時。

 

「客人かー。珍しいなぁ」

「……!」

 

 入口から、一人の男が姿を現した。薄灰色の尖った長髪。漆黒の瞳。そして、首元には青いマフラーを巻いてきた。

 男は、まるで本当に客人を迎えるかのように、軽い調子で笑っていた。敵意がない。殺気もない。それどころか、私たちを敵として見ている様子すらない。

 気持ち悪い。普通なら、敵と対峙した瞬間には何かしらの悪意や緊張が伝わってくる。なのに、この男からは何も感じない。

 まるで、私たちなど最初から敵として見ていないかのようだった。

 

「レネ君、下がってください!」

 

 フェルターの声に反応し、私は咄嗟に地面を蹴って後方へ下がる。フェルターの顔を見ると、いつもの紳士的な笑みは消えていた。

 

「彼の名は影遠(えいえん)。敵対組織ERRORの『五冠』が一人です」

 

 フェルターは、影遠から視線を逸らさない。

 

「隊長クラスでも、手を出してはいけないレベルの相手です」

「ERROR……五冠……」

 

 その言葉を聞いた瞬間、背筋に緊張が走った。ERROR。世界各地で事件を引き起こしている、謎の闇組織。その組織は、皇帝、五冠、上級、下級という階級で構成されている。

 その中でも五冠は、WPOの隊長クラスですら遭遇すれば戦闘を避けるべき相手だ。

 

「はは。俺ってば、結構有名人なんだな」

 

 影遠は、楽しそうに笑った。その態度には、危機感の欠片もない。

 

「……」

 

 どうする。こいつを相手にしている間に、アジトの中にいる二人が逃げればまた被害が出る。けれど、目の前の男を無視して突入するのも危険だ。

 私が判断に迷っていると、フェルターが静かに口を開いた。

 

「……レネ君」

「はい」

「僕が彼の相手をします」

「フェルター隊長……」

「ここで撤退すれば、中にいる敵に逃げられてしまう可能性が高い。そうなれば、被害を増やすことになります」

 

 フェルターは一度、影遠を見た。

 

「僕が彼を引きつけます。その間に、レネ君は正面から突入してください」

「……でも」

「大丈夫です」

 

 フェルターは、笑みを浮かべる。

 

「勝機ならありますから」

「……了解」

「話はまとまったか?」

 

 影遠が、ゆっくりとこちらへ歩き始めた。

 

「ええ」

 

 フェルターも一歩前へ出る。

 

「僕があなたの相手をします」

 

 二人の距離が少しずつ縮まっていく。一歩。また一歩。そして、人一人分ほどの距離まで近づいたその瞬間、影遠が拳を振り上げた。

 

「っ……!」

 

 拳がフェルターに届く、その瞬間。

 

「……っふ。反転事象」

 

 フェルターが呟いた次の瞬間、影遠の身体がまるで見えない力に弾き飛ばされたかのように、遥か後方へと吹き飛んでいく。

 

「そちらは任せましたよ!」

「了解!」

 

 フェルターはそのまま影遠を追い、走り出した。私は一人、建物の入口へ向かって駆ける。そして耳元の通信機を起動する。

 

「こちらレネ。現在、フェルター隊長が想定外の三人目の敵と交戦中です」

『……了解。まだ対象の二人は中にいる』

 

 仙空の声が返ってくる。

 

『レネ隊員はそのまま突撃して。天海隊員はそのまま待機。リアン隊員はレネ隊員と合流して――』

「……え?」

 

 突然、身体が揺れた。いや、揺れているんじゃない。引っ張られている。

 

「なっ……!?」

 

 身体が建物の中へ向かって強引に引き寄せられていく。咄嗟にワイヤーを手の中に生み出し、近くの木へと投げつける。ワイヤーの先端が木に絡みついた。

 

「くっ……!」

 

 必死に踏ん張る。だが、引き寄せる力は止まらない。むしろ、どんどん強くなっていく。

 

「……っ!」

 

 ミシミシッと嫌な音が響いた。見ると、ロープを巻き付けた木が大きく軋んでいる。同時に、目の前の建物にも亀裂が走った。

 

「まさか……!」

 

 そして――バキバキバキッ!!建物そのものが、大きく崩れ始めた。

 

「……!!」

 

 瓦礫が宙へ舞う。ワイヤーを巻き付けていた木も耐えきれずに折れ、私の手からワイヤーが離れた。その瞬間。視界の向こうに、二人の男の姿が見えた。ファーマスとエビルだ。

 

「……っ!」

 

 身体を引き寄せていた力が消え、私は宙へ放り出される。体勢を整え、地面へ着地する。

 私、仙空、リアン、天海。私たちは、崩壊した建物の跡地で二人を取り囲むように立っていた。

 

「歓迎するよ、WPO諸君」

 

 エビルが、静かに口元を歪める。

 

「随分、手荒い歓迎だなぁ」

 

 仙空が軽く肩をすくめる。するとファーマスが、楽しそうに笑った。

 

「俺たち流のおもてなしってやつだぜ」

 

 ファーマスが品定めをするように私たちを見る。その目が私を捉える。

 

「……まずは、お前からだ」

「――!」

 

 瞬間、ファーマスの姿が消えた。

 

「速っ!」

 

 気づいた時には、目の前に拳が迫っていた。咄嗟に両腕を交差させ、顔の前を守る。

 

