私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある?   作:天空ラスク

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かぐやの誕生日記念書けない分早めに投稿……がくっ

 
 
 
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きーぼーうーのーはなー



「か、かぐやの……誕生日ケーキだけど……し、質問──」(寝落ち)

七月二十三日。

 午後八時。

 

「今日の晩御飯のメニューは〜、海鮮たっぷりパスタパエリア(フィデウア)、トマトの冷製スープ(ガスパチョ)にシーザーサラダ! 温玉を添えて召し上がれ〜?」

 

 ちゃぶ台の上が今夜も我が酒寄家でそうそうお目にかかれなそうな料理で彩られている。紅玉(ルビー)みたいに煌めく目をパッチリ開いて褒めてほしそうに私を見つめてくる。

 

 相変わらず料理の腕エグイなこの宇宙人は。……この食材費全部私が出してるんだよなぁ。

 

 いかんいかん。せっかくの美味しいご飯が味わえなくなる。美味い飯に集中しないと作ってくれたかぐやに失礼だ。

 

「それじゃ、いただきま──、」

 

 手を合わせて早速頂こうとした時だった。

 

 充電してたスマホが通知音を奏でた。私の大好きなヤチヨの曲のイントロが食卓に流れ続ける。

 

「何? ……真実からの電話だ。こんな時間に珍しい」

 

「なになに! なんか面白そうな事あったの!」

 

 褒めて貰えずぶーたれてたかぐやがちゃぶ台に身を乗り出して来た。楽しい事センサーでも搭載してるのか、何か言う前からもう全身でワクワクしてる。

 

 まだ電話出てないから分かるわけないでしょうに。

 

「もしもし?」

 

『もっち〜。今かぐやちゃんって近くに居る〜?』

 

 緩い声が耳元で響く。真実がかぐやに用事? はて、一体何の話をするのか。

 

 顔をキリッとさせて待ってるかぐやに聴こえるよう、通話をスピーカーモードにしてちゃぶ台に置いた。

 

「はい、オッケー。今かぐやに代わったよ」

 

『うい〜。かぐやちゃんやっほ〜』

 

 返事まで緩いなぁ。応えるようにかぐやが何時もの挨拶(か〜ぐやっほ〜)で返した。夜ご飯中だからか音量はいつもより控えめだった。

 

『来月ねぇ、彩葉と芦花と一緒に江ノ島で海水浴するんだ〜。一緒どうよ?』

 

 えっ。そんな事言っちゃったら、この面白い事大好き宇宙人の反応なんて一つに決まってる。

 

「行く行く! ゼッテー行く! 楽しみだな〜海〜。しょっぱい水が山盛り溜まってるんだよねっ!」

 

 ほらやっぱり。目が夏の太陽みたいにギラギラしてらっしゃる……。その白すぎる白い肌を日に焼かせるおつもり?

 

「というか、あなた水着持ってないでしょうが」

 

「大丈夫! 彩葉と選ぶからっ」

 

 グッと親指立てんな。なにも決まってないから。モデルが良すぎても服選ぶの大変なんだよ? それに私より芦花の方がセンス良いでしょうに。

 

 じゃあ芦花にも伝えとくね〜、おやすみ〜、と言い残して電話が切れた。

 

「はっ!? ミコも来んのかな!」

 

 ミコ……ああ、バグヤチヨか。やっぱりそのあだ名違和感あるんだよね。なんかヤチヨっぽくないというか。ヤチヨだったら名前のモチーフをメンダコとかウミウシとか海の生き物から取りそうなものなのに。

 

「どうかな、そもそもこの家の外に出れるのか?」

 

「え〜〜、それじゃミコは一人でこの冴えない部屋で留守番してるって事〜?」

 

 冴えない部屋言うな。でも実際の所どうなのだろうか。物や人に触ったりはできるみたいだけど、姿がハッキリ見える時にそういった行動はしていないように見えた。もしや、姿を隠して物に触れるか、姿は見えるけど物に触れないかの二択なんだろうか。

 

