私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある?   作:天空ラスク

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このライバー……ようつべで『(ライバー名) ロリ』と『(ライバー名) フェイク』で検索結果変わるのにどっちも一番最初の動画で牢屋に入ってる……

白? ???「やっぱりロリライブは最高だぜぇ!!」


大物と初遭遇について質問ある?

 あれから次の日。いつものようにふらっと超かぐや姫!(向こう)に来たら机の上に置き手紙が置いてあった。

 

『バグヤチヨへ。ダンス撮るから来たらカメラマンやって! 昨日と同じとこでかぐや待ってるから! from Super Cutie Princess Kaguya!』

 

 色々ヤバい奴(S C P)から手紙を送られたとあっちゃ、ここで逃げたら配信者の名折れ。今日はスマコンを付けずにバイザーの機能で直接ツクヨミに侵入する事にする。その結果、昨日の衣装チェンジはスマコンを付けながらバイザーを起動すると発生する事が分かった。

 

 なお、カメラを受け取ってから撮影開始するまでかぐや姫の即興ダンスを五分くらい見せられた話は置いておくとしよう。何事も本題にさっさと入った方がいいのだ。

 

其の侭、運命子午線突破眠れない──此の侭、蓬莱の境界線切って問答無用──!

 

 昨日と同じ路地裏のちょっといい感じの広場でかぐやが踊っている。完全に調子を取り戻した舞姿は遊園地に初めて来た子供のようで、とっても楽しそうな笑みを浮かべてた。

 

 一挙手一投足が見るものの気を引いて止まない。弾けんばかりのエネルギッシュな笑顔を見れば“なよ竹のかぐや姫”なんて言葉が如何に的外れか本能的に理解する。そんな説得力すらある。

 

 ・《¥10000・username・半馬鹿》かぐやー!俺だー!(彩葉と)結婚してくれー!

 

 ・百合の間に挟まる男は死刑なんてオセアニアじゃあ常識なんだよ

 

 ・竹取のダンス見れたのほんま嬉しい

 

 ・イケボかぐやマジでテラメロス

 

 ・セリヌンティウス「お前何日待たせとんねん」

 

 ・恥を知れメロス

 

 楽しい!! が溢れ出したような、躍動感溢れるダンスはヤチヨ(?)の隣に設置されたカメラが収めている。これは後で歌詞をテキストにして投稿するらしい。昔のボカロ曲みたいな文字で遊ぶ愉快な編集になりそう。

 

 カメラの隣に腰掛け、古き良きあの頃楽しんだニコニコの日々を思い出し、ほっこりと升を傾けた。あ゛ぁお酒うみゃぁ……。

 

 見た目だけなら花魁風の美女が風情豊かに日本酒を呑んでるように見えるが、かぐやが踊る前に開けた瓶がすでに底を尽きかけている。夏にお母さんが作ってくれた麦茶をがぶ飲みする子供の消費量である。

 

「────♪。……っし、撮影終わり〜☆ どーよ、進化したかぐやのダンスは! バグヤチヨも惚れちゃったんじゃな〜い?」

 

 片目にVサインを添えたスマイルに親指を立てて返事とした。

 

「かぐやは可愛いからみんなメロメロだよ〜!」

 

「バグヤチヨわっかる〜!」

 

 片腕を顔の高さに構えタタタと駆け寄ってきた彼女にこちらも腕を上げてその時を待つ。

 

「「イエーイ!」」

 

 パシン、と乾いた音を鳴らしてハイタッチ。勢いに乗ったまま、また踊りだした彼女を横目に最後の一口を呑み干し、口の中から消えゆくヒノキの香りに名残惜しさを感じつつ、瓶と升を自宅に送還した。

 

「かぐやの可愛さが広まったら二十五億円くらいささっと稼げちゃうかも! なんちて〜」

 

「アハハッ! スッゲー大袈裟〜。でもそのくらい稼げたら彩葉もゆっくりしてくれるかな〜」

 

