私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある?   作:天空ラスク

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気がついたら三万UAを達成してた酒カスを今後ともよろしくお願いします。゚(∩∇∩゚)゚。

(∩∇∩)いつも見てくれてありがとウナギ

(´ρ∇ρ`)ライブは次回まで待ってね……

(´∩∇∩`)「(海琴の内心を地の文と分けてみようかな〜って今更思いついたよ。だから今回からこんなふうにしてみるね。ちくわ即身仏)」


ワタシ、ルナミヤチヨダケド質問アルー?

 バイザーのスイッチを切り替え海琴は彩葉と共にツクヨミに向かった。

 到着したのはログインしたアバターが通る場所。果ての無いような浅い湖。正面には巨大な鳥居が建っており、彩葉との間にその人物は佇んでいた。

 

「────太陽が沈んで、夜がやってきます」

 

 厳かに放たれた言の葉を皮切りに夕焼け空を綺羅星が流れていく。水面に写る星の絨毯の上を無数の灯篭が練り歩く。

 ここから常夜の世界、月夜見(ツクヨミ)が始まるのだと目の前の少女の浮かべた笑みが物語っていた。

 

 肩に相棒の白いウミウシ、“FUSHI”の姿こそないが、彼女がツクヨミの創設者にして最高峰の配信者(ライバー)

 

月見(ルナミ)ヤチヨだ。

 

「いつもログインしてくれてありがとう! そんな素晴らしいアナタには、この連続ログインボーナスのふじゅ〜を差し上げましょうぞ〜」

 

 おどけるように笑う彼女は彩葉に駆け寄ると豪華な重箱を手渡した。揺れた時にやけにジャラジャラと音がしたがあれの中に一体いくらの金額が入っているのだろうか。

 

「これから原作に混ざるならふじゅ〜は持っておきたいよね〜。んー、どうやって稼ごうかな」

 

 これから活動するにあたって物や現金に交換できるふじゅ〜は貯めておきたい。しかしその前にアカウントが無いと貯めることができない。

 うむうむと腕を組み思考を巡らせる。

 

 その時、海琴に電流走る。

 あのヤチヨが分身だったらもしや誤魔化してアカウントを登録できるのではないか、と。

 確証は無いが、希望はある。

 

 1.今日がミニライブの開催日であること。準備は分身もいるとはいえあくまでメインは本人だ。なら裏でリハもしているだろうし音源の調整もしていると思いたい。

 

 2.今日がかぐやの初ログイン日であること。最初から本人なのか途中で切り替わったのか分からないが劇中で意味深な描写が挟まったことから本人が向かっていることは間違いない。

 

 3.月見ヤチヨがツクヨミの管理者であること。決して一人に固執して贔屓できるような立場ではない。この事から彩葉がログインしようと毎回本人が出てくる、と言ったことはできないはずだ。

 

 たった三つ、それだけが彼女が分身であると証明する情報だ。もちろん本人が来ている可能性も捨てきれないが、それでも本人に捕まるよりまだ光が見える。

 

 カリカリ、と硬質な音とともに海琴が向こう側に姿を表す。今の服装は万が一本人と遭遇した時分身のフリができるようにと着込んだ、前に子守唄を歌った時と同じパーフェクト月見ヤチヨフォーム(今回はアルコール補給済み)。誤魔化そうと思えば可能性の一つはあるはずだ。

 

 小脇にカメラを抱え歩く。鳥居の向こう側に歩いていく彩葉の背を見送るヤチヨに向かって波紋が近づいていく。その肩に手を置くと彼女の驚いたように丸められた青空と目が合った。

 

「急にごめんね〜。担当した人のアバターが上手く作れないって悩んじゃってさ、代わりに作ってあげて欲しいんだ〜」

 

 眉と目尻を下げその目を見つめ続ける。

 

 もちろん担当されていた人は海琴自身。

 海琴として普通にログインしようものなら彼女の前に姿を表さないといけない。新規ログイン者の姿が管理者に送られる可能性を考えるとそれは絶対に選択肢に入れられない。ヤチヨの前にヤチヨモドキが現れたら確実に本人に連絡が行くだろうから。

 

 なら、逆の発想をするならばヤチヨ(分身)とヤチヨ(分身)が接触する分には問題ない。

 

 装着したスマコン経由でアカウント情報をツクヨミに送り、コマンドとして設定したフィンガースナップでウィンドウを手元に表示させる。

 

 問題は現実世界でセットアップしたスマコンを使って作ったアカウントだということ。メールアドレスも現実の物なので、もし確認されたらあるはずのものがないという事になりかねない。

 背中が冷たく感じるのは緊張からくる冷や汗か。

 

 アバターの代理制作、アカウント数一億越えのサービスなら絶対に数件はある。そんな祈りが通じたのか、しげしげとウィンドウを眺める彼女の顔は面白いものを見たとばかりに頷いた。

 

「なるほど成歩堂(なるほどう)〜。でも、同じヤチヨだしアナタ(ヤッチョ)が作れば解決すると思うんだけどなー」

 