「まぁ、そうなる可能性もあるよねって話。流石に見えない触れない分からないのないない尽くしじゃこっちからは何もできないよ」

 

 めっちゃ祈りまくってこう、神秘的パワーを集めれば実体化できるんなら今すぐやるけど。それは現実的じゃないからね。

 

「さ、冷める前に食べちゃおう。……かぐや?」

 

 意識を食卓に戻して食事を再開しようとしてみれば、対面に座るかぐやが妙な顔で固まっていた。

 

「い、彩葉……アレなに……?」

 

 おかしなモノを見てしまったような、少し震えが混じった声。見つめ続けて良いものか迷うように目を泳がせながら、私の背後を指差した。

 

「なぁにその反応。まるで私の後ろに変な光景が広がってますみたいな顔は」

 

 残像が見えそうなくらいものすごく頷いてる。そこまで必死に反応されると振り向くの怖いんですけど?

 

 ため息混じりに手に持った食器を置き、渋々と後ろを振り返り、

 

 ──もと七色に光るゲーミング戸棚ありける。

 

「ん????」

 

 おかしいな、似たような光景をつい最近見たような気がする。夢かなこれ。

 

 どうして流し台の下の戸棚がゲーミングゲーミングしてるんだよ。ここに引っ越す時に戸棚が七色に光りますよーなんて説明受けた覚えは無いんだけど。

 

 観音扉に竹の持ち手が着いてるし、描かれた模様もあの時と同じだった。

 

 固まったまま動けない私たちを尻目にゲーミング戸棚がゆっくりとその中身をさらけ出し──

 

「ふんっ!」

 

 ──出す前に閉めればいい!

 

「かぐや! 押さえるから手伝って!」

 

「お、おう! 宇宙人の底力見せちゃる!」

 

 二人がかりならきっと止められる。戸棚がギシギシと音を立て始めたけど押さえつける力を緩めない。音が少し致命的なギシギシになってきたけど絶対に、

 

「いや、家ぶっ壊れるわ!」

 

 電柱の時と違い扉の根元、蝶番が悲鳴を上げだした。我が家の経済事情じゃこんな所まで直していられない。

 

 手を離してサッと離れると、私が押さえていた方の扉が勢いよく開いた。

 

「え、もう押さえなくてエブッ!?」

 

 私が急に手を離したのを見てかぐやが力を緩めた。その顔目掛けて『隙あり!』と扉が勢いよく開きぶつかった。ちょうど竹の持ち手が額からアゴまで一直線の所に当たり、かぐや姫は一撃でKO負けした。

 

「保冷剤出そうか?」

 

 ひっくり返ったカエルじみたポーズで倒れたかぐや、その顔は縦一直線に赤くなっていた。

 

「んんんんん、ンナァァァァァ! 開く時は優しく開かないと危ないでしょうが!」

 

 あー、結構元気そう。両手を上に振り上げて叫んでるプンスカかぐやだ。それとそのセリフはゲーミング電柱に返しといて。あの時全力で閉じようとしたんだから。

 

 しかし今度は何が出てくるのか。宇宙人が出てきたんだ、今更蛇とか鬼とか出てきても驚きは……、

 

「……何も無い?」

 

 しっかりと開かれた戸棚の中はミラーボールも柔らかい布団もなく、人一人座れそうなスペースが広がっている。かぐやがここに入ってた時から何も変わってない。

 

「いやいやいや、絶対なんか入ってたって! 隠れてんだよきっと、」

 

「じゃあ、ここの小さな戸棚の何処に隠れたの」

 

「……え〜〜〜っと〜〜」

 

 ゆっくりと私から目を逸らし、微妙に響きが悪い口笛が鳴り出した。誤魔化し下手か。

 

 ああでもないこうでもないと戸棚の前で中身の考察を始めた、その背後。

 

 パタ……、と冷蔵庫が開く音がした。

 

「「……………………」」

 

 観音扉を閉めたように、息ぴったりと隣にしゃがむかぐやと目が合った。

 

「ね、ねぇ、今度は冷蔵庫が光るのかな……」

 

「怖い事言わないでよ! その次はゲーミング電子レンジとかなるパターンだよそれは!?」

 

 後ろを振り返るのが怖くて器用に小声で叫んだ。かぐやの言う事が振り向いたら現実になる気がしてとても恐ろしい。

 

 背後からずっと何かをいじくる音がしている。

 

「光るちゃぶ台、光る布団、光る、」

 

「やめてぇ!? 怖っ! ゲーミングアパート怖っ!」

 

 そんな事になったら私の目は七色の光に焼かれて溶けるわ!

