超かぐや姫! 星の降る音   作:サトウシュン

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かぐや目線のお話です。


5話 幕間 鼓動が続く限り、君の隣に

 かぐやside

 

 

 そうして、この時代にタイムスリップしてから実に300年程の時が経った。

 

 

 今まで滞在していた集落が滅びたため、私たちは次の集落を探すために移動している。

 

 

 移動中、私はミコトの胸ポケットにスッポリとおさまっていた。

 

 

 理由としてはほとんど消去法で、まずズボンのポケットは動くたびに擦れるから除外。ならば、肩に乗るのはどうかと提案したが、動くと落ちたり、最悪鳥に連れさられる可能性があるからダメだとミコトに言われてしまったため、移動する時は胸ポケットに入るのが恒例とかしていた。

 

 

 先ほどは消去法と言ったが私は彼の胸ポケットにいるのが好きだった。

 

 

 なぜなら──

 

 

 トクン、トクン

 

 

 耳をそっと胸に預けると、かすかな鼓動が聞こえてくる。

 

 

 最初は意識して聞こうとしていたのに、しばらくすると、そのリズムが自然と心に馴染んでいった。

 

 

 温もりの向こうで鳴っているその音は、ただの心臓の鼓動のはずなのに、不思議と私を落ち着かせてくれた。

 

 

 トクン、トクン

 

 

 その音がするたびに、彼は確かにここにいるんだということを私に認識させてくれる。

 

 

 今まで私たちが出会った人たちはみんなせいぜい30年かそこらで、死んでいった。

 

 

 現代とは違い、品種改良をしていない食べ物は栄養も少なく、また、狩りなどで安定した量の食料を確保することも難しかったため、みんな常に飢えに苦しんでいた。

 

 

 また、医療も全然発達していないため、現代では簡単に治る病気でも致命的であり、衰弱した体と合わさって病気にかかったものはほぼ例外なく亡くなった。

 

 

 出会って友好を深めてもみんな私を残して先に旅立ってしまう。親しくなった人を一人なくすたびに心が座礁していくのを感じた。

 

 

 

 でも、そんななかミコトだけは私とずっと一緒にいてくれた。

 

 

 彼はどうやら不老不死だったらしい。

 

 

 にわかには信じ難いが実際に傷を負っても血の跡ごとなかったことになるし、何十年経っても若い姿のままだった。

 

 

 とはいえ、300年も立てば精神のほうがもたないのでは?

 と思ったがそれも彼曰く

 

 

 体と精神は思っていたよりも強く繋がっているらしく、体が健康な状態だと精神もそれに引っ張られるらしい。

 

 

 例えばよくブラック企業に勤めて精神を病む人がいるが、そういう人はメンタルの不調から食欲不振、睡眠不足に陥り、体が弱り、そうするとメンタルもさらに弱くなっていくという負のループに陥る。

 

 

 そうしてどんどん心身共に衰弱していきある日限界を迎える。

 

 

 ただ、自分の場合体だけは常に健康な状態のため、なかなかメンタルブレイクを起こさないのだという。あとは脳が劣化しないのも大きいと言っていたが私にはその感覚はよく分からなかった。

 

 

 ふと彼の顔を見上げる。日差しが強い中歩いているせいで額には小さな汗が浮かび、こめかみを伝って静かに流れ落ちていった。

 

 

 ......ねえ、ミコト。

 ミコトが来てくれたから私はあの地獄のような日々から抜け出せたんだよ?

 

 

 何もできず、どこにも行くことができず、ただ時間が過ぎるのを待つことしか出来ない。そんな気が狂いそうな永遠に感じられた時間のなかで、あの日、君を見つけた。

 

 

 君に会いたい、君と話をしたい、その一心でこの体を作って、私は世界を見て回れるようになった。

 

 

 君が来てくれなければ私は今もあの砂浜で一人ぼっちで過ごしていただろうし、仮に違う人に見つけてもらってもその人はすぐに私を一人残してこの世を去ってしまっただろう。

 

 

 君は私のことをどう思っているんだろう?謎の生物?それとも仲のいい友達?もしくは都合のいい話し相手?どれでもいい。ただそばに居させてくれればそれでいい。

 

 

 これから先、何千年、下手したら1万年以上という途方もなく長い年月を私は彩葉に会うために待ち続けなくてはならない。

 

 

 それを考えると胸の中にゆっくりと言いようのない不安が広がっていく。

 

 

 トクン、トクン

 

 

 それでも、この音を聞いているとそんな不安もいつの間にか静かにほどけていく。

 

 

 規則正しく続く鼓動は、まるで「大丈夫」と優しく伝えてくれているみたいだった。

 

 

 約束も守れず、遥か昔に着陸してしまったドジな自分に流れ星のように降ってきた唯一の幸運。

 

 

 彼だけは絶対に手放さないと決めて、私は今日も彼と共に世界を巡っていく。

 




次回から一気に時代とびます。
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