私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある?   作:天空ラスク

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(,,∩∇∩,,)「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ。……ま、私は透明化してるわけだけど! アハハハハ!」


かぐいろ()観察 (され)中だけど質問ある?

「何とかバグヤチヨが見えるようになった。それはいいんだけどさ……」

 

 スマコンを装着して押し入れの中を覗く。元からあまり物は入ってなかったけど、いつの間にか人一人が横になれるスペースが作られていた。

 

『すぴぃ、……すぴぃ、……へへぇ』

 

 そして、ちょうど空きスペースに収まってストリート系十二単を身に纏ったバグヤチヨが穏やかな寝息を立てて横になっている。寝る前に酒をたらふく呑んだのか、頬はリンゴのように色鮮やかな赤に染まっていた。

 

「おー、楽しそうに寝てるねー」

 

 穏やかな笑顔を浮かべたまま眠る様を見て、かぐやが珍しい虫を見つけたみたいに呟いた。

 

「ほんで、どうするこれ。起こす?」

 

「どうって、起こす訳いかんだろ。それに──」

 

 時刻はもう午後九時少し前と言ったところ。こんな時間に帰ってくる状況に覚えがあった。

 

 スマホを取りだして青い鳥のアイコンが特徴的なSNSアプリを開く。次々と呟きがタイムラインに流れてくるが、その中にバグったヤチヨの料理店営業時間終了を嘆く声があった。

 

「──あーやっぱり。今さっきまで作業してたっぽい。そりゃあれだけ同時に作業したら疲れて寝るか」

 

「ゔぇ〜、こんな時間まで働くとかきっつぅー! かぐやちゃん絶対ヤダぁ〜、まったり楽しく配信して過ごした〜い」

 

 顔をしかめて労働の義務を放棄する宇宙人。一応言うけど、ふじゅ〜稼いでる時点であなたも労働者だよ。確定申告は一人でやってよ。

 

「ま、とりあえず様子見かな」

 

「うんうん、寝る子は育つって言うからね」

 

「酒呑んでんだからあんたより大人です」

 

 言葉を学習しといて使い所間違えたら意味無いでしょ、まったく。

 

「え〜? でも彩葉より背ぇちっちゃいよ?」

 

「身長は関係ない。そもそも、ヤチヨは8000歳なんだから大人超えて仙人レベル」

 

 これでバグヤチヨの正体がヤチヨに似てるだけのなにかだったら話は変わってくるけど。

 

 大体先日のミニライブでもレア個体のチビヤチヨがいたし、身長なんていくらでも変えられるはず。ヤチヨと同じAIとか情報系の存在だったら、の話にはなるのが懸念点。

 

 チクタクと時計の秒針が社畜魂を燃やして働いている。

 

「もう良い時間だしお風呂入って寝よ。私は後でいいから先入ってて」

 

「彩葉も一緒入ろ〜?」

 

 出たよ、私がやってくれると信じて疑わないその目。綿あめみたいに甘くてふわふわした声のお誘い。

 

「……いや、普通に入らんが」

 

「ハゥアッ……!?!?!?!?」

 

 赤ちゃんだった頃何回か沐浴させたけど、流石二人では入らないよ? 狭いし。

 

 

 

 

 風呂も歯磨きも済ませ、布団に潜る。

 

「明日から二人で見張るよ」

 

 ここが何時もの場所です、とばかりに私の上に寝転がるかぐやに声を掛ける。暑いけど慣れてしまった自分が怖い。

 

 今まで姿も見えず声も聞けずだったバグヤチヨ。分からずじまいだった普段の過ごし方を見れば、その謎が少しは解けるようになるはず。

 

「んー、わかったー。ミコ普段って何やってるか知りたいしー」

 

 なんだかんだで眠たいのか、タレ目と比例するように声もトロンとしている。

 

「すぐに尻尾を出すか分からないし、三日くらいは観察続行かな」

 

「いいけど、スマコン付けっぱだと目ぇアツアツになるよ?」

 

「だから交代で着ける。私は明日午後十三(いち)時からバイトだからその時はかぐやが見てて。わかった?」

 

「あ〜い」

 

 おやすみ、と呟くと小さくおやすみ、と返ってくる。とくとくとかぐやの鼓動が肌を通じて伝わってくる。サラサラな金髪を優しく一撫でして、眠気に身を任せ瞼を下ろした。

 

 

 

 

 

 Focus・⬛︎⬛︎神楽(少雛海琴)

 

 七月二十四日。

 

 酒カスの朝は遅い。睡眠導入剤兼精神安定剤代わりに呑んだ焼酎がベタベタとしつこく夢の国に引き留めてきたためだ。

 

