超かぐや姫! 星の降る音   作:サトウシュン

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明日の29話は、自分的には1番書きたかった話でもあるので、見てくださるとありがたいです。


28話 互いに譲れぬもののために、そして別れ

 

 

 時間は少し遡り──

 

 

 ミコトside

 

 

 俺とヤチヨはKASSENのフィールドを見下ろすことのできる、高台からこの戦いを見届けていた。

 

 

 戦況は、意外にも拮抗していた。

 それというのも──

 

 

「あれ、"チート"だろ?使っちゃマズイんじゃないの?」

 

 

 ブラックオニキスが今回のKASSENで使用したチートモード故だ。あれは攻撃力を跳ね上げるもので、先ほど刀で叩いた敵がギャグみたいに吹っ飛んでいった。

 

 

 ......当たり前の話だがチートは禁止行為のため、使った場合ツクヨミでは"ペナルティ"が発生することになっている。

 

 

「うん。本来なら自動的にバンされちゃうんだけど……今回はライブの演出内のことだからって理由で、ヤチヨが何とかしとくよ」

 

 

「そりゃよかった」

 

 

 かぐやを守るために、そして酒寄さんの願いを叶えるために、何の迷いもなくチートを使うなんて……

 

 

 (......ほんと、カッコ良すぎるだろ)

 

 

 そして、二人でKASSENの行く末を見守っていた。

 

 

 そんな最中──

 

 

「……!」

 

 

 月人の一人がこちらに飛んできた。

 

 

 そして、相手がこちらの少し先に降りた瞬間

 

 

「──待って!」

 

 

 背後からの声を聞いて、剣の刃が相手の首に触れるか触れないかの距離で、ぴたりと止まる。

 

 

 ヤチヨが止めなければ、このまま倒していたというのに──

 

 

「アナタニ、テヲダスキハアリマセン」

 

 

 自分が死ぬことに全く恐怖がないのか……

 

 

 月人はそのまま何事もなかったかのように

 ヤチヨに向かって話し始めた。

 

 

「……デスノデ、ドウカジャマハナサレマセンヨウニ」

 

 

 そう言い残すと、月人はフッと煙のように消えていった。

 

 

 「……」

 

 

 ……どうやら警告に来ただけだったようだ。

 

 

 月人が何もせずに去ったことに少し安堵する。

 

 

 

 ──だが、これで確信を持てた。

 

 

 

 やはり、奴らはヤチヨを連れ戻す気はなく、

 

 

 狙いはかぐやだけのようだ。

 

 

 それならば、俺はもうヤチヨのそばにいなくても大丈夫だろう。

 

 

「ヤチヨ、これ持っててくれないか?」

 

 

 そう言って、ヤチヨから貰った片手剣を渡す。

 

 

 そして、この時のために準備していた、"新しい武器"を実体化させる。

 

 

「……!」

 

 

 それを見て、ヤチヨの目がわずかに見開かれる。

 

 

 おそらく、過去の光景を思い出し、俺がこれから何をしようとしているのかを察したのだろう。

 

 

 それでも、ヤチヨは何も聞かなかった。

 

 

 問い詰めることも、引き止めることもせず。

 

 

 ただ、わずかに目を伏せて——

 

 

「……ミコトがそうしたいなら、私は止めないよ」 

 

 

 ほんの一拍の沈黙。

 

 

 そのあとで、言葉が落ちる。

 

 

「きっと、あの時も、そういう運命だったはずだから」

 

 

 ヤチヨは少し悲しそうな顔をしながらも、その運命を受け入れたようだった。

 

 

「……いってらっしゃい、ミコト」

 

 

「うん……いってきます」

 

 

 

 (......ごめんな、かぐや、酒寄さん。恨んでくれて構わない)

 

 

 ウィンドウを操作しながら、

 心の中で彼女たちに謝罪の言葉を吐く。

 

 

 (君が、かぐやを守りたいと思うように......

