超かぐや姫! 星の降る音   作:サトウシュン

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今日から少し投稿ペース落としていきます。感想などもモチベーションに繋がりますのでお待ちしております。


18話 震えながら始まるKASSEN配信

 

 

 8月6日

 

 

 彩葉side

 

 

「ねーねー彩葉〜。 KASSEN教えてよ〜」

 

 

 机に向かって勉強に励んでいると、背後から間延びした声が降ってきた。振り返らなくても分かる。現在快進撃中の宇宙人――かぐやだ。

 

 

「無理。時間ない」

 

 

 今日は夏期講習の復習を終わらせると決めている。したがってこの宇宙人と遊んでいる暇など1秒たりともない。

 

 

「えーじゃあせめてKASSENに詳しい人いないの〜」

 

 

「芦花と真美は?あの2人にKASSEN教えてもらってたじゃん」

 

 

 最近あの二人はすっかりかぐやに取り込まれ、配信活動にどっぷり浸かっているらしい。

 

 

「芦花と真美もうまいけどさー。かぐやもっと強くなりたいの!KASSENが強くなればもっと登録者数も増えるはず!」

 

 

 そんな安直な......と思ったが、まあ、あながち間違いでもないかもしれない。

 

 

 確かにKASSENは超人気コンテンツだからプレイ動画をあげれば注目を集められるだろう。

 

 

 実際にダントツで1位のブラックオニキスがそのKASSENで人気を得ているわけだし。

 

 

「うーん、詳しい人......ミコさんとか?私が武器を選ぶ時に相談したことがあるんだけど大分詳しかったよ。KASSENも結構昔からやってるみたいだし」

 

 

 以前、芦花と真美と一緒にKASSENをやることになった時にミコさんにメールで相談したことがあるのだが、あの時のアドバイスは的確で、しかも丁寧だったのを覚えている。

 

 

「そーなんだ!じゃあさっそく〜」

 

 

「待った!」

 

 

「え〜、なに〜?」

 

 

「芦花と真美は一歩譲っていいとして、ミコさんには迷惑かけちゃダメ」

 

 

 あの2人にも、「もし迷惑だったら断ってもいいんだからね」とは言っている。だが、「私たちもかぐやちゃんと遊びたいから」と言っていたのでそれ以上はとやかく言わなかった。

 

 

 でもミコさんは別だ。あの人はリアルでも繋がりがあるわけでもないし、自分がいない状態でかぐやの面倒をみさせるわけにはいかない。なによりーー

 

 

(絶対に迷惑をかける未来しか見えない!)

 

 

「ぶ〜〜〜!彩葉のケチ〜!」

 

 

「ケチで結構です!」

 

 

 

 それから10日後ーー

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

 8月16日

 

 

 ミコトside

 

 

 ヤチヨカップの結果発表まで残り2日となったこの日。俺が家でスマホをいじっていると

 

 

 ピコン

 

 

「ん?」

 

 

 かぐやのSNSが更新された。

 

 

【かぐやっほー!急だけど今度の8月18日にブラックオニキスとKASSENで勝負することになった!ぜっっっったいに勝ってヤチヨカップ優勝するからみんな見にきてね!】

 

 

「お、やっと決まったのか」

 

 

 なんとヤチヨカップの結果発表当日に現在1位のブラックオニキスと47位のかぐやが勝負をすることになったらしい。

 

 

 現在優勝を狙うにはだいぶ厳しい順位にいるかぐやからしたら注目を集めることのできるこのイベントはありがたいはずだ。

 

 

 なぜわざわざ敵に塩を送るような行動を?と世間の人は思うだろうが帝さんのことだからツクヨミを盛り上げるために企画したのだろう。

 

 

 さすがは帝さん。ファンサービスがいいなと思いつつブラックオニキスのSNSも見てみると

 

 

【よう、子ウサギども!ヤチヨカップ結果発表当日の8月18日、今話題沸騰中のかぐやちゃんとKASSEN SENGOKU で勝負することになったぜ!俺が勝ったらかぐやちゃんに結婚してもらうから。

 この世紀の竹取合戦、絶対に見逃すなよ!】

 

 

「......はぁ?」

 

 

 スマホを握る手に力が入る。

 

 

(前言撤回。なんだあのギザ野郎ふざけやがって!)

 

 

 文句を言ってやろうとフレンドリストから帝の名前を探していると

 

 

 ピコン

 

 

 違うフレンドのメッセージ通知が光った。

 

 

 ーーかぐやからであった。

 

 

 メッセージを表示してみると

 

 

【ミコ!明日かぐやにKASSEN教えてくれない?かぐやどうしてもブラックオニキスに勝ちたいの!】

 

 

 いや急だな......というかそもそもなぜ自分に?