「んにゃ、……んぁ? …………あさぁ?」

 

 もう既に時刻は午前十時を過ぎている。と言うのに、この声の蕩けようは生卵と比較しても遜色ない。

 

 もし下位次元観測者(あなた)が暇なら、その辺を歩いている幼女に『この声の人何歳くらいだと思う?』と質問してみてほしい。きっと通報されて豚箱にぶち込まれるだろうから。

 

「ろぉしてこんらいまっくらなのぉー」

 

 だいぶ呂律が怪しいことから分かるように、この少雛海琴という配信者はまだ寝ぼけている、その上にかなりの量の酒を呑んだせいで脳みそがアルコール漬けになっていた。

 もはやピクルスの親戚である。

 

 押し入れの中に入って寝落ちした事も忘れ、一人暗闇の中女の子座りで目を閉じて、数秒の間ぽえ〜((ーワー))っとしていた。

 その様はまさに幼女が如し。託児所に行ってこい。

 

「みえらい、みえない……あかりどこー?」

 

 ペタペタと(ふすま)に触れる。しかし、裏側故に取っ手となる引っかかりは無く、壁と襖の隙間から細長く漏れる光を目印に爪でカリカリと引っ掻くようにして何とか開いた。

 

 急に明るくなった視界に思わず目を閉じる。暗がりの酒カスに朝の光は強すぎたようだ。ラピュタのポムじいさんみたいだな。

 

「……あれ、なんで部屋に彩葉が……?」

 

 元に戻った視界の中、部屋の中で彩葉が勉強している。今日は珍しい事に机ではなくちゃぶ台の上にノートと教科書を広げていた。

 

 押し入れの棚板に腰掛け、何故自分の部屋に推しの彩葉がいるのかと首を傾げる。どうやらおめでたい頭は自力で部屋に帰って寝たと思い込んでいるらしい。

 

 そのままの体制でじ〜〜っと彩葉の顔を見つめながら考える。その足はぶらんぶらんと落ち着きなく揺れていた。

 

 スマコンのARモードで何らかの資料かヤチヨのアーカイブでも見てるのだろうか。瞳がオレンジ色に輝き宇宙人のようになったソレと目が合ったような気がした。

 

「あ、そうだ。ケーキ置いて限界来たんだったぁ〜」

 

 ようやく現状を理解したようだ。やらかしたなーと頬を指で掻く。体はもう目覚めかけているようで、早く酒を寄越せと手がプルプル震えていた。

 

「ん? そういや何処置いたっけな、……あ! あった〜!」

 

 超かぐや姫!(向こう)で寝たならカメラはどこに行ったのか。見回してみれば押し入れの中、先程まで頭があった位置の壁際にポツンと置いてあった。

 

「ひゅ〜、危ない危ない。切り忘れてないよなー、……よし、バッチシ!」

 

 もしや昨日は配信したまま寝落ちしたのでは、とそそくさと確認すると最後の力か無意識か、それとも長年の経験か、キチンと電源は落ちていた。

 

 かぐやの姿を探してみれば流しの傍でノートパソコンをカメラ代わりに料理をしていた。

 

 今日は料理配信をするようだ。手元が映し出された画面には朝にしては割と多いコメントが流れており、ちょいちょい色付きのコメントが見えた。

 

 『ロリロリローリロリ』と上限額の赤スパを投げている怪しい人がいるので将来のコメント欄の治安が心配である。

 

「今日はお風呂入ってからでいっかな〜」

 

 酒カスだろうと寝起きで配信するほど乙女心を捨てたわけではない。元々着ていた服も着替えないといけない。

 

 今着ているストリート系十二単──これ毎回言うの面倒だな──も謎パワーで実態化しているだけだから三次元(こちら)に戻ればいつものダル着だ。

 

 あと化粧は絶対に必要だと、かぐやの美貌を見て本能的に理解した。いつも化粧を施し終わったら小槌を使って肌に定着させているので濡れても乱れる事はないが、つけっぱなしというのも肌に良くない。

 

 そして髪型もヤチヨモードから戻さず寝たせいで後頭部の輪っかが解けてアホ毛が解放されてしまっている。

 

 見なよ、酒カスのアホ毛を……。地面に届きそうなくらい長いのが二本、寝癖で縦ロール(テットテト)になってやがるぜ。

 

 行動は早い方がいい。こめかみのメモリを操作して現実(こちら)へと帰還した。

 

 カリカリ、と硬質な音は鳴るが、かぐやの包丁さばきに紛れて聞こえないだろう。多分。きっと。メイビー。

 

 

 

 

