小竜姫様に案内された一室にある椅子に座ると、斉天大聖老師が作り出した仮想空間に移動することになった俺の魂。
そこでゲームばかりしている老師と対戦格闘ゲームをやったり、料理を作ったりして老師と一緒に食べたりもして、ひたすら時が過ぎ去るのを待つ。
横島忠夫や伊達雪之丞だと2ヶ月が限界だった仮想空間での生活。
転生を繰り返していることに加えて神バルドルからの祝福まで魂に刻まれていた俺は、魂が特殊だったようで、6年間ほど仮想空間で過ごすことになった。
仮想空間で6年間が過ぎようが、現実の空間では1分も過ぎておらず、仮想空間で老師の精神エネルギーを大量に受けたことで加速状態となっていた俺の魂は、過負荷から解放されたことで一時的に出力を増している。
この隙に己の潜在能力を引き出すことこそが斉天大聖老師との修行となるが、本来なら手加減して戦う老師から「お主なら加減は要らぬな」と言われたので、どうやら俺は手加減抜きの斉天大聖老師と戦うことになるらしい。
場所を移動して到着した異界空間で、眼鏡をかけた小柄な猿の姿から、山の如き巨体に変化した猿神こと斉天大聖老師。
如意金剛という伸縮自在の棍を構えた斉天大聖老師が「行くぞ、異界の神の祝福を授かりし者よ!」と言うと、手に持った如意金剛を凄まじい速度で振り下ろしてきた。
山の如き巨体に応じるように如意金剛すらも巨大化しており、長く太い棍は人間など容易く潰せる大きさがあり、それを振るう猿神ハヌマンこと斉天大聖老師の力も並みではない。
霊力を圧縮した籠手を纏わせた両腕を交差し、受け止めた如意金剛の一撃。
見上げる程の大山が高速で落下してきたかのような威力と衝撃があった一撃には、一切の加減がなかった。
自前の波紋と波導に霊力だけではなく、スキル【廃棄貯力】で貯めたエネルギーによる身体強化に加えて【霊力変換】のスキルでエネルギーを変換し、増やした霊力を用いて、手加減無しの斉天大聖老師と戦っていく。
縦横無尽に振るわれる如意金剛は、正に変幻自在の軌道で此方へと近付いてくるが、秘められた威力は大山を一撃で容易く粉砕する程であるのは間違いない。
脅威となるのは如意金剛だけではなく、武を極めている斉天大聖老師は棍術以外の攻撃も多彩で、あらゆる拳法を巨体で使いこなしていた斉天大聖老師。
棍術を用いながら、あらゆる拳法の技まで使用してきた老師は、様々な攻撃手段も持っていた。
そんな斉天大聖老師が相手であろうと退くつもりはない俺は、前に踏み込んで地を蹴り、超高速で弾丸のように近付いて、斉天大聖老師へと拳を振るう。
素早く反応して如意金剛を盾に此方の拳を防いだ老師へと、如意金剛に触れている拳に更に力を込めていった俺は、頑丈な如意金剛を掴んでいる老師の巨体ごと吹き飛ばす。
後方へと追いやられた老師に追撃を叩き込もうとすると、老師が繰り出す拳と此方の拳が真正面から打つかり合うことになったが、互角の威力で弾かれた互いの拳。
互角ならまだ強化が足りないと判断し、俺は更に身体強化を強めていく。
スキル【超人体質】の影響で、この身体は凄まじく頑丈であり、通常の人間なら耐えられないような強力過ぎる身体強化にも耐えられるようだ。
正しく超人と言えるこの身体は、そう簡単にはくたばることはない。
波紋と波導に【廃棄貯力】で貯めたエネルギーによる身体強化と、まだまだ大量に残っているエネルギーを【霊力変換】で霊力に変換し、身体強化と霊力強化を同時に行い動き続ける。
解体することが決まっていたビルを幾つか丸ごと【廃棄貯力】で廃棄したり、日本全国で不法投棄されたゴミの山などを全て廃棄して、全てをエネルギーに変換して貯めていたので、湯水のようにエネルギーを使用してもまだまだ余裕がある俺。
廃棄しても問題ないものがこの世界にある限り、使用した分のエネルギーを再び貯めることは不可能ではない。
更に身体と霊力を強化し、より強力となった霊力の籠手を纏った両腕を振るい、放つのは絶え間無い連打。
