GSとしての仕事帰りに、高級ホテルの屋上で霊的な大爆発が巻き起こったところを目撃した俺は、波紋と波導に霊力を加えた身体強化を行ってからその場で跳躍。
一跳びで辿り着いたホテルの屋上では、後輩の横島くんとその父親である横島大樹が、身体に悪霊の残骸をへばりつかせた状態で倒れていた。
その場に居た幽霊のおキヌちゃんに話を聞いたところによると、どうやら先ほどの大爆発は、親子喧嘩に悪霊が封じられた吸引札を大量に使用したことで巻き起こった大爆発だったらしい。
大爆発の影響で倒れたまま動けなくなっていた横島親子は、その状態で口喧嘩を出来る程度の元気はあったようだ。
生きている訳ではない悪霊の残骸であるなら廃棄することは可能だと判断し、スキル【廃棄貯力】で横島親子の身体に付着していた悪霊の残骸などを廃棄し、屋上に残る霊的な廃棄物を全て残らず処理しておく。
これで屋上に残るのは倒れたまま動けなくなっている横島親子と浮いているおキヌちゃんに俺だけとなったが、とりあえず横島くんとは同じ高校の先輩でGSをやっていると自己紹介をしておき、今回の大爆発が起こるまでの事情を全員から聞いてみた俺。
それからとりあえず後輩の横島くんとその父親に軽く波紋と癒しの波導を流して、立ち上がって動ける程度には回復させておいた。
「軽く治療はしといたんで、立って動くことなら出来るだろ」
「あ、ほんとだ。動けるようになってる。GSってスゲーな」
いきなり身体を動かせるようになって驚いた顔をしていた横島くんは立ち上がり、身体の調子を確かめているみたいだ。
「GSは、こんなことも出来るのか」
そう言いながら立ち上がった横島大樹は、興味深いものを見たかのような顔をしていたな。
「まあ、もっと治療して更に元気にすることは可能だが、立ち上がって歩ける程度の治療にしておかないと余計なことをするかもしれないからな」
親子喧嘩をしたばかりな横島親子に、そう伝えた俺に対し、横島大樹が「息子の忠夫は結構元気になっているのに、此方はギリギリ歩ける程度なんだが。不公平じゃないか」と不満を口にしてきた。
「特定の相手を作らずに遊び歩いてるなら、単なる女好きで済ませておくが、結婚までした嫁さんが居て子どもまで居るのに、女遊びが激しい不倫野郎な父親に子どもが怒るのは当然だと思うんでな。だからそっちの治療は最低限にしておいた」
「わはははっ!ざまーみろ親父!」
俺が横島大樹の治療を最低限にした理由を聞いて、父親である横島大樹に勝ち誇るだけで済ませた横島くんは、動くのがギリギリの父親に攻撃を仕掛けない程度には理性が働いていたようだ。
今の横島大樹に出来ることは歩くことだけなので、体力的にも、他に余計なことは何も出来ない。
「もはや何も出来まい!諦めろ親父!」
「おのれ忠夫!この身体さえまともに動けば!」
なんてやり取りがあったりもしながら、現在はフラフラの状態な横島大樹が、不倫の為に用意していた高級ホテルの部屋に、横島大樹だけ放り込んでおき、さっさと立ち去った俺と横島くん。
帰り道で腹を空かせていた横島くんに食事を奢ったりもして、少し横島くんと交流してみたりもしたが、少ない給料で生活している横島くんは、ほぼ毎日インスタントラーメンばかり食べていて、飢えていることも少なくはないようだ。
こうして交流してみた後輩が飢えに苦しんでいるなら飯ぐらいは食わしてやりたいと思った俺。
その後、給料日前で腹を空かせていた横島くんが居る高校の教室に行き、スキル【商品購入】で用意しておいた値段がお高いサンドイッチを幾つか横島くんに渡しておくと「こら美味い!こら美味い!」と言いながら一気にサンドイッチを食べ始めた横島くん。
沢山あったサンドイッチも直ぐに消え去っていき、満腹になった横島くんは「あー美味かった」と腹を擦っている。
「満腹になったみたいだが、水分も補給しときな横島くん」
腹一杯になって満足した様子を見せる横島くんにペットボトルのお茶を渡しておくと「えろうすんまへんな野原先輩」と、此方にペコペコと頭を下げてきた横島くんは腰が低い。
栄養が補給できたことで余裕ができていた横島くんは、高校の授業が終わると元気に下校していった。
俺はGSとしての仕事が入っていたんで、手早く除霊を終わらせて帰宅していく最中、小銭を落としている横島くんを偶然発見。
とりあえず横島くんが落とした小銭を素早く拾って横島くんに渡してから立ち去っておくと、未払いだった横島くんの給料を持ってきていた美神さんとすれ違ったが、普通に給料を受け取ることができていた様子の横島くんは喜んでいたな。
空腹のまま小銭を追っかけて美神さんにぶつかって、その気もないのにセクハラしたみたいな状態となり、怒った美神さんに警察呼ばれて捕まるというオチだった話があったりもしたが、あの話の横島くんは不幸だったんで、そうならなかったなら良かったのかもしれない。
ちょっとしたことで変わることもあるのだろうな。
ちなみに同じホテルのスカイバーで朝まで飲んでいた美神さんの酒の代金は、横島大樹が全て支払うことになったようです