 十一時半。風呂上がりに手作りカルーアミルクを堪能して諸々の支度を済ませ、再び彩葉家に戻ってきた。やはりカクテル。カクテルは無限の可能性を秘めている。

 

 トントン、とかぐやが振るう包丁の音が日常感を演出するのに一役買っていた。

 

「右手に見えますのが、超勉強頑張り彩葉です。この時期にしか見られない貴重な受験勉強シーンをたっぷり御堪能ください」

 

 バスガイドじみた解説をカメラに向けて話す。

 酒カスと言えども勉強の邪魔してばかりでは推しに申し訳ない。ので、今日は珍しくメモリ1……相互干渉不可の完全観賞用モードだ。

 

 ・すごい!内容全然わかんないや!

 

 ・字が綺麗やなー

 

 ・あの、書く速度が人外なんですがそれは

 

 ・アップで見る顔がまた芸術ですわ〜

 

 カメラを利き手の左手で構える。勉強ノートと彩葉の顔を交互に写せばそれに応じてコメントも各々好き勝手に呟く。

 アイドル売りはしてない酒カスならではの空気感。友達同士のだべりみたいな雰囲気が海琴の好みである。

 

「それにしても、なんか今日はよく目が合うね?」

 

 ちゃぶ台を挟んで彩葉の真正面に座っているが、やけにチラチラと見られているような気がする。

 

 ・お前がずっと顔見てるからだろ

 

 ・小槌パワーを信じろ

 

 ・何やっても見えてないのは実験済みだしな

 

 ・酒さえ呑まなきゃバレんて

 

 ・あの、なんか彩葉の顔限界化してませんか?

 

 そのコメントを読むやいなやカメラを彩葉の顔に向ける。ジッ……と見つめてみたが、その間目は合わず芯の通った凛とした顔がかっこよかった。

 

「ほんと彩葉ってかっこいいよね〜。好き、好き、だ〜い好き♪なんちゃって〜、えへへ」

 

 にこぱと海琴の顔に花が咲く。どうせ聞こえてはいないが、推しの前で好き好き言うのは割と恥ずかしい。最後に誤魔化しの言葉を添えた時には頬に赤みが差していた。酒呑んで血行良いから元から赤いとか言ってはいけない。

 

「〜〜〜〜〜〜っ」

 

 ・ほんとだ限界化してる!?

 

 ・おいおいそんなハゲあるかい

 

 ・そこ誤字る事あるか?

 

 ・酒カスー、ちょいと顔近づけてみーよ

 

「うけたま〜。どりどり、ちょ〜っと失礼しますよ〜」

 

 彩葉の両頬に手を添える。触れないのでスカスカと動くが雰囲気作りの為だけにやってるので気にしない。

 

 ぐいっと上体を乗り出し顔を近付ける。そのまま数秒見つめ続けたが整った顔立ちは乱れること無くノートに視線を釘付けにしていた。

 

「ん〜〜? 見えてはないみたい。不思議な事もあるんだね〜」

 

 姿勢を元に戻す。片肘をちゃぶ台について頬杖を着くとメモリを3に切り替える。そのまま家に一瞬戻ると持ってきたウイスキーボンボンを小さな口に放り込んだ。

 視線を感じてちらとかぐやを見る。

 

 トン……トン……と音を立てて包丁が主張する。どうやら気のせいだったようだ。

 

 ・偶然にしては不自然じゃないか?

 

 ・いくら彩葉でも打出バイザーの謎技術は越えられんだろ。俺たちもなんで次元を越えられてるのか分かってないんだから

 

 ・眼球で直接AR映像見るのどんな感じなんだろうな

 

 ・俺のメタクエ〇ト3と性能比較してみたいわー

 

 ・比べ物にならんよ。スマコンはあのサイズでパソコン並のマルチタスクできるからな

 

 ・彩葉ぺろぺろ

 

 ・初見です

 

「おっ? 初見さんいらっしゃ〜い。んっんっ、ヤオヨロ〜! ツクヨミ管理人の月見ヤチヨ……によく似た普通の配信者、少雛海琴(スクヒナ・ミコト)だよ〜!」

 

 ヤチヨ声の調整をしてから初見の方向けの自己紹介をする。無意識でヤチヨ声ができるようにはしてるが、ふとした拍子に地声が出ないか不安なものは不安なのだ。

 

 ブイブイと人差し指と中指を立ててカメラにアピール。お前もかぐいろ沼に沈まないか?