拳の弾幕で、老師が盾にした如意金剛を弾き上げた瞬間、如意金剛を片手持ちにしたことで空いていた老師の拳が此方へと振るわれる。
再び打つかりあった互いの拳だったが、今度は此方の拳が打ち勝った。
弾かれた老師の拳と、それにより僅かに崩れた老師の体勢。
ほんの僅かなその隙を見逃すことなく、老師の腹部へと叩き込んだ渾身の拳。
打ち込んだ拳打は確かに老師へとダメージを与えたようだが、天界屈指の実力者である斉天大聖老師は、この程度で倒せる相手ではない。
「やりおるな、手加減無しのわしにダメージを与えるとはのう。お主になら本気を出しても良さそうじゃな」
「やはりまだ上がありましたか斉天大聖老師」
「如意金剛と打撃のみだけで充分だと判断しておったが、術を使わせてもらうとするかのう」
そう言った老師は体毛を幾つか引き抜くと、それらを自身の分身へと変化させていった。
斉天大聖こと孫悟空でもある老師であるなら、体毛を自身の分身に変える身外身の術が使えても不思議ではないな。
それから老師の分身と本体が同時に行ってくる連続攻撃を回避したり、避けきれないものを受け止めていく最中、更に追加されていった老師の分身。
頑丈な異界空間にひしめく老師の分身の連携に本体も加わり、途切れることのない連撃が放たれ続けた。
分身の攻撃を避けたところで、繰り出された鋭い突きが此方へと直撃する。
如意金剛による一突きを受けて、異界空間の壁面に叩きつけられた此方の身体。
一撃で衝撃が全身を突き抜けて、久しぶりの強烈な痛みを身体が感じた。
懐かしさまで感じるような痛みは、野生の魔王デスタムーアの魔法が直撃した時や、伝説ポケモンサンダーのかみなりを喰らった時も感じたものだったな。
だが、その痛みのおかげで目が覚めたような気がする俺は、スッキリとした気持ちで構えを取ると、霊力を高めた。
自在に形を変形させることが可能な両腕の籠手が形を変えていき、俺の手の中に握られていたのは、5つのビー玉のような珠。
これはどう考えても文珠で間違いないだろう。
それを裏付けるかのように新たなスキルが発現していたようだった。
【文珠生成】
・高めた霊力を圧縮して文珠を生成することが可能になる
新たなスキルは、そんなものだったが、文珠が生成できるようになったのは役立ちそうではある。
そういえば菅原道真も雷の文珠を用意できる文珠使いであったな、と思い出した俺は、菅原道真の血筋を受け継ぐ野原家の人間だ。
霊能力も血筋で受け継がれるものが多い為、文珠使いであった菅原道真の血筋を受け継ぐ俺が文珠を使えるようになっても不思議ではない。
さて、この文珠を老師相手にどう使おうかと考えたところで、斉天大聖老師が分身達を消して小さな猿の姿へと戻り、戦闘体勢を解く。
「無事に生きて潜在能力を開花させたようじゃな。今日の修行は、これで終わりじゃよ」
「そういえば修行でしたね。ありがとうございました斉天大聖老師」
「お主が知っておる情報と使える力に、新たに発現した霊能力は、わしの胸に秘めておくとしよう。その方がお主も動きやすかろう?」
魂が繋がっていたことで、俺が沢山のことを知っていることや、様々な能力で出来ることに、これから行おうとしていることも斉天大聖老師には知られてしまったが、老師はそれを黙っておいてくれるらしい。
「敵いませんね。感謝します斉天大聖老師」
此方に配慮してくれた斉天大聖老師に頭を下げた俺は、文珠を意識内に収納してから異界空間を出ると、鬼道さんが修行している様子を見に行くことにした。
式神の夜叉丸を出しながらでも、霊具を使ったり、近接戦闘なども出来るように小竜姫様と鍛えていた鬼道さん。
修行したことで鬼道さんも順調に強くなっているようなので、妙神山に修行しに来たのは正解だったかもしれないな。
GS美神本編で斉天大聖老師は身外身の術は使いませんでしたが、斉天大聖なら多分使えると思うので、本作では使えたということにしてあります