 

 パタ……、と背後で冷蔵庫が閉まる音がして、静かになった。

 

「……終わったかな」

 

「た、多分ね……」

 

 チラとアイコンタクトを送る。

 

……………………(せーので振り向くよ)

 

「……………………(彩葉の目、綺麗だなぁの顔)」

 

 ダメだ、なんか伝わってない気がしてきた。ええい、ここで勇気を出さずして東大なんて行けるか。

 

 せー、のっ、と口に出して躊躇いなく体を反転させる途中、一瞬ぽけっとしてるかぐやの顔が見えた。やっぱり伝わってなかったよ。全く、そんなクリクリと可愛い目で見つめて。私をプロデューサーにするんならちゃんと言う事聴いてよね。

 

「……やっぱり、何もない、か」

 

 振り向いた先は先程までと変わらない部屋。ヤチヨの配信アーカイブを流し続けるタブレットも、エアコンの効いた部屋の冷気で少し冷めてきた食事もなにも変化がない。

 

「そんならあとは冷蔵庫じゃん?」

 

「ほんっとに恐怖心とか無いよね。……はぁ、少し羨ましく思えてきたよ」

 

「えっへへ〜。褒められると照れますな〜」

 

 褒めた覚えは無い。だけどその照れ笑顔が目の保養になるから許す。

 

「ん……いや、待った。かぐやは開けないで」

 

 あまりにも変化球が起きてるけど、よくよく考えたらこれはかぐやが来た時と大体同じ状況だ。

 

「ええ〜、なんで〜〜?」

 

「冷蔵庫にかぐやの迎えが入ってるかも」

 

「ヱ゜ッ」

 

 喉からラッパみたいな音を出したかぐやを冷蔵庫の前から退ける。かぐや姫の童話通りなら、お迎えは大勢で来る。つまり、冷蔵庫から何人も月人が出てくる可能性が高い。そうなったらこの狭い部屋など一瞬で満員電車みたいになる。

 

 かぐやにぶつかられたら、怪我しちゃうかもだから。私が開けてせめてもの壁になろう。

 

「ふぅ──────」

 

 深く、深く息を吸う。本当に迎えが来たらこの宇宙人は家に帰るのだろう。多分、きっと、いや絶対抵抗するだろうけど。それで『じゃあ彩葉も月に連れてく! じゃないとぜってー帰んないから!』とか突拍子も無い事言い出すんだ。

 

 目を閉じる。冷蔵庫の外観もかぐやの不安そうな顔も黒に遮られ見えなくなる。

 

 正直、ちょっと怖い。なんだかんだ迷惑はかけられたけど、本当に迷惑だったかと聞かれたら少し答えに詰まる。

 

 かぐやのご飯は美味しい。いつもぼんやりと感じていた味がハッキリと分かるようになったから。

 

 かぐやと寝るとよく眠れる。子供みたいな体温は夏には暑苦しいけど、肌に伝わる鼓動が誰かが傍にいる事を直に教えてくれるから。

 

 ……それはそれとして、勉強時間は確保させろ!

