生徒達の青春の1ページ 作:バームクーヘン
「いやー波風が気持ちいいねぇー」
「そうだね」
私と先生は海に来た。今は浜辺で波風に当たっている。
「ハンモックでゆらゆら揺れながらのお昼寝か、海で浮き輪に浮かびながらのお昼寝か、先生を地面に寝転がしてマット代わりにするか...いやーどれも魅力的で悩むねー」
「海と私をマットは危ないからやめとこうか」
「あ、スイカ割りもいいよね。先生スイカになってよ」
「殺意高すぎるよホシノ」
「おじさんの可愛い後輩達をいやらしい目つきで舐め回していたからだよ」
ジトーっと先生を睨む。先生はあたふたしているが許してあげる気はないもんね。
「ていうかさ、昨日ノノミちゃんと夜遅くに何話していたのさー。体をあんなにくっつけて」
「ホシノとはどんな時間を過ごしているか聞かれたんだよ」
「それだけじゃないでしょ? おじさんたち付き合っているんだから浮気はやめてよね?」
「浮気なんかしないよ。したらホシノ怒るでしょ?」
「...実際どうなんだろうね」
怒るとは思う。ただどれくらい怒るのか自分でもわからない。
前みたいに暴走してアビドスのみんなを傷つけて、ヒナちゃんと戦って...みたいになるかもしれない。
あの時よりはブレーキが作動していると思いたいけど...でも本当にどうなるか想像できないんだよね。怒るのでなく、一人無様に泣き続けているかもしれない。
もしかしたら首を縄でくくるかもしれない。
もしかしたら自暴自棄になって他校の生徒と衝突するかもしれない。
「あのさ先生」
水平線の向こうを見ながら先生に呟く
「私って面倒なのかな」
ほら、この質問自体面倒だ。先生の顔を見ながら質問できない時点でもうあれだよね。
私は先生の彼女だけど後輩達はまだ先生を諦めていない。特に2年生組は夜這いとか既成事実を視野に入れている。浮気なんてされたら立ち直れる気がしない。
「面倒じゃないよ」
先生はキッパリと言い切った。
「私はホシノが好きだ。それは誰に何と言われようと曲げる気はないよ」
「...そう。ありがとう」
私は視線を先生に向けることなく答える。
何がありがとうだ。先生の方を見て答えていないくせに何様だ。
「もし私が先生の立場なら」
「私は私を選ばない。絶対に」
「...」
先生は私の頭に手を置いた。頭を撫でてくる。
私の口が勝手に開いて話始めた。
「こんな情緒不安定な女、面倒の塊そのものだ」
「勝手に泣いて、勝手に暴走して、中途半端に実力があるから止めるのにも一苦労だ」
「そのくせ仲間との約束は破る。和解したけど、絶縁されてもおかしくないことを2回もやってる」
やめてよ、止まってよ私の口
「何か案を出しているわけでもない。否定ばかりしている気がする...いやするじゃなくてしてる」
お願い止まって
「冷めた対応しかできなくて、人のことをすぐに疑って、自分を疑って」
こんなこと言われても困るだけ
「何かを成し遂げたとしても、私はここにいていいのかと疑問に思って」
「将来のこと何も考えていない、やりたいこともしたいこともできることも特に思いつかない」
「先生のそばにいても、足手纏いにしかならない気がして」
「私は...」
やっと口が閉じた。でも遅い、遅すぎる。
私はいつも...遅い。間に合ったことがない。
「ホシノ」
いやだ、どんな顔をすればいいのさ。
あーもう、自分で自分を殺したい。
でも死ぬのは怖い。
大切な人の死体なんてもう二度と見たくないし、後輩達に見せたくない。
「ホシノのペースでいいからね」
「...え?」
予想もしていなかった言葉に驚き、先生の方を向いてしまう。
真剣な表情の先生の顔が映る。
「私はホシノの味方だからね」
「無理に焦らず、自分のペースで進んで欲しい」
私の頭から先生の手が離れる。
私の手が握られる。
「...うん」
一言返すだけ。情けない。
あぁ、いつか
いつか真正面からあなたと向かい合えるのかな
向き合いたいな