超かぐや姫! 星の降る音   作:サトウシュン

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エピローグ③ 善意はときに白髪美少女を招く

 

 

 結局、その日は夕食までご馳走になり──。

 

 

 父さんにヤチヨを紹介したあと、俺たちは実家を後にすることになった。

 

 

 玄関のドアを開けると、外の空気は少しひんやりとしていた。夜の住宅街には、静かな風が流れている。

 

 

 別の世界を八千年彷徨った末に、

 ようやく辿り着いた場所。

 

 

 久しぶりに帰った実家は、

 来た時よりもずっと名残惜しく感じられた。

 

 

「もう帰っちゃうのねぇ……」

 

 

 玄関先まで見送りに来た母さんが、寂しそうに目を細める。

 

 

 エプロン姿のままなのは、最後まで片付けをしていたからだろう。

 

 

 どこか名残を惜しむように、両手を軽く合わせながらこちらを見ていた。

 

 

「まぁ、明日も大学あるし」

 

 

 そう返しながら、靴を履く。

 

 

 大学かぁ……ピチピチの10代と上手くやれんのか?今どきの大学生の話題とか分かる気がしないんだが。

 

 

 流行りのアプリ? 動画配信者? 恋愛話?

 

 

 知らん。あれかな、適当に"分かるー"って言っときゃ大丈夫かな。

 

 

 そんなことを考えていると、母さんが口を尖らせた。

 

 

「そうだけど……もっとゆっくりしていけばいいのに」

 

 

 その声には、本気で残念そうな色が滲んでいる。

 

 

「せっかくミコトのアルバム引っ張り出してきたんだし」

 

 

「やめろ」

 

 

 即答だった。

 

 

 さっきから母さんは昔の写真を見せたくて仕方ないらしく、危うく幼少期の写真をヤチヨに公開されかけたのだ。

 

 

 ランドセル背負って泣いてる写真とか。

 

 

 七五三で死ぬほど不機嫌な顔してる写真とか。

 

 

 しかもヤチヨがノリノリで、

 

 

『えっ、見たいです!!』

 

 

 とか言い出した時は本気で危機感を覚えた。

 

 

 ……これ以上家にいたらなにをされるかわかったもんじゃないし、さっさと帰るぞ!

 

 

 ヤチヨが「後日送ってください!」とか言っていたが……

 

 

 "絶対"に阻止するからな!

 

 

「十分ゆっくりしたって」

 

 

 母さんの料理を食べて、父さんと他愛もない話をして。

 

 

 そんな、ただの“普通”の時間……

 

 

 でも、その普通が、

 今の俺にはひどく遠いものだったのだ。

 

 

「ミコト」

 

 

 不意に、父さんが口を開く。

 

 

「無理はするなよ」

 

 

「……しないって」

 

 

「お前は昔から、“大丈夫”って顔して無茶するからな」

 

 

「………」

 

 

 思わず、言葉が詰まる。

 

 

 すると父さんは、小さく笑った。

 

 

「別に、立派になれなんて言わん。ちゃんと飯食って、ちゃんと寝て。辛くなったら休め」

 

 

 穏やかな声だった。

 

 

 説教ではない。

 

 

 ただ、自分の息子を心配する父親の声。

 

 

 その言葉が、胸の奥へじんわりと染み込んでいく。

 

 

「"帰る場所"くらい、いつでも用意してある」

 

 

「っ……」

 

 

「だから、お前は一人で抱え込まなくていい」

 

 

 その瞬間。

 

 

 胸の奥に押し込めていた何かが、少しだけ揺れた。

 

 

「ミコト」

 

 

 今度は母さんが、そっと俺の手を握った。

 

 

「あなたが帰ってくるだけで、お母さん嬉しいの」

 

 

 優しく笑う。

 

 

「疲れた時でも、元気な時でもいいから、また帰ってきなさい」

 

 

 その言葉が──どうしようもなく、胸に刺さった。

 

 

 自分の帰る家。

 

 

 待っていてくれる家族。

 

 

 ずっと長い間、探し続けて、そして諦めてしまったもの。

 

