先日の初配信の後、かぐやはヤチヨカップ優勝のために本格的に動画配信活動を開始した。おそらく酒寄さんに協力を求めたのかジングルなどもこの前聞いたものとは比較にならないほど良いものになっていた。
そして、そんな後押しもあり、かぐやがデビューしてからの勢いは凄まじいもので、俺はその配信の全てを追っていた。
ある日の配信ではーー
『ぐわーー!?これバッドエンドじゃん!くそ!許せねーーー!』
『影のない明日』という最近配信開始となった映画の同時視聴でバッドエンドとなった結末に机を叩いて発狂するかぐやを見て笑ったり。
「あっはははっ!発狂しすぎだろ!」
「ーーーーー」
動画を見ている最中、タブレットから視線を感じた気がしたがまあ気のせいだろう。
そして、またある配信ではーー
『わあっ!もう〜!犬DOGEやめてよー!』
『わんっ!わんっ!』
かぐやと犬DOGEが戯れ合う動画を眺めて癒されたり。
「はあ〜、犬DOGEマジかわいいー。グッズ化しないのかなー。したら絶対買うのに」
「ーーーーー」
なんか水槽の方から視線を感じた気がしたがおそらく気のせいだろう。
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そうして、ある日。
ピコン
通知が来た。
内容を見てみると
【今日20:00からツクヨミで路上ライブやるからよかったら来て! かぐや】
フレンド通知で個人的にお誘いが来た。
これは行くしかないな。かぐやの活動は全て余すことなく見ると決めているのだ。
そうしてツクヨミにログインして予定の時間の少し前に行くと人はあまりいなかった。まだまだ駆け出しなのでまあそんなものだろうと見ていると1人見た事のある人物がいた。
あれ?忠犬オタ公さんいるじゃん。
さすが「NEWS TSKUYOMI」という番組でライバーの紹介コーナーを担当しているだけあり、売れるものを嗅ぎ分ける嗅覚は鋭いようだ。
そんなことを思っていると
「あっ!ミコー!来てくれたんだ!」
こちらの姿を確認すると耳をピコンっと上げてタタタッと駆け寄ってくるかぐや。
「今日は誘ってくれてありがとうございます。ライブ楽しみにしてますよ」
「うん!絶対楽しませるから!期待してて!」
そう言ってピースを作り、弾けるような笑顔をするかぐや。
相変わらず無邪気というか、見ているこっちが眩しくなるようなやつだな。
かぐやからチラッと目線を逸らすとキツネの着ぐるみを着たサポートミュージシャン?らしき人と目が合った(気がした)
「......」
「......」スッ
「......イロさん?何やってんですか?」
しばらく見ているとスッと目を逸らされたので声をかける。
「......チガウ、オレ、イロサン、チガウ」
「いやいや無理ありますって」
かぐやの隣にいるのはあなたしかいないでしょう。
さすがに誤魔化せないと判断したのか彼女は深いため息をした後に理由を語り出した。
「はあ〜......実はかぐやに伴奏して欲しいって頼まれて......そんな時間ないって言ったんですけど......断りきれなくって。せめて顔だけは隠そうと着ぐるみを......」
相変わらずお転婆なかぐや姫に振り回されているようだ。
(大変ですよねーほんと。すごいわかりますその気持ち)
そんな彼女を見て心の中で同情していると
「ほら!いろP!もうライブ始めるよ!」
ライブの予定時間になったのか、かぐやに無理やりズルズルと引き摺られていくいろさん。
「あはは......」
乾いた笑みがこぼれる。
俺は申し訳ないがかぐやがウミウシの姿で良かったと少しだけ思った。そうじゃなければ確実に労力は倍以上に増えていたはずだからだ。
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その後も思いついたことは片っ端からやっていく怖いもの知らずのかぐやは破竹の勢いでランキングを上げていきその順位を280位まで押し上げた。
しかし、そこまで上がると流石に周りも強敵揃い。今までのように簡単には伸びることは無くなった。
そこで、かぐやは友達だと思われるインフルエンサーとコラボをして、さらにはチャンネル名も『かぐやいろP』へと変更し今まで以上のハイペースで動画をあげ始めた。
ある日の動画ではーー
『今日は激辛のカップ焼きそばを食べま〜す!』
かぐやが赤いパッケージを掲げた瞬間、コメント欄がざわめいた。
:来たぞ
:これマジでやばいやつ
:かぐや......惜しいやつをなくしたよ
『じゃあ、いきます……』
かぐやはそう言うと激辛ソースをかけ、かき混ぜるたびに麺がどす黒い赤へと染まっていった。
コメントが一気に加速する。
:やめとけ
:水用意した?