「(通ったぁ!)」

 

 思わず目を見開きそうになるところを気合いで堪えた。どうやら無事に疑われずにヤチヨの分身だと思われている様子。あとは口八丁で納得させるだけだ。

 

 小さく息を吸い気持ちを沈める。ここが今後の為の正念場。海琴は大袈裟におどけた笑みを浮かべた。

 

「およよ〜、それが偉い人に目の前で作ってもらうのは申し訳ないって断られちゃいました! だからこうして離れた場所で、担当した(ヤチヨ)じゃない別の偉い人(ヤチヨ)がつくれば条件は全部達成できるかな〜ってヤチヨは思ったよ」

 

 身振り手振りを交えコミカルに伝える。ヤチヨは中の人の性格的に冷静に語るタイプではない。そうする時もあるが今のような状況ならこうするはずだ。

 

 それに、彼女は面白いものに目がない。

 

「あー、な〜るへそ。それなら納得だね〜。分かった、このヤッチョにお任せあれ〜!」

 

 その時背後のカメラに向かって披露したサムズアップは多分過去一で綺麗だったと後に視聴者は語る。画面の向こうから万雷の喝采が鳴り響いている妄想を浮かべ、笑顔の中に浮かれが混じりあった。

 

「(さあ、コメント欄のみんな。一番いい評価を頼む!)」

 

 ・《¥20000・username・野菜伝説》カワイイ!カワイイ!良いぞォ!カワイイ!

 

 ・《¥30000・username・白猫姉貴》ヤチヨ(本家)ちゃああああああん!!!

 

 ・《¥10000・username・フランスの鈍器》キミは実にカワイイな……(っ’ヮ’c)

 

 ・《¥5000・username・MMD@ヤチヨ推し》今週のお小遣いです

 

 ああ、やっぱり今回もダメだったよ。視聴者は話を聞かないからね。

 バレないように目を拭ってみると、ちょっと濡れた。

 

「どんなのが良いとか聞いてたりするかな〜?」

 

「それがなんとヤッチョに憧れているんだって! だからヤチヨをモデルに作ったら喜ぶと思うよ?」

 

 なにせヤチヨの格好で配信するレベルのファンだから。最推しは彩葉だけど。最推しは彩葉だけど!

 

 ウィンドウを操作する彼女は楽しそうに見えた。それもそうだ、こんな事するアカウントはほとんどいないだろうから。

 

 鼻歌混じりに体を揺らす彼女の顔は細部こそ変わっているものの、紛れもなく小さな赤子だった姫の面影があった。

 

「ふふ。頑張ったね、かぐやちゃん」

 

「およ? 今なにか言った〜?」

 

「ナンデモナイヨー」

 

 顔と同じ高さに掲げられたメンダコは不思議そうなヤチヨから目を逸らさずに見つめていた。

 

 作業中のウキウキヤチヨをカメラに収め続けること約三分。作業はつつがなく終わりを告げた。

 

「これでどうかな? ヤッチョのデザインセンス気に入ってくれると嬉しいですな〜」

 

 空中をスワイプするように指を振ると目の前にウィンドウが滑るように移動してきた。

 

 そこには十二単をストリート系にアレンジした衣装を身にまとったアバターが映っていた。全体的にヤチヨを思わせる暗色系の色合いで纏められている。中でも目を引くのは大きな袖に刺繍された若草色の竹林と朱色の兎、青の狐だろう。また背中には餅つきする兎の意匠が施された満月のアップリケが主張し、ブーツに付けられた金キラの水引がとても演技良さそうだ。

 

 ・《¥142・username・愛魔神》重い重い重い重い

 

 ・見事にかぐいろヤチ全部混ざってるな

 

 ・Wow! Zettai Ryouiki! Hooooo!!

 

 ・今年のコミケ衣装決めたわ

 

 ・ちょっと待て、頭がないぞ?

 

 そのコメントを見て改めてウィンドウを覗き込むと衣装だけが作り込まれた髪の一本もないのっぺらぼうが表示されていた。

 

「服のデザインは後で変更できるけど、顔の造形は現実の表情データを参照してるからね。ごめんだけど顔だけはその人にお願いして欲しいな〜」

 

「りょ〜! それじゃあコレは次にログインしてきてくれた時に渡しておくね!」

 

 軽く触れてウィンドウを消すとヤチヨがニコニコと海琴の顔を覗き込んでいた。

 

「どうかなどうかな? その人喜んでくれると思う?」

 

 瞳の奥を見透かそうとする青白い月を見つめ返す。回答なんて最初から決まっている。

 

「モチ! なんてったってヤッチョが作りましたから!」

 

 超人気アイドルが自らデザインした服をプレゼントしてくれたようなものだ。ここで喜ばなければいつ喜ぶのか。

 

 そっか、それならヤッチョも嬉しいな〜、と彼女は月明かりに明るく照らされ笑っていた。

 

 お礼を告げた後鳥居をくぐり抜ける。

 ここから本格的にツクヨミで活動できるようになる、海琴は帰ったら絶対に同居人と宴会すると心に決めた。強く生きろ同居人。

 