 俺にも......どうしても守りたいものがあるんだ)

 

 

 最後にもう一度、ヤチヨの顔を見る。

 

 

 そうして、普段開いているものとは違う。

 

 

 管理者権限を持つものしか見ることのできない、

 赤黒い色のウィンドウを開いた──

 

 

──────────────────────

 

 

 彩葉side

 

 

 突然、現れた存在に月人の動きも止まる。

 

 

「ツクヨミの管理者権限ってことは......まさか」

 

 

 帝が、乱入者が現れる前に視界に映ったアナウンス文を思い出す。

 

 

 そう、ツクヨミの管理者権限を持っているのは、ただ1人だけだ。

 

 

 つまり──

 

 

()()()!助けに来てくれたんだね!」

 

 

 この前は、ライブの演出に注力するからと断られたが、ヤチヨもかぐやを助けるために、この戦いに駆けつけて来てくれたのだ!

 

 

 姿を隠しているのは、きっとヤチヨの姿でこのKASSENに出るのは色々と問題があるのだろう。

 

 

 ──前回のライブの時も、ヤチヨは月人たちを簡単に吹き飛ばしていた。

 

 

(ヤチヨは最強なんだ!これで勝率も大きく上がるはず!)

 

 

 すると、予想外の乱入者を排除しようと、人型の月人たちが一斉に攻撃を仕掛けようとする。

 

 

「ヤチヨ!危な─」

 

 

 ジャラッ

 

 

 私の声を遮るように、鎖が擦れるような乾いた音がした。

 

 

 次の瞬間、

 

 

 ジャラララァッ!!

 

 

 ヤチヨが剣を振るうと、先程までは一本の剣だったはずのそれが、節を連ねた鎖のように伸びる。

 

 

 そして、

 

 

 ザンッ!! 

 

 

 一閃──

 

 

 前にいた敵ごと、その後ろにいた連中までまとめて薙ぎ払う。

 

 

 だが、それだけでは終わらず、間髪入れずに次の動きに繋がる。

 

 

 ビュオォッ!! ガンッ、ジャラララッ!

 

 

 伸びた刃は空中でうねり続ける。

 

 

 振るうたびに、軌道が変わる。

 

 

 横から、背後から、死角から。

 

 

 ザシュッ!!

 

 

 刃が振るわれるたびに、敵が斬られ、体を裂かれ、次々と消し飛んでいく。

 

 

「......ッ!?」

 

 

 そして、攻撃を躱そうとした最後の一人に、しなる刃が絡みつく。

 

 

 ギリリッ......

 

 

 と、刃で締め上げて──

 

 

 ブチィッ!!

 

 

 最後の一人が、音と同時に消し飛ぶ。

 

 

 ヤチヨが柄を引くと、伸びていた刃が戻っていき、

 

 

 ジャララララ、ガチン!

 

 

 と音を立て、元の剣の形へ収まる。

 

 

 そうして、ヤチヨはわずか数秒で50体程の月人をあっさりと倒してしまった。

 

 

「すごい、一瞬であんなに......」

 

 

「これが、ヤチヨちゃんの本気なのか......!」

 

 

 私も帝もヤチヨの強さに驚いていた。だが、私がより驚いていたのは......

 

 

「あの武器って......?」

 

 

 ヤチヨが使っていた、まったく見たことのない武器だった。

 

 

「あれは蛇腹剣だな。刃の部分がワイヤーで繋がってて、分裂して鞭みたいに使うこともできる剣だ。現実だと、強度とか構造に無理があって再現不可能なうえ、ツクヨミでも扱いが超難しい。

いわゆる"ロマン武器"ってやつだ」

 

 

 すかさず、ゲームに詳しい帝が早口で解説をしてくれる。

 

 

「詳しいじゃん。さすがゲームオタク」

 

 

「おいおい、そんな褒めるなよ」

 

 

 どうやらこの言葉は兄にとっては褒め言葉だったらしい。

 

 

 そんな戦いの最中だと言うのに気の抜けた会話をしていると。

 

 

 グググッ!

 

 

 仲間をやられたからか、金魚の体に獅子のような顔を持つ月人が姿を変化させる。

 

 

「──────!!!」

 

 

 下半身は龍のようにしなり、上半身は4本の腕それぞれに武器を持ち、明らかに先程までとは別格の雰囲気を纏う。

 

 

「これは流石にやべーぞ!」

 

 

 相手のただならぬ強さを感じ取ったのか、帝がヤチヨを助けるために駆け寄ろうとする。だが、

 

 

 ガンッ!!ゴンッ!!ガチンッ!!

