ミコトside
「そりゃ当然こーなるよな?わかってたよな?」
2試合目が終わり、待機場所にいた俺は2人のヤチヨを正座させて説教していた。
2試合目。先ほどの結果から向こうは対策を立て、俺の相手には雷と乃依をぶつけ、乃依の周りにトラップを仕掛けひたすら近づかせないようにし、遠距離からの狙撃で狙われて足止めされた。
対してヤチヨは弱モードのため、少しの拮抗の後に撃破。そのまま櫓を占拠され、大将落としを天守閣に打ち込まれ敗北した。
相手の戦力バランスに差があるなら当たり前にそこをつくに決まっている。だから、当然こうなると思っていたんだが......
「誰ですか?自分が弱くないと試合が成立しないからとか言って相手を煽った人は」
2人のヤチヨがお互いを指さし合う。
「あげくそのハンデのせいで完膚なきまでにボロ負けした人は?」
お互いを指さし合う生き恥2人。
「ちょっと!最初の質問はそっちでしょ!私のせいにしないでよ!」
「なによ!弱めで行こうって決めたのは1人だったときからなんだからそっちの責任でもあるでしょ!」
「静かに〜。はい、黙れ黙れー」
自分自身で争いを始めたヤチヨ×2を鎮めこれからのことを考える。
とりあえず......
初めてこちらから向こうに通信を繋ぐ
『おっ、どうしたんですか?ミコさn』
「お願いします!ヤチヨの強さ設定を変えさせてください!今の弱モードじゃあ話にならないんです!」
といって頭を下げる。
「ちょっと!そんな家電みたいな言い方しないでよ!」
後ろがなんかギャーギャー言っているが無視して頭を下げる。
『頭上げてくださいミコさん。ちょうど俺たちからもそう言おうと思ってたところだったんですよ。』
『ね〜。このままじゃ張り合いなさすぎるし。』
「本当ですか?」
『ああ、だから決着つけようぜ、ミコさん。
アンタにはやられっぱなしだからな。
次は絶対に俺が勝つぜ!』
「......はい、決着をつけましょう!」
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そして、いよいよ最後の3試合目が始まる。
肝心の相手のフォーメーションはというと......
トップに帝、ミドルに雷、ボトムに乃依、三つ全てのレーンに一人ずつ別れて進んでいた。
他のゲームでいうトライデントっていうフォーメーションだ。
これは複数の敵にも一人で応戦する必要があるので、多対一の対面でも倒しきる自信がある、つまり舐めプされてると受け取ることもできるが、今回ではーー
「これは完全に......」
「
俺もヤチヨも相手の意図に気づく。
先ほどの帝アキラの発言からするに一対一で勝負しようというメッセージだろう。
こちらのフォーメーションは俺とハンマーを持ったハンマーヤチヨがトップ、相手の天守閣まで最短距離であるミドルに傘を持った傘ヤチヨを行かせて相手よりも先に櫓を占拠して勝負を決めようという作戦だ。
このままいけば俺とハンマーヤチヨで帝アキラと戦うことになる。
「よし、作戦変更だ。ヤチヨはボトムにいって櫓を占拠もしくは妨害をしてくれ」
「了解しましたー!師匠!」
「お前みたいな弟子を持った覚えはない。」
「ふーん......まあいっか。モテモテのミコトくんはこのまま行くの?」
「......。ああ、俺は帝アキラを倒して櫓を占拠する」
幸いヤチヨの強さは修正されているので五分五分で勝てるはずだ。
1戦目と同じく、即行で櫓を占拠する作戦で行く。
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ミニオンはほとんど相手が片付けたのか見当たらなかった。
しばらくライドを走らせると下に帝が見えた。
銃による射撃を警戒していたのだが、先程とは違い彼は最初から棍棒の状態で待ち構えていた。
「誘いを受けてくれてありがと〜。ミコさん」
「決着つけるって言いましたからね」
「いいですね。やっぱりミコさんとは仲良くなれそうだ。それじゃさっそく。勝敗を決めようか!」
言葉もほどほどにお互い同時に走り出す。
俺は素早くステップをして、相手を翻弄しフェイントも入れながら斬り掛かる。
銀の刃が幾重にも閃く。
だが帝も先ほどよりもコンパクトに棍棒を振るい間合いに入れないようにしてくる。
だがそれでもスピードはこちらが上。
「ちっ!相変わらず速いな」
腕に桜のエフェクトが散る。
1戦目みたいに大きな隙がないと一撃で仕留めることは出来ないし、相手もそんなバカな真似はもうしないはず。
このまま少しずつダメージを与える。
そう思い、何度か剣戟を交わすと相手が体勢を崩した。
チャンス!!
