超かぐや姫! 星の降る音   作:サトウシュン

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27話 主役は遅れてやってくる

 

 

 彩葉side

 

 

 開戦後すぐに

 

 

 戦局は一方的に傾いた──

 

 

「ぐっ……!」 

 

 

 まず、雷がやられた。

 

 

 反則じみた集中砲火を浴び、そのアバターが消し飛ぶ。

 

 

「キリないね……!」

 

 

 乃依は高台から狙撃を続けるが、月人のレーザーでの狙撃により、その姿が掻き消えた。

 

 

 二人ともすぐにリスポーンはされる——だが。

 

 

(二人とも、残機はもうゼロのはず……!)

 

 

 次に落ちれば、本当に終わりだ。

 

 

「彩葉……っ!」

 

 

「ごめんね……」

 

 

 続いて、真実と芦花も連鎖するように撃墜された。

 

 

 短い謝罪とともに、2人のアバターが砕ける。

 

 

 ──戦線が、一気に崩壊する。

 

 

「仕方ねえ……ここまでか」

 

 

 ぽつり、と。

 

 

 帝アキラの口から零れたその一言は、あまりにもあっさりしていた。

 

 

「そんな……。待って!まだ……」

 

 

 私の縋るような言葉は、

 

 

「──勘違いするなよ、彩葉」

 

 

 即座に、鋭く断ち切られた。

 

 

「別に“勝つのを”諦めたわけじゃねえ」

 

 

 その声音は、むしろ静かに研ぎ澄まされている。

 

 

「本当なら自分の力だけで勝ちたかったんだが……そんなことは言ってられねえな」

 

 

 わずかな間。

 

 

 息を呑むほどの沈黙。

 

 

「……雷、乃依。使うぞ!」

 

 

 低く、静かな宣言。

 

 

「御意」

 

 

「はーい」

 

 

 リーダーの宣言に、2人が同意を示す。

 

 

 その瞬間──

 

 

 "空間が軋んだ"。

 

 

 帝アキラの全身から、異常なまでのエネルギーが噴き出す。

 

 

 まるで“世界そのもの”を捻じ曲げるような圧。

 

 

「おらああああ!!」

 

 

 振り抜かれた腕。

 

 

 それだけで——

 

 

 ドガンッ!!

 

 

 月人の巨体が、空の彼方へと吹き飛んだ。

 

 

 重力も、質量も、すべてを無視した一撃。

 

 

 まるで、月まで叩き返すかのように。

 

 

(なに……この攻撃力……!)

 

 

 遅れて理解が追いつく。

 

 

 そして——気づく。

 

 

 帝の顔に刻まれた、禍々しい紋様。

 

 

(——まさか、これって……) 

 

 

『チートモードだあああ!!』

 

 

 観客席に設置された中継用ホログラムから、

 忠犬オタ公の絶叫が響き渡る。

 

 

『たった今、ブラックオニキスの帝アキラ、雷!

 さらに乃依にもチートモードの発動が確認されました!!』

 

 

 どよめきが、会場を揺らす。

 

 

『チートモード』

 

 

 それはシステムの外側から干渉し、自身の

 ステータスを強制的に“上限突破”させる禁断の手段。

 

 

 だが──

 

 

 それには"大きな代償が伴う"

 

 

 

 ——しかし、そんなことは気にも留めずに、

 

 

「まだまだ行くぞ!」

 

 

 限界を踏み越えたブラックオニキスが、再び前に出る。

 

 

 世界のルールすらねじ伏せる力で——

 

 

 月人の大軍を、真正面から押し返していく。

 

 

 チートを使ったブラックオニキスの力は圧倒的で、

 敵を次々と倒していく。

 

 

 (いける!このままいけば、勝てるかもしれない!)

 

 

 そんな希望を持ち始めた──その時、

 

 

 

 ヴーーーン!……ヴーーーン!…

 

 

 突然、けたたましい警報音が空間を引き裂いた。

 

 

「......っ!なんだ!?」

 

 

 帝が顔を上げる。そして、

 

 

《警告。未確認の侵入を検知しました》

 

 

「これは......」

 

 

 無機質な赤い文字が、視界に表示される。

 

 

「わっ!?なにこれー!」

 

 

 向こうで、真実たちの驚く声が聞こえる。

 

 

 どうやら、この文字は真実達にも見えているらしい。

 

 

 観客の人たちは......!