 

 

 4本の腕での絶え間ない攻撃が襲うが、ヤチヨはサッと危なげなく後ろにとんで躱す。

 

 

 ──ジャラリ

 

 

 またも剣がほどける。

 

 

 そして、伸びた刃を空中でブンブンと振り回すと、すぐさま刃は遠心力で加速していき、目で視認できないほど早くなった。

 

 

 ブンッッ!!

 

 

 空間そのものを撫で回すように、大きく弧を描く。

 

 

 そして、

 

 

 ドパァンッ!!

 

 

「──────......ッ!?」

 

 

 一瞬で、月人の顎を消し飛ばした。

 

 

 ヤチヨが腕を上へと振り上げると、そのまま勢いを殺すことなく、刃は際限なく天に向かって伸びてゆく。そして──

 

 

 ブンッ!

 

 

 剣の柄を勢いよく下へ振るう。

 

 

 すると、遅れて"刃が降ってくる"。

 

 

 ジャラララ!

 ララララララ!!

 ラララララララッッ!!!

 

 

 段々と刃の擦れる音が早くなり、

 

 

「………ッ!」

 

 

 

 ドゴォンッ!!

 

 

 

 伸びた刃は月人へと落ち、そのまま地面へ叩きつけられる。

 

 

 凄まじい衝撃音を立てて、砕けた石片が跳ね上がる。

 

 

 ──煙が晴れると、そこには

 

 

「────ッッッ」

 

 

 防御しようとした武器ごと、体を縦に引き裂かれ、消滅する月人がいた。

 

 

「すごい......」

 

 

「ああ!これならあいつらに勝つのも夢じゃねえ!

この勢いのまま行くぞ!」

 

 

 ヤチヨの圧倒的な力を見て、これなら勝てるかもしれない。

 

 

 そんな希望を持ち始めた、そのとき──

 

 

「......っ!彩葉!!危ねえっ!!」

 

 

「えっ......?」

 

 

 ジャララッ!!

 

 

 次の瞬間、鎖の擦れるが聞こえ、私の目の前には銀色の刃が迫っていた。

 

 

 ガバッ! ドサッ!

 

 

「……お兄ちゃんっ!」

 

 

「無事か!彩葉!」

 

 

 お兄ちゃんが私を抱いて倒れることで何とか刃を躱すことができた。

 

 

「ヤチヨちゃん!どういうつもりだ!何で......何で彩葉を攻撃した!!」

 

 

 帝が怒りとほんの少しの困惑を含んだ声で、ヤチヨを問い詰める。

 

 

 そう、私は今......

 

 

 間違えて攻撃されたわけでも、敵への攻撃に巻き込まれたわけでもない。

 

 

 明確に"ヤチヨに命を狙われたのだ"

 

 

(お兄ちゃんが庇ってくれなかったら、私はあのまま......)

 

 

 自分の頭が貫かれるイメージが湧く。

 

 

 

 ジャララララ、ガチンッ!!

 

 

 ヤチヨからの返事はなく、ただ伸びた節を戻し、剣の形にする音だけが響く。

 

 

 それを見て私の本能が違和感を告げる。

 

 

 ──違う。

 

 

 この前のKASSENで、ヤチヨの戦い方はすぐ近くで見たのだ。......だが、目の前の者の動きは、ヤチヨのそれとは全く違っていた。

 

 

「違う......あれは、ヤチヨじゃないっ!」

 

 

「違うって......じゃあ、あれは誰なんだ!?月人を攻撃したってことは少なくとも味方のはずだろ!」

 

 

「............」カチャリ

 

 

 ヤチヨだと思っていた者は無言のまま、ただ剣を構える。

 

 

「くそっ!あっちはやる気満々みたいだ」

 

 

 私も帝も武器を構える。

 

 

「彩葉!お前は天守閣に走れ!ここは俺が食い止める!」

 

 

「でもっ!それじゃあ、お兄ちゃんがっ!」

 