一気に勝負を決めるために、斬り掛かる
「......はっ!」
帝が笑った。次の瞬間ーー
今までよりも明らかに早いスピードで相手の武器が迫る。
「っ!?」
咄嗟に剣で防御し、吹き飛ばされそうになるのをなんとか堪える。
そして、
それは今回の試合で初めて見る帝の変形武器の刀状態であった。
(そういうことか......!)
帝は体勢を崩したふりをしてこちらに死角を作り、その時に鞘の役割も果たしていた棍棒の部分を捨てることで、武器を振るスピードを上げたのだ。
「ミコさん。アンタ何者だ?」
「......何者って?」
鍔迫り合いをした状態で帝が話しかけてくる。
「さっき見てわかった。アンタあまりにも動きに無駄がなさすぎる。そこまでの才能があるならプロを目指そうと思ったことはないんですか?」
才能......か。
そんなもの自分にはない。それは今まで生きてきた中で痛いほど感じてきた。
自分よりも圧倒的に短い年数しか生きていないのに俺よりも強い奴を数えきれない程見てきた。
それでいえば目の前にいる帝もそうだろう。
1戦目の敗北から対策を立て、3戦目で拮抗に持ち込んでいる。
明らかに自分よりも冴えと閃きが優れており、そして
ただ、こちらがどんなに才能で負けていようが積み重ねた時間だけは誰にも負けるつもりはない。
「ありがたいですけど、遠慮しておきます。そんでこれは才能じゃなくて日々の努力の
鍔迫り合いの状態で腕の力を抜くことで相手のバランスを崩す。その隙に一気に相手の後ろに回り込む。
「あまいっ!」
帝が振り向きざまに刀を横薙ぎに振り払う。
それを、上半身を後ろに逸らすことで紙一重で避ける。しかし、そのせいで上半身の体勢が崩れたため、この状態では剣を振ることは出来ない。
「これで終わり......剣はどこにっ!?」
体勢を崩した俺にとどめをさそうと武器を振り上げた帝は俺の手に剣がないことに気付いたのだろう。
そして俺は先ほど帝が横薙ぎする前に地面に対して垂直に手放していた剣の握り手の先端を足の甲で受け止め、
ドスッーー
足を振り、帝の首に蹴り刺す。
「がっ......!」
帝は自分の得物を落とし、首に刺さった剣を抜こうと掴みながら後ずさる。
それを逃さず、首に刺さった剣を握り横向きに引き抜く。
ブシュッーー
首から桜のエフェクトが勢いよく飛び散り、帝のアバターが消えていく。
ーー決着が着いた。
ゴォォン……
帝の残機が一つ減ったことを確認すると同時に鐘のなる音が響く。
見てみると相手の天守閣に大将落としが出現した。
おそらくヤチヨが櫓を占拠したのだろう。
これならあとは大将落としを打ち込むだけ。もしくは俺がこのまま櫓を占拠すればその時点でこちらの勝ち。
マップを見てみるとハンマーヤチヨは櫓を占拠してそのまま天守閣へ。傘ヤチヨも一度撃破されたのか、遅れてミドルレーンから天守閣へ向かっていた。
このまま天守閣に向かえば3人で攻め込むことができるが、天守閣には今リスポーンしたばかりの帝と乃依がいる。
それとも、少し時間はかかるが牛鬼を倒して櫓を占拠するか。
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ドスゥン!!!