 

 

 と思いつつ果たしてこの出来事は過去にもあったのかヤチヨに確認してみようと思ったのだがーー

 

 

「いや、今忙しいんだったな」

 

 

 ヤチヨカップの終了が迫っているため、現在ヤチヨは集計作業など諸々の業務に追われており、最近は顔を合わせていないのだ。

 

 

 メッセージを眺めながら一つ疑問が浮かんだ。

 

 

 ......もしここで俺が断った場合未来はどうなるのだろうか?

 

 

 このKASSENでかぐや達は負けてしまうがヤチヨカップは優勝できることはヤチヨから聞いているため知っている。

 

 

 それならば自分が教えなくても大丈夫なのではないか?

 

 

 そう思い、悪いが断りの返信を打とうとするとまたメッセージが来た。

 

 

【お願い。かぐやどうしても優勝していろPと一緒にヤチヨとのコラボライブやりたいの......】

 

 

「......」

 

 

 ......ヤチヨカップが始まってから、最近のヤチヨは目に見えて楽しそうにしていた。

 

 

 なぜかと理由を聞いてみれば

 

 

『だってもうすぐ彩葉といっしょにまた歌えるんだよ!ずっと.....8000年間ずっと待ち望んできたの!

 だからすっごい楽しみなんだ!』

 

 

 と本当に嬉しそうに満面の笑みで答えたのだ。

 

 

 ......はあ〜〜〜

 

 

 もう未来がどうとかなんて知ったこっちゃない。どうせなるようになるはずだ。

 

 

 こっちだってかぐやと酒寄さんにはヤチヨとのコラボライブをしてもらわなければ困るのだ。

 

 

【いいですよ。自分で良ければ力になります】

 

 

 そのためならばやれる事はなんだってやってやる

 

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

 

 そして日を跨ぎ、迎えた当日。

 

 

「離せぇーーーー!!この話はなかったことに!俺は帰らせていただきます!!」

 

 

「待って〜〜〜〜〜!帰らないで〜〜〜〜〜〜!!」

 

 

 俺はツクヨミの練習用ステージから帰ろうとして

 かぐやに腕を掴まれ必死に止められていた。

 

 

 なぜこんな事になっているかというと......

 

 

(こんのおてんば姫が!!直前まで“配信する”こと黙ってやがった!!)

 

 

 なんと枠を立ててこの練習風景を動画配信しようとしていたのだ。

 

 

 確かに教えるとは言った。

 だが――出演するとは言ってないぞ!

 

 

 理由を聞いたところ優勝に向けて少しでも順位を上げておきたいらしい。それは確かにもっともだが!

 

 

「でも練習風景を配信でやったら相手に対策されちゃいますよ!?やめた方がいいですって!」

 

 

「それよりもとにかく順位を上げたい〜〜〜!」

 

 

 なんとか説得を試みるが、かぐやはもう順位を上げることしか頭の中にないらしい。

 

 

「お願い〜〜()()()〜〜!!」

 

 

 ピタッ

 

 

 その言葉に思わず体が硬直する。

 

 

「......?」

 

 

 かぐやはその反応を見て身近にいるチョロい誰かさんを思い浮かべたのだろう。

 

 

 これはもしや......と思いーー

 

 

「ねえ、ミコ......」

 

 

「......」

 

 

「ミコに手伝ってほしい.....」

 

 

「......」

 

 

「かぐやを助けて......?」

 

 

 .............

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

「かぐやっほー!それでは今日はKASSENの指導役としてゲストをお招きしましたー!はい!自己紹介して?」

 

 

「は、はじめまして〜。ミコ.....で..........」

 

 

 くそっ......どうして......どうしてっ......!

 

 

 相変わらず頼まれると断れない自分の優柔不断さに悔しさを感じつつ、俺は配信に出たくなかった理由を思い浮かべる。

 

 

 というかわかっているんだろうか?

 

 

 かぐやは超がつくほどの美少女のため、この前求婚してきた人たちのようないわゆる"ガチ恋勢"というものが多く存在する。

 

 

 そのため、男の俺が配信になんて出たら......

 

 

 :は?男?

 :なんでかぐやちゃんの配信に男が?