 余った楽しさを消費するようにクルクルと回るかぐや。両手をプロペラのように広げた姿はジブリ作品のかぐや姫の物語のワンシーンのよう。

 

「かーぐやっ!」

 

「なに? ──っとぉ、ありがとー!」

 

 三次元(コチラ)から取ってきたスポーツドリンクを放物線を描く様に投げ渡す。

 

 素早く開栓されよく冷えた液体が細い喉を勢いよく通り抜けていく。見てて清々しい飲みっぷりだ。スポドリがぶ飲みASMR撮っとこ。

 

「あ゛ぁ゛生゛き゛返゛る゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!゛」

 

 鼓膜ないなった。

 

 ツクヨミで美味しいの飲めたからついつい〜、とテヘペロするかぐや姫がおったそうな。

 

 それから撮った映像を二人で見返して問題が無い事を確認して、

 

「せっかくだからさぁ、かぐやとデートせん?」

 

「モチモチの木」

 

 何がせっかくなのか分からないけど、キメ顔で言ってきたのでこちらもキメ顔で親指を立てた。

 

 ・え?浮気?

 

 ・お前彩派だったろ

 

 ・いろやちは本人同士でお願いします

 

 失礼な、NTRだよ。突き出されたかぐやの親指と指相撲しながらカメラをチラ見した。

 

「(それに、かぐやの隣を歩くなんて彩葉でもないと難しいでしょ? こんなレアイベ楽しまなきゃ!)」

 

 星を飛ばしたウインクに数秒コメントが止まる。不思議そうにこちらを見るかぐやの親指を押し潰し、

 

「ほら、かぐや。わわわっと動かないと、一日なんてあっという間だよ〜?」

 

「はっ、そうじゃん。行くよバグヤチヨ! あと長いからバチヨって呼んじゃダメ? ダメか!」

 

「あー、それじゃあね〜────」

 

 ててぇと駆け出したかぐやに引きずられないくらいの速度で駆け出す。

 

 傍から見たその光景はどこか姉妹のようにも見えた。

 

 

 

 

 

 ツクヨミは平日の昼間でも人が多い。利用者一億人は伊達ではないよ〜? と得意げに胸を張る管理人の姿を夜空に幻視した。

 死んだライバルみたいな構図だな。

 

「アレ見てミコ! いわしパフェだって〜、美味いかな?」

 

「出汁をジュレにして和食風にしたら美味しくなるんじゃない?」

 

 かぐやに手を握られたまま通りを歩く。呼び方が変わっているのは自分から言ったからだ。

 

 彩葉の家の神棚アクリルスタンドに祀られているのはヤチヨ本人だから、それの代わりに動く分身ヤチヨ(偽)は巫女さんポジかにゃ〜、と配信者名である海琴(ミコト)を違和感なく言わせる為に一芝居打った。その成果である。

 

 ・ごめんいわしパフェのせいで頭に入ってこない

 

 ・ああっ、あれは伝説の中身モロみえイカれサウナ!実在したのか!?

 

 ・《¥2943・username・食う寝る食べる》かぐやち()でサウナに入ると聞いて

 

 ・エッチなのは……許可!推奨!

 

 ・おい正実何やってんだ

 

 サウナは完全オフの日に一人で入ります。普段してる化粧も何もかも落とせばバレんやろ。

 

 次々と屋台に寄っていくかぐや。腰にかかった髪が内側からワサワサ蠢いている。きっと隠れたうさ尻尾が犬のように振られているのだろう。耳も鳥みたいにパタパタと忙しなく、そのまま飛んでいきそう。

 

 進むにつれて人混みが密度を増していく。隙間の方が多かった通りが壁ができたように詰まっている。

 

「ありゃりゃ、おしくらまんじゅうになっちゃったね〜。かぐやは大丈夫かな?」

 

「大丈夫! けど進めん!」

 

 人混みがイヤという人間はそこそこいるが、彼女の目は今も楽しそうな光を湛えていた。ツクヨミが五感を再現しきれていないせいで、人の汗ばんでジメッとした肌の感触や温まった肉に押される圧も無いからというものあるだろうが。

 

 ・今日平日なんだよな?