悩んだ末に結局櫓を占拠することを選んだ俺は、牛鬼を倒し、あとは櫓に向かうだけとなっていた。
しかしその直後、正面から猛烈な速さで何かが迫ってくるのを感じた。
視界にとらえたそれは大きく跳躍し、飛び降りてくる。
着地の衝撃で砂煙があがる。
「っ......!」
砂煙が晴れるとそこには先ほど倒したばかりの帝がいた。
いや、いくらなんでも速すぎるだろ!
どうやってと思ったが、すぐに一つだけ方法があることに気がついた。
「
「その通りっ!」
KASSEN SENGOKUではフィールド上にいるミニオンを倒すことでゲージをため、必殺技を使うことができる。
先ほど来た時にはミニオンは全滅していたため、その時にゲージを貯め切っていたのだろう。そして、帝は自身の
「天守閣の守りは?こっちが落として勝っちゃいますよ?」
「そっちには雷と乃依がいるから問題ないですよ。」
マップを見てみると天守閣に向かったはずのハンマーヤチヨは自軍の天守閣の近くにいた。おそらく、撃破されたのだろう。
「さあ!ラウンド3といこうか!」
「......っ!」
ーーそのとき、微かに音が聞こえた。
ブウウゥン......
これは......
「いや、もう終わりです......!」
俺は勢いをつけて飛びながら斬りかかるが、帝の棍棒に受け止められ、空中で勢いが止まる。このままでは棍棒で吹き飛ばされて着地した隙を狙われるだろう。
「隙だらけすぎますよ!」
「いいんですよ!動きさえ止められれば!」
その直後、ギュウイィィンという回転音が響きわたる。
「なっ......!?」
そして、どこからか飛んできた高速回転する傘が唸りを上げ、帝のアバターを真っ二つにする。
「まじか......」
『ヤチヨもさっき帝くんにコテンパンにされたの、忘れてないから〜』
ヤチヨからの通信が届き、帝のアバターが再度消滅する。
天守閣に向かったと思っていた傘ヤチヨはそこにブラックオニキス側が2人いるのを見てこちらに進行方向を変えたのだろう。
(あの傘怖いんだよなー。見た目普通の傘なのに飛ばす時にチェーンソーのエンジンみたいな音するんだよ)
そう、さっき俺が聞いた音はヤチヨの傘の攻撃する時の音だったのだ。
ゴォォン……。
そして、3試合目。
俺たちのチームが両チームの櫓を占拠し、勝利したため、結果は2-1。
ブラックオニキスとのKASSENはこちら側の勝利で幕を閉じた。
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試合後
「いやー負けた負けた。
俺たちもまだまだですね。」
どこかスッキリしたような帝がこちらに歩きながら話す。
「そんなことないですよ。今日はありがとうございました」
「こちらこそですよ。」
そして互いに手を握り合う。
「ミコさん、本当にプロとか興味ないんですか?
よかったらウチに入りませんか?」
プロゲーマーか......
さっきは遠慮したが今の時代プロゲーマーは憧れの職業でも上位に入るほどだ。
とくにブラックオニキスはアイドルのような売り出し方をしているため、入ればさぞファンからキャーキャー言われる人気者になれるだろう。
そんなことを考えていると
『ーーー』
背中に、じっとりとした視線を感じた。
「......ありがたい誘いですが、目立つことに興味はないのでやっぱり遠慮しておきます。」
「そうですか、残念です。」
そう答えると背中がスッと軽くなった。
よかった。怨霊も消えてくれたみたいだ。
「そういえばなんであんななんの変哲もない片手剣を使ってたんですか?