 

「目的を見失うな!これはかぐやちゃんを守るための戦いだ!お前が辿り着きさえすれば、俺たちの勝ちなんだ!」

 

 

 

 ......そうだ。私が──

 

 

「それに、こっちはチートまで使ってんだ!今の俺は誰にも負けねえよ!」

 

 

 あんま自慢することじゃないけどな、とチートを使った自分を恥じるように言い捨てる。

 

 

「......そんなことないよ」

 

 

 チート技は禁止行為であり、使用すればツクヨミからバンされてしまう。

 

 何よりも、プロとして会社から支援をしてもらっている立場の彼らが、チートを使うということは、社会的信頼を失う危険性がある。下手をすれば、プロチームを辞めさせられるかもしれないというのに......

 

 

 そんな危険な橋を自分とかぐやのために、何の迷いもなく渡ってくれたのだ。

 

 

「私のお兄ちゃんは、1番かっこよくて、最強だって信じてるから!!」

 

 

 この兄は10年以上前からこのゲームをやりこんでいるのだ。

 

 

 誰にも負けるはずがない!!

 

 

 そう信じて、後ろを振り返らず天守閣へと走り出す。

 

 

 幸いにも乱入者はこちらを追ってきてはいなかった。

 

 

────────────────────

 

 

帝side

 

 

「かわいい妹にそんなことを言われたら、なおさら負けられないな......」

 

 

 彩葉は変わった。前までは人を頼ることなんてできなかったのに。

 

 

 それもこれも全部かぐやちゃんのおかげだ。

 

 

 だからこそ、絶対に奴らにかぐやちゃんを渡すわけにはいかない!

 

 

「さあ!かかってこいよ!」

 

 

 ──正直、この戦いは早く終わらせて周りの月人達を片付けるつもりだ。

 

 

 こっちはチートを使って強制的に全ての攻撃ステータスをぶっ壊れレベルまで上げている。

 

 

 それに加えて敵の纏っているローブ──

 これも彩葉の着ぐるみと同じようにヒットボックス判定となる。

 

 

 そのため、このローブに少しでも攻撃がかすれば一撃で相手のHPを消し飛ばすことができる。

 

 

 ──圧倒的にこちら側が有利。

 そもそも、本来なら勝負にすらならないクソゲーのはずだ。

 

 

 

 なのに──

 

 

 戦いを始めてからすでに2分が経過しようとしていた。

 

 

 

 ジャラララァッ!!

 

 

(くそっ、この鞭みたいな攻撃が厄介すぎる!)

 

 

 空気を裂いて迫る軌道は、まっすぐではない。途中で曲がり、折れ、予測を裏切る。

 

 

「っ......!」

 

 

 咄嗟に身を引く。

 

 

 頬をかすめた刃が、そのまま地面へ叩きつけられ──

 

 

 バゴンッッ!!

 

 

 その威力で、地面が弾け飛んだ。

 

 

 反動で跳ね上がった刃が、今度は下から喉元を狙う。

 

 

 後ろに跳んで距離を取る。

 

 

 さっきからこの通り、全く近づかせてもらえずにいた。

 

 

「ちっ!」

 

 

 心の中に焦りが生まれる。

 

 

 ......自分が今使っているチートモードには時間制限がある。

 

 

 これが切れる前に相手を倒し、本来の目的である月人も倒さなければならないのだ。

 

 

(これ以上、この相手に時間はかけられない......なら!)

 

 

 ビュンッ!!

 

 

 1度躱した刃が方向を変え、目の前に迫る。

 

 

 (来る──!)

 

 

 だが今度は避けない。

 

 

 あえて踏み込み、方向転換をしたばかりの加速する前の刃に自らの武器を叩きつける。

 

 

 ガキィィンッ!!

 

 

 互いの武器がぶつかり合い、火花が散る。

 

 

 そうして、勢いが死んだ刃を腕に巻きつけて掴みとる。

 

 

「っ......」

 

 

「捕まえたぜ!!」

 

 

 一瞬、相手の動きが止まる。

 

 

 鞭のしなりは“自由”があってこそだ。

 

 

 蛇腹剣は拘束さえしてしまえば、ただの"重い鎖"に変わる。

 

 

 グッ!