 

 ・カメラマン?ちゃんと仕事して?

 

 ・地面のキメ細かさと主の足がすべすべな事しかわからん

 

 ・パンツ脱いだ

 

 ・地面で致すとか高等プレイだな

 

 ・えっ

 

 コメント見えてんぞ。いつの世も股間のポークビッツに支配された輩はいるものだ。その目をかぐいろやち(本人)に向けてはいけない。

 

 ザワザワと騒めきが大きくなる。

 

 ──何か近づいて来る。そんな気配が感覚でわかる。

 

「通して通して〜。Hi friends! ちょ、ホントに通して〜!」

 

 少し高めのアニメ声が聞こえてきた。どうやらこの声の主が騒めきの原因のようだ。これ程の人数に囲まれているのに声に震えや緊張の類がない。余程の経験がないとこうはならないだろう。

 

「かぐや、ちょっと待ってみよっか☆」

 

「え〜! さっさと進みたいのに〜〜!」

 

 かぐやには悪いけど、こんなに人を集められるのは確実に大物ライバーだ。ライバルも多いこのヤチヨカップ(ヘルモード)、一度かぐやには大物と話す機会を作った方が良い。

 

 かぐやのコミュニケーション能力なら大物とも距離を詰めてコラボまで持っていける。そう直感したから。

 

 どんどん騒めきの声量が増していく。周囲の人々の顔も何かあるのだろうか、という興味から有名人がこんな所にいた、という興奮と熱狂に塗り替えられていく。

 

 人混みを茂みのように掻き分けて、とうとう彼女は二人の前に姿を表した。

 

 肌の白さと対になる片方だけ履いた黒のサイハイソックス。

 

 太ももに目を惹かせるよう大きく切れ込み(スリット)が入った黒のショートパンツ。

 

 フード付き白ジャケット、と一言で言うにはかなり際どいトップスは首元と胸元を仄かに外気に晒し、特に腹周りはベルトの位置も相まって『A』の字のようにも見える。

 

 水色のリボンで胸元を飾り、狐をイメージしたボタンが上下逆さまに留められている。

 

 浴衣の袖に似たゆったりとしたシルエットのアームカバーから白魚のような指が覗いている。

 

 新雪よりなお白い髪を膝まで伸ばし、額を隠す前髪からは色鮮やかな海外の海原じみた青緑色の瞳が好奇心の光を灯している。

 

 何より目を惹くのは、手を振るように左右にひょいひょい揺れる狐耳と、

 

「──ふ、()()()()()()()()()()()……」

 

「あ、いいところにヤチヨだ! こんこんきーつねー!」

 

──チャンネル登録者266万人。

 

──Vチューバー界隈最大手、ホロライブ一期生。

 

──ゲーム特化ユニット『ホロライブゲーマーズ』リーダー。

 

────白上フブキ

 

「ちょ〜っとロリ化してもろて、よろしゅう?」

 

 ウゴウゴと蠢く麻袋を肩に担いだ彼女がそこに立っていた。

 

 ホロライブメンバーという大物に視聴者が沸き立つ。

 

 ……が、一方の海琴はと言うと、

 

「ふしゃぁぁぁぁ……」

 

「ミコー、なんでかぐやの背中に隠れるのー?」

 

 すささっ! と背後にきゅうりを見つけた猫のような速度で近くに突っ立ってたかぐやの背中に隠れていた。

 

「(あの袋の中に詰められる……!)」

 

 酒カスと言えども袋詰めにされるのは流石にいやらしい。

 

 かぐや(ウサギ)の背中に隠れて威嚇するヤチヨ(にはなれなかったよ……)(ぷるぷるしてる子ネコ)が格上ライバーにガンつける、なにこれ? としか言いようがない図が展開された。

 

「大丈夫! 大丈夫ですって! これ企画! 借り物競争的なやつですから! ほら!」

 

 ツクヨミ管理人(かなー?)から威嚇されるという、そこそこ危うい状況に慌てたのか。

 

 彼女は懐から一枚の手帳ほどのサイズの紙を取り出すとそれをこちらに見せつけてきた。

 

 カメラに映すためそれを受け取り、内容に不備が無いかジッ……と念入りに舐めまわすように見つめた。

 

 ……が、何回読んでも【お題・ロリ(ロリ度が高いほど高判定)】の文字しか書いてない。

 

 ・酒カス、お前ロリになるのか……?

