手に持つコップを逆さにし、コップの中に入っている水が落ちないように波紋を使って留めることが、まだ出来ていなかった緑谷少年。
そんな緑谷少年に「波紋は一点に集中した方がより強くなる。水鉄砲は穴が小さい方が遠くまで飛ぶからな、それと似たようなもんだ。掌全体ではなく指先に波紋を集中させてみるといい」とアドバイスしておく。
此方のアドバイス通りに指先に波紋を集中させた緑谷少年はコップを逆さにしても、溢さずに水を留めることができていた。
「できました!」
素直に喜ぶ緑谷少年には、もう少し進んだ波紋を見せておこうと考えた俺。
緑谷少年が持つコップの中に人差し指を突っ込んだ俺は、指から放つ波紋で水をコップの中に入っていた形に固めて留めるとコップを外し、波紋によって固体になった水を見せる。
「更に波紋を鍛えれば、こんなこともできるようになるぞ」
俺が流す波紋により、液体から柔らかな固体に変わっていた水を見た緑谷少年は、とても驚いていたようだ。
「スゴい!まるでプリンだ!」
目を輝かせていた緑谷少年に「きみにもこれができるようになってもらうからな」と言っておくと「はい!頑張ります!」と元気一杯な返事が直ぐに返ってきた。
それからは波紋の修行を徹底的に行い、緑谷少年に1秒間で10回の呼吸ができるようになってもらったら、10分間息を吸い続けてから10分間息を吐き続けてもらう。
その間も波紋の呼吸を崩すことがないように、波導の修行も平行して行い、波紋と波導を両方鍛えていった緑谷少年。
波紋の呼吸を行いながら瞑想した緑谷少年は、体内の波導をより強く練り上げていき、波紋と波導を同時に使用する感覚を身体に染み込ませていく。
呼吸を鍛え、波導を鍛え、修行を積んでいった緑谷少年は、数段飛ばしで波紋と波導の使い手として成長し、波紋の応用技も身に付けた。
奥義波紋としてシャボンランチャーにシャボンカッターなども使えるようになっていた緑谷少年は、必殺技に喜んでいたな。
そんな緑谷少年の雄英高校の入試が来年に迫る中、雄英高校の新任教師となった俺は、雄英高校では戦闘訓練などの授業や、治療系ヒーローとしてリカバリーガールの手伝いも受け持つことになる。
戦闘訓練で無茶をして怪我した生徒達の早期治療には波紋や癒しの波導が役立ち、波紋や癒しの波導ではどうしようもない相手だけリカバリーガールに任せることになった。
それでも負担が減ったことにリカバリーガールは喜んでいて、俺に感謝していたことは確かだ。
雄英高校の教師として働きながらも、空いている時間は緑谷少年の師匠として修行をさせていた俺。
雄英高校の入試が近付いていく最中、緑谷少年が波紋や波導による身体強化をしっかりと身に付けていたことも確認し、ひたすら波紋と波導を使った状態で模擬戦などもやってみたが、修行を始めた頃とは段違いに動けるようになっていた緑谷少年。
立派な波紋と波導の使い手となった緑谷少年なら、雄英の入試に合格することは不可能ではないだろう。
強くなったという自信を持つことができるようになった緑谷少年には、シャボン系の波紋技が使い易くなるように特殊石鹸水を染み込ませ易い頑丈な衣服をプレゼントしてみる。
衣服に石鹸水を染み込ませてから実際にシャボン系の波紋技を使ってもらってみたが「技が出しやすくなりました」と緑谷少年は大喜びしていた。
師匠としてやれることはやったと思った俺は、弟子が雄英を受験しに来ることを教師陣や校長に伝え、その受験者の入試の採点だけは、他の教師にやってもらうように頼んでおく。
それから雄英高校の入試が始まり、モニターで受験者達の動きを確認していく教師陣。
「波風先生の弟子は、動きがいいですね」
そう言った13号先生の視線の先には、3ポイントのロボットへとシャボンカッターを叩き込んで破壊している緑谷少年の姿があった。
円盤状の刃を持つシャボンカッターは波紋を帯びていることから割れることもない。
「緑谷出久、個性は、波紋波導。身体強化も可能で治療にも使える。弟子なだけあって確かに波風先生と似たようなことが出来るみたいだな」
緑谷少年に関する情報を確認しながら言うブラドキング先生。
「波風先生の弟子はヴィランポイントで言えば50は稼いでるけど、他の受験者を助けたりもしてるからレスキューポイントもある程度はプラスされるわね」
モニターを見ながらそんなことを言っていたミッドナイト先生は「ちなみにどんな修行をしてたのかしら」と興味津々な様子で俺に聞いてくる。
とりあえず波紋は呼吸が関係する能力だと説明し、呼吸を鍛える為にやってきたことを詳細に伝えていくと「そこまですれば流石に強くなるわね」と言ったミッドナイト先生に頷いていた教師陣。
雄英高校の入試が終わり、合格者だけに送る映像投影装置。
合格した自慢の弟子の緑谷少年に送る映像には、俺からの言葉を入れておくことにした。
「しっかりと修行を積み重ねてきたからこそ、きみは合格できた。鍛え上げたその力があれば、きみはヒーローになれる。来いよ緑谷少年、ここがきみのヒーローアカデミアだ」
そんな言葉を送ってはみたが、合格通知が届いたのか電話をかけてきた緑谷少年。
電話越しの緑谷少年は大泣きしていて、久しぶりに泣き虫だったが、俺への感謝の言葉を何回も言っていたな。
まあ、緑谷少年が合格できて良かったとは思えた。
ちなみに緑谷少年が着ていた服はジョジョ2部のシーザーみたいな服だったりします