超かぐや姫! 星の降る音   作:サトウシュン

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15話 最古参になったら記憶を消されかけた

 

「ビンゴッ!」

 

 

 ついにお目当てのものを見つけた嬉しさから指をパチンッと鳴らす。

 

 

 ツクヨミからログアウトした俺は、何分かおきに竹Tubeでかぐやという名前で検索をしていた結果......

 

 

 ついに枠がたったのを発見したのだ。

 

 

 タイトルは「【初配信】月から地球にこんばんわ!かぐやだよ!」となんともかぐやらしいものであった。

 

 

 俺は速攻でチャンネル登録、グッド評価、そして初コメントを1番に終わらせてその全てが1となっている画面をスクショした。

 

 

「よっしゃあー!これで俺がかぐや最古参だー!」

 

 

 と当初の目的を達成して喜びの歓声を上げていると動画のカウントダウンが始まった。どうやらもう始まるようだ。

 

 

 そして、3、2、1とカウントが減少していきとうとう「0」になる。

 

 

 その瞬間。映像が動き出し、時間が流れ始める。

 

 

 画面には手作り感満載のお世辞にも上手いとは言えない女の子のイラストがこちらに手を振っていた。さらに、動画の背後では聞く人の心を不安にするような不気味なメロディーが流れていた。

 

 

『かぐやっほー! 月からやって来た、かぐやだよー。今日はやること思いつかないからこれで終わり!じゃあねー............ん?これで切れてるのかな?』

 

 

「うわ。」

 

 

 思わず声が漏れ出た。

 

 

 最後に実写映像に切り替わり、そこには金色の髪に色素の薄い白い肌の美少女がとても見覚えのある背景とともに写っていた。

 

 

 ライブ配信中に顔が映ってしまう事態が発生する、いわゆる『配信事故』というやつが起こっていた。

 

 

「これは酷いなぁ」

 

 

 動画を見た素直な感想がストレートに喉から出てきた。

 

 

 すると次の瞬間ーー

 

 

「あ、ああ......」

 

 

 一人きりだと思っていた空間に突然、さきほどツクヨミのライブで聞いたばかりの声が響いた。

 

 

 まるでこの世の終わりを見たかのような震える声からは絶望と悲惨さがひしひしと感じられた。

 

 

「......」

 

 

「......ミk」カチッ

 

 

 俺は声の主がなにか次の言葉を発する前に速攻で音声元のタブレットの電源を切った。

 

 

「ふぅー。危なかった。さて、寝るか」

 

 

 あのままだと確実にやばいことになっていたことが手に取るようにわかるため、未然に防げて安堵する。

 

 

 無事に危機を逃れたため、さっさと夢に逃げようと思い布団に手をかけた。

 

 

 

 次の瞬間、視界が一瞬にして切り替わった。

 

 

「はっ!?」

 

 

 周りを見回すとそこは無数の灯籠が光る見覚えのある部屋。

 俺はヤチヨのプライベートルームの中央に立っていた。

 

 

「え?なんで......あだっ!?」

 

 

 ドタンッッッ!

 

 

 状況が把握できずに困惑していると、突然背後から衝撃が襲い地面に叩きつけられた。

 

 

「いたた、誰だよ......」

 

 

 地面に押さえつけられた状態で首を回し後ろを見てみると

 

 

「ふー!ふー!」

 

 

 荒い息を吐きながら興奮状態にあるヤチヨが俺を取り押さえていた。

 

 

 頬は熱を帯び、目の奥はギラギラと妖しく光り、まるで今にも走り出しそうな獣のように、全身が小さく震えていた。

 

 

「ひぃっ!?」

 

 

 思わず悲鳴が漏れる。

 

 

 え?なんでヤチヨが?ヤチヨがいるってことはここはツクヨミってことだ。でも俺ログインしてないけど

 

 

 そこまで考えついてから俺は、ライブが終わってからもスマコンをつけっぱなしにしていたのに気づく。

 

 

 まさか、コイツ!

 

 

「お前っ!強制的にツクヨミにログインさせやがったな!管理者権限の乱用だぞ!」

 

 

「うるさいっ!見たでしょ!()()!」

 

 

 やばい、完全にバレてる。これはもう言い逃れとかできないし、そもそも聞く耳をどこかに置いてきてしまっている。

 

 

「FUSHI!」

 

 

 と彼女が呼びかけると肩の上から青い顔をし、恐怖で体を震わせたFUSHIが現れた。

 

 

「FUSHI!ミコトの記憶を消して!!今すぐに!!」

 

 

「はあっ!?」

 

 

 とんでもないことを言い出した。

 

 

 確かにFUSHIには人の記憶を消去する機能があるがあれは相手の意識がない状態で丁寧に行わなければ後遺症が出る可能性もある危険なものなのだ。

 

 

 そんなことさせてたまるかともがくが力が強く全然振り解けない。

 

 

「落ち着けって!そんなことしたらやばいのはわかるだろ!

ていうか何そんな怒ってんだよ?い、いい配信だったじゃん......」

 

 

「心にも無いこと言わないで!さっき部屋で言ったこと聞いてたんだから!いいから......大人しく記憶置いてけっ!!」

 

 

 完全に興奮して我を失ってる。

 

 

 もうダメだ!