 

 ・酒ロリってこと……?

 

 ・未成年飲酒(合法)

 

 ・ロリ度とかいう謎概念

 

「むむむ〜。ホントに書いてるね〜」

 

「そうなんですよ〜。だからロリ化できるヤチヨに来て貰えたら、それはとっても嬉しいな〜って」

 

 パンッ! と手を合わせ頭を下げられた。

 

「この通り! あ、分身! 分身でいいですから!」

 

「分身か〜〜」

 

 キツネ耳をへにょりと頭に張り付かせながら言われたその言葉。恐らく彼女が言っているのは、彩葉の前にヤチヨ(本人)が現れる時のレアアバターの事だろう。

 

 だがしかし、ヤチヨ(本人)とヤチヨ(アルコール含む)だと種族的な問題点が出てくる。

 

 コメントに目をやると今考えていた事と同じ内容が議論されていた。

 

 ──ずばり、打出の小槌って分身作れんの? 問題。

 

 ・酒カスか増えたらこの世の終わりだよ

 

 ・ヤチヨ()がお前の家で美味しそうに呑みながら晩酌に付き合ってくれるとしても?

 

 ・………………タイム!

 

 ・ねえよ

 

 ・インスタ映えするツマミも作ってくれるぞ(多分)

 

 ・酒カスがうちに来たところでキンキンの生ビールなんて渡さねえよwww

 

 ・用意してんじゃねえか!

 

「ミコー、さっきから何の話してるのー?」

 

 会話に混ざれなかったかぐやがここぞとばかりに顔を突っ込んできた。まるで親の井戸端会議に割り込んで話を中断させようとする子供のようにひょっこりと。

 

「ミコ……?」

 

 「ふふん。ヤッチョもあだ名をつけて貰える日が来たのです。もう月並みなロリババアなんて言わせないよ〜」

 

 胸を得意げに張り、尊大な態度で誤魔化す。そのままかぐやの胴を掴み、くるりんと半回転させた。

 

「ねぇかぐや、ちょ〜っとジッとしててね?」

 

「……? うん。いいよー?」

 

 その顔をジッと見つめる。

 

 不思議そうに傾げた頭。ちょっとだけ開いた口。てろんとタレた目。落ち着かなくて地味に揺れている体。ピクピクしてるうさ耳。

 

「う〜〜ん、やっぱりかぐやの方がロリっぽいねぇ?」

 

 ・かわいいだろ?こないだまでミルク飲んでたんだぜ?

 

 ・女子高生にオムツ替えてもらってたんだぜぇ?

 

 ・クール系女子高生ママにバブっちまったぜぇ?ワイルドだろぉ?

 

 なんかコメントに甲子園連れてってくれそうなスギちゃ〇が増殖しだした。

 

 もう動いていいと告げ、白上の方へ向き直った。……かぐやの背中越しに。

 

「ふっふっふ〜、フブキさんや。ヤッチョよりロリロリしい人がいる、って言ったらどうかな〜?」

 

「なんですとっ!? そんな、この白上ともあろうものが逸材を見逃していたとっ!」

 

 演技指導でも受けたかのような驚きようを見せた白上に向け、自分を隠していた背中をずずいっ、と押し出した。

 

「そう! ここにおりますは生後数日の正真正銘違法ロリ! その名も〜〜、かぐや〜〜!」

 

「かぐやっほー! なんかそういう事になったっぽいかぐやで〜す。……ところでロリってなぁに?」

 