:救急車呼んどく?
『いやいや、これいけるでしょ!』
視聴者は止めたがかぐやはいく気満々だ。
いつも通り軽口を叩くかぐやだが、その声はほんの少しだけ震えていた。
『い、いただきますっ!』
意を決してズズっと麺を勢いよくすすった次の瞬間ーー
『ッッッッッッ!!!!!?』
かぐやの顔が見る見るうちに歪む。次いで白い顔が赤く染まり、額から汗が噴き出した。
それを見てコメント欄は爆発した。
:wwwwww
:顔www
:終わったw
『まっ......これ......辛っ.........げほっ!』
何度も咳き込み水をがぶ飲みする。
途中から涙も出始め、涙と汗でぐしゃぐしゃになっていき、とても普段アイドルのように活動している者がしてはいけない顔をしていた。
それでも、かぐやは諦めずに懸命に食べ続け......
『完食......しました......ごちそうさまでした......』
:よく頑張った!
:激辛でもごちそうさまが言えるの良き
:感動した。チャンネル登録しました。
それを一緒に見ていたヤチヨは悲壮感を漂わせながら
「この焼きそば本当に辛かったなー。これだけはもう二度と食べたくないよ......」
「だろうな。なぜこれにいった?」
いくらなんでもなりふり構わなさすぎだろ
またある日にはーー
『今日は恵方巻一口食べ切りチャレンジをします!』
:なぜこの時期に......?
:今夏ぞ?
:俺たちとは違う文化圏から来たんだろ
夏なのに恵方巻きを食べると言う謎の動画趣旨にコメント欄は混乱を起こしていた。
『なんと〜?食べる恵方巻きはいろPが用意してくれましたー!』
:さすがいろP
:有能
:いろP結婚してくれ
そして画面外のいろPが恵方巻きを取ってくると
ゴトッ
と皿を置く音らしからぬ音が響き......
『......え?』
呆然とするかぐやの前には直径6cmほどの極太の恵方巻きが用意されていた。
それを見て沸くコメントたち
:太いwww
:どう考えても一口ではいけないサイズwww
:いろP!?
『い、いろh「ピーーーー」......いろP?』
かぐやが予想だにしなかったサイズの恵方巻きを前に食べるのを躊躇っているとまるで「早く食え」と言っているかのようにピーピーと笛の音が響いた。
『ひ、一口でいってやらぁーーーー!』
:いった!
:いけるのか!?
:やめとけ!
そして明らかに無理やり押し込むように口に入れると
『……っ、ん゛ッ——』
かぐやの顔が一気に青ざめる。目が潤み、呼吸が乱れる。
:詰まりそう
:これはマズイ
:あっ
次の瞬間ーー
「はい!これ以上はダメーーー!!」
とヤチヨが強制的に俺のスマホを切った。
「あーーー!」
何すんだ!と非難の目線を向けたが
「ダメだから!ぜったいここから先は見せないから!!」
と、また記憶を消しに来そうなほどすごい剣幕で言ってきたため、素直にこれ以上先を見るのはやめた。
動画はすぐに非公開になり、後日チャンネルを見てみると、アップされた編集済みの動画はあの後のシーンはカットされており、この配信は終了しましたと画面に表示されて終わっていた。
そんな変な動画ばかりあげていたかぐやだが、その効果もあり、かぐやいろPチャンネルはまた順位を上げていった。
そしてある日の配信でーー
「そんでな、ハマグリの出汁を濃縮したい時は、生で剥いて洗えば」
かぐやが雑談配信でなぜか急にハマグリの出汁の取り方について話しだした時のこと
:かぐやちゃん結婚して
:結婚しよう
......はぁ?
恵方巻きのシーンは原作見ても本当に謎すぎる。