 

「……ん」

 

 

 喉の奥が詰まる。

 

 

 うまく声が出ない。

 

 

 すると隣で見ていたヤチヨが、ふっと笑った。

 

 

「ミコト、泣きそう」

 

 

「泣いてねぇよ」

 

 

「目、赤いよ?」

 

 

「うるさい」

 

 

 ぶっきらぼうに返すと、母さんがくすっと笑う。

 

 

「ヤチヨちゃんも、またいつでも来てね?」

 

 

「はい! また来ます!」

 

 

 元気よく答えるヤチヨ。

 

 

 その様子を見て、父さんも穏やかに目を細めた。

 

 

「二人とも、気をつけてな」

 

 

「……ああ」

 

 

 短く返事をする。

 

 

 それから、もう一度だけ家を見上げた。

 

 

「……じゃあ、二人とも。またね」

 

 

 自然と、そんな言葉が口をついた。

 

 

 すると母さんは、嬉しそうに笑って。

 

 

「ええ。またいらっしゃい!」

 

 

 そう言って、手を振ってくれた。

 

 

 父さんも無言のまま、小さく手を上げる。

 

 

 その姿を最後に、俺たちは夜道を歩き出した。

 

 

 しばらく進み、実家の灯りが見えなくなった頃。

 

 

 隣を歩いていたヤチヨが、ふいに口を開く。

 

 

「……ねえ、ミコト」

 

 

「ん?」

 

 

 ヤチヨは前を向いたまま、ぽつりと言った。

 

 

「家族って……いいね」

 

 

 その声は、どこか羨ましそうだった。

 

 

 少しだけ目を伏せて、小さく笑う。

 

 

「ああ……そうだな」

 

 

 夜風が静かに吹き抜ける。

 

 

 その温かさを、胸の奥で噛み締めながら──

 

 

 二人で並んで帰り道を歩いていった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 そして、バイトの休憩室にて。

 

 

 母さんからのメッセージに対して返事を書こうとすると

 

 

 ──ポヒュッ

 

 

 "ぽひゅっ"?

 

 

 聞き間違いじゃなければ

 今、通知音がしたような……

 

 

────────────────────────

 

 

母さん【またいつでも帰ってきなさいね。

    ヤチヨちゃんも連れて】既読 2

 

 

ヤチヨ 【ぜひ行かせていただきます!

    あと、()()()()無事に届きました!

    ありがとうございます!】既読 1

 

 

────────────────────────

 

ミコト【また近いうちに行くよ。あと父さんによろI

 

                   《送信》

 

────────────────────────

 

 

 

 (──え??)

 

 

 一瞬、理解できない光景に思考が停止する。

 

 

(なんで俺と母さんの個別チャットにいつの間にかヤチヨが参加してんの? あと、"例のやつ"ってなに? まさか──)

 

 

 色々と問い詰めたかったが、休憩時間はもう残り5分となっていた。

 

 

 いや、最後のメッセージのせいで悩みの種が増えたんだけど!?

 

 

 ただでさえ、ここ連日のバイト生活で疲れていると言うのに……

 

 

 はぁ、と思わずため息が出る。

 

 

 でも、彩葉さんはこんな生活をずっと続けてたんだよな。

 

 

 (……そういえば──彩葉さんと初めて

  現実で会ったのも、喫茶店か)

 

 

 あの時は、水ぶっかけられて酷い目に遭ったっけ。

 

 

 そんな思い出すら、今ではどこか懐かしかった。

 

 

(17歳の高校生が、あれだけ頑張ってたんだ) 

 

 

 自分よりもずっと年下なのに、睡眠時間を削って、

 勉強もして。なのに、

 

 

(8000歳の大学生が、こんなことで弱音吐いてる場合じゃないだろ)

 

 

 頬を軽く叩き、気持ちを切り替える。

 

 

「……よし」

 

 

 そうして、気合いを入れ直すのだった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 俺が休憩室から戻ると、

 

 

「お疲れさまでーす、ミコトさん。

 休憩終わりですか?」

 

 