もっと良い武器使ってれば楽に勝てたんじゃないですか?」
「ああ、あれですか。あれは......」
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KASSENの準備期間中のことーー
今まではKASSENのテストプレイしかしてこなかったため、あまり持ち武器というものを決めていなかった俺はまず武器を決めようという話になった。
「今回はヤッチョがミコトにピッタリの武器を用意したよ〜!」
ヤチヨがニッコニコの笑顔で話しかけてくる。
......もはや嫌な予感しかしないんだが。
「さーて、武器は何にしようかなー。やっぱりロマンのある武器使いたいよなー」
やっぱり使い慣れた鞭とかがいいかなー。でも痛覚がないと使い勝手イマイチなんだよな。
「気になるでしょ〜?気になるよね〜?......ミコトー?聞いてー」
まあ、ただヤチヨがどんな武器を選んだのかも気になるため、一応見てみるか
「で、どんな武器なの?」
「ふふん!聞いて驚け見て笑え〜」
するとどこぞの某ネコ型ロボットの四次元ポケットのように、ヤチヨが胸のメンダコからぐぐぐっと何かを引っ張り出す。
「じゃっじゃーん!剣!」
そこにあったのはどう考えてもメンダコよりかは長いシンプルな片手剣だった。
どうやってその中に収まってたんだ、と一瞬思ったがそれよりも
(じ、地味......)
初見の印象がまずそれであった。
だが、見た目はちょっと地味だけど侮ることなかれ。
色々な種類に変形する武器やウナギを発射するジェット付きハンマーがあるのだ。
この剣にも特殊な機能があるに違いない!
「まさかビーム!?ビームとか出ちゃったりする!?」
「ううん、ただの剣だよ」
「......今なんて?」
「ただちょっと頑丈で攻撃力が高いだけの剣だよ」
「お前ふっざけろよ!なんで現実にはないロマン武器が使えるのに俺だけただの剣なんだよ!キャラメイクの時といい人の夢をなんだと思ってるんだ!」
やはり他の武器を使うか。武器の一覧ウィンドウを開こうとしたとき
「そっか〜。せっかくヤチヨがミコトのことを思って作った武器なんだけどな〜」
......え?作った?
「作った?選んだんじゃなくて?」
「そうだよ。あーあー、悲しいなー。
ミコトのことを考えて頑張って作ったのに。
ミコトは他の武器を使うんだー」
「......」
「オヨヨー 。゚(゚´ω`゚)゚。 」
「......あ〜〜〜もうっ!!」
そんなこと言われたら使うしかないじゃん!
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「いや、シンプルな武器が好きなんですよ。」
さすがにこれをそのまま話すわけにはいかないので嘘をついて誤魔化す。
「ミコ〜!そんなにその武器気に入ってくれてたんだ〜!ヤチヨが真心こめて作」
「はーい、黙りましょうねお姫さま〜」
「むぐーーー!?」
これ以上喋れないように口を塞ぐ。
「ね〜、俺もう帰ってい〜い?」
そろそろ我慢の限界なのか乃依が帰宅を要望する。
「良いわけないだろ!」
やはり根が真面目な帝が襟を掴み上げて注意する。
そんな中、帝とパチリと目が合う。
「「は、はは......」」
どちらからともなく乾いた笑いが溢れる。
ほんと苦労してますね、お互いに。
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おまけ
乃依side
そして、今日のKASSENの反省会後。
「帝さ〜、ヤチヨちゃんって本当にAIだと思う〜?」
「そりゃAIなんじゃねーの?確かに人としか思えなかったけど今日実際に分身とかしてたし。」
「いや〜。俺にはどうもAIとは思えなかったけど。」
「なんでだ?」
「そりゃだって......やっぱ、なんでもない。」
「......?」
不思議そうな表情でこちらを見てくる帝を見つめながら先ほど取り消した言葉を思い浮かべる。
そりゃだって......
あれはどう見たって、自分と同じく好きな人に構って欲しい普通の女の子にしか見えなかったから