 

「そしてここはあの彩葉のお家! ふふん、凄いでしょ? 打出の小槌を使えば次元も越えられちゃうのです」

 

 ポイポイと口の中にウイスキーボンボンを放り込み、口の中で転がしながら胸を張る。

 

「なんやかんやありまして、今はヤチヨカップヘルモードを攻略中なんだ〜。もちろん彩葉とかぐやなら優勝できるだろうけど、よよよ、謎にバッドエンドフラグが多くて困っちゃう」

 

 十二単の袖で目元を隠し泣き真似をする。実際のところ何故こんなにバッドエンドが多いのか、そして原作にいなかった大物配信者達が一斉に参加しているのか。全て謎のままである。

 

 ・嘘だと思うじゃん?これ現実なんだよね(・∇・)

 

 ・実際何度バッドエンドなりかけたか……

 

 ・そこの酒カスがボケ散らかしながら解決したがな

 

 ・ええ……?これ本当に今起きてる事なんですか?

 

「そだよ〜。彩葉とかぐやをハッピーエンドまで連れていくのが当面の目標! 今はうい先生に頼んだかぐやのライブ2Dが届くの待ちってところさん」

 

 原作でも江ノ島行く前にもうライブ2Dやってる描写あったし、三次元(こちら)より制作が楽なのだろう。数日以内に依頼満了の報せが届けば特等席でかぐやの配信を見る予定だ。

 

 ・ヤチヨ(本物)の正体バレまで行ければ良いがね

 

 ・ん。構わない、行け

 

 ・お前はシロコ・ブランドー?

 

 ・ミームを混ぜるのはどーなんせーまん?

 

 ・お前も陰陽師呼びそうになっとるやろがい!

 

 ・そういや聞いてなかったけどハッピーエンド行ったらどうするんだ?

 

「ハッピーエンド行ったら? ……ん〜、たまに見に来るくらいかな。私は奇跡的に壁を超えてきただけの異物だからね。本来は居るべきじゃないんだよ」

 

 だから、全部終わったらそれで終わり。もちろん、ちょっと寂しいけどさ。それでいいんだよ。

 そう締めて話題を変えた。

 

 いつの間にか包丁の音は止まっていた。

 

「はい、しんみりした話はおしまいおしまい。違う話題話そう! 神々のみんなって最近なにか映画見たかな〜? 私はこっちでワルプルギスの廻転*1──」

 

 その後の事は特に特筆すべきところはない。彩葉の勉強を隣で見ながら視聴者とだべって、午後から立て替えたうい先生の依頼料を稼ぐためツクヨミに行き料理を作った。

 ヤチヨ(本物)とかぐやが並んで物陰から覗いてたのが気になったがそのくらい。同一人物だし、意気投合したのだろう。

 無事に新規の視聴者も取り込みに成功し、配信終了後、意気揚々と三次元(こちら)の家に帰ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 Side・酒寄彩葉

 

 午後二十時。

 

「脇が甘いってレベルじゃなくない?」

 

「三日も要らなかったねー」

 

 バイトも終わり、食卓を囲みながら今日のことを話し合った。

 バグヤチヨの事知るのに三日も要らなかった。というか勝手にボロボロ全部吐いた。肩透かしどころかスタート直後に足を引っ掛けられて転んだレベルなんだけど?

 

「名前は少雛海琴(すくひなみこと)。ヤチヨそっくりの配信者で打出の小槌を持っている。目的はかぐやと私をハッピーエンドに連れていく事で、打出の小槌を使って私たちの次元にやってきた」

 

「あとなんか見えないやつ持ってる!」

 

 今日手に入れた情報をまとめていく。口に出して発言する度に『なにこれ?』としか言いようがない情報が唇から飛び出していく。

 

 うん、やっぱり謎しかない。なんでヤチヨそっくりなのかとか、打出の小槌って何なのかとか、どうして私たちをハッピーエンドに連れていこうとしているのかとか。

 

 それにわざわざ次元を超えて撮影しに来なくてもいいでしょ。

 かぐやならともかく、私なんてただの高校生だよ? 

 

「分かったのは、ミコは名前の海琴(ミコト)から取ってたって事」

 

「そいや、ヤチヨに会ったからミコの名前伝えといた! 一寸法師の名前の由来がどうのこうの言ってたけど関係ある?」

 

「ヤチヨが?」

 

 確かに一寸法師も打出の小槌が出てくるおとぎ話だ。でも少雛海琴からどうして一寸法師に繋がるのか分からない。

 

 かぐやに許可を貰ってからスマホで検索をかけると、ある神様の名前がヒットした。

 

少彦名命(すくなひこなのみこと)……そんな神様居たんだ」

 

 酒と温泉と医療の神様。海の向こう、常世の国からガガイモの殻の船に乗ってやってきた国造りの協力神であり、一寸法師のモデルとなった小人神、らしい。

 

 酒はよく呑んでた。それはもうガッツリ呑んでた。温泉と医療はまだそれらしいところを見てない。……待て、前にサウナをジロジロ見てたってかぐや言ってたな。

 

 別の次元から来たって事は、常世の国と関係あり、か? それに打出の小槌を持ってるし、身長は多分150センチくらい。私が154センチでかぐやが157センチだから一番小さい。ちなみに月見ヤチヨは160センチと10センチ差がある。

 

 ……あれ、これ地味に黒くない?