 白上がかぐやを視界に捉えると、その瞳にシイタケのような十字の光がキュピーン! と灯るのが見えた。

 

 顎に手を当て上体を前倒しにしてかぐやを見つめる姿は、美術品を審査する鑑定士のよう。

 

「ほほう、その立ち振る舞い。……なるほどなるほど? 違法ロリかは置いとくとしても白上ポイント激高だよコレ」

 

「やたっ! ミコ! かぐやロリなんだって!」

 

 よく分からないまま嬉しそうにぴょいぴょい跳ねる姿はまさにロリ。うさ耳がいつもより多めに羽ばたいております。

 

「でもですね〜、白上より身長高い人を果たしてロリと判定してくれるかどうか……」

 

「おやおや〜? まさかヤッチョがそこに気づかないとでも?」

 

 残念そうに眉を下げた白上がその言葉を聞き疑問そうに『と言いますと?』と返した。

 

 待ってましたとばかりに意気揚々とメンダコに手を突っ込む。ずるりと引き出されたのはぼんやりと白く光る小槌。

 

 それはニュースツクヨミにわりとしっかり映りこんだバグヤチヨの所有物、打出の小槌である。

 

 ・え゛

 

 ・こんな……野次馬が多いところで出す!?

 

 ・可哀想に、酒の呑みすぎで判断力が

 

 ・しもしもー? ツクヨミ運営ー?

 

 コメントと野次馬がザワザワと波のように荒れてるが、当の本人は内心『最悪は小槌使って全方位忘れろビーム撃っとけばいいよな!』とイケイケである。これを無差別テロという。

 

「(原作でも何回かアバター着替えてたし、いけるよね?)」

 

「さぁ、打出の小槌。かぐやをいと小さき姿にしてたもれ〜」

 

 あ、そ〜れ〜〜、と気の抜ける掛け声とともに小槌がかぐやに向けて振り下ろし、

 

 ボフンッ、と煙に包まれた。

 

 煙が晴れた時、十歳ほどの外見まで身長が縮んだかぐやがそこに立っていた。ただし映画で見たようなロリかぐやではなく、アバターボディのロリかぐやだ。わた好きのMVのデフォルメかぐやをイメージすると分かりやすいか。

 

「おー……、ちっちゃくなっちゃった!」

 

 かぐやが手を振ると余りに余った袖がぺちぺちと暴れた。

 

「うわー! みんなデッカく見える〜〜!」

 

 ぴょこぴょこ跳ねるかぐやにクワァァァァッッ!! と白上が目を見開く。かぐやに秘められたロリ度の高さと愛くるしさに魅せられたのか、頬に赤みが差している。

 

 人々のどよめきが大きくなる。ヤチヨが人のアバター設定を勝手に変更する異常を見たせいか。喧騒の中に通報という危険な単語が混ざり始めた。

 

 ・そら見た事か!あ、そら見た事か!!

 

 ・ゴジラドジョウが来るぞおおおおおお!!

 

 ・いや、流石にヤチヨもこんな人多い所にゴジラドジョウ突撃させないだろ

 

 ・あのクソデカ魚の名前誰も知らないんだよなぁ……

 

 ・リュウグウノツカイだって言われてる定期

 

 ・でもリュウグウノツカイって大人しいらしいんですよ

 

 ・ほなリュウグウノツカイちゃうか

 

 今はまだギリギリ通報されてないようだが、それは時間の問題だろう。

 

「(だったら、方向性を変えちゃえばオッケ〜)」

 

「かぐや、もうみんなの前で踊れそう?」

 

「んえ? まぁ……何時でもいけるが?」

 

 ちっちゃい体にでっかい態度。 (無い)胸を持ち上げるように腕を組んだ姿は自信に満ち溢れている。

 

「ねえフブキ。今からかぐやの凄〜いところ、見せてあげるね?」

 

 小槌をしっかりと握り直す。

 

「小槌! 空間の装飾お願い!」

 

