生徒達の青春の1ページ 作:バームクーヘン
「あ、先生!そこは危ない!」
「あ」
「あぁぁ」
部室で先生と2人きりでゲームをしていたが、画面にはゲームオーバーの文字が表示される。
「あのミドリさん? そろそろ作業に戻った方が...」
「何言っているんですか先生! あとちょっとなんですよ!? こんなところで引けるわけないじゃないですか!」
「で、でもさ、もうすぐ日付が変わるよ?」
「いいから!はい、コントローラを持ってください!」
「ひぃぃ」
最初はスランプで絵が描けなかった。何をしても解決する見込みがなかったので先生に相談したところ、普段やらないゲームをすれば何かわかるかもと言われた。その助言通り普段やらないゲームに手を出したのだが、思いの外熱中していることに驚く。
私1人ならここまで熱中しなかっただろう。誰かと一緒にゲームするのが楽しいから?
それはきっと間違いではないが正しくもない気がする。
ではなぜ?
私は隣にいる先生を横目で見る。先生は眠そうで時折舟こぎをしている。最初は頑張って起きているけど、合間合間で目を閉じてしまい動きが止まってしまう。画面上のモンスター達は先生を囲んでタコ殴りしていた。
私の目線は画面ではなく先生だった。目の下の隈、少しはねた髪の毛、普段嗅ぐことのない男の匂い、少し皺のある手、喉仏...。気がついたら先生のあちこちを見ていて、胸が不自然に高鳴っていた。これは一体?
何かに気づかないように画面に目線を戻すとまたゲームオーバーと表示されていた。またやってしまったと頭を掻く。先生を起こそうとするが深い眠りに入ったのか「んー」と生返事しかしなかった。
先生を近くのマットに寝かせて毛布を被せてあげた。私も少し休もうと目を閉じてぼーっとしていると、段々と視界がボヤけてきた。これはあれだ、寝落ちの前兆だ。
早く横にならないと思うが、横になるのも面倒な気持ちになる。脳はサービス残業したくないと機能を停止したため、私は何も考えずに近くの毛布の中に入ったのだった。
翌朝、目を覚ますと先生はいなかった。
スマホのチャットを確認すると先生からメッセージが来ていた。
メッセージを確認しながら私の胸の中には複数の感情が入り混じっていた。
夜遅くまで付き合わせて申し訳ない気持ち、夜遅くまで一緒にいて嬉しい気持ち。
また一緒に遊びたいけど迷惑かなと不安になる気持ち、また一緒に遊びたいという期待の気持ち。
あぁ、この気持ちが何なのかわかる時は来るのかな。
わかりたいけど、わかりたくないかも。
わかりたくないけど、わかりたいとも思う。
とにかく今は...
私は髪とペンを持って絵を描きはじめた。