「それにしてもあのヤッチョ、通信に反応してくれなかったな……バグかなぁ?」

 

 光の壁を通ったあとの言葉はよく聞こえなかった。

 

 

 

 鳥居を抜けるとそこは推しのフォトスポットだった。着物とパーカー、ベルトにブーツを組み合わせたストリート系の格好に狐耳尻尾とめちゃカワカワな彩葉(ツクヨミの姿)。

 ただ立っているだけで凛とした雰囲気を放つ彼女、この全身から立ち上る魅力を映像として残さねば。あわよくば家のリビングに置いてる3Dプリンターで等身大フィギュアを作ろう。

 それやると肖像権侵害と著作権法違反の間で法が揺れることになるぞ。

 

「ヤ、ヤチヨ!? どどっど、どうしてそんな所からいらしたので?」

 

「(あ、普通に姿隠すの忘れてた〜。テヘペロ)」

 

 どっと全身から汗が吹き出す錯覚を覚え、この状況を打破するための考えを導き出さんと思考を巡らせた。

 

 ヤチヨ(分身)の前でとつぜん消えるわけにいかないので普通に鳥居をくぐったが、原作で彩葉はかぐやをこの桟橋で待っていた。当然、動きがあれば待ち人を確かめるために鳥居を見るだろう。

 衝撃の事実だが、酒カスはノリで生きる生物(ナマモノ)なのだ。

 

「ヤオヨロ〜! 突然ごめんねぇ。この辺で不審なアカウントが徘徊してるって通報があってさ? 何か不審なもの見てたりってしないかなぁ?」

 

 この場は適当な嘘をついて離れることに決めた。

 自分の容姿を完璧に活かしきったポーズと表情を作り、ヤチヨ推しの彼女にお願いするように問いかける。最後に首を傾げて上目遣いになるのがポイント。

 お巡りさん不審アカウント(コイツ)です。

 

「ひぅ、え、えっ……と、特に見てないです」

 

「うーん、困ったな〜、ここじゃなかったのかな。ありがとね! ご協力に感謝、感激、雨アラモード〜!」

 

「うわぁ、な、生アラモードだぁ……♡」

 

 早く来い月見ヤチヨ(本人)、彩葉のイマジナリーヤチヨがコイツになる前に。

 

 

「(早く姿消さないと、本物にバレちゃいそう……!)」

 

 彩葉にファンサ(は?)をして別れれば違和感なく離れられるだろう。振り返りざまに手を振り、ツクヨミの街並みへと歩みを進め────、

 

「あ、あのぅ……」

 

「っ、なぁに?」

 

 ────る前に背中に声がかけられた。

 

「もしよろしければなんですけど、あの、何かお手伝い出来ることがあればなー……なんて。あぁ、すみません。ご迷惑です、よね……」

 

「(今なんでもするって言った?)」

 

 言ってない。

 胸の前でいじらしく指を遊ばせる彼女はどうやら嘘の不審者(酒カス)探しを手伝ってくれるらしい。ここで断ってしまうのが今後の展開的に最善の選択肢だということは分かっている。それにヤチヨ(本人)に見つかれば誤魔化せるかどうか分からない。

 

「(でも、配信者としてそれは面白くないよね!)」

 

 いつもの服装であれば偽物バレを避けるためにさっさと逃げるしか選択肢はなかった。しかし今はパーフェクト月見ヤチヨフォーム(made in alcohol)、本物が降臨するミニライブが始まるまでの僅かな時間であれば月見ヤチヨとして振る舞う事ができる。原作の流れを見てもかぐやがログインしてからミニライブまでの出来事さえ崩さなければいい、その上バッドエンドへの道も無いときた。

 

 何より彩葉とかぐやの初めてのツクヨミ体験なんてイベントを視聴者が見たくない、なんて言うわけが無い。というか自分が見たい!

 そんな訳で、Don't来い月見ヤチヨ(訳・来んじゃねえ!)

 

「ううん。全っ然迷惑だなんて思ってないよ! えっと……Iro(いろ)ちゃんだね。 それじゃあ、少しだけ手伝ってもらおっかな」

 

「は、はい! ふっ、ふつ、不束者(ふつつかもの)ですがよろしくお願いします!」

 

「(お嫁さんかな?)」

 

 了承を聞いた彼女は顔に喜色を浮かばせ勢いよく上体を下げて見せた。

 

どうしようヤチヨに名前呼んでもらっちゃったどうしよう私の女神顔が良すぎどうしよう目焼け焦げそうどうしよう……

 

 一方その頃、陽キャかぐや姫はというと今まさにオシャレなカフェの高速詠唱のように早口で限界オタク化した彩葉の後ろで倒れ、踏まれたヒキガエルみたいな声を上げた。おお、あはれあはれ。




幻燈河貴さん誤字報告ありがとうございます!

超かぐや姫!沼に浸かった反動で似たような作品を求め探してさまよってる作者です

ポンコツAIと女子高生の青春ミュージカルアニメ【アイの歌声を聴かせて】はいいぞ
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