 :処すか

 

 

 ......でしょうね

 

 

 案の定コメント欄は荒れており、このままだとヤチヨカップの順位にも影響を与えそうなので自分がKASSENの開発に携わっていることを明かすことにした。

 

 

「えー、私ツクヨミのKASSENの企画立案を担当し、開発に携わっております。KASSENについては詳しいと自負しているため、今回はかぐやさんから正式な依頼のもと指導をお願いしたいと言うことで参りました」

 

 

「そ、そうなんだー。 あっ、みんなそう言うことだから!」

 

 

 お前は今知りましたみたいな反応すんな!

 

 

 するとコメント欄の流れが変わる。

 

 

 :公式の人だったか

 :いつもありがとうございます!

 :お前らひれ伏せ

 

 

 なんとか炎上は回避できそうと思ったが......

 

 

 :いや、絶対嘘だろw

 

 

 と一部信じていない層がちらほらと見えた。

 

 

 どうしたものかと思っているとーー

 

 

【ヤチヨ】:その人は確かにKASSENの企画立案担当だよ〜。ヤッチョが保証しちゃう! 

 

 

 なんとヤチヨがコメント欄に現れたのだ。

 

 

 :え?ヤチヨやん!

 :本物!?

 :なんでかぐやちゃんの配信に!?

 

 

 突如現れたヤチヨにコメント欄が爆速で流れていく。

 

 

 :ヤチヨが言うなら本当だな

 :疑ってすいませんでした!

 

 

 コメントを見ると手のひら返しで信用するものが増えていった。

 なんとかヤチヨの発言で本当だと信じてもらえたようだ。

 

 

 (ふう、ヤチヨのおかげで助かった)

 

 

 と安堵しかけてーー気づく

 

 

 ......いや、待て。なんでヤチヨいんの?

 

 

 俺はこの前はあれだけヤチヨの配信には出ない出ないと言っていたのにかぐやの配信にはノコノコと出演しているのだ。

 

 

 これにはヤチヨも機嫌を悪くするか......?とビビっていたのだが

 

 

 ・・・・・・

 

 

 そのあとヤチヨのコメントが来ることはなかった。

 

 

(気にしすぎだったか......)

 

 

 安堵の息をついたその直後、俺の横で

 

 

「うおおおー!ヤチヨだーー!」

 

 

 とかぐやが自分の配信にヤチヨのコメントが来たことに興奮の声を上げる。

 

 

 

 ......その時だった

 

 

【いろP】:かぐや?あんた何やってんの? 

 

 

 今度は本日はいないはずのいろPが現れた。

 

 

「い、いろP!? なんで配信見てっ......!?」

 

 

 あり得ない人物の登場に、かぐやの声が裏返る。

 

 

 当然だ。かぐやは酒寄さんに今日の配信のことは一切言っていなかったのだから。

 

 

 昨日メッセージを送るときーー

 

 

『こうなったらもうミコに頼むしかない......!彩葉には......言ったら絶対「相手はプロなんだからちょっと練習したって無駄!それよりも他の人に迷惑をかけるのはやめなさい!」って言われるに決まってるし......よし、黙って送っちゃえ!どうせ彩葉は明日いないからバレないっしょ!』

 

 ーー送信!

 

 

 という流れであったのだ。完全に自業自得である。

 

 

【いろP】:友達に教えてもらったの。あんたあんだけダメって言ったのに......終わったら説教だから。

覚悟しておくように。

 

 

「......っっっ」ブルブルブルッ

 

 

 そのコメントを見たかぐやは、この後のことを考えたのか体を震わせ始めた。さらに、みるみるうちに顔が青ざめていき、今にも魂が抜けそうであった。

 

 

 ヌハハー ざまあみろ!!

 

 

 それを見た俺は心の中で高笑いする。

 

 

 因果応報、ここに極まれり――

 

【ヤチヨ】:ところでミコさんはあまり配信などは出ないとおっしゃっていたはずですが......おかしいですね〜? 

 

 さっきまで人の不幸で笑っていたツケが、秒速で回ってきた。

 

 

 (......あっこれは完全に怒っていらっしゃる)

 

 

 人のことを笑っている場合ではなかったことに気がつき俺も体が震え出した。

 

 

「さ、さっそく配信......始めよっか......」

 

 

「そ、そうですね......」

 

 

 配信開始前とは思えない空気の重さに対し、コメント欄はというと――

 

 

 :なんで2人とも震えてんの?

 :大丈夫かこの配信

 :今から心霊スポット実況でもすんのか?

 

 

 だが、このあと幽霊よりもおそろしいものが待っている2人はそれどころではなかった。

 

 

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