 キッチンに戻ると、補充用の商品を並べていた

 バイト仲間がこちらを振り返る。

 

 

「終わった終わった。閉店まであと4時間、

 きっちり働かされる予定」

 

 

「うわぁ……なんか具体的な時間言われると

 一気にしんどくなってきました……」

 

 

 そう言って、肩を落としながら苦笑する。

 

 

 彼女の名前はサナさん。

 

 

 高校二年生で俺より二つ年下だが、

 この店では一年先輩にあたる。

 

 

 最初のうちは、年下とはいえ先輩という

 意識が強くて、俺も敬語混じりで話していた。

 

 

 だが、ある日。

 

 

『いやいや、ミコトさんの方が年上なんですから。

 そんなに気を遣わなくていいですよ?』

 

 

 困ったように笑いながら、そう言われた。

 

 

『むしろ敬語使われると、

 なんか変に距離ある感じするので……』

 

 

 そこまで言われてしまえば、

 いつまでも堅苦しくしているのも違う気がして。

 

 

 それ以来、少しずつ今みたいな距離感になっていった。

 

 

 俺はエプロンの紐を締め直しながら、軽く息を吐く。

 

 

 まだあと四時間。けれど、この店で働き始めてから、時間が経つのは案外早い。

 

 

 忙しさに追われているうちに、

 気づけば閉店時間になっていることも多かった。

 

 

「あー、なんかもうお腹空いてきちゃいました〜」

 

 

「それは分かる。さっき休憩で食べたばっかりなのに、もう甘いもの欲しい」

 

 

「ですよね!? 特にここ、ショーケースのケーキが

 ずっと視界に入るから危険なんですよ……」

 

 

 ぐぬぬ……と、忌々しそうにショーケースを睨む。

 

 

 ガラス越しに並んだケーキたちは、照明を受けて

 つやつやと輝いており、確かに見ているだけで腹が減ってくる。

 

 

「特にあの苺のタルト!あれ、絶対こっち誘惑してますよね」

 

 

「分かる!なんか……こっちの本能に、

 “ほら食え!”って囁いてきてる」

 

 

「きてますきてます!しかも、

 勤務中だから余計に食べたくなるんですよ!」

 

 

「分かる!食べられないってなると、

 余計に意識しちゃうんだよな」

 

 

「あ──ーもうダメです。

 私いま完全にタルトの口になってます……」

 

 

「閉店後に残ってたら食べれば?」

 

 

「残ってないんですよ!?

 人気だからすぐ消えるんです!」

 

 

 悔しそうに拳を握るサナさん。

 

 

 その様子が妙に面白くて、

 思わず笑ってしまう。

 

 

「笑わないでくださいよ〜!」

 

 

「いや、ごめん。でもそんな真剣に悔しがる?」

 

 

「甘いものは命なんです!」

 

 

 びしっ、と人差し指を向けて力説する。

 

 

 その勢いに、思わず「はいはい」と頷く。

 

 

 そんなことを言いながらも、冷凍の商品を冷蔵庫に順序よく入れていく動きは慣れていて無駄がない。

 

 

 俺がまだ帰ってきたばかりの頃は、

 注文票の置き場所すら覚えきれていなかったのに。

 

 

 サナさんはそんな俺に、一つ一つ丁寧に教えてくれた。

 

 

『違います違います、

 伝票はこっちです!』

 

 

『あっ、皿の持ち方それだと危ないですよ!』

 

 

『焦らなくて大丈夫ですからね〜』

 

 

 一体何度助けられたか分からない。

 

 

 彼女には本当に感謝しているのだ。

 

 

「あっ……そう言えば今日雨降るらしいですよ?」

 

 

「あー……通りで客足が少ないと思ったんだよなー。傘持ってきてないや……」

 

 

「なにやってんですか。私傘入れませんからねー?」

 

 

「そこまで図々しくないって」

 

 

 だが、実際どうするか。こっから家まで歩いて20分くらい……

 

 

 途中でコンビニに寄って傘を買うか……いや、でも出費は痛い。 

 

 

 最悪、走って帰るか……。

 

 

 そんなことを考えていた時だった。

 