 

 

 と相手が剣を戻そうと引っ張るが、力はこちらの方が圧倒的に上。

 

 

 決して離さず、逆に相手をこちらに引っ張り寄せる。

 

 

 「......!?」

 

 

 このまま間合いを潰す──!

 

 

 自分も相手に近づき、やっと近距離に持ち込むことができた。

 

 

 (敵の武器はいま使用不可能......このまま叩く!)

 

 

 そして、相手まで武器が届く間合いに入り、刀を振り上げたところで──

 

 

 下から、一直線に。何かが迫るのが見えた。

 

 

 

 ──ドゴンッッ!!

 

 

 

 突き抜ける衝撃とともに、顎が跳ね上げられる。

 

 

 敵のアッパーカットが、反応する隙すら与えずに、帝を捉えた

 

 

 そして、首が仰け反り、視線が空へと引き剥がされる。

 

 

 (なに......が......)

 

 

 地面との繋がりを断たれた身体が、わずかに宙へと弾かれる。

 

 

 ガコン! ジャラリ

 

 

 敵がその隙を逃すはずもなく、刀を足で押さえつけられ、一瞬で首に刃をぐるりと巻かれる。

 

 

「......くっそ......なんだよ、素手でも強いのかよ......!」

 

 

 チートを使ったのに全く相手にならなかった。

 

 

 完敗すぎてむしろ笑いが込み上げてくる。

 

 

 詰みだ──

 

 

 まったく......相変わらずの"動きの無駄のなさ"に、戦闘中だというのに思わず見惚れてしまったほどだ。

 

 

 (あの時は全然本気じゃなかったのかよ......)

 

 

 自分もこの数年間で強くなったつもりだったが、まだまだ及ばなかったようだ。

 

 

 ならば、せめて最後に言いたいことだけは言ってやろう。

 

 

「何で、邪魔すんだよ......ミコさ」

 

 

 ブシャッッ

 

 

 それ以上──帝の言葉が続くことはなかった。

 

 

 

────────────────────

 

 

 彩葉side

 

 

 はあっ......はあっ

 

 

 後ろは振り返らずに、一心不乱に走り続ける。

 

 

 目の前に天守閣が近づいてくる。

 

 

 それと比例して、迫る人型の月人達の数も増えていった。

 

 

「「「「────」」」」

 

 

「邪魔......しないでっ!」

 

 

 双剣をブーメランにして敵を一気に切り裂く。

 

 

 そして──

 

 

 とうとう天守閣の元まで辿り着き、階段を駆け上がる。

 

 

 あと少し!あと少しで......!

 

 

 ゴールが近くなり、心の中でかぐやへの想いが溢れ出す。

 

 

(かぐや……本当はね、パンケーキもう買ってあるの。

だから──

終わったらみんなで一緒に焼いて食べよ?)

 

 

(遊びに行きたい場所があれば、

どこにだっていっしょに行ってあげる。

花火だって、海だって、また来年も再来年も行こう?

歌だってこれから何十曲だって作ってあげる!

 

私にはもう、

かぐやのいない生活なんて考えられないの……)

 

 

 だから…… 一緒に帰──

 

 

 次の瞬間

 

 

 チャキッ

 

 

 喉に剣が突きつけられる。

 

 

「......え?」

 

 

 いつの間にか、目の前には黒い乱入者が立ち塞がり、私に剣を突きつけていた。

 

 

 ここまで近づいているというのに、相手の顔は真っ黒でその表情は何一つ読み取ることはできなかった。だが──

 

 

 これ以上進めば首を切る──そう言っていることだけは、ハッキリとわかった。

 

 

「......なんで?」

 

 

 こいつはお兄ちゃんが相手をしていたはずなのに......

 

 

 いや、それ以上に──

 

 

 なぜ、相手がここまでして、私とかぐやを引き裂こうとするのかが、ただただわからなかった。

 

 

 それと同時に、言いようのない怒りと悲しみが湧いてきた。

 

 

 

「なんで......なんで邪魔するのっ!?

