超かぐや姫! 星の降る音   作:サトウシュン

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4話 俺、不老不死で未来まで生きることが確定した件

 

「......うっ......ぐすっ.....」

 

 

 誰かが泣いている。

 

 

 か細く、震えるような声が、沈んでいた意識をそっと揺らす。

 

 

 次に目を覚ますと、目の前にはかぐやがいた。

 

 

「......デジャブすぎる」

 

 

「ビ、ビゴド〜〜〜!!」

 

 

 かぐやはどうやらずっと泣いていたらしく、胸の辺りがぐしょぐしょになっていた。 うわ、きたなっ

 

 

 今日だけですでに三度目の目覚めであり、もはや目が覚めてかぐやがいることに、安心感すら感じている。

 

 

「って、そうだ!確か矢が刺さって......え?」

 

 

 腹を見ると、矢が刺さったはずの傷は消えていた。

 血の跡もない。

 

 

 だが服の傷が、確かにその出来事があったことを証明していた。

 

 

「あれ、なんで治ってるんだ?」

 

 

 --ザッ

 

 

 と何かが動く音がした。

 

 

「やばっ!」

 

 

 すっかり忘れていたが、まだ弓の射程内にいたのだ。

 

 

 まずい!このままではまた矢を撃ってくる!

 

 

 そう思って男たちの方を見ると──

 

 

 彼らは地面にひれ伏し、何かを呟いていた。

 

 

「──―」

 

 

「何これ?状況がぜんっぜんわかんないんだけど」

 

 

 さっきまではこちらを警戒して攻撃してきたのに、

 今ではまるで恐ろしいものを見るような態度だった。

 

 

「かぐや、この人たちなんて言ってんの?」

 

 

「えーとね、神の使いである貴方様を攻撃してしまい

 申し訳ございませんでした。どうか許してください。 

 二度としません……だってさ!!」

 

 

「絶対後半適当に翻訳しただろ。あとなんか怒ってる?」

 

 

「当ったり前じゃん!この人たち急にミコトを撃ったんだよ!

 ありえないでしょ!」

 

 

 まあでも、この人たち縄文人だし……

 

 

 現代と違い、ルールも法律もないに等しい時代だ。

 自分たちの集落に怪しい奴が来たら、そりゃ攻撃するだろう。

 

 

「......ん?ていうか神の使い?神って誰のこと言ってんの?」

 

 

「かぐやのことみたい」

 

 

「......神って誰のこと言ってんの?」

 

 

「ちょっと!聞こえないフリしないで!

 か・ぐ・や・の・こ・と!」

 

 

 ......なぜそうなった?

 

 

 話を聞いてみると俺に矢が刺さった後、かぐやが慌てて俺に近寄るとたちまち腹の傷が無くなったらしい。

 彼らはそれを神の御業だと思い、かぐやを神として扱いだしたという流れだそうだ。

 

 

 その説明だと......

 

 

「かぐやが治してくれたんじゃないのか?」

 

 

「かぐやに人の怪我を治す力なんてないよ?」

 

 

「「・・・?」」

 

 

 ......じゃあなんで治ったんだ?

 

 

「──―」

 

 

「私たちの拠点に案内しますだって」

 

 

 どんなに考えてもわからなかったため、

 とりあえず集落に案内してもらうことにした。

 

 

 案内された集落には、まさしく教科書に載っていた

 竪穴式住居が並んでいた。

 

 

「うわー、教科書通りだ」

 

 

 そして、すっかり扱いの変わった村の人から聞いた情報と、その文明レベル、さらに顔の特徴などからして、やはりこの時代が縄文時代であると推測できた。

 

 

「縄文時代って何年前?」

 

 

 とかぐやが聞いてきたので、自分の中の中学生の記憶を思い出してみる。

 

 

「確か約13000年〜3000年前くらいまで。

 期間が長すぎて、今が何年なのかはわかんないけど」

 

 

「そっかそっかー。10000年くらい続いたんだー。

 それはすごいねー。あっはっはっはっ.....」

 

 

「それなー、あっはっはっはっ.....」

 

 

「「...........」」

 

 

 スゥ──

 

 

「「うそだあぁぁぁ──────!!!」」

 

 

 俺とかぐやの魂からの叫びが、同時に響き渡る。

 

 

「ほんとにタイムスリップしてる────!?

 え、嘘でしょ!? 帰りたい! 帰りたいんですけど!?

 あったかいお布団で寝たいんですけど!?」

 

 

「うわぁ〜〜〜ん!ちゃんと2030年近くに帰れたと思ったのに──ー!