 横薙ぎに振るうと小槌の軌跡上に無数の淡い青光が夜光虫のように宙に漂った。

 

 まるで星の海の飛沫が落ちてきたかのような光景は、ヤチヨのミニライブほどの演出ではないが幻想的な光景に変わりはない。

 

「かぐや! みんなにかぐやの凄いところ魅せちゃって〜!」

 

「────っ、マジか! ホントにいいの!? イィィ────ヤッホォォ──────!!」

 

 漂う星に見蕩れていたかぐやの目に(まばゆ)い光が宿る。

 エネルギーを抑えきれず腕を振り回し、主人公のようにポーズを決めた。

 

「小槌! 音響と舞台セットよろしくっ!」

 

 それに合わせるように小槌をハンドベルよろしく虚空を叩く。小槌を中心として水面に石を投げ入れたように波紋が拡がる。人々の頭上を波紋が通過すると、光の粒が雪のようにしんしんと降り注いだ。

 

 どこからともなく聴こえてくるポップで軽快なミュージックと派手な演出に、人々の中に歓声が混ざり出す。

 

 それと同時にかぐやの周囲の地面が盛り上がり、無機質なプラスチックのような素材のステージが完成する。

 

 降り注ぐ光の粒がステージに当たる度に、そこを起点に七色の閃光が彗星のようにステージを駆け巡る。閃光がステージ上で衝突すると強い光が空に打ち上がり、星の雪空に大輪の花火が咲き乱れた。

 

「さぁさ、みなみなお立ち会い! 遠からんものは音に聞け! 近くば寄って目にも見よっ! 飛ぶ黒鬼落とす期待の星、かぐやの初舞台! ここに堂々開幕だよ〜〜!」

 

朝起きて今日は何しよう──好奇心抑えらんない──

 

 未だ土の下に眠る竹の子が人々の前で今、その芽を出した。

 

 

 

 

 

 

 後奏が流れ出して歓声が響く。人々の視線は元の地面に戻っていくステージ、その上空に向けられていた。

 

 体長百メートルはあろう巨大なウミヘビが身体をくねらせ、雄大に泳いでいる。

 

 空へと登る螺旋階段のようにも見えるその背中に小さな朱色と金色の影が見えた。

 

 影はウミヘビの背を滑り台のように滑り降り、ステージの上に影──かぐやが降り立って曲が幕を下ろす。

 

 最高潮に達した熱狂が歓声となって爆発した。

 

「どうだった〜? 人前で踊るのって結構楽しいよね〜☆」

 

「ふぅ────、最っっっっっっ高! 超〜〜楽しかった!」

 

 舞台の上に飛び乗り、かぐやの元に向かう。

 見れば初めての人前でのダンスに額に汗が浮かんでいた。だが動きや歌唱に乱れはなかった。流石は将来百万人登録者になる器、と言ったところか。

 

 途中からヤチヨらしさの演出のために海洋生物を出してみたら、かぐやはそれすら利用して見せた。

 

 巨大クラゲの触腕に腰掛け空中ブランコを披露したり、コバンザメの群れを階段のように駆け上がってジンベエザメの背に飛び乗ったり。

 

 その上で要所要所で完璧なダンスを踊りきって見せたのだ。

 

 無名の新人が人々の目を鮮やかに焼いた。絢爛な舞台に負けず劣らず、小さくなった体で躍動感溢れるダンスを人々の脳裏に刻み込んだ。

 

 それを可能にしたバグ(打出の小槌)と、その能力をエンタメに全振りしたバグヤチヨという存在。

 

 バグという危険性のあるものがヤチヨの姿と行動原理をしている事で、次は何をやってくれるのか、という期待と熱狂が人々の間を駆け巡った。

 

「フ〜ブキっ。これなら優勝できるかな〜?」

 

 かぐやコールが響く中、振り返って白髪の人影を探すと、すぐ側に彼女はいた。

 

「これが、バグの力……っ! 最っ高じゃないですか! あんな可愛い娘いたんなら教えてくださいよ〜!」

 