 

 

 バッ、と観客の人たちの方を見てみても、観客は全員かぐやの歌と私たちのKASSENに熱狂しており、とてもこんな警戒文が見えているとは思えなかった。

 

 

 ……じゃあ、これが見えてるのはKASSENに参加している私たち──

 

 

 いや、かぐやも何事もなく歌っているから、かぐやを除いた参加者だけだろう。

 

 

《警告。未確認の侵入を検知しました》

 

 

 未確認の……侵入…

 

 

「このKASSENに、誰か侵入しようとしてるの……?」

 

 

「……まさか!また、月の奴らが援軍を連れてこようってのか!?」

 

 

 帝のその一言により、心の中でざわめきが一気に広がる。

 

 

 (そんな……

 これ以上、戦力差を開かれたら……もう)

 

 

 さっきまでの空気が嘘みたいに崩壊していく。

 

 

 自分の心臓の音が早まり、鼓動がやけに大きく聞こえる。

 

 

 ──かぐやが月に連れ去られる未来が頭に浮かぶ......

 

 

 だが、次の瞬間──

 

 

 ピコン

 

 

 電子音と共に白い文字で

 

 

《すでに開始されている試合への新たなプレイヤーの参加は認められません》

 

 

 というアナウンス文が表示された。

 

 

「はっ!どうやら、あいつらの策とやらは失敗したみたいだな!」

 

 

 月人たちは旗色が悪くなってくるや否や、このKASSENに新たなプレイヤーを新規に投入しようとしたのだろう。

 

 

 しかし──ツクヨミのルールはそれを許さなかったようだ。

 

 

 よかった……

 

 

 と心の中で安堵する。

 

 

 (これなら、かぐやを......!)

 

 

 再び自分の中の闘志に火がつき、目的地である相手の天守閣へと目を向ける。

 

 

 すると、

 

 

《繰り返します。KASSENへの参加は認められません》

 

 

 また新たなアナウンス文が表示される。

 

 

 白い文字。揺るがない拒絶。

 

 

 

 ──のはずだった。

 

 

 

 ピリッ

 

 

 突然、小さなノイズが走る。

 

 

《繰り返します。KASSENへの参加は認められませ

 

 

 一見先ほどと同じ、なんの変哲もない文章。

 

 

 だが、

 

 

 "最後の一文字"だけが、微かに歪んでいる。

 

 

「……今のは?」

 

 

 思わず自分の喉から声が溢れる。

 

 

 ──ザザッ

 

 

「……っ……!」

 

 

 視界が一瞬だけ砂嵐のように乱れる。そして──

 

 

 

《繰り返します。KASSENへの参加は認められませ◼️

 

 

 

 最後の文字が、横から“削られた”。

 

 

 

《繰り返します。KASSENへの参加は認められま◼️◼️

 

 

 

 ……いや、違う。

 

 

「なに......これ」

 

 

 白い文字が、次々と黒く侵食されていく。

 

 

 

 

《繰り返します。KASSENへの参加は認めら◼️◼️◼️◼️

 

 

 

《繰り返します。KASSENへの参加は認◼️◼️◼️◼️◼️◼️

 

 

 

 "否定"が、削り取られていく。

 

 

 

◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️KASSENへの参加◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️

 

 

 

 そして、言葉が崩壊する──

 

 

 次の瞬間、

 

 

 

 ピコン

 

 

 

 雰囲気に似合わない、明るい電子音と共に新たな文字列が表示される。

 

 

 

《プレイヤー◼️◼️()()()()()()()()()を確認しました》

 

 

 

「……え?」

 

 

 誰かの、間の抜けた声。

 

 

 

 ヒュウウゥゥ───

 

 

 

 それと共に"何かが落ちてくる音"が聞こえた。

 

 

 上を見てみれば、KASSENに参加するプレイヤーが登場する時の演出に使われる、"桃"が夜空から降ってきていた。

 

 

 

──────────────────

 

──────"ドンッ"!!

 

 

 

 轟音が響く。

 

 

 桃が地面に激突し、爆ぜる。

 

 

 フィールドにいる全員が、突然現れた"それ"に警戒を示す。

 

 

「なんだ......あいつ......」

 

 

 帝アキラが、初めて“困惑”を滲ませる。

 

 

 そして、弾け飛んだ桃の残骸の中から、何者かが出てくる

 

 

 ──それは

 

 

 

 夜の闇よりも暗い、真っ黒なローブで全身を隠し、袖からは武器であろう刃物の先端が僅かに見えた。

 

 

 

【プレイヤー◼️◼️の──】

 

 

 

 

 その姿はまるで──

 

 

 

 

【KASSENへの参加を、()()()()()

 

 

 

 

 命を刈り取る、死神のようだった。

 

 

 

 

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