 

「……ハッ!」

 

 迷いを打ち消すように目を閉じたまま勢いよく扉を開けた。

 

 涼しい冷気が服越しに肌を撫でていく。強い光や叩きつけるような衝撃も無い。

 

 薄目を開けて中の様子を伺う。

 

 飲み物とか食材とかが程々に詰められた普通の冷蔵庫。

 

 中央に鎮座した白い紙箱以外は変わらない日常のワンカットだ。

 

「おもっくそなんかおる」

 

「箱……だねぇ」

 

 箱だ。持ち上げるとなにか入っているらしく重みを感じた。上部には組み立てた時にできただろう持ち手がある。

 

 ……よし、放置だ。

 

「とりあえずご飯食べよっか」

 

「うええええ!? ここまで来て止めるの!? マジか〜〜!?」

 

 だって、冷めきったかぐやのご飯食べたくないし。美味しいうちに食べておきたいもの。

 

「食べたあとでいくらでも見れるから、ほら食べよ食べよ〜」

 

 あ、ブーたれた。

 

 その唇を指で摘むと頬がまぁるく膨らんだ。ジトーっとしたなにか言いたげな瞳とパンパンに膨らんだ頬のギャップが面白い。

 

 可愛いな、かぐや。

 

 

 

 

 

 

 

 食事も洗い物も済ませ、いざ、開封の儀を執り行う。

 

「ねぇ、何が入ってると思う?」

 

 冷蔵庫に入ってたくらいだ。月の食べ物とか入ってるたら面白いんだけど。……そうだ、月には食べ物ないんだった。

 

 うんうんと腕を組みかぐや姫が揺れている。やっぱ、冷蔵庫に現れた箱なんて開けなきゃ分かんないよね。

 

「準備はいい?」

 

「バッチコイ!」

 

 硬い紙をたわませて留められていた箇所を外す。

 

 中に入っていたのは……、

 

「わぁぁぁぁぁ!! ケーキ! ケーキだよ!」

 

 色鮮やかなケーキ、それも複数。ショートケーキ程のサイズの物がバリエーション違いで六切れ入っていた。くっつければちょうどワンホールだね。

 

「これ食べて大丈夫なやつ?」

 

「うん? 普通に美味しいよ?」

 

「食うの(はえ)えよ!?」

 

 ああもう、口の周りにホイップクリーム着いてるし。大きくなっても子供気分が抜けてないんだから!

 

 白く汚れた口元をウエットティッシュで優しく拭ってあげる。ほんとに、綺麗に行儀良く食べてよ?

 

「それにしても、なんでケーキが冷蔵庫に……」

 

 結局解決されなかった疑問に思いを馳せ、

 

 ガラン、とガラス瓶が倒れたような音が押し入れの中からした。

 

「……ああもう! 天丼は三回までだろ!」

 

 もういい、何回も惑わされるか! 戸惑うこと無く押し入れに駆け寄り、勢いよく扉を開いた。

 

「どうせ何も……ん? これは……」

 

 押し入れの奥に本当にガラス瓶が転がっていた。ガラス瓶とは言ったが瓶コーラのような小さなものではなく、焼酎とかが詰まってそうな大きな瓶だ。……というか、焼酎そのものじゃねえか!

 

「もしかしてさぁ、さっきの全部ミコじゃない?」

 

 押し入れに焼酎が入ってた事を伝えるとかぐやがこんな事を言った。

 

「だって、かぐやも彩葉もミコがツクヨミからこっちに戻ってくる所見たことないじゃん」

 

「それは、確かに……見た事ないな」

 

 姿が見えない、物に触れる、何がどうなってるのかなにも分からない。要素を全部まとめるとさっきまで話してた事と繋がった。

 

「押し入れの中にミコ寝てんじゃねー?」

 

「居たとしても見えなきゃ分からないでしょ」

 

 ぐぬぬ……と悔しそうに顔を歪めた、かと思いきや突如閃きました! とばかりに机の方に走っていき、何かを持ってきた。

 

「ヤチヨは電子の世界にいるでしょ? だったら、ARで見れば姿分かるはず!」

 

 自論を展開して得意げにスマコンを装着した。そんなんで見えたら良いけど、小槌でステルスしてたら分からないよ。

 

「見えたあああああああ!!」

 

 大きな目を更にこれでもかと見開き、嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねてるかぐや姫がそこに居た。

 

 ……ねぇバグヤチヨ。あなたもしかして、脇が甘いタイプだったりする?




日付変更二分前投稿

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