 

 ふと、サナさんの横顔が目に入る。笑ってはいるのたが……

 

 

 けれど、どこか顔色が悪く、目の下にも少しだけ隈が見えた。いつもより動きも僅かに鈍い気がする。

 

 

「……サナさん、今日ちょっと疲れてないか?」

 

 

 その言葉に、彼女の手が一瞬だけ止まる。

 

 

「──え?」

 

 

「なんか顔色悪いというか。声も少し元気ない気がする」

 

 

 サナさんは一瞬だけ視線を逸らしたあと、すぐにいつもの調子で肩をすくめる。

 

 

「いやいや、大丈夫ですよ。ちょっと寝不足なだけです」

 

 

 そう言って、近くに置いてあったペットボトルを軽く持ち上げる。

 

 

「水分もちゃんと取ってますし!」

 

 

「ならいいけど……きつかったらすぐ言うようにしてな」

 

 

「はいはい、ミコトお母さんは心配性ですねー」

 

 

「誰がお母さんだ」

 

 

 即座にツッコむと、サナさんの口元が少しだけ緩む。

 

 

「あ、じゃあお父さんですか?」

 

 

「どっちでもねえよ」

 

 

「あははっ」

 

 

 堪えきれないように笑い声が漏れる。その表情を見て、少しだけ安心する。

 

 

 そんな軽口を交わしているうちに、時計の針は十九時を回っていた。

 

 

 ピンポーン

 

 

 客席から呼出のベルが鳴る。

 

 

「ミコトさん、13番卓行ってもらえますか?

  私は料理を運ぶので」

 

 

「了解」

 

 

 俺は注文を取りに向かった。

 

 

「はい。ハンバーグセットがお一つで」

 

 

 注文を書き込みながら確認する。

 

 

「ソースはデミグラスでよろしいですか?」

 

 

「はい」

 

 

「かしこまりました」

 

 

 伝票を持って厨房へ戻ろうとした、

 

 

 ──その時だった。

 

 

「あっ──」

 

 

 すぐ前から、短い声が耳に届く。

 

 

 料理を運んでいたサナさんの足が、床に落ちていた水滴を踏み──ぐらりと大きく体勢を崩したのだ。

 

 

 手にしていたトレーが傾く。

 

 

 グラスの中の氷が跳ね、スープの表面が大きく波打った。

 

 

「きゃっ──!」

 

 

 やばい。

 

 

 そう思った時には、もう身体が動いていた。

 

 

「危ない!!」

 

 

 一気に駆け寄る。

 

 

 そして、

 

 

 ガシッ

 

 

 っと、倒れかけたサナさんの腰を咄嗟に抱き支え、

 そのまま引き寄せる。

 

 

 同時に、もう片方の手で傾いたトレーを押さえ込んだ。

 

 

 ガチャッ、と皿が鳴る。

 

 

 今にも滑り落ちそうだった皿が、ぎりぎりで止まった。

 

 

「っ……!」

 

 

 サナさんの身体が、そのまま俺の胸元へぶつかった。

 

 

「大丈夫か!?」

 

 

「……っ! は、はいっ……!」

 

 

 息を呑む声。

 

 

 近い距離で目が合うと、彼女の瞳が大きく揺れた。

 

 

 (……危なかった)

 

 

 本当にあと少し遅れていたら、

 料理ごと派手に転倒していたはずだ。

 

 

「……よかった」

 

 

 心の底から漏れた言葉だった。

 

 

 料理を守れたことより、

 まず彼女に怪我がなかったことに安堵する。

 

 

 サナさんは、まだ驚きが抜けきっていないのか、俺の腕の中で目をぱちぱちと瞬かせていた。

 

 

 周囲の客たちも、一瞬だけざわりとこちらを見る。

 

 

「おーい!大丈夫かー!?」

 

 

 厨房の方から店長の声が飛んでくる。

 

 

「大丈夫です! 料理も無事です!」

 

 

 俺がそう返すと、店長は「ならよし!」と短く叫び、再び厨房へ引っ込んでいった。

 

 

