(はあ〜〜〜)
と心の中でため息をつく。
歩き始めてかれこれ2時間ほどが経っただろうか。
今、俺は心底疲れている。
それはなぜか?
このごつい機械を持って歩いたから......ではない。
確かに結構重量はあるが、さっき休憩を取ったばかりのため、まだ体力には余裕がある。
では朝から何も食べていないからか......それも違う。
時刻は昼を回るくらいと思われるが、空腹感は感じなかった。
おそらく焦りやストレスを感じてそれどころではないのだろう。
ではなぜ疲れ果てているのか。
それは、これらが可愛く見えてくるほどの原因があるためだ。
その原因とは......
「ミコトの好きなものって何?かぐやはね、彩葉と〜、ご飯を食べることと〜、歌うこと!あとはゲームも好き!あとはね〜」
先ほどからずっとこれである。
人を探しながら歩く道中、かぐやは止まることなくミコトに話しかけ続けた。
2時間
ぶっ通しで
エンドレスで
よっぽど人と話すのが好きなのか、本当に楽しそうに話すのだ。
「それでね、かぐやはイロPと一緒にツクヨミでトップを目指して、あっ、イロPっていうのはかぐやのプロデューサーで一番大切な人なんだけど......」
さっきから出てくるツクヨミってなに?
ていうか、いつになったら終わんの?これ......
なお、ミコトはまだ知らないが、この時のかぐやはずっと一人でいたため、数年ぶりに誰かと話すことができ、テンションがぶち上がっていたのだった。
────────────────────────────────
そうして移動していると、明らかに人の手が加えられた集落を見つけた。
集落に行くと、集落の門番?のような男性がいた。
......のだが、明らかに服装がおかしい。
髪は長く、服装もやはり現代とは違い、服というより獣の皮を体に巻いていた。
手には木の弓。背中には矢が何本も刺さっている。
(あの格好......縄文人みたいだな)
ということは、差し詰め「起きたらタイムスリップしてたドッキリ」ってところか?
その男は、外部から来た俺たちを明らかに警戒していた。
そのため、どうすればなるべく刺激を与えないように話しかけられるか考えていたそのとき──
「ミコトっ!人だよ人!話しかけよう!おーい、こんにちはー!」
......この生き物には警戒心というものが存在しないのだろうか。
まあ、自分が人に話しかけるのが苦手なため、今回はありがたいが。
「──―」
男が何か言った。
でも、まったくわからない。
「え、あの......」
なにか話しているのだが、日本語でも英語でもないので、まるで言葉がわからない。
そうして困っていると。
「かぐやに任せて!ご当地言語の解読と再現くらいは朝飯前だから!」
「えーと、『お前たちはどこから来た?ここになんの用だ。』」
かぐやが低い声で男性の声を真似ながら翻訳する。
声は真似なくてもいいと思うんだが......
まあ、なるほど。こういう感じで進んでいくのね。
えーと、とりあえず怪しい者じゃないこと。
遭難して困っていることを伝えなければ。
「すいません......」
俺が手を挙げて日本語で話すと、男の表情がゆっくり変わった。
驚きと警戒が混ざった顔だ。
「──―!」
男はさらに警戒して弓を構えたので、慌てて止めるように言う。
「ちょ、ちょっと待って!かぐや、あの人なんて言ってんの?」
「やばい!ミコト早く逃げて!!」
とかぐやが叫んだ次の瞬間、弓矢が俺の腕を掠って後ろの地面に突き刺さった。
その直後、焼けるような痛みが襲ってくる。
「いった!!?」
「ミコト!?大丈夫っ!?」
思わずその場でうずくまり腕を見ると、血がドクドクと垂れてきていた。
掠っただけだと思っていたが、実際には結構深く切れていたようだ。
俺は痛みと予想外の展開で、完全にパニックになっていた。
(なんで?ドッキリで流血沙汰はまずいだろ!
外すつもりだったのに当たってしまった?
いや、今のはそういう感じじゃなかった......)
頭の中をさまざまな考えが巡り、やがて一つの結論に行き当たる。
まさか──
俺に弓を放った男は、集落に向かって大声で何か叫んだ。
すると──
人が集まってきた。
三人、四人、五人。
全員が同じような格好をしている。
皮の服、石の刃物、木の槍。
俺はその光景を見て、あることに気づいた。
「......嘘だろ」
口の中が乾く。
今、はっきりとわかった。
あれは全部、本物だ。
つまり──
俺は、縄文時代にいる。
「ドッキリじゃない......のか?」
「ドッキリなわけないじゃん!あの人たち部外者のミコトを殺そうとしてる!早く逃げなきゃ!」
その言葉にハッとして相手を見ると、すでに弓に矢をつがえていた。
さっきは聞こえなかったヒュンッという矢が走る音が聞こえ──
次の瞬間、腹に鉄の杭を打ち込まれたような衝撃が走った。
視線を落とすと、そこには一本の矢。
自分の体に、ありえないほど深く突き刺さっている。
「......っっっ!」
声にならない悲鳴が漏れる。
じわりとシャツに血が広がり、遅れてやってきた痛みは、まるで焼けた刃を体の中でねじ込まれるようだった。
気を失いそうなほどの激痛が、俺を襲った。
「いやだよ!死なないでミコト!せっかく会えたのに!かぐやをひとりにしないで!」
泣きながら叫ぶかぐやの声を聞きながら、俺は意識を手放した。
次回「主人公死す」デュエルスタンバイ!