 いつの間にか白上は人混みに紛れて最前列に陣取っていた。両手にかぐやの名前が表示された電光掲示板ならぬ電光ウチワを握りしめ、既にかぐや道に沼っていた。

 

「えへへー、褒められちった〜」

 

「照れるところまで可愛い! 天使か?」

 

 えへえへと嬉しそうに後頭部を掻きニコパと笑うかぐや。

 

 どうやらかなりの好感触の様子。今のかぐやを彩葉に見せたら恐ろしさすら感じる可愛さに母性が爆発してしまうに違いない。多分ミルク五リットルくらい出る。

 

「ねー、かぐや、優勝できそうー?」

 

「できますとも! というかさせますから!」

 

 立ち上がって、上半身ごと首を傾げたかぐやの姿を見て、もし敗退したら運営に殴り込みます! と言わんばかりの勢いのまま肩に担いでいた麻袋を置く。するとおもむろに尻尾に手を突っ込んだ。

 

 ずるり、と茶色みがかった麻袋が出てきて、拡げられたその中にかぐやが飛び込んだ。。

 

 仕上げに袋の口を摘んで持ち上げ、かぐやを包んだら白上フブキ・幼女誘拐フォームの完成である。

 

 ・何処に袋仕舞ってんだよ!?

 

 ・被せるんじゃなくて地面に潰して置くのは入りやすくて良いね

 

 ・アカン、切り抜きたい場面が多すぎる

 

 ・ツクヨミで見るホロメン、3Dモデルのクオリティが良すぎる件

 

「ミコも一緒行く?」

 

 ひょこっと袋の口から頭を出(かぐやっほー)したかぐやがそう尋ねる。

 

「そうだね〜。二人でちっちゃくなれば優勝確実だね〜!」

 

「うん! ダメって言われても連れてk」

 

「あの〜、その件なんですけども。お題以外の物や人は持ち込み禁止と言われてまして〜」

 

 袋の縁が持ち上げられかぐやヘッドが麻袋の中に隠れる。白上が言い淀みながら断り文句を言った。

 

「マジでホンットーにすみません! そろそろお時間がヤバいので失礼します!」 

 

 もがもがなんか言ってるかぐや袋を担いで軽く頭を下げる。

 

 いつの間にか広がっていた人混みに突撃すると、聖書の一ページのように左右に別れた。モーセかな?

 

「あ、それと! いつかロリライブ計画にお誘いするので〜〜!」

 

(つかまつ)り〜! また会おうね〜」

 

 最後にまた騒動が起きそうなお誘いを受けたが、当然のように即了承する。

 

 手を振りながら小さくなっていく背中が寄り返す人混みに飲まれて見えなくなっていった。

 

 ・嵐のようだった……

 

 ・みんなフブキングは切り抜くなよ。こっちの本人に迷惑がかかるからな

 

 ・みんな顔と声が良い……

 

 ・ロリかぐやをスコれ〜

 

「神々のみんな! 次また会える日を楽しみにしてるよ〜! それじゃ、さらば〜──」

 

 白上とバグヤチヨと謎の美少女ロリに興奮から来るざわめきが収まらない人々に手を振って別れを告げた。

 

 バイザーに手を伸ばしスイッチを切り替えようとした、その時。

 

 独りでにぬごぬご蠢く、地面に置き去りにされた麻袋を見つけた。

 

「──あ〜、こりゃこりゃ忘れ物だね〜」

 

 それはかぐやを担ぐ前に白上が担いでいた麻袋だ。色々とイベントが重なったせいで記憶から抜けてしまったと思われる。

 

 活きのいい新鮮な麻袋を片手で掴む。

 

 この袋の中身が誰か知らないが、ここで解放するより人気のないところの方がマシなハズ。

 

 流石にカメラと袋と打出の小槌は持ちきれない。人目が多いので中の人が見えないよう、ササッとカメラを袋の中に入れた

 

『イタっ!?』

 