「ぐっ……!」

 

 拳が腕に叩き込まれる。重い。衝撃を完全には殺しきれず、身体が大きく後方へ吹き飛ばされた。

 

「レネ!」

 

 リアンの声が聞こえる。だが、ファーマスはすでに私を追っていた。

 

「逃がすかよ!」

「……っ!」

 

 私は空中で身体を捻り、右手を伸ばす。

 

「くっそ!」

 

 ワイヤーを近くの木へと投げつけ先端が幹に絡みつく。そのままワイヤーを引き身体が勢いよく上へ引っ張られた。

 

「なっ!?」

 

 ファーマスが驚きの声を上げる。私はそのまま空中で身体を翻し、ファーマスの背後へ回り込む。

 全身の力を込め、蹴りを叩き込む。

 

「ぐっ……!」

 

 ファーマスの身体が地面へと叩きつけられた。土煙が舞い上がる。私は着地すると、すぐに周囲を確認した。その直後、追ってきたリアンと合流する。

 

「……レネ、大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ」

 

 私はファーマスを蹴り飛ばした方向を見つめる。立ち込める土煙の向こうで、一つの影がゆっくりと立ち上がった。

 

「……ははっ!いい蹴りだ!」

 

 奴は笑った。次の瞬間、全身からオーラが溢れ出す。ドンッ!と、重い衝撃が大気を震わせた。           

 肌をじりじりと焼かれるような圧迫感が、周囲一帯を支配する。

 

「レネ、俺は後方から援護する。接近戦は任せていいか?」

「ああ、分かった」

 

 短く答え、私は地面を蹴った。正面から突っ込むと見せかけ、右へと旋回する。ファーマスの側面を取ったところで、生み出したワイヤーを投げつけた。

 狙いは捕縛だ。だが、ワイヤーが奴の体に届く寸前、その手に掴まれた。

 

「っ!」

 

 次の瞬間、体が前方へ引っ張られる。

 私は即座にワイヤーを消した。拘束するつもりが、逆に相手の手を借りて接近する羽目になるとは。ならば、この距離を利用する。

 引き寄せられる勢いに逆らわず、私はファーマスの懐へ踏み込んだ。拳を繰り出す。奴は腕で受け止め、反撃とばかりに拳を振るってきた。身を捻ってかわし、間髪入れずに二撃目を放つ。

 

「ほらほら!どうした、そんなもんかぁ!?」

「ちぃ……!!」

 

 拳と拳がぶつかり合う。接近戦では実力が拮抗しているため、捕える余裕なんてない。

 一度体勢を立て直すため、距離を取ろうとした瞬間、

 

「なっ……!」

 

 後ろへ下がったはずの体が、強引に前へ引き戻された。まるで、見えない手に掴まれたかのように。

 

「これは……さっきの!」

 

 対象を引き寄せる能力。おそらく、それがファーマスの能力だ。

 能力はわかったが、理解したところで、引き寄せられる体が止まるわけではない。私は歯を食いしばった。

 そのとき、ファーマスの横から光線が飛来した。ファーマスはとっさに掌を翳し、オーラの防御壁を展開する。

 しかし光線は防御壁を貫き、そのままファーマスの手をも貫いた。

 

「なっ、何……!?」

 

 ファーマスの顔に、明確な動揺が浮かぶ。同時に、私を引き寄せていた力が弱まった。

 その隙を逃さず、私は体勢を立て直す。

 

「創生【煉獄光(プラガトリーフラッシュ)】!」

 

 掌から炎を纏った光線を放つ。閃光がファーマスを呑み込み、炎がその体を包み込んだ。

 私はすぐさま距離を取り、リアンのもとへ戻る。

 

「助かった。すまん」

「ああ……礼には及ばない」

「それと、あいつの能力だが、対象を引き寄せる能力だ」

「……なるほど」

 

 リアンが短く応じる。そのときだった。炎の中から、ファーマスが現れる。

 体の右側には火傷が広がっている。相応のダメージを与えたはずだ。それなのに、奴は何事もなかったかのように立っていた。

 呼吸を乱すこともなく、こちらを見据えている。

 

「……」

「……」

 

 違和感を覚えた直後、ファーマスが何かを呟き始めた。

 

「……っ!リアン!」

 

 私はとっさに腕を構え、エネルギー弾を放った。リアンもすぐさま追撃する。しかし、一手遅かった。

 ファーマスの全身がオーラに包まれる。膨れ上がったオーラに、エネルギー弾が打ち消された。

 オーラはその体を覆い尽くしたかと思うと、奴の肉体そのものが急激に巨大化し始めた。腕が太くなり、肩幅が広がる。やがて、その巨体は三メートル近くにまで達した。

 

「うおおおおおっ!」

 

 ファーマスの咆哮が響き渡る。

 直後、爆発するように衝撃波が広がった。

 

「ぐっ……!」

 

 暴風にも似た衝撃に押され、私とリアンは吹き飛ばされた。




名前:フェルター・ワイズ    名前:仙空桃花(せんくうとうか)
年齢:29歳          年齢:27歳
身長:172cm         身長:166cm
能力:反転          能力:心操導理(しんそうどうり)
各項目(10段階評価)      各項目(10段階評価)
攻撃:6  防御:8       攻撃:3 防御:6
体力:9 オーラ:8       体力:7 オーラ:6
能力:10  技術:5       能力:8 技術:3
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