 ……いや、雑だな。

 もうちょっと心配してもいいと思うんだが。

 

 

 そんなことを思いつつ、俺はゆっくりとサナさんを立たせる。

 

 

「立てるか?」

 

 

「は、はい……」

 

 

 サナさんは頬を赤くしたまま、小さく頭を下げた。

 

 

「すみません、私……ちゃんと見てなくて……」

 

 

「いやいや、今のは事故みたいなものだから」

 

 

 そう言いながら、近くにあった布巾を拾って水滴を拭き取る。

 

 

 その間も、サナさんはじっとこちらを見ていた。

 

 

「……どうした?」

 

 

「いえ、その……」

 

 

 彼女は少し迷ったあと、ぽつりと呟く。

 

 

「ミコトさん、すごく反応早かったなって……」

 

 

「そうか?」

 

 

「普通、あんな一瞬で動けませんよ……」

 

 

 言われて、少しだけ言葉に詰まる。

 

 

「……まあ、なんとなく"サナさんのことが気になって"見てたから」

 

 

「──え?」 

 

 

 (さっき、ちょっと疲れてそうだったし)

 

 

「……それって」

 

 

 するとサナさんは目を丸くして。

 

 

「仕事中、私のことをずっと見てたってことですか……?」

 

 

「ち、ちがっ……!」

 

 

 慌てて否定する。

 

 

「別に変な意味じゃないから!!」

 

 

「あはは、わかってますよ……!」 

 

 

 彼女はくすっと笑った。

 

 

 けれどその笑顔は、

 どこか嬉しそうでもあった。

 

 

「でも、本当に助かりました。ありがとうございます!」

 

 

「うん……怪我がなくてよかったよ」

 

 

 心からそう思った。

 

 

 もしあと一歩遅れていたら、料理をひっくり返していただけでは済まなかったかもしれない。

 

 

 そんなふうに胸を撫で下ろしていた。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 ──ピンポーン

 

 

 客席側から、店員を呼ぶベルの音が鳴る。

 

 

 俺は反射的に顔を上げる。

 

 

「俺が行くから、サナさんはお客さんに料理運んできて」

 

 

「あ、はい!わかりました!」

 

 

 俺は伝票用のメモを手に取り、ベルの鳴った席へ向かう。

 

 

 窓際の二人席。

 

 

「お待たせ致しましたー」

 

 

「あっ、注文いいですか?」

 

 

 席に座っていた客は、メニュー表を顔のすぐ近くまで寄せていた。

 

 

 近眼なのだろうか?

 

 

 そのせいで顔をハッキリとは見ることができない。

 

 

「はい。お伺い致します」

 

 

「まず、カフェラテを一つと……」

 

 

「はい、カフェラテがお一つ」

 

 

 注文を書き込みながら答える。

 

 

「それと──

 店員さんにお聞きしたいんですけど……」

 

 

「はい?」

 

 

 すると、

 

 

 その客はぱたりとメニューを閉じ、

 ゆっくりとテーブルへ置いた。

 

 

 その瞬間。

 

 

 ()()()()()が現れる。

 

 

 そこにいたのは──

 

 

「"()()()()()()()()()()()()()()()()()"に

 おすすめの料理って、何かありますかね〜〜?」

 

 

 白い髪に青い瞳をした少女。

 

 

 ()()()であった。

 

 

「──ブフゥっっ……!?」

 

 

 危うく変な声が出そうになり、慌てて口元を押さえる。

 

 

 目の前の相手は、"にこり"と笑っているはずなのに。

 

 

 震えが止まらなかった。

 

 

「やっほー★ ミコト……」

 

 

 その言葉とともに、閉じていた目が開かれる。

 

 

 すると──

 

 

 光の消えた、真っ黒な瞳が。

 

 

 じぃぃっと、逃がさないようにこちらを見つめている。

 

 

 

──来ちゃった♡

 

 

「・・・・・・」

 

 

 い、い……今、1番来てほしくない人……

 

 来ちゃったぁぁぁぁぁ────!!

 

 





突然の修羅場襲来!

果たして、ミコトの運命(生死)はいかに!?
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