 厚い生地に遮られ、くぐもった声が小さく聞こえた。

 当たり判定は流石に消えてなかったらしい。ごみん。

 

 空いた手で 打出の小槌の持ち手から垂れた紐を握る。手元から離れた小槌が紐にぶら下がり振り子のように揺れる。

 

「みんなごめんね〜。本当に今日はここでクローズ! またいつか面白い事するから付き合ってね! それじゃ、今度こそ──」

 

 腕を軽く横に伸ばし、手首のスナップを効かせて小槌を思いっきりぶん回す。轟々と空を切り遠心力が最高に高まったタイミングで、

 

「──さらば〜〜い!」

 

 勢いよく腕を頭上に上げる。脳内に描いたイメージを元に小槌がその願望を実現する。

 

 それはまさに、マイティ・ソー(スーパーヒーロー)の飛び方だった。

 

 弾丸を放つように、遠心力で加速した小槌が空に向かって加速し突き進む。当然、それを掴んでいた海琴と麻袋もセットだ。

 

 目の前で起こった派手な退場演出に人々の熱狂は更に最高潮を越えた。

 

 歓声と興奮の声を背に海琴がツクヨミの空を飛び、どこかの街並みへと消えていった……。

 

 なお、その三十秒後。

 近くにいたヤチヨ(分身)から通りの進路妨害の通報が送られ、先まで海琴達がいた通りにヤチヨ(本物)がカジキマグロに乗って突撃してきたので割とギリギリだったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 人気の少ないのはなにも路地裏だけでは無い。イベントが行われているために普段うろついている人がみな消えている、そんな場所だ。

 

 街並みの中に通された細い川。小さな橋の上に海琴はいた。

 

「ここなら多分人来ないでしょ〜」

 

 人目が無ければもはや無敵。完全ヤチヨモードではないにせよ、そこそこヤチヨモードも疲れるのだ。

 

 ちゃちゃちゃっと袋から出してその場を解散、あとは優雅に観光しながら酒呑もう。

 

「ささっ、もう出てきてもいいよ〜」

 

 麻袋を置いて声をかける。

 

 モゴモゴと袋が蠢き、袋の口が開いていき、

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が頭を覗かせた。

 




れいんれーげんれいんぼーさん、斥候さん、夢霧ノエルさん、誤字報告ありがとうございます!


(作者・ω・)<急にアイデア浮かんできて酒カスの設定変更したくってぇ……

(作者・ω・)<ちょっと過去に投稿したやつとか編集したけど許してぇ……

(作者(編集後);ω;)<ここ好きの位置ズレちゃった……

変更点

一話 髪型と話し方と年齢設定を寄せた▶化粧を追加

二話 彩葉のクソまじぃパンケーキ食べた▶食べてない・セリフ変更

三話 一寸Pの容姿追加(碧目・ゴキブr……アホ毛)・海琴のお願い変更(ヤチヨの晩酌配信見たい▶彩葉のパンケーキ食べたい)

四話 セリフを追加・かぐいろの初遭遇に既視感を覚える

五話 セリフを追加・海琴が彩葉の歌で泣く

八話 自室のセリフ編集・着替え時の描写追加(ゴキブr……アホ毛だよ?)・カフェのパンケーキ食べて泣く

九話 またパンケーキ食って泣いてる……

十話 セリフ変更・海琴の地雷についての過去回想追加・彩葉のボカロP不在問題変更

 竹取でオーバーのナイトなセンセーションがJASRACで禁止かつNexToneにそもそも存在してないことが発覚したので歌詞を消しました。

 HoneyWorks公式サイト見た感じギリギリ大丈夫そうなので歌詞戻しました。

楽曲コード

N01701829 わたしは、私の事が好き。
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東大卒/女/27歳/年齢=彼氏なし/役職:プログラマー/趣味:本の荒読み な、溢れんばかりいる一般人が超かぐや姫にハマり、死後転生してしまったら...▼というお話です。▼────────────────────▼本編完結済み。▼現在は後日談やifなどを書いています。


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