 全然違う時代に来ちゃってるじゃーん!」

 

 

 その日の晩、俺とかぐやは──

 

 

「終わった。俺はこの時代で死んでいくんだ.....」

 

 

「......この一瞬を......最高の......パーティーに......しよ.....」

 

 

 周りが引くほど絶望的なオーラを放ち、泣き疲れて眠りに落ちた。

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

 次の日、縄文人たちからあてがわれた竪穴式住居で目が覚めた。

 

 

「これ......現実?」

 

 

「現実だよ」

 

 

「否定してほしかったなー」

 

 

 昨日は完全にドッキリだと思っていたため、

 かぐやの話を適当にしか聞いていなかった。

 

 

 なので、改めて詳しく聞いてみることにした。

 

 

 まず、自分は月から来たこと。

 そして2030年の地球で人の肉体を得て、女の子と暮らしていたこと。

 

 

 だがある日、月から迎えが来て連れ戻されてしまった。その後、会いたい人がいたため、もう一度タイムスリップして帰ってきたが、隕石に当たってこの時代に来てしまったらしい。

 

 

 その時に、この宇宙船兼タイムマシンである『もと光る竹』が故障してしまい、何年も一人でいたこと。その後、ウミウシの体を作り、こうしてコミュニケーションを取れるようになったという。

 

 

 

 ......うーん、ありえない。

 

 

 話を聞いた感想はまずそれだった。

 

 

 月だのタイムスリップだの、SFじみたことが多すぎる。

 

 

 そして気づいたのだが、俺とかぐやの世界は歴史が少し違うらしい。

 

 

 特に、かぐやが地球に来た2030年の話。

 

 

 いくら自分より先の未来とはいえ、仮想空間だのスマコンだの、あと数年でそんな急激に技術が進歩するとは思えない。

 

 

 とはいえ、俺はもうすでにかぐやを信用してしまっていた。

 

 

 会ったばかりの自分のために泣き、怒ってくれる。そんな真っ直ぐな奴が嘘をつくようには思えなかったのだ。

 

 

「とはいえ、なんでこんなことに.....」

 

 

 かぐやが過去に来た理由はしっかりあった。

 だが、()()()()()()()()()()()()()がまったくわからない。

 

 

 いや、確かに過去に戻りたいとか、

 異世界に行きたいとか思ったことはあるけど......

 

 

 まさか縄文時代に飛ばされるとは。

 

 過去に行きすぎだろ!

 

 

 まあ、とりあえずこれからやることは決まった。

 

 

「これタイムマシンなんだろ?

 だったらこれを直せれば未来に戻れるはずだ」

 

 

 そう。

 今、自分たちのもとにあるこの時代にそぐわない金属でできた物体。

 

 

『もと光る竹』

 

 

 これが唯一の希望なのだ。

 

 

「でもそれ、月の超テクノロジーで作ったやつだから、今の時代じゃまず直せないよ」

 

 

 希望一瞬で崩れ去ったんだが。

 

 

「......あれ? これ、詰んだ?」

 

 

 

 

 そうして20年の時が過ぎた──

 

 

「......ねえ、ミコト」

 

 

「違うよ。気のせいだよ」

 

 

「かぐや、まだ何にも言ってないんだけど」

 

 

 違う。そんなことあるわけないんだから。

 

 

 

 さらに20年後──

 

 

「ミコト、やっぱり.....」

 

 

「違う! そんなわけないから!」

 

 

「いや、でもこれ絶対.....」

 

 

「絶対勘違いだって!!」

 

 

 かぐやには悪いけど、俺は先に逝っちゃうから!

 もうすぐお別れだから!

 

 

 こちらを訝しむように見てくるかぐやを相手に、

 俺は必死に現実逃避をしていた。

 

 

 

 

 10年後──

 

 

 

「ミコト✨✨......」

 

 

「やめろ! そんなキラキラした希望の目で見るな!

 こいつ......死なないんじゃね?

 ずっと一緒にいてくれるんじゃね?

 みたいな目で俺を見るな!」

 

 

 はい、結論から言います。

 

 

 俺、不老不死になってました。

 

 

 タイムスリップした日から50年が経ったのだが、俺は一切老けなかった。

 

 

 よくよく考えてみれば、最初に腹に矢をくらった時からおかしかったんだ。

 

 

 目が覚めると、なぜか傷が治っていたのだ。

 どれだけ考えてもわからなかったため、

 それ以降は気にしないようにしていた。

 

 

 だが、あれから──

 

 

 ご飯を食べなくても空腹を感じない。

 餓死もしない、傷を負ってもすぐ治るし体も劣化しないのだ。

 

 

「いやいやいや、冗談キツいって!

 この何もない時代で不老不死で生き続けるのは洒落にならんて!」

 

 

「ミーコトっ! そんなこと言わずにさ〜。

 かぐやと一緒に未来まで生きよ? ね?」

 

 

 こっちは絶望しているというのに、俺が不老不死だと

 確信したこのウミウシは、めちゃくちゃ上機嫌だった。

 

 

 ちなみに、かぐやのウミウシの体も不老不死らしい。

 

 

 へぇ。もうツッコむ気も起きないや。

 

 

 月の超テクノロジーがなんでもあり過ぎて、もはやそうなんだ……そうなんだろうなと勝手に納得するようになってしまった。

 

 

 

 かぐやは未来まで生きて、もう一度会いたい人に会うことが目的だ。だから、これからの長い年月を一人で生きなくていいとわかって、さぞ嬉しいのだろう。

 

 

 それに対して俺は、自分が死ねない体になってしまったことで、これからの将来に途方もない不安を感じていた。

 

 

「よーし! 2人で未来までいくぞー!」

 

 

「シテ......ダレカ......コロシテ.....」

 

 

 そんな願いも届かないまま、時は流れていった。

 

 

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