俺達が中学生になった頃、川神市の隣の市まで榊原家と椎名家の面々で出かける予定があったようで、榊原少女と椎名少女は、今日のところは不在となる。
直江少年と2人だけになるのは久しぶりだが、基本的にテンションの高い直江少年は「永遠の友よ、我が望みし力を得る姿を見るがよい!」と今日も元気に中二病していたが、中二を過ぎても直江少年は中二病のままかもしれない。
この真剣恋世界の武術家であるなら気を炎や電気に変換することも不可能ではなく、火炎や電気を纏う拳や蹴りを放つことも可能であった。
気の属性変換とも言うべき技術の習得に熱心だったのは、やはり直江少年であり、俺が教えたブリーチという少年漫画に登場する破道を再現したいと考えていたみたいだった直江少年は気を蒼い炎に変換して放出することができるようになっていたな。
「君臨者よ!血肉の仮面、万象、羽搏き、ヒトの名を冠す者よ!心理と節制、罪知らぬ夢の壁に、僅かに爪を立てよ!」
早速ブリーチの死神が使う破道の詠唱を唱えていきながら、気を高めていた直江少年。
「破道の三十三!蒼火墜!」
構えた掌から蒼炎を発射した直江少年の真似っこ蒼火墜は、高火力ではあったが俺なら海波斬で問題なく斬り裂けるので、どんどん発射してもらうことにして、直江少年には何度も詠唱を唱えてもらうことになった。
「君臨者よ!血肉の仮面、万象、羽ばたき、ヒトの名を冠す者よ!蒼火の壁に双蓮を刻み、遥か蒼穹に大火の淵を待て!」
何度も繰り返し発射している内にコツを掴んだ様子の直江少年は、通常の蒼火墜とはまた違う詠唱を唱えていく。
「破道の七十三!双蓮蒼火墜!」
直江少年は両手の掌を此方に向けて、両手から蒼炎を発射してきたが、慣れてコツを掴んだ今の直江少年なら、両方の掌から蒼火墜を放つという双蓮蒼火墜の真似っこまで可能になっていたようだ。
単純に数が2倍になっただけではあるが、充分な火力があった蒼炎を2発同時発射することで、威力が更に高まっていたのは確かだな。
こうして中二病な直江少年の琴線に響く技の再現をたまに手伝っていると、川神百代の襲撃があることもよくあるが、今日現れたのは「赤子にしてはマシな赤子と未熟な赤子か」と此方を赤子扱いしてくる執事服を着た金髪の老人だった。
他者を赤子呼ばわりするということは、赤子のように成長性があるということなのか、もしくは自分から見れば赤子に過ぎないと見下しているのかのどちらかになりそうだが、あの態度からして見下している方で間違いないだろう。
初対面で此方を見下してくる相手とか個人的にポイント低いが、特に襲い掛かって来ないなら放置しておくのが良さそうだと判断し、金髪の老人は無視して直江少年と一緒に、漫画技の再現をする為の修行を再開してみた俺。
そんな俺と直江少年が気に入らなかったのか、俺に蹴りを放ってきた金髪老人に対し、指1本だけで金髪老人の蹴りを容易く受け止めた俺は「赤子以下のあんたは有精卵かな」とだけ言うと、お返しの蹴りを金髪老人に叩き込んでおく。
此方の蹴りを避けることも防ぐことも出来ずに、金髪老人の腹部へとめり込んだ俺の蹴り足。
蹴り入れた足から伝わる感触からして、金髪老人の複数の臓器が破裂したのは確実だが、血反吐ブチまけながら吹き飛んだ金髪老人は、このままだと普通に死にそうだ。
俺としては別に金髪老人が死のうが構わないが、直江少年の目の前で殺人をするのは、流石に問題があり過ぎるので、一応金髪老人が死なないように治療しておいた。
治療で元気になった途端に、此方に襲い掛かってくる懲りない金髪老人へと、容赦なく攻撃を叩き込んでいき、金髪老人の四肢を普通なら曲がらない方向にまで曲げてへし折って動けなくしておいた俺。
「で、有精卵は結局何がしたかったんだ?」
動けなくなった金髪老人へと、そう問いかけた俺に対し「オレを有精卵と呼ぶのはやめろ。九鬼の従者への勧誘だ」と、倒れたまま偉そうに答えた金髪老人。
「ふっ、我と我が友の力は、九鬼の従者程度に収まる器ではない。天よ、叫べ!地よ、唸れ!今ここに魔の時代、来たる!」
ダイの大冒険に登場する真・大魔王バーンの奥義、天地魔闘の構えをしながらそんなことを言い出した直江少年は、今日も絶好調な中二病だ。
ちなみにダイの大冒険の世界にも行ったことがある別世界の友人なミルたんは、大魔王バーンの天地魔闘の構えを真正面から破ったそうで、敵も味方も物凄く驚いていたらしい。
とりあえず四肢がぶっ壊れた人形みたいになっている金髪老人には「そもそも九鬼には興味なかったが、赤子と他者を見下して、いきなり蹴りを放ってくるようなのをスカウトマンに選ぶような九鬼は個人的にポイントマイナス1億なんで、従者への勧誘はお断りしとくぞ有精卵」とお断りの言葉を叩き付けておいた。
それから紙に「とても未熟な有精卵です。暖めてあげてください」と書いて、金髪老人に貼り付けた俺は、その場に金髪老人を放置して、直江少年と一緒に立ち去っておく。
念入りにへし折っておいた金髪老人の手足は、簡単には治らないとは思うので、これでしばらく有精卵な金髪老人に絡まれることもない。
放置された金髪の老人ことヒューム・ヘルシングは他の従者に発見されて保護されましたが、ヒュームに貼られていた貼り紙については九鬼帝まで伝わって「有精卵!」と大爆笑されたようです