 

 

 万事急須かと思われたその時。

 

 

「落ち着けバカたれ!」

 

 

「あいたっ!?」

 

 

 とFUSHIがヤチヨの頭に頭突きをかます。

 

 

 そうして上に乗っかっていたヤチヨがバランスを崩したことで俺も自由になることができた。

 

 

「よーし、さすがFUSHI! 信じてた「お前もだバカたれっ!」あだっ!?」

 

 

 なんで俺まで......?

 

 

────────────────────────────────

 

 

「落ち着いたか2人とも」

 

 

「「はい......」」

 

 

 俺たちはFUSHIから頭突き両成敗をくらい正座をして向かい合っていた。

 

 

「で......なんで初配信があるってわかったの?」

 

 

 ジトっとした目線を向けながら問い詰められたので俺は今日のライブ後のヤチヨの発言に違和感があったためそこから推測したと正直に話した。

 

 

「うっそ!?確かにミコトに初配信見られたくないとは思ってたけど。いつもと変わらないように努めたはずなのに......」

 

 

「我ながら名推理だったぜ」

 

 

「初めて会った時はあの状況をドッキリとか迷推理してたくせに」

 

 

「そんな古い記憶は忘れたぜ」

 

 

 そこで俺は気になっていたことを問いかけてみることにした。

 

 

「ていうかなんでそんな怒ってんの?」

 

 

「だ、だって!あの初配信は、私にとっての黒歴史だから。ミコトにだけは見られたくないって、思って......」

 

 

 なるほど。確かにあれは人によっては忘れたい黒歴史にもなるだろう。

   

 

 でも、

 

 

「見てこれ」

 

 

 と俺は先ほどスクショしたかぐやのchの写真を写して見せる。

 

 

「これ......」

 

 

「ふっ、どーだ!俺がヤチヨがデビューして最初のチャンネル登録者で初いいねも初コメも俺!まごうことなき最古参だ!」

 

 

 ドヤっと胸を張る。

 

 

「かぐやがデビューするってわかって絶対にこれだけは譲りたくないって思ったんだ。だから、ずっと画面に張り付いて初配信を待ってたんだけど、まさかヤチヨがそんなことを思ってたなんて知らなかった......。ごめん」

 

 

「ううん。私の方こそ一方的に暴走して。酷いことしちゃった......ごめん」

 

 

 まるで凍っていた湖に、最初のひびが入るみたいに、空気がゆっくりとほどけていく。

 

 

 やがて、どちらからともなく小さく笑った。

 

 

 さっきまでの距離が嘘みたいに、ふっと近くなる。

 

 

「よかった、これで仲直りだな。」

 

 

 FUSHIはそういってヤチヨの肩に戻っていく。

 本当にありがとうな、FUSHI。

 

 

「......あっそうだ。ヤチヨに渡したいものがあるんだ」

 

 

────────────────────────────────

 

 

ヤチヨside

 

 

そう言ってミコトは懐から何かを取り出して私の手の平に乗せた。

 

 

「これって......!」

 

 

私の手にあったものは月の装飾の入った金色のブローチだった。

 

 

「かぐやに今日プレゼントしたやつ。今まで持ってるとこ見たことなかったからもしかしたら昔に無くなったのかなって」

 

 

その通りであった。あのとき、月に帰ったときに無くなってしまって。

 

 

ずっと、形も思い出せなくてもう二度と手に入らないと思っていたもの。

 

 

「嬉しい......ありがとう」

 

 

言葉にすると、簡単すぎて。

 

 

この胸の奥のあたたかさも、くすぐったさも、少しだけ滲む涙の理由も、何ひとつ伝えきれない。

 

 

それでも、彼に向けて笑った。

 

 

「......どういたしまして」

 

 

そういえばさっき彼が言ったことで気になっていたことがあるので聞いてみることにした。

 

 

「さっきチャンネルの1番は譲りたくないって言ったよね。なんで譲りたくないって思ったの?」

 

 

「それは......内緒」

 

 

「えー、なんでー?教えてよー」

 

 

「いやだね。もう遅いから俺は寝ます!今度は無理矢理ログインさせるなよ!」

 

 

「しないよ。......おやすみ、ミコト」

 

 

「おやすみ、ヤチヨ」

 

 

そう言い残して彼はログアウトした。

 

 

「ふふっ....../」

 

 

私は彼がいなくなった後もしばらくブローチを眺めていた。

 

 

金色のブローチは、月の柔らかな光を受けて静かに輝いている。

 

 

……ああ、きっと。

 

 

これを身につけるたびに、今日のことを思い出すんだろう。

 

 

嬉しくて、恥ずかしくて、でもどうしようもなく幸せだった、この瞬間を。

 

 

────────────────────────────────

 

 

ミコトside

 

 

 俺は今度こそツクヨミからログアウトし、スマコンを外す。

 

 

 そして、布団に入り眠ろうとするが全然眠れないことに気づく。理由は先ほどのヤチヨの質問のせいだ。

 

 

『でもなんで譲りたくないって思ったの?』

 

 

 ......ヤチヨが愛しているのは酒寄彩葉だっていうことはわかっている。

 

 

 それでも、

 

 

 ヤチヨを1番想っているのは自分だって証明したかったから......なんてそんなこと口が裂けても言えるわけないだろ。

 

 

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