 

「高天原ってそんな俗っぽい場所なのか……?」

 

 ヤチヨそっくりの酒呑み配信者がいるような場所なの? ……それはそれで気になるな。天照大御神とかもヤチヨ顔なのかな。この世の楽園(ヤチヨパラダイス)は高天原にあり?

 

「ねぇねぇ、カミサマってなに? ヤチヨよりすごいの?」

 

「宇宙人よりヤバい。世界中でみんな何かしらの神様を信じてるからね。私は誰にも祈る気はないけど」

 

 そう、私は誰かに頼って生きるつもりは無い。かぐやはハッピーエンドまで連れてってもらえばいい。私はこれまでと同じように一人で生きていけるから。

 

 かぐやは顎を指でつまむようにカッコつけ、

 

「なるほど、じゃあミコをアシスタントにすればかぐやはカミサマより凄いライバーになれると。なるほどなるほど」

 

 なんかとんでもない事言い出した。

 

「その理屈はおかしいだろ」

 

 思わずツッコミが脳から直接飛び出す勢いで放たれた。

 

 あ! じゃないから。思いつきましたアピールを止めて。本当に嫌な予感がしてきたんだけど。

 

「じゃあミコの世界の人もかぐやのチャンネル登録してもらおう! よっしゃ、ミコ捕獲作戦やるぞー!」

 

 両手を天高く挙げて、恐れ知らずのかぐや姫が叫ぶ。

 

「待て待て待て待て! ほんとにやんの!? まだ神様って確定した訳じゃないんだよ!?」

 

「やる! だって、全部終わったらミコ消えちゃいそうなんだもん!」

 

 瞳に決意の炎が暑く滾っている。もう止まらないだろうなこれ。

 

「消えちゃいそうって、ただ自分の次元に帰るだけでしょ」

 

「わかんないけど、なんかダメなの。あれだよ、虫の知らせってやつ!」

 

 月に虫いないじゃん。なんて茶化しも聞く耳を持たない。本当にやる気なのか電柱産まれ。宇宙人だけで手一杯なのに別次元の存在とかもうマジ限界無理だよ。

 

「だから彩葉も手伝って。かぐや、ハッピーエンド行ってからお別れするのやだよ……」

 

 本当に心からそう思ってるんだろう。目に大粒の涙が溜まって、一つ、また一つとちゃぶ台に水滴が落ちる。声も潤んで震えている。

 

 そんな顔されたらさ、断るのって、違うじゃん。

 

「はぁ……失敗しそうだったらすぐやめる事。それができるなら、まぁ、手伝ってもいいけど」

 

 結局私はこの子の頼みを断れないらしい。でも、あの光が弾けるような笑顔を見たら、なんとかしてみるかって気になれた。

 

「で、作戦はあるの? 無いなら考えるところから始めないと」

 

「当然。かぐやちゃんに必勝法あり!」

 

 胸の前で腕を交差させ、ダブルVサインを決めながら、イケイケかぐや姫が白い歯を見せ笑う。

 

 作戦決行日は二日後、七月二十六日。標的は次元を超えてやってきた推しそっくりの可愛い一寸法師。

 

 私たちは、おとぎ話を捕まえる。

 

 

 

 

 

*1
やぁ、俺だ!劇場版魔法少女まどか☆マギカ・ワルプルギスの廻転は2026年8月28日公開だぜ!この酒カスはオタクが十年待ち望んだ映画のネタバレをぶちかませる禁断の知識を手に入れてしまったって事だ!じゃあな!




立 守さん、斥候さん誤字報告ありがとうございます!


やめて!かぐやの行動力で、小槌の計画をつつきまくったら、闇の小槌で超かぐや姫!と繋がってる神楽の存在理由まで燃え尽きちゃう!

お願い、死なないで神楽!

あんたが今ここで捕まったら、至上願望(グランドオーダー)はどうなっちゃうの?

バッドエンドはまだ残ってる。ここを耐えれば、ハッピーエンドにできるんだから!

次回「酒カス死す」デュエルスタンバイ!

大規模コラボってあり?

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