 ......どうして......っっ!」

 

 

 

 視界が涙でぼやける。

 

 

 

「私は、ただ、これからも......っ

 かぐやと一緒に、いたいだけ、なのにっっ......」

 

 

 

 そのとき、

 

 

 

『とびきり キラめいて うたおう────…… 』

 

 

 かぐやの歌が、終わった。

 

 

 後ろを見てみれば、自軍の天守閣の周りを大勢の月人が囲んでいた。

 

 

 

 かぐやは、全てを悟ったような笑みを浮かべ、敗北を受け入れていた。

 

 

「............」

 

 

 それを見届けたのか、乱入者がフッと武器を消し、天守閣へと続く道を開ける。

 

 

 もしかしたら、竹取物語のように──

 せめて、もっとも月に近いこの高台で見送らせてやろうという、相手なりの気遣いだったのかもしれない。

 

 

 

 私は覚束ない足取りで高台へと登る。

 

 

 かぐやが月人達と共に、光る雲に乗って、ゆっくりと空へ向かってゆく。

 

 

 

「まって、まだ。......やりたいこと、いっぱいあるって......」

 

 

 

 かすれた声で呼びかけるが、ここからでは聞こえるはずもなく、かぐやの姿はどんどん遠ざかっていく。

 

 

 

 行かないで──

 

 

 

「彩葉──」

 

 

 

 ──突然、かぐやの声が聞こえた。

 

 

 これは......ツクヨミじゃない。

 

 

 そう思った次の瞬間、現実の肩に温もりが乗った。

 

 

 かぐやだ──かぐやが私を抱き締めてくれていた。

 

 

 ──現実の方の景色は......見れなかった。

 

 

 見たら、きっと......()()()()()()()()()()()()()()......

 

 

 ──ああ、いつの間に、こんなに大きくなったのだろう。

 

 

 いつの間に、こんなに大人になってしまったんだろう。

 

 

 もっと、帰りたくないって泣いていいのに。

 なんで守ってくれなかったのって、責めてくれていいのに。

 

 

 今は──私だけが泣いている。

 

 

 

 (待って......行かないで──)

 

 

 

「......大好き!」

 

 

 

 ゴトッ

 

 

 ──何かが地面に落ちる音が聞こえた。

 

 

 

 ......さっきまで感じていた温もりはもうなかった。

 

 

 その身に残ったかぐやの温もりも、ゆっくりと消えていった。

 

 

 

 ―ホンマに悲しいなら呑気に泣いとらんと同じ事が起きんように考えなさい。

 

 

 母の言葉が頭をよぎる。

 

 

 だが、それでも──

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「......うぅっっ、あああああぁぁぁ......!!」

 

 

 しかし、システムは私が泣き止むのを待ってはくれない。

 

 

 決着がついたことにより、自分のアバターが自軍の待機場所へと転送されそうになり、桜のエフェクトが散ってゆく。

 

 

 

 瞬間──

 

 

 

「──、────」

 

 

 

 後ろから声が聞こえた。

 

 

「......えっ?」

 

 

 振り返れば乱入者がこちらを見ていた。

 

 

「......ま、まって......今......なんて──」

 

 

 言い終わる前にシステムの転移により、視界が白く包まれる。

 

 

 

 はっきりとは聞き取れなかったけど......今、

 

 

 

『──、────』

 

 

 

()()()()()()()」って、言ったの......?

 

 

 

 





ミコトくんって一級フラグ建築士なんで"絶対"って付けると、後々それと反対の出来事が高確率で本当に起こったり、起こりそうになったらするんですよね。

例:
不老不死なんて"絶対"に勘違いに決まってる
→勘違いじゃなかった

配信には"絶対"出ない
→かぐやの配信に出る

ライバーになんて"絶対"にならない
→ヤチヨに無理矢理ライバーデビューさせられそうになる

夏祭りに1人でなんか"絶対"行かない
→1人で行くけど途中で合流

アバターは"絶対"に自分で作る
→ヤチヨに勝手に作られる

帝ともう一度戦うなんて"絶対"にごめんだと言う
→戦うことになる

次回も"絶対"